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大井真理子 BBCニュース・ゲスト出演者男女比50:50プロジェクトを語る

大井真理子 BBCニュース・ゲスト出演者男女比50:50プロジェクトを語る 水曜日のニュース・ロバートソン
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BBCのレポーター・キャスターの大井真理子さんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』に出演。2018年からBBCニュースが取り組んできたゲスト出演者の男女比を50:50にするプロジェクトの結果について話していました。

(プチ鹿島)さあ、じゃあ2番目。これも興味深い話。BBC、男女比50:50を目指しますという。

(大井真理子)はい。やりました。去年のちょうど4月……もうちょっと前かな? ワールドニュースの『Outside Source』っていう番組があるんですけど。ある日、そのキャスターが「今日のゲスト、全員男性じゃない?」っていう話になって。「じゃあ、ちょっと半々まではいかなくても、がんばってみよう」っていう話のなったのがきっかけなんですけども。その後、BBCって本当に英語だけじゃなくていろいろな言語でやっているんですけども、みんなが参加をして、1年間でフィフティ・フィフティにしますっていう発表をしたのが去年の4月。

(プチ鹿島)はー! ああ、そうですか。

(大井真理子)で、今年の4月30日にワールドニュースだったらほぼ100%。全体でも74%かな? 昔は20何%だったんですけども。フィフティ・フィフティになった。

(モーリー)ああ、74%でフィフティ・フィフティを達成したのね?

(大井真理子)達成しました。

(モーリー)すごいね! この番組、どうなっているんでしたっけ?

(白木愛奈)ちなみにですが、水ロバの出演割合を調べてみたところ男性27人、女性23人で54:46でした。意外に近くないですか?

(プチ鹿島)この番組はじゃあまだ、ちょっと……?

(モーリー)東大よりはマシ。東大は8:2で男性なんですよ。だから東大よりはいい。ハーバードは51:49。だから目指せハーバードっていうか、フィフティ・フィフティを目指したいですね。

(プチ鹿島)日本でフィフティ・フィフティは紅白歌合戦ぐらいですからね。

(大井真理子)やっぱり日本の番組とかを見ていて、政党の方たちを集めて討論する番組とかでもみなさん、男性じゃないですか。でも本当にBBCの場合にはこれを社として掲げたので政党にも企業さんにも……特に私が普段担当している番組『Asia Business Report』。アジア経済界っていうとアナリストの数が圧倒的に男性の方が多い。

社長さんも男性の方が多いので、こちらから「女性がいらっしゃらないなら他社にうかがいます」みたいな形で言うと、それまでは「いや、男性の上司を差し置いて私は出られません」っておっしゃっていた方が、そうやって上司に「BBCさん、他社に行ってしまうみたいです」って言うと、「だったらお前、出てくれば?」っていうお話になって。社会的にも変えていこうっていうのを……。

(モーリー)つまり、社会の構造や習慣の延長で女性の役員や上に行けば行くほど男性率が高い。なのに、じゃあ役職としては下なんだけども、とにかく女性をやるというある種のアファーマティブ・アクションですか?

(大井真理子)そう。「逆差別」という意見はすごくあって。社内でもすごく議論をして。でも、やはり「ゲストの方たちのクオリティーは下げない」っていうモットーで続けてきたんですけども。でも、たとえば女性の方で初めてご出演になって、うちの番組なんかだと2、3分とかを生放送で英語でバッと話してくださいとかってなると、特に日本とか中国とか韓国とか、英語が母国語じゃない方たちにとってはたどたどしてしまう方たちもいらしたんですけども。

だからって「じゃあ、やっぱり上手だった男性にしよう」ってなるか?っていうと、「その女性の方たちもうすでに知識はお持ちなのだから、あとはメディアトレーニングが足りないだけだよね」っていう話で。「不躾なんですけど……」という形で。「たとえばこのお答えをもうちょっと短くしていただければ……」とか、「ずっとバーッとしゃべられるのは生放送では使いづらいので……」とか、フィードバックして。もちろん男性のゲストがいちばんっていう場合には男性を使うんですけども。できるだけ、女性の方がいらっしゃらないかどうか、会社とか政党に聞いてみようっていうことで少しずつ変わっていって。

(プチ鹿島)ほう!

(大井真理子)それがいま、オーストラリアとか他の国とかでも同じことを心がけているという。

(プチ鹿島)さっき、内部でもそういう反応があったっておっしゃっていましたけども。外部、視聴者からの反応はどうだったんですか?

(大井真理子)ありましたね。やはり「なんで男性は使わないんですか?」みたいな意見ももちろんいっぱいあったんですけども。ただ、男性を使わないわけじゃないじゃないですか。フィフティ・フィフティなので。「女性の比を増やす」っていうことなので。で、私の場合はそれは会社としてではないんですけども、たとえば日本のことについてお話いただく場合、いままでならネイティブの方をブッキングしていた方が楽というか、ペラペラとお話いただくことができるんですけども。

でも、日本のことを話していただくんだったら日本人の専門家がいいということでかなりいろんなところに、Twitterとかでお願いして。「推薦してください」っていう風に問いかけたりとか。そうしたら、だんだんと女性の方から「そういう問いかけを見たので、もしよかったら私を使ってください」って言ってくださる方も少しだけど出てきたので。

(モーリー)その性差、ジェンダーで男女比っていうのがあるんですけど、実は実態を見ると、イギリスの場合は「男性で上流階級で白人」。これが揃っていたりするんですよね。だから「男性」っていうのは実は1パラメーターでしかなくて。本丸はそっちですよね?

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性差以外の人種・階級格差

(大井真理子)そう。うちは本当に「白人だけじゃなくしよう」っていうのはかなり前からスタートしていて。イギリス国籍を持っている人間だったらスリランカ系、インド系、アフリカ系の方たちっていうのをキャスターでも使っているし、ゲストでもお呼びしていたんですね。あと、まあ私なんかもそうですけど、現地の人間もレポーターとして使おうとか。

それがまた最近になってきて、でもいろんな人種を集めたのはいいけど、結局はみんなイギリスで言うオックスフォードとケンブリッジ。「オックスブリッジって言われる同じ階級の人間じゃないか?」っていう批判が社内で出てきて。そうしたらそうじゃない階級の方たちも社内のオンエアーに出ない人間……プロデューサー、マネージャーレベルでもいままでなら本当にオックスブリッジのさっきおっしゃっていた白人の男性がほとんどだったんですけども。

(モーリー)ちなみにUKIP(イギリス独立党)とかブレグジットを見破れなかったのもその階層の人たちなんだよね(笑)。

(プチ鹿島)そうか。じゃあ本丸は男女もそうだけど、肌の色とか階級。そこっていうこともあるんですね。

(大井真理子)そう。たぶん男女の方が自然にそうなるんじゃないか?ってみんな思っていたんだと思うんですよね。

(モーリー)でも結局、なかなかどうして、固まっちゃったんだよね。

(大井真理子)そう。なので逆に今回、それを試してみてまあ苦しかったですね。特にアジアの番組だとやはり「いやー、男性が……」っておっしゃる方が多かったんですけども。まあ会社としてそれをモットーとして掲げるっていうのはだんだんやっていてやり甲斐が出てきたというか。反響とかもどんどんと変わってきたので。

(モーリー)見ている方はなんとなく、素人考えで言うと全地球的なオーディエンスがBBCを見ているわけで。そうすると、納得する人も結構多いんじゃないかと思うんですけども。

(大井真理子)そうですね。逆にそれが当たり前というか、たぶんいままでって2、30年前のBBCだとさっきおっしゃっていた白人男性が上から目線じゃないけども。「俺がこの世界のことを伝えてやろう」って。

(モーリー)大英帝国の威光で。

(大井真理子)というのが多かったのが、いまは特にSNSでメディアのニュースを伝える、読む時代になったので、逆にもっとカジュアルにしようっていうので。我々のレポートの仕方もどんどん変わってきているんですね。なので、「ちょっとレストランにいる時に隣にいる人にニュースを説明する感じで話せ」っていう。私なんかもいま、この業界13年とかなんですけども、私でも「ええっ、こういうしゃべり方をここでしていいの?」っていうレポートの仕方が最近では増えてきたので。特にもうちょっと年上の人たちは……。

(モーリー)年季の入った人たちは「それでもいいのか?」っていう。「格式が低くなる!」って庶民化するのに反対する人もいると思うんですよ。イギリスで作られた様々なドラマをNetflixやHulu、Amazonなんかで私は結構取り憑かれたように見ているんですけども。最近、やっぱりキャストの超多様性が目立ちますね。かつてのハリウッド的な白人男性とヒロインのブロンドの人っていう、あれはもう全然ないんですよ。で、逆にそういうハードルを撤廃したせいで、演技力だけで選んでいるフシがあり、結構ドラマの内容がすごく強烈になったような印象。

で、その中のひとつの代表格が最近、最終章を迎えた『ゲーム・オブ・スローンズ』で。あ、ごめんなさい。一言いいたいのね。だけど『ゲーム・オブ・スローンズ』は本当に白人中心ではなく、一応イギリスの中世のようなフィクションなんですけども。白人以外、そして女性の視点も相当に描いているので画期的だったと思います。ただ、『ゲーム・オブ・スローンズ』最終章が終わると、多くのファンから批判が寄せられた。

誰かがわざわざ女性と男性の俳優のセリフの文字数を検出した。女性は20%台で少ない。「なんで女性がこんなに移っていて、女性もストーリーの一部なのにセリフの数が少ないんだ? ディスクリミネーションじゃないか?」という声が上がる時代なんですよ。「セリフも同じフィフティ・フィフティにしろ!」っていう。そこまで徹底するとね、ちょっとあっけに取られたのを通り越して、少し明るい気持ちになりました。

(大井真理子)うん。難しいですよね。実際にドラマとか映画を見ていても、「ああ、ここにトークン・エイジアン! これはトークン・ブラックパーソン!」みたいな感じで現れているなっていうのが……。

(モーリー)「トークン」っていうのはなんて言うか、申し訳で出しているだけで本当は実験を持たせない、いわゆる「お飾りのマイノリティー」っていう意味だったり。「お飾りの女性」っていう意味ですね。

(大井真理子)そうですね(笑)。

(プチ鹿島)でも多様性をどんどんと実現しようっていうことですよね?

(大井真理子)そうですね。社内で議論をしながらそれを押し進めていこうっていうのを、本当に葛藤も多い中でまだ4月にやっと達成できたということで。でも、これを続けていかなければ意味がないので。1年後にまた下がってしまっては意味がないので。

(プチ鹿島)前回、出ていただいた時にはそれこそ日本には「女子アナ」っていう呼び方があるという、そこからそんなに日本では進んでいないじゃないですか。劇的に違いますね。

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いまだに「女子アナ」が存在する日本

(モーリー)急にフィフティ・フィフティですか。逆に日本で女子アナと呼ばれる仕事に就いている人たちは、いまの話を聞いてどう思えばいいんですか?

(プチ鹿島)でもすごく明るくね、さっき夢のある顔をしていたよね。やっぱり、すごいよね?

(白木愛奈)すごい! もうすごいです!

(モーリー)日本に順応しないでね! 変えていってください。

(白木愛奈)はい(笑)。

(プチ鹿島)夢があるよね。

(大井真理子)最近だと、髪の毛を染めずに白髪のままで出てくる方とかもすごく増えてきて。齢を……それこそ日本のさっきおっしゃっていた女子アナとかだと、年齢があるんだと思うんですけども。うちは逆に「それが差別だ!」って言ってまた社内で戦いが起こり、いま見ると結構年配の方が……。

(モーリー)たとえばですよ、日本で切り込むとしたらちょっと難しい牙城があって。芸能スキャンダル。たとえば夫婦でなにか……この前だと田口さんという人が大麻で捕まった時、元女優をやっていたアイドル出身の内縁の妻が……「内縁の妻が堕落させたんじゃないか?」みたいな論調があるじゃないですか。それってたぶんBBC目線で見るとセクシズムなんですよ。なんで2人で大麻をやっていたのに、「奥さんがそそのかして」とか、それはどういう歴史的ステレオタイプなの? そういうタブロイドにどうしても芸能ニュースやバラエティーは押して行くんですよね。

(大井真理子)たぶん逆じゃないですかね? 逆のセクシズムで、たぶん「男性が女性にやらせたんじゃないか?」っていう論調の方が先に出てきそうな気がしますね。

(モーリー)「か弱い女性を男性がたぶらかした」みたいな?

(大井真理子)という方が、たぶん報道ではもちろんしないですけども。一般の視聴者からの意見としては多いんじゃないかな?

(モーリー)なるほど。だからね、そういう芸能っていうのは情緒の領域もありますので。かならずしも報道ではなく憶測を述べてもいいマージンが広いわけですよ。そこに、逆に社会に定着したステレオタイプが発露されちゃうのね。それが視聴率を取るからっていう理由で。

(プチ鹿島)それで「ワイドショーだから……」っていうのが逆に大きなひとつのアリバイになっている。

(モーリー)だから日本ではそういう風に牙城があるわけ。仮に報道、ハードニュースではフィフティ・フィフティや女子アナっていう肩書をやめましたって言ったとしても、ワイドショーは相変わらずディグインしているんですよ。これは、たとえばイギリスにはそういう問題はないんですか? BBCはやっているけど、タブロイドは相変わらずひどいなとか、そういうのはないんですか?

(大井真理子)タブロイドは、まだあると思います。結構うちがそうやってやっていた時、1回そのニュースの番組を見ていたら、本当に全員が女性で1人だけ男性が出てきたみたいで。それこそさっき言っていた「お飾り男性記者」みたいな感じでフロントページみたいになっちゃったりとか。

(プチ鹿島)ああ、向こうの日刊ゲンダイ、夕刊フジが言うわけですね。

(大井真理子)「逆差別だろ?」みたいな。

(モーリー)逆にBBCを揶揄するのね。

(大井真理子)でもやっぱり私、昔それこそ日本だとアベノミクス、ウーマノミクスで女性活躍推進っていうのでかなり番組を作ったんですね。で、この前に久しぶりにその時の上司と会って「ところで日本のウーマノミクスってどうなったの?」って言われて。「あんまり変わってなくない?」って思って。やっぱり、数字を掲げるだけじゃなくて、本当にいちばん上からのお達しで「この日に世界に結果を発表するから、達成できなかったら自分の番組の恥だぞ!」って……。

(モーリー)男性中心だったBBCで上にいた長老の男性が「変えよう」っていった瞬間はあったはずなんですよ。

(プチ鹿島)この機運って誰が……下からの機運だったのか、誰か上にそういう先見の明を持った人がいたのか。どっちなんですか?

(大井真理子)今回のフィフティ・フィフティに関しては『Outside Source』の男性キャスターとそこの女性プロデューサーがふと気づいて「やろう!」ってなって。でもそれを、ちょうど男女の賃金格差の話があって。それはいまだに社内でいろいろと進めているところなんですけども。その問題があった時なので、「じゃあ、これは会社として挙げて、この際に社内での賃金格差もなくす。ゲストの人たちも50:50、フィフティ・フィフティにしよう!」っていう風になったのがきっかけですね。

(プチ鹿島)へー! 日本で考えられます、これ?

(モーリー)やろうとするとね、強いプッシュバック、リアクションというか、あると思うんですよ。

(大井真理子)うちもありましたよ。

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日本女性たちの考えうるリアクション

(モーリー)日本の女性が「私たち、そんなこと望んでいないから」っていう人も相当にあるわけ。「私、フェミニストじゃないから」っていうのがひとつの防衛になっていると思うのね。「#MeToo」の時がそうだったのね。「#MeToo」に日本の女性たちの食いつきが欧米社会に比べて異常に遅かったのを覚えています。

(大井真理子)うんうん。たぶん「フェミニスト」っていう単語が誤解されているのかなって。

(モーリー)まあ、悪魔化している部分はありますね。

(大井真理子)ねえ。私、5人の女性の方の番組を作った時にみなさんに「あなたはフェミニストですか?」って聞いたんですね。そしたら2人ぐらいは「フェミニストってなに?」っていう方もいらっしゃったんですけども。「この方はきっと『私は男女平等で……』っておっしゃるかな?」って思っていた方ですら、「いや、私はそういうのじゃないから」っておっしゃったので。「あれ? フェミニストってなんかここでは違う解釈があるんだ?」って思って。

(モーリー)まあ、たぶん日本の歴史、近代史の中で定着した誤解があるんだけども。いま、ここでフィフティ・フィフティをやろうとした時、日本の女性……特に若い女性はたぶん「よし!」って思うと思うんですよ。ところがフィフティ・フィフティじゃない時代にある意味過剰に順応して、男性社会の権力の中に自分の居場所を求めた人は、逆に居づらくなっちゃうんじゃないかな? というようなねじれがあると思うんですね。まあ、大きな課題なんですけども、本当にフィフティ・フィフティは個人的には素晴らしいことだと思います。「私の仕事を取ってもいいから来い!」なんちゃってね(笑)。

(大井真理子)フフフ(笑)。

(プチ鹿島)ありがとうございました(笑)。

(白木愛奈)大井さん、ありがとうございました!

<書き起こしおわり>

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