みうらじゅん『ロケットマン』とメガネ映画を語る

町山智浩 エルトン・ジョンの歌詞と映画『ロケットマン』を語る 大竹まことゴールデンラジオ

みうらじゅんさんが文化放送『大竹まことゴールデンラジオ』に出演。エルトン・ジョンを描いた映画『ロケットマン』とおすすめメガネ映画について話していました。

(太田英明)今日はなんかバッグというか、お荷物をお持ちになっていますけども?

(みうらじゅん)そうなんです。今日、全然関係ないんですけども。あのメガネ映画についてちょっと……。

(光浦靖子)メガネ映画?

(みうらじゅん)メガネ、おかけじゃないですか。やっぱりメガネが特徴じゃないですか。俺も小5ぐらいからメガネデビューしているんですよ。結構早くて。それで思春期、やっぱりメガネをかけてるから僕はモテてないんだって思うようになったんですよ。

(光浦靖子)わかりまーす!

(みうらじゅん)まあ、いまから考えたら全部、メガネのせいにしてたんですけども。やっぱりメガネがあるから冴えないと思って。

(光浦靖子)特に昔はね。

(みうらじゅん)特にメガネの種類がそんなになくて。僕なんかはもうちょっと前だから特に男は黒か青。で、女の人は赤みたいな。

(光浦靖子)それでまた銀のティアドロップ型っていうね、いちばん……。

(みうらじゅん)それも親が決める。自分的には決められなかったじゃないですか。若い頃は。そんな時に……僕が中学の時にエルトン・ジョンっていう人を見て。これ、今日の話なんですけど。『ロケットマン』っていう映画をいま、やっているんですよ。で、ちょっと公開してだいぶ経ってるんで、もう夜の回しかやってないと思うんですけど。その前のクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』っていう映画がすごい当たってすごいロングランになったけども。これはもう終わりそうですんで。

(光浦靖子)『ロケットマン』は?

メガネ映画『ロケットマン』

町山智浩 エルトン・ジョンの歌詞と映画『ロケットマン』を語る
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(みうらじゅん)なんにも僕、関与してないし何の関係もないんですけども。「メガネ映画」としてね、メガネの人は見ておいた方がいいんじゃないかなと思ってね。

(光浦靖子)へー! 見に行こう!

(みうらじゅん)エルトン・ジョンは20代でデビューした時から、結構僕はアルバム買ってたんであれだったんですけども。強度の近眼で。横顔とかがこのレンズのところで歪んでるのがわかって。

(太田英明)レンズが分厚いからですか?

(みうらじゅん)そうなんです。ものすごく分厚くて。昔はほら、いまのレンズじゃないから。ガラスみたいなやつだったんで、本当に分厚くて。自分も結構強いレンズだったんで、それで勇気をもらったという。「メガネをしててもロックしていいんだ」みたいな。それをダブル・ジョンのジョン・レノンとエルトン・ジョンが「メガネをしててもいい。というか、逆にそっちの方がかっこいい」みたいなことを教えてもらって、それからちょっと僕はメガネに対するコンプレックスがなくなったんですよ。

(光浦靖子)へー!

(みうらじゅん)だからそれはエルトンさんのおかげなんですよ。それでこれ、『ロケットマン』っていって、エルトン・ジョンのことを役者の人が演じてるけど。メガネ野郎としては度が入ってないということはちょっと気になったけども。映画って大概、メガネ役の人って度が入ってないじゃないですか。入ってる人間からしたら、手を抜いているなってちょっと思うじゃないですか。

(光浦靖子)ドラマとか見ていてそう思います。

(みうらじゅん)ねえ。思いますよね。

(大竹まこと)度が入っていたら本人は見えづらいからね。

(みうらじゅん)見えづらいし。それでエルトンさんのやつはデカくて。僕が中学・高校で買ってたアルバムはもうティアドロップのオレンジ色とか。まあ基本がグラサンなんですよ。で、映画はね、ミュージカル仕立てでエルトン・ジョンのいろいろヒット曲がいっぱい出てくるんですけども。その時代、その時代のメガネもちゃんと再現してて。僕もうメガネだけ見てた映画なんですけども。

(光浦靖子)内容を見た方がいいんじゃないですか?

(みうらじゅん)内容……うん。まだご存命なんで。クイーンのフレディ・マーキュリーとは違ってご存命で、この人がプロデュースをされてるんで、どこまでが本当かわからないけども。

おすすめメガネ映画3作品

(みうらじゅん)でも、メガネ映画っていう、僕が勇気を持ったメガネ映画がかつて、3本あったんですよ。それはね、『ジェレミー』っていう映画があって。これね、もういまでは結構DVDが高くなっていると思います。1972年か3年ぐらいの作品で。

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(みうらじゅん)ロビー・ベンソンっていうのとグリニス・オコナーっていうのが出てるんだけど。ロビー・ベンソンがメガネなんですよ。男の子が。これがジェレミーっていうんだけども。メガネで。それでこのひとつ上の彼女と恋におちて、彼女が引越しして泣くだけの映画なんですけど。ストーリーはね。飛行場で見送りに行った時に、そのロビー・ベンソン演じるジェレミーが、メガネを外して泣くんですよね。で、初エッチする時にメガネを外す。その2シーンが見どころの映画で。

(一同)フハハハハハハハッ!

(光浦靖子)メガネ映画だ(笑)。

(みうらじゅん)メガネ、かけたまんまエッチしないんですよね。そこはほら、メガネが主人公の映画って少ないからあんまり明かされなかったけども。メガネは置いておいて、踏まれないところに置いておかないとその後、えらいことなりますんで。これともう1個ね、ダスティン・ホフマンが出ていた、これはサム・ペキンパーの映画なんけども。『わらの犬』。これ、大学教授の役で、メガネなんですよ。これ、ビデオパッケージは違うんだけども。ポスターはメガネが割れてるのがアップのポスターだったんですよ。

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(みうらじゅん)だから言えば、文化系の象徴がこの家を建て直す大工をしているやつ。まあ、体育会系のやつがちょっと奥さんに手を出したりなんかしてて。それにブチ切れて、メガネを割りながらも戦うっていうメガネ映画のすごい巨匠なんですよ。これとダスティン・ホフマンは『パピヨン』っていう映画にも出てて。スティーブ・マックイーンと。で、これもものすごい度が入ったやつを……たぶん作ったのか、目をわざと悪くしたのか。すっごいメガネをかけてダスティン・ホフマンが出ているんですよ。

(大竹まこと)『パピヨン』ってあの島の中から脱獄する映画?

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(みうらじゅん)そうです。パピヨンがスティーブ・マックイーンです。

(大竹まこと)で、一緒に囚われている囚人の1人がダスティン・ホフマン?

(みうらじゅん)ものすごい分厚い……。

(大竹まこと)おぼろげに記憶があります。

(みうらじゅん)レンズももう1回も拭いていないような汚れなんですよ。メガネ野郎としてはメガネが汚れているのってすっごい嫌でしょう? 気になったり。そこでたぶん雰囲気、感情移入させるようにしているんだと思うけども。それで自分はメガネ野郎だっていうこともあって、この人はパピヨンのようには脱獄はしないんですけども。

(大竹まこと)この人はしないんだよね。

(みうらじゅん)この4本がおすすめメガネ映画。だからそれ、『ロケットマン』はいま上映中なんで。もうメガネといえばエルトン・ジョンなんで。まあ、音楽にあまり興味がない人も、メガネの人だったら「そうか。メガネ映画なんだ」って思って見たら……。

(光浦靖子)そしたら見やすい。私もエルトン・ジョンはあんまり詳しくないもんで。まあいいかな?って……。

(みうらじゅん)違います。メガネ映画ですから。

(光浦靖子)じゃあ、見やすいですね。

コンプレックス克服メガネ映画

(みうらじゅん)いっぱいメガネが出てきますんで。様々なメガネが出てきて。だからエルトン・ジョンもたぶんコンプレックスがあって。度も強かったから。それがものすごい派手なメガネに変遷していくんですよ。で、派手なメガネをかけたらもう変われるんですよね。変身できて。そういうコンプレックス克服メガネ映画だと思って見ていただければ面白いと思いますよ。

(光浦靖子)もう一度、言っときますか。『ロケットマン』と……。

(みうらじゅん)『わらの犬』。これ、ダスティン・ホフマンのやつです。新しく『わらの犬』が撮られ直しましたけども。ダスティン・ホフマン、サム・ペキンパー監督のやつですよ。それとね、これ『ジェレミー』っていう。すごくいい映画なんですよ。

(太田英明)これ、『ジェレミー』って当たったんですか?

(みうらじゅん)当たってないと思います。全然当たってなかったと思うんですけども。割とイケてる顔の男の子なんですけども。でもそこにね、結構ちょっと度が出た……。

(光浦靖子)本当だ。レンズにちゃんと渦が出ている。

(みうらじゅん)僕は中学の時に「これだ! これが本当の映画だ!」って思って。すごい嬉しかった。そんな話をしに来たんです。

(太田英明)でも、いまではメガネに憧れて逆に伊達メガネをかけたりするような……。

(みうらじゅん)メガネ男子とか言ってすごい流行ったけども。でも、度が入ってないんですよ。やっぱり「度つきメガネ」って言われて。なんか関西の漫才師のどつき漫才みたいな言われ方……正司敏江・玲児さんみたいな言われ方でしたけども。やっぱり度つきであるっていうことが大きいですよね。

(光浦靖子)大きい。でも私、最近疲れ目でコンタクトになっちゃったからね。職業メガネになってる自分がちょっと恥ずかしいの。

(みうらじゅん)そうですか。あれは度が入っていないんですか?

(光浦靖子)もうテレビ用なの。

(みうらじゅん)度をなくしたんですね。

(光浦靖子)度がね、ついていけなくなったんですよ。いよいよ疲れ目が。

(みうらじゅん)老眼が入り始めているんじゃないですか?

(光浦靖子)テレビのライトがどうにもダメで。眼科に行ったら「コンタクトにしなさい。日常、コンタクトの方が負担がない」って言われて。

(みうらじゅん)エルトン・ジョンも一時、コンタクトにしたんですよ。

(光浦靖子)見に行かなきゃ! 私も裏切っている感じがして……。

エルトン・ジョンも一時期コンタクトにしていた

(みうらじゅん)したんですよ。その時、80年代ぐらいなんですけど。当然僕は「裏切られたな」と思ったし、当然低迷期を迎えるんですよ。バーニー・トーピンっていう作詞家と決別して、なんだか……80年代ってダンスミュージックが盛んだから、ちょっとエルトンはどうにかしなきゃなんない時にメガネを外したんですよ。それで「ああ、こいつダメだな」って思ってたら、またメガネ復活でブレイクするんですよ。いま、『ライオン・キング』とかに曲を書いて。またすごいんですよ。

(光浦靖子)度つきに戻したんですね。

(みうらじゅん)戻したんですよ。度つきがいいんですよ。

(光浦靖子)私も戻した方がいいかな?

(みうらじゅん)ぜひとも度つきにしてください。

(大竹まこと)俺、メガネは高校ぐらいまでかけてなかったのね。大丈夫だったんだけど、逆にそんなに目は悪くなかったんだけどちょっとかけ始めたのね。かっこいいんじゃないかって。

(光浦靖子)メガネに憧れたクチですね。

(大竹まこと)そのうちに本当に悪くなってくるんだけど。だから、逆だなって思って。メガネ、俺らはかけている人に憧れが……。

(みうらじゅん)でも、映画の中のメガネって少ないじゃないですか。もうルーツで言えばクラーク・ケント。スーパーマンがメガネ外してヒーローになるんですよ。やっぱりメガネがあると活動をしにくいし。

(大竹まこと)あと、メガネをかけているからわかるけど、ドラマとかそういうので目が悪くないのにメガネをかけている人、いるじゃない。それが似合っていないっていうか、板についてない。

(みうらじゅん)ああ、メガネが板についてないんですね。やっぱりね、鼻の上のところがへこみださないと……。

(光浦靖子)私もへこんじゃった! 何十年もやっていたらここ、へこんじゃった!

(みうらじゅん)なんなんですか、このメガネの滑走路みたいなところ。だから、コンタクトにしても治らないでしょう?

(光浦靖子)治らない。へこんじゃった。

(太田英明)えっ、メガネかけたままエッチする人っていないんですか?

(みうらじゅん)いないと思う。やっぱりエッチする時にキスをするじゃないですか。まず。その時にバーンって当たると冷めるだろうし。こっそりメガネをそろと置いて、音をしないように置くっていう……もう「体制に入っている」って悟られるのが恥ずかしいし。メガネを外した段階でおかしいから。

(光浦靖子)やる気満々感、嫌。

(みうらじゅん)そうなんですよ。そういう意味で、エッチには不向きだしね。

(光浦靖子)でも、視覚をちょっと抑えることによって手のひらとか他の感覚がきっとさ。耳とかさ。

(みうらじゅん)そうなんですよね。

(大竹まこと)というか、みんなメガネは踏まれないようにそっと置くよね。乱暴には取れない。

(みうらじゅん)無粋なやつで「かけさせて」って言うやつ、よくいるじゃないですか。で、片方のツルだけ取って引っこ抜かれた時、「なにしてんだよ、お前!」って思いますよね。

(大竹まこと)両側をちゃんと持って、こうやってかけなくちゃいけないのに。

(みうらじゅん)そう! 両方の手で。

(大竹まこと)それをこうやって……本当に静かにこう置くんだよな。電気スタンドのちょっと向こうあたり。ちょっと遠いところなんだよ。

(みうらじゅん)でも「コトッ」と音はする。

(大竹まこと)音はする。

(みうらじゅん)静かさの中に「コトッ」って置いた音がする。

(光浦靖子)フフフ、あ、時間が来ちゃった! お時間が来てしまいました。月イチレギュラーのみうらじゅんさんでした。

(みうらじゅん)ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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