宇多丸さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でRHYMESTERの新曲『予定は未定で。』を紹介していました。
(宇多丸)ええと、あのね……新曲が……。
(山本匠晃)……いよーっ!(拍手)。
(宇多丸)フフフ(笑)。
(山本匠晃)今週水曜に聞いていて「しめた!」って思いましたね。
(宇多丸)そうなんだよね。いま、こういう告知のあれって難しくて。昔は、それこそ1週間……もっとか。1ヶ月前とかに「○○をやりますよ」って。盛り上げて、盛り上げて、ドーン! だったんだけど、いまはもうね、ポンポンポーン!ってやった方がいいみたいなのがあって。要するに告知から手に入ったり聞けたりする段階までの時間差がない方がいいっていう時代になりつつありまして。なので、2日前っていうのはいくらなんでも微妙なんじゃないか?って思いまして。前日がいいんじゃないかな?っていうことで昨日、発表させていただきまして。RHYMESTERの新曲を本日、オンエアーさせていただきます。
『人間交差点2019』ではもうすでにライブでやっておりますね。それをちゃんと仕上げてまいりました。
【人間交差点 2019】RED STAGEそして人間交差点のトリを務めたのは我らが #RHYMESTER‼️
大勢のゲストに囲まれた最高のステージ‼️そして沢山の応援と声援ありがとうございました?#nkfes pic.twitter.com/L2jWKGpwc7
— RHYMESTER OFFICIAL (@_RHYMESTER_) 2019年5月12日
そこでもやったように、RHYMESTERはこれまでいろいろな曲をやってまいりました。ゴリゴリのヒップホップもありますし、割と今風のサウンド……トラップとまではいかないけども、今風のサウンドでやることもいろいろあったんですけども。ちょっといろいろ、いままでやっていないラインで、いまの気分にも一致してなおかつ僕らがやる意味があるラインみたいなところで。なおかつ、夏も近づいてきてフェスとかも出てくるし。そういうところで自分たちがやっていて気持ちがいい曲っていうのをやりたいよねっていうことで、いろいろと考えた結果、ここはRHYMESTERとしてはじめてストレートにレゲエチューンで行くのはどうかな?っていうアイデアが出まして。
(山本匠晃)はじめて?
(宇多丸)はじめてです。レゲエアーティストとの共演みたいなのも多いですし、レゲエ要素みたいなのも特に初期作とかは強かった方だとは思うんですけども。ズバリ、レゲエトラック、レゲエチューンをやるっていうのははじめてなんですね。で、そこでやはりレゲエといえば、名実ともに世界が誇るという言葉は大げさではありません。横浜のレゲエクルー、マイティークラウンのMasta Simonさんにプロデュースしていただいて。なおかつ、これがすごくて。ミックスとマスターをMiki Tsutsumiさんという方。この方、あれですよ。第61回グラミー賞最優秀R&B賞のミックスとかをやられているような方ですよ。そのような方にお願いして……という感じでやりました。
で、ですね、どういう曲かはこれから聞いていただければわかるんですけども。まあ6月26日(水)に正式に配信リリースいたします。あと、7月末には7インチアナログレコードもリリース予定です。やっぱりレゲエの曲はね、7インチなんてあったらいいでしょうね。で、Masta Simonいわく、いまの世界的なレゲエサウンド。いわゆるダンスホールレゲエじゃなくて、もうちょっと攻撃的なヒップホップにも近いような、いわゆるレゲエ。まあ、ラバーズロックというような甘いようなチューン。で、そのいまのレゲエの流れで、こういうような音色のこういうような流れがトレンドで……っていうのも踏まえつつ、でもそこにやっぱりド・RHYMESTER節っていうか。
僕、RHYMESTER宇多丸とMummy-Dさんの声が乗った時にはじめて出るRHYMESTERマジックみたいなものを込めてみた曲です。歌詞の内容ははっきり言うと「余白が大事」という、そういう歌です。生活とかにおいて、僕らって非常に多忙じゃないですか。俺もめちゃめちゃ忙しい。クッソ忙しい。本当に余白がない。仕事を詰め込もうと思えばずーっと。それで寝ている間も仕事のことを考えちゃいがちだけど、たとえば家に帰ってふとやるゲームの時間とか。仕事にもなんにもプラスにならない。
酒を飲んじゃうとかでもいいし。そういう無駄に見える余白の時間って、そこに人生の本質ってあるんじゃないの?って。あと、もっと言えば最近の都市開発的なことでもいいですよ。街がものすごくさ、無駄な部分がなくなって。きれいにきれいに都市開発されて。まあ、みんなが間違いないと思うようなお店できれいな街並みがあるけど、本当に面白いことが生まれるっていうのは本当はそういう無計画な部分だったり無駄の部分だったり余白だったり。そういうところにこそ、人生の価値だったりなんか面白いものが生まれる余地っていうのは本当はあるよね。だからいま、俺達と一緒に無駄な時間を過ごしましょうという、そういうような曲を大腸憩室炎になるまで働きながら作ったというね。そんな感じでございます。
(山本匠晃)フフフ(笑)。お疲れ様でした。
(宇多丸)タイトルが、『人間交差点』の時に「『予定は未定(仮)』で『(仮)』までがタイトルだ」って言いましたけども、我々はちょっと日和りまして。「(仮)」はいろんなところで混乱を招く。ラジオオンエアーとかの際に混乱を招くから、変えまして。これは歌のサビの流れとかもこっちの方が自然だっていうことで、こっちにしました。行きますね。RHYMESTERで『予定は未定で。』
RHYMESTER『予定は未定で。』
(宇多丸)はい。マイティークラウン、Masta Simonプロデュース、RHYMESTER新曲『予定は未定で。』をお送りしました。
(山本匠晃)いいですねー!
(宇多丸)よいしょー! すいませんね、本当にね。そうそう。今日、あいにくこんな天気ですけども。夏に向けてすごいいい天気の中で聞くのもいいでしょうけど。でもね、やっぱりたとえばすげえ雨が降っていて「今日は出かけるの、やめよう」っていうそういう1日にも合うかなって。『予定は未定で。』ということです。
(山本匠晃)いまの私にも刺さったなー!
(宇多丸)そうだよね! 山本さんなんか、そうだよね。
(山本匠晃)運命や! しかも金曜に流れて。
(宇多丸)そうだね。いま、目がヤバい感じになっている山本さんにもおすすめしたいということで(笑)。
(山本匠晃)充血しております(笑)。
(宇多丸)ということでみなさん、ぜひぜひ。こちら、6月26日(水)に正式配信となりますので。それまで、すいませんね。ちょいちょいこの番組でもプッシュさせてください。すいやせん……。
(山本匠晃)お願いします!
(宇多丸)で、6月19日(水)にブラックニッカとコラボした公開生放送がありますけども。そこにRHYMESTERも出演してなんかやるかもって。いいんじゃないですか、ねえ。ブラックニッカを飲みながら未定感を味わうなんてのも。これ、いいんじゃないですか。なんで山本さん、そんな厳しい顔をしているんですか? 「俺は呼ばれていない!」みたいな。
(山本匠晃)なぜ、公開生が水曜日なんだ?
(宇多丸)フフフ、それはやはりお酒と言えば日比ちゃんだから。そして、なんかお酒と言えば宇垣さんとも言われて、宇垣さんも来る。なのに……(笑)。
(山本匠晃)……
(宇多丸)フハハハハハハッ!
(山本匠晃)いまの余白。なのに……。
(宇多丸)余白が大事。余白が大事です(笑)。
宇多丸の檄文
リリースの1日前の放送で宇多丸さんが『予定は未定で。』のコンセプトをしたため、メンバーに共有した檄文を紹介していました。
(宇多丸)ということで、すいません、ちょっと……みなさん、すいません! 今週、ごめんなさい。どうしても……!
(宇垣美里)いいから、早く。フフフ(笑)。
(宇多丸)今週ね、6月25日。明日ですよ、明日。僕らね、音楽グループをやっていて、新曲が出るんで。
(宇垣美里)やったー!
(宇多丸)ちょっとこれ、時間を……ちょっとだけ……(笑)。
(宇垣美里)動画で流したいな(笑)。
(宇多丸)で、昨日もかけたんですけども。『予定は未定で。』っていう曲をかけさせていただきたいんですが。昨日、ちょろっと話したんですけども、曲を作る時に今回はレゲエで行こうと。で、マイティ・クラウンっていう世界で活躍するみなさんにトラックを作ってもらって。で、トラックをもらって、テーマ決めをして。で、そのテーマ決めも結構すぐ決まって『予定は未定で。』っていうタイトルとかも決まって。それで僕が他のメンバー、特にMummy-Dに歌詞を書くに当たって、この曲はこういうコンセプトだからっていう、その叩きコンセプトみたいなのを檄文にしてみんなにメールを回したんですよ。
(宇垣美里)へー! はい。
(宇多丸)ちょっとそれを読み上げて曲に行きますので。ちょっと長いですけど、行きますよ。「一見無駄な、無為な時間や行為は実は大事。なんならそこにこそ本質がある場合も。たとえばクソ忙しい時に限ってついゲームをやってしまったり、飲んでしまったり。というのは実は関係ないことに頭を向けることで真に脳を休ませる=禅的なリラックス効果をもたらす必要な行為であり時間なのだ!
また都市や街の面白さやクリエイティビティも一見無駄だったり怪しげに見える隙間空間にこそ生じるもの。やたらと表面を計画的にツルンとさせればいいものではない。特に東京は闇市から自然発生的に積み重なってしまったごちゃごちゃとした街だからこそ、生命力があったのではないか? さらに我々の人生そのものもきっちりした計画、設計通りにいかないからこそ、たとえば思ってもみなかったところにたどり着けたり、人と出会えたり、真に豊かなその人固有の経験となるのではないか?
子供などその不確定要素の最たるもの。そんなこんなでいま、この瞬間のグレイゾーンさ、モラトリアムさにこそ本当の豊かさがあるのだから。予定は未定状態を存分に楽しもうじゃないか。まさに、こんな曲を聞きながら……」ということで、RHYMESTERで『予定は未定で。』。お願い、ちょっと聞いて! ちょっと聞いて!
(宇垣美里)フフフ(笑)。
「答えは探しゃいいんだ 道々」の意味
リリース当日の放送で宇多丸さんが自身のリリック「答えは探しゃいいんだ 道々」の意味について話していました。
(宇多丸)で、ですね、日比さん! ちょっとごめん! ちょっとごめん、お願い!
(日比麻音子)どした? なになに? どした?
(宇多丸)曲をかけさせて……というのは俺ね、RHYMESTERの新曲。ライブでもやりました。あの新曲、今日が配信開始で。日付変わって0時から配信開始していて、各所でご評判もいただいているんですけども。お願い、ちょっとかけさせて!
(日比麻音子)ええー、どうしようかな? どうしようかな?
(宇多丸)フフフ、ちょっとこれ、メッセージをご紹介させてください。ラジオネーム「茗荷谷」さん。『予定は未定で。』、26日0時になってから速攻でダウンロードして出勤中にずっとリピートしていました。30年のベテラングループの最新作にして最高傑作と言わねばならぬのが現状。違いや迷いなどを重く固くネガティブなものではなくて、違っているから好きだし生まれるものもあるじゃん。いいんじゃない?
と心地よいリズムに乗せて謳われていて、私はRHYMESTERのこういう感覚が大好きです。宇多丸さんのパートの『答えは探しゃいいんだ 道々』は映画『スリー・ビルボード』で宇多丸さんが評された時の印象的なフレーズが……」という。これ、劇中で最後のセリフですよね。「まあ、道々考えればいいわよ」みたいなことを言うんです。「……歌詞になっていてよかったです」という。
(日比麻音子)ああーっ!
(宇多丸)そうなんです。これ、『スリー・ビルボード』オマージュなんです。よくぞ気づいていただきました。「……しばらくリピートで聞きまくります」ということで。いやー、ありがとうございます。じゃあ、かけさせて! ごめん!
【映画評書き起こし】宇多丸、『スリー・ビルボード』を語る!(2018.2.17放送) https://t.co/ebBC1QXofw
メッセージはものすごくはっきりとしています。「道々考えればいいわよ」っていう……すごくシンプルな言葉ですよ。— みやーんZZ (@miyearnzz) 2019年6月26日
(日比麻音子)ええー、どうしようかな?(笑)。
(宇多丸)それでは、すでに配信開始しております。RHYMESTERで『予定は未定で。』。
『予定は未定で。』とラップのキー
リリースの1日後の放送で宇多丸さんが『予定は未定で。』の制作時、試行錯誤しながらラップのサビやキーを決めていった話を紹介していました。
(宇多丸)さあ、そんな感じで……宇内さん、ちょっとこれ、ごめん! お願いします! すいません!
(宇内梨沙)いえいえ。
(宇多丸)どうしてもね、これひとつお願いしたいことがありまして。ごめん、お願いします! ええと、RHYMESTERの新曲を……私ども、音楽グループRHYMESTERでございまして。阿木燿子さんにも聞いていただいたRHYMESTERなんですけども昨日、新曲の配信が始まりまして。ホヤホヤでございまして。すいません! さっき『ACTION』でもかけていただいたようですけども、すいません! いいっすか? ちょっとだけ……。
(宇内梨沙)うーん……いいですよ! いいですよ!(笑)。
(宇多丸)昨日、ちょっと言ったんですけど、曲のメイキング話とかをしようかなって。火曜日かなんかに「まずレゲエで行きましょう」って決めて。じゃあレゲエだったら世界のマイティ・クラウンにお願いしていまのストレートなレゲエのトレンドを踏まえたトラックみたいなのを作ってもらって……それで『予定は未定で。』っていうタイトル決め、テーマ決めみたいなのをみんなで会議して決めて。それで、僕がどういうコンセプトの曲なのかっていう歌詞の根本にある精神みたいなもの、「こういう風な方向で行きましょう」っていうのをメールで回して。
(宇内梨沙)はい。
(宇多丸)で、それをベースにして、まずはこれは俺らの最近のレコーディングでいちばん多いんですけども。まずMummy-Dさんがサビを6パターンとか7パターンとか、すごいパターン作ってくるんですよ。
(宇内梨沙)おおー、全然違うんですか?
(宇多丸)全然違う時もあるけど、今回はどっちかって言うと「遊びだらけでいいんじゃない」とか「ゆとりだらけでいいんじゃない」とかその「遊び」とか「ゆとり」っていう、そういうワードのバリエーションがめちゃめちゃいっぱいあるやつを作ってきて。で、その中でどれがいいか?っていうのを考えていくんですね。
まだその時はラップは入っていないから、まあ仮で置いておいてラップの内容に合わせてそこも調整していこうみたいな感じでやるわけです。で、Mummy-Dさんが1番を入れて、僕が2番を入れて。僕はもうトラックをもらった時から今回はちょっとメロディックな歌っぽいアプローチに……もうメロディーがわいちゃって。それはKRSワンというベテランラッパー、非常にレゲエテイストな歌い方を昔、していたんですけども。
KRSワンのある曲にちなんだフロウにしようっていう感じで。「絶対に合う!」っていう感じになったんで、それで書いて録るわけです。
BDP – The Bridge Is Over https://t.co/bKpo1W1emj @YouTubeさんから
宇多丸さん、『予定は未定で。』のフロウをKRSワンっぽくしたって言っていたけど、この曲の「Di-di di-da, di-di-di, dida di-day, aiy!」の部分が「Busyな日々も気が紛れる 空間時間その隙間にStay♪」っていうところに近いかな— みやーんZZ (@miyearnzz) 2019年6月28日
ただね、これ歌詞って面白いもんで、家で書いてきて「これでばっちりだ!」って思ってもいざスタジオに入って声を出して歌うといろんな思いもよらぬ不都合みたいなのが出てくるところがある。最大のポイントはやっぱりキーなんですよ。
(宇内梨沙)へー!
(宇多丸)ラップにもキーがある。どころか、これは我々、長年のキャリアでわかってきたことはラッパーのいちばんおいしい声が出るキーって実は歌以上に狭いんですよ。その音を、あんまり声を上下させられない分というのもあって、その人のいちばんおいしい声が出るキーって本当に鍵盤で2、3個とかそんぐらい狭いところなんです。それよりも上だったり下だったりすると、その人にとってはちょっとベストとは言い難い音域に入ってくるみたいなところがあって。
で、今回も普通の我々のラインから言うと、特に僕にとってはちょっと低めなんですね。トラックが、キーが低くなっている。で、一応キーを高くしてもう1回、録り直してみるかみたいなことを言って、高いのと低いので両方、バージョンを録ったんです。でも、やっぱり聞き比べたらこの曲のレイドバック感には普段の僕よりは低いけどもこっちの方がいい。こっちの方で完成度を高めていくっていう方向でがんばった方がいいっていうことでやっていたりとか。
(宇内梨沙)へー!
(宇多丸)ああ、すいません。曲! ちょっとごめんね!
(宇内梨沙)そういうところも含めて。宇多丸さんの2番の部分も聞いてみたいと思います。
(宇多丸)RHYMESTERで『予定は未定で。』。
<書き起こしおわり>