町山智浩 Netflix『いつかはマイ・ベイビー』を語る

町山智浩 Netflix『いつかはマイ・ベイビー』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でNetflixで配信中のロマンチック・コメディー『いつかはマイ・ベイビー』を紹介していました。

(町山智浩)今日はね、Netflixでもう配信されている映画で『いつかはマイ・ベイビー(Always Be My Maybe)』というタイトルのロマンチック・コメディーですね。これ、もう日本語で配信されていてNetflixで見れるんですけども。で、これはマライア・キャリーのヒット曲が全編でかかっていて。この曲(『Always Be My Baby』)が主題歌なんですけども。

(町山智浩)これね、ヒロインがスーパーセレブシェフなんですよ。

(山里亮太)セレブシェフ?

(町山智浩)アメリカはいまね、レストランのシェフが本当に映画スター以上の人気になっているんですよ。いま、アメリカってレストランブームがすごくて。まあ景気がいいからなんですけども。サンフランシスコとかロサンゼルスとかに超高級レストランがあって。一通り食べると10万円とか行っちゃうようなレストランがもう大流行。とんでもないバカげたものを……たとえば餃子とかを一皿に4つぐらいしか乗っていないのを1000円とか2000円とかで出しているんですよ。

(赤江珠緒)おおーっ!

(町山智浩)そこで大スターになっているスターシェフのサシャっていう女性が主人公ですね。で、彼女は中国系ベトナム人でサンフランシスコで育って。子供の頃は鍵っ子だったんで、お母さんがいなかったんで自分でご飯を作っていて。で、隣に住んでいた韓国系の家族がかわいそうだからってご飯を食べさせてあげていて。で、ご飯の作り方とかを習っているうちにシェフになったっていう話なんですよ。で、その韓国系の家の男の子が同い年のマーカスっていう男の子なんですけども。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)で、この2人はね、処女と童貞で18ぐらいの時にエッチをしようとして車の中でカー○○をしようとして。両方ともはじめてなんでうまくいかなくて、すごく惨憺たる結果に終わって。で、それから会えなくなっていたんですよ。

(山里亮太)なるほど。

(町山智浩)で、16年後に彼女はもう億万長者になっていて。サンフランシスコに新しいレストランをオープンするっていうことで帰ってくると、そのマーカスくんと16年ぶりに再会をするんですね。そうするとマーカスくんの方は別れた時と同じ部屋に住んで、カー○○に失敗した時と同じおんぼろのカローラにまだ乗っていて。で、高校時代と同じバンドをいまもやっていて、全く収入はロクにないっていう状態なんですね。

(赤江珠緒)あら!

(町山智浩)ところが、この2人が出会って、もともと初恋の人同士だからどうなるのか?っていうロマンチックコメディーなんですよ。でね、こう聞くとロマンチックな話に聞こえるんですけど……そんなに聞こえないか?(笑)。

(赤江珠緒)どうかなりそうな2人には聞こえないんだけども。もはや。

(山里亮太)それがでも、そうなっていくっていうのはいいパターンだと……。

(町山智浩)そうなんですけども、この2人はコメディアンなんですよ。この演じている2人はコメディアンで、特にその女性の方がアリ・ウォンっていうアメリカでいま最も人気の女性コメディアンなんですよ。現在37歳で。それで彼女自身がサンフランシスコで育ったベトナム系・中国系のアメリカ人なので、もうほとんど彼女の話を元にしているんですね。基本的には。で、この彼女のスタンダップコメディはいま、Netflixで日本語のやつが見れるんですけども、内容はものすごいですよ。

(山里亮太)えっ?

(町山智浩)あのね、まず妊娠8ヶ月で1人で舞台で転げ回ってやるんですよ。

(山里亮太)おおう……。

(町山智浩)そっちに写真があるかな?

(赤江珠緒)ありますね。ああ、お腹がパンパンの……。

(山里亮太)もう直前っていう感じの。

(町山智浩)そう。8ヶ月、7ヶ月半ぐらいなんですよ。で、『アリ・ウォンのオメデタ人生?!』っていうコメディーショーをやって、これが内容が全部下ネタなんですよ(笑)。

(赤江珠緒)下ネタなの? えっ、この状態で?

アリ・ウォンのショーは下ネタだらけ

(町山智浩)お腹パンパンで下ネタをやるんですよ。で、またね、言うことがすごくて。もう本当に、女性の側から世の中のいろんな矛盾とかを徹底的に攻撃していくんですね。たとえばね、こう言うんですよ。「私、フェミニズムって大嫌いなの!」って言うんですよ。「なんで?」「実は女性が男性以上に仕事の能力があるとか、本当のことをバラすなよ! だってバカのふりをしてサボれなくなったじゃん!」って言うんですよ。

(赤江珠緒)ああ、なるほど。

(町山智浩)あとね、「旦那が赤ちゃんのおむつを変えるとすぐに『イクメンね』とか『いい旦那さんね』って言われるでしょう? でもそれ、ハードル低すぎるだろ? 女はおむつを100回変えたって『いい奥さんね』って言われないよ!」っていう。

(赤江珠緒)ああー、そうね!

(町山智浩)「男はちょっと変えてるところを見せるで『いい旦那さんね、イクメンね!』とか言われて。おかしいだろ?」って。そういうのをずっとやっている人なんですよ。

(山里亮太)ああ、たぶんいま、町山さん言えるやつを選んだんでしょうね。

(町山智浩)言えないやつもありますよ。

(山里亮太)言えないやつはダメなんです!

(町山智浩)あのね、この人は旦那さんがハーバードの大学院でMBAを取っていて。韓国系日本人とフィリピン人のハーフの人なんですけども。で、なんでそんな人と結婚をしたか?っていうと、「そりゃあハーバードでMBAを取っていたら、食いっぱぐれがないから結婚をしたのよ!」って言うんですよ。ところがアメリカって学費がものすごく高いから、そのハーバードを出るとその旦那さんには借金が1000万ぐらいあるんですよ。

(山里亮太)ああ、変換しなきゃいけない奨学金とか。

(町山智浩)そう。だから「私の方がお金があるし、家を買う時も私が出したわ!」とか言うんですよ。で、「弁護士とかを通して契約して、うちは離婚をしても旦那には財産は行かないようになっているからね!」とか言っているんですよ。

(赤江珠緒)非常にリアルな笑いですね(笑)。

(町山智浩)そう。すごいなんかね、「本当なの?」っていう感じの話をするんですけども。「でもね、離婚はしないわよ。もったいないわ。せっかく上手にクンニができるようになるまで仕込んだんだから!」って言うんですよ。

(赤江珠緒)なるほど(笑)。

(町山智浩)「これから新しい男を見つけてまた1から教えなきゃいけないのかしらね?」とか言うんですよ。

(山里亮太)ええとね、この時間帯には滅多に聞けない単語が……。

(赤江珠緒)ああ、そうですね。うん……。

(町山智浩)だから、國村隼さんと結婚すればいいと思うんですね。

(山里亮太)なにを言っているんですか! 「くに」です。「くにむら」です!

(町山智浩)ああ、違うか? そういうギャグをずーっとやっている人で、ほとんどテレビで放送ができないんですけども。

(赤江珠緒)そのアリ・ウォンさんという人がヒロイン役をやっているのね?

(町山智浩)そう。アリ・ウォンっていう人は見た目は完全に教育ママみたいな感じのメガネをかけているんですけども、ネタは全部下ネタっていうとんでもない人なんですけどね。

(山里亮太)ちなみに町山さんがさっきチラッと言ったのがもうかなりライトな方っていうことですね?

(町山智浩)かなりライトですよ(笑)。

(赤江珠緒)選んだ上で、なのね。へー!(笑)。

(町山智浩)だってもう、汚い話とかも多くて。ひどいですから。「女の人もオナラする」とか、そんな話ばっかりをしているんですよ。「職場のトイレって嫌よね。オナラをして大きい方を済ませた後、ドアを開けると自分の部下とか友達がいる時があって、嫌よね」っていう話とか、そういう話をずっとしている人なんで。それで、お腹大きいんですよ。すごいんですけどね。

(赤江珠緒)で、幼馴染との恋はどうなった?(笑)。

(町山智浩)幼馴染との恋の方はね、彼女の方はレストランのシェフとして大成功していくんですけど、それがやっぱりちょっとよくないものなんですよ。あのね、さっきも言ったんですけど本当にアジア人の料理ってベトナム料理だったり中華料理だったり韓国料理だったり日本料理だったりしたものって、本来は庶民の味だったものなんですよね。ラーメンとか、そうですよね。

(山里亮太)うんうん。

(町山智浩)ところが、アメリカはそれを高級料理にしちゃっているんですよ。で、がっつり儲けているんですよ。これ、僕はいつも言っているんですけども、ロサンゼルスとかでラーメンを食べると、本当に2000円とかするんですよ。チップも入れてね。おかしいでしょう? それ。すっごい高級なんですよ、しかもお店が。

(山里亮太)はー!

(町山智浩)で、ソムリエみたいな人がいたりするんですよ(笑)。

(山里亮太)ええーっ!?

(町山智浩)ラーメンだよ? で、そういうところに結構セレブが来て、ラーメンを食べるんですよ。本当のハリウッドのね。キアヌ・リーブスなんかは特に日本のうどんとかラーメン屋によく出没するので有名ですけどもね。あの人、すごい好きなんですよ。和食とか(笑)。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)でも、そういうのってすごく、はっきり言ってインチキなんですよね。だって、本当はそれまでアジア系の料理……ラーメンなんかそうですけども、300円とか400円で売っていたものを高級になったからって2000円で売っているわけですから。まあ、みんなすげえ脱税していると思いますけども(笑)。

(山里亮太)フハハハハハハッ!

(赤江珠緒)いや、そこはわかんないですけども(笑)。

(町山智浩)いや、(小声で)まあ実際、やっているんですよ。

(山里・赤江)フハハハハハハッ!

(町山智浩)だって原材料、いくらだ?っていう話ですよ。だから、俺もやろうと思っていましたけども……。

(赤江珠緒)フフフ、なにを企んでるんだ?っていう(笑)。

(町山智浩)これね、ヒロインのサシャがやっているのってそういう仕事なんですよ。で、そういうアメリカのいまの流行っているレストランビジネスのインチキさを暴いているんですけども、この地道に暮らしている幼馴染のマーカスくんはそれがやっぱり嫌なんですよ。で、彼女がすごいセレブ生活をしているんだけど、なんかこうアジア系であることを利用して人々を騙しているような感じがして、そこもなんとなくね、本当は彼女のことを幼馴染で初恋の人だから好きだし、本当はヨリを戻したいんだけども、どうもこの2人、うまくいかないんですよ。

(山里亮太)うんうん。

(町山智浩)でね、ここですごいレストランが出てくるんですよ。すっごい高級なレストランで、ジビエ料理の店なんですね。で、そこではヘッドホンがお客さんに配られるんですよ。そうするとね、こういう風にウェイターが言うんですね。「あなたはこれから命を食します。命を食する恍惚と罪悪感を味わってください」って言って、ヘッドホンからその肉になった動物が生きていた時の鳴き声を聞きながら、その肉を食べるという……。

(赤江珠緒)ええーっ、悪趣味だよー!

(町山智浩)そう。「私は生きているものを食べているんだ!」って感動をしながら食べるという(笑)。まあ、そういうジョークですけども。

(山里亮太)ああ、なるほど。そういう店があるわけじゃないんだ。

(町山智浩)ジョークですけども。まあ、そういうお店が出てくるんですけどね。それで、この2人、マーカスとサシャはうまく行かないんですよ。

(山里亮太)まあ、価値観が全然違っちゃっているもんね。

(町山智浩)で、しかもサシャの方には彼氏ができちゃうんですよ。その彼氏がなんと、キアヌ・リーブスなんですよ。

(山里亮太)フハハハハハハッ! ええっ、急に? ここで急にキアヌ・リーブス?

(町山智浩)ここで急にキアヌ・リーブス、突然出てくるんですよ。この映画。

(山里亮太)本人が本人役で?

(町山智浩)本人がキアヌ・リーブスとして出てくるんですよ(笑)。

彼氏がキアヌ・リーブス

(赤江珠緒)ええーっ? 前、なんでもやるキアヌさんっていうのは町山さんに聞きましたけども。

(町山智浩)なんでもやるんで。それでそのサシャと唾液ダラダラのベロチューをするんですよ。すごいな!っていうね。で、それを見て「ああっ!」って思っている、サシャのことを本当は好きなマーカスくんにね、「君は何をやっているんだい?」って聞くんですよ。「売れないバンドをやっています」って言うとね、「ああ、売れないバンドか。尊敬するなー。決して報われないのにがんばるなんて、よほど情熱があるんだね!」って言うんですよ。キアヌが。あの仏のキアヌが全く悪気なさそうに(笑)。

(山里亮太)フフフ(笑)。

(町山智浩)本当にね、とんでもないコメディーでね。で、いま後ろでかかっている曲は、それでマーカスくんが頭にきて歌う『俺はキアヌにパンチしたぜ(I Punched Keanu Reeves)』っていう歌なんですけども。

(赤江珠緒)ああっ、フフフ(笑)。

(町山智浩)で、まあキアヌのシーンはとんでもないんですけど。ただ、この映画はこの間の『ロング・ショット』もそうだったんですけども、女性の方が社会的な地位が高いカップルの映画が続けてアメリカで公開されているんですよ。

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(赤江珠緒)最近、そうですね。

(町山智浩)だからこう、男女の役割がすごく変わりつつある社会を反映しているんだろうなと思うんですけどね。で、それで男はそれに張り合うのか?っていうと、そうじゃなくて女性を支えるということも男の価値なんだっていうことを見せていくというね。あえてこの時にすすめているわけじゃないですが(笑)。

(山里亮太)フフフ(笑)。

(町山智浩)まあ、Netflixですぐに見れますんで。この『いつかはマイ・ベイビー』、面白いですよ。

『いつかはマイ・ベイビー』予告編

(山里亮太)ああ、見よう! あと、同時にこのピンのネタも。スタンダップコメディの方も。

(町山智浩)ピンのネタ、すごいですから! 日本語でたぶんほとんど訳しきれてないと思いますよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)あまりにもひどいんで。アリ・ウォンさん(笑)。ということで……。

(赤江珠緒)はい。今日は『いつかはマイ・ベイビー』、Netflixで公開中でございます。『アリ・ウォンの人妻って大変!』とかね、そういうのも見れるということです。

(町山智浩)これね、お子さんを産んだことのある女性だったらものすごくリアルな話ばっかりしていますよ。めちゃくちゃ面白いですから。

(赤江珠緒)見てみよう。

(町山智浩)ということで、山ちゃんどうもおめでとうございます!

(山里亮太)ありがとうございます。町山さん! 『ロング・ショット』、見ておきます!

(赤江珠緒)よかったよかった。町山さん、ありがとうございました!

(町山智浩)よかったね。どもでした!

<書き起こしおわり>

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