安住紳一郎「いい写真飽和時代」を語る

安住紳一郎「いい写真飽和時代」を語る 安住紳一郎の日曜天国

安住紳一郎さんがTBSラジオ『日曜天国』の中でSNS、特にInstagramによって全体的な写真のレベルが上がっている件についてトーク。安住さんが現在の「いい写真飽和時代」の次を見据えて数年間撮りためている写真について話していました。

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(安住紳一郎)この1週間は本当に天気が乱高下するような1週間で。特に水曜日ですか。奥多摩、埼玉、群馬など内陸部ではびっくりするほどの雪が降りましたね。満開の桜に雪が積もるという珍しい光景でしたが。「あれ? これは本当にいまの映像なのかな?」っていう、それぐらい疑うかのような雪が降ってましたけれども。

(中澤有美子)ええ。

(安住紳一郎)東京でも春の嵐と言うか冷たい雨と言うか。暴風雨に近いような雨が降っていましたけれども。さらに木曜、金曜と気温が低くなりまして、昨日は少し穏やかに天気が天気戻りましたけれども。

(中澤有美子)本当に風が強い日があったり。毎日目まぐるしかったですね。

(安住紳一郎)そうですね。特に東京都内では水曜日、小学校の入学式あったんですよね。私の同僚に1人、結構歳いってから子供ができた同僚がいまして。お嬢さんが小学校入学式で楽しみにしていたみたいなんですけども。水曜日、嵐の日ですもんね。なので小学校の校門でお嬢さんと写真撮るの楽しみにしてたんですけども、お嬢さんがもう撮る気など全くなくて。

(中澤有美子)ええ。嫌になっちゃってね。

(安住紳一郎)で、校門で入学式の墨書きの看板の横で親子3人とか、ご親戚とか。あるいは入学生だけで写真撮ったりするのがものすごいいい記念ですもんね。むしろ入学式に行く第一の目的はあの写真だというぐらいなもんですもんね。

(中澤有美子)本当にそうですよ。

(安住紳一郎)なのでその写真が撮れなくてショックだったっていう話をして。「そうだね」っていう話をしてましたけども。

(中澤有美子)そうですか。体育館でね、ずっと座って列席するのも冷えて冷えて、すごく辛かったっていうような話も聞きましたね。

(安住紳一郎)そうですね。それで昨日は天気がよかったですもんね。水木金とちょっと天気が悪くて。それで土曜日は天気良かったもんで。私、昼間は違う仕事してて、赤坂に移動だったんですけど。天気いいから歩いて戻ってきたんですけど。そうすると青山墓地から外苑東通りにくだるカーブの坂道のところでものすごく桜が残ってるところあるんですよね。1ヶ所。

そこに土曜日の夕方近くなのに小学校1年生と思しき男の子が入学式に参列するような半ズボンの紺のスーツ着て。そして上のジャケットには祝入学みたいなリボンまでつけて。そしてランドセル、大きめなのを背負わされて、そこに立って若いお母さんが写真撮ってるんですよね。それで、土曜日の夕方、学校ないしこんなところで何やってるんだろうと思ってたんだけど、その話と繋げてみると多分水曜日、入学式でいい写真が撮れなかったんで、後撮りしてるだろうね。きっとね。桜の残っているところで。

(中澤有美子)ああ、そうですねー!

(安住紳一郎)その結論に至るまでしばらくかかっちゃったけど。私も乃木坂ぐらいに来てから「ああ、そうか!」って思ったんだけど。

(中澤有美子)結びついた。はい。えらい!(笑)。

(安住紳一郎)そうね。水曜日の当日本番は息子さんがいい表情をしていないから、きっと諦めたんだろうね。別日で入学式用の写真を撮ったのかな?って。想像ですけどね。

(中澤有美子)そうですね。そうだなー。

(安住紳一郎)いま、特に若いお母さんなどは写真撮るのが上手ですし。SNSなどで頻繁に、非常に構図も表情も完成度も高い写真などを上げて育っているみなさんですからね。納得のいかない写真は許せないんじゃないでしょうかね。特にね、自分のかわいいご子息の入学式の写真がおかしいっていうのはね。

(中澤有美子)そうですね(笑)。その理想とのギャップをね。

(安住紳一郎)ギャップがありますからね。写真、撮るの本当に上手ですもんね。

(中澤有美子)そうですね。本当にこだわって時間もかけて。付き合う子供も大変だなって思いますね。

(安住紳一郎)昔はね、フィルムだったんで上手くいっても失敗しても、まあ1枚か2枚でしたけども。ただ、いまはお母さんが納得をするまでずっと撮るり続けるでしょう? 確認をしてね。「うーん、違うな。もうちょっとアップ。桜の花をもうちょっとこっちに入れて……もうちょっと左上を見て」なんて。本当に上手だなと思いますけども。

ただ、あれですよね。SNSでInstagramなどを上手に使っている世代にみなさん方があまりにも写真を上手に撮るので、世の中が少しいい写真に対する驚きがもうなくなってきて。だいたいこう、「お母さんと久しぶりに銀座に買い物に行きました」っていったらこの構図。それでこの表情で……みたいな。後ろに写るのは和光の時計台とか、ありますよね。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)「今日はこんな仕事してます」っていう時はなんかそのテレビ局の楽屋の自分の名前が書かれた紙が貼られた扉の前とかね。「久しぶりの食事です」ってなったら、食事のお皿をここにして。顔と顔をこちらにあげて……みたいな感じとか。「先輩と久しぶりの時間です」っていうと、自分はカメラを見ずに先輩の方を見て、両手を差し伸べたりなんかして。「この先輩と一緒です」みたいな表情になったりとか。もう……。

(中澤有美子)ほうほう(笑)。

(安住紳一郎)あっ? なんか私がSNSに対して文句を言っているみたいな感じなっています?

(中澤有美子)いやいや、大丈夫です。大丈夫です(笑)。

(安住紳一郎)文句じゃないんですよ。いや、本当にみなさん、写真を撮るのが上手になって……なんて言うんですかね? みんなのレベルが上がっちゃったっていうところですけども。もう本当に上手。でも、形式美的な感じになってきますけどもね。

(中澤有美子)そうですね。そうです、そうです。

(安住紳一郎)目をつぶっている写真とか、ないですもんね。いまね。

(中澤有美子)そうですね。まあ、伏し目がちのかっこいいのはよくありますけど。その半目とかはないですよね(笑)。

(安住紳一郎)逆にだからいま、プロの写真家のみなさんは失敗した感じの写真とかに面白味を感じたりとかね。何回も撮り直すんではなくて、やっぱり1/1で勝負して撮ったものの緊張感を楽しむっていうようなムーブメントがあるみたいですけどもね。

(中澤有美子)そうですね。写ルンですが売れたりしてね。

(安住紳一郎)私、SNSとかやっていないですし、全然日常生活で写真をパチパチ撮るタイプじゃないんですけれども、5年くらい前からすでにこうなることを予期していまして。ちょっとその、「いい写真飽和時代」が来るに違いないと思ってたので、あまり感じの良くない写真を撮り続けるっていう、そういう生活を送っています。

(中澤有美子)そうですか。

あまり感じの良くない写真を撮り続ける

(安住紳一郎)はい。美味しい食事をいただいた時に、その記録の写真的なものを撮るのではなくて、本当にがっかりするような食事を出された時に写真を撮ってみたり。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)ものすごく体調を崩した時に、セルフポートレートとか。

(中澤有美子)アハハハハハハッ! いいですね、いいですね。すごいいいですね。

(安住紳一郎)いいでしょう? お気に入りなのはアニサキス症で救急病院に担ぎ込まれた時の救急ベッドの上でうなだれてる私っていうのを看護師の方に撮ってもらったやつです。

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(中澤有美子)アハハハハハハッ。「いま、ここで……」って押してもらって?(笑)。

(安住紳一郎)押してもらってっていうね。逆に迷惑なんだけど……いや、もちろん忙しい看護師さんをつかまえてではなくて、人間関係ができて、少しその話をして。それで、そういうお手をわずらわせない範疇の中でやった話ですからね。

(中澤有美子)「大丈夫かな」というところでですね。

(安住紳一郎)そうですね。看護師の方も楽しむ一貫の中でやってくださったっていう話なんだけどね。

(中澤有美子)フフフ、たまってきているんですか? その写真たちは?

(安住紳一郎)そろそろ、SNS、Instagram飽和時代。ちょっともうみなさん、飽きてきましたでしょう? ここで一気にね、私の過去5年間のね、すごい「人にはあまり伝えたくない!」っていう写真を一気に出してみようかな? なんて考えているんですけども。どうでしょうかね?

(中澤有美子)フフフ、どうでしょうかね?(笑)。怖いもの見たさはありますね。

(安住紳一郎)ありますよね。人の不幸は蜜の味なんて言いますからね。他人の喜ばしい出来事ではなくて、私の不幸の写真を次々と見てもらうというのはいかがでしょうか?……あの、聞いているみなさん、話半分で聞いてくださいね。ここまでおかしな人ではありませんけども。

(中澤有美子)そうですね(笑)。

(安住紳一郎)ちょっとその入学式の後撮り写真を撮っている若いお母さんを見て感じたことなんですね。「大変だな。いい写真を撮るために」って。だってまたね、お母さんもスーツを着ていたし。息子さんも入学式のスーツを着なおしてきていたし。「大変だな」と思いましたね。

あと最近、お気に入りなのは、特に私が働いている同僚のみなさんなんかはとってもビビッドな写真を撮りがちなので。それに対するアンチテーゼみたいなものを。「もっと人間の生々しい君たちを撮ってあげよう!」っていうね、そういうキャンペーンを展開していまして。

(中澤有美子)ええっ? どういうことかな?

(安住紳一郎)うーん。イベントの司会とか結婚式とか、ちょっとしたそういう式典のお手伝いに呼ばれた時などは、その正規の仕事の依頼とは別に、ちょっとアルバイト的な時もありまして。そういう時はまあ心付け的なものを少しいただいたりする時があるんですよね。

(中澤有美子)ああ、お礼の。はい。

(安住紳一郎)そうですね。で、私たちもタキシードとか。女性は美容室に行ってたりするので、ある程度のいくばくかのそういうものは嬉しいというか、まあありがたくいただく時もあるんですけれども。で、私は常々言ってるようにその「報酬に見合った仕事」っていうのを一大テーマに掲げてるで。そういうものを、ご祝儀袋とかのし袋に入れて仕事の前にいただく時が多くて。で、そのいただいた心遣いに応じた仕事ぶりというのを自分の大きな仕事の指針にしているんで。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)もらった瞬間に、お行儀が悪いけれども。それは家に帰ってから開ければいいっていう話なんだけども、もういただいたらすぐに「ちょっとすいません。楽屋で服をなおしてきます」なんてバババッと戻っていって。控室でバッと中身を見て「こんなにいただくんだったらもう少しがんばらなくてはなるまい!」とかね、「このぐらいだったらこれぐらいでいいだろう」とか、そういう気持ちでまあ戻ってきたりするんで。……あ、みなさん、話半分で聞いてくださいね。面白く話していますから。

(中澤有美子)そうですね(笑)。

(安住紳一郎)それでまたにほら、後輩のみなさんと一緒に仕事をする時もあって。まあ男性と情勢が1人ずつみたいな時は、かわいいかわいい女性後輩と一緒に行ったりするんだけども、その私の仕事の流儀を教えるわけじゃない? それでだから「よかったね。いただいたの? ああ、そう。よかったよかった。見ておいで」って(笑)。

(中澤有美子)フフフ。「いまだよ」って(笑)。

(安住紳一郎)「いま、見ておいで」って言った時に俺も一緒についていって。その控室で祝儀袋を開けて中身を確認している後輩の写真っていうのをコレクションしてるから(笑)。

(中澤有美子)アハハハハハハッ!

祝儀袋の中身を確認する後輩の写真

(安住紳一郎)いい写真でしょう? 人間の本質が出る瞬間だからさ。

(中澤有美子)そうでしょうね!

(安住紳一郎)ものすごいいい写真がいっぱい撮れてるから。

(中澤有美子)そうですかー! こぼれでる表情?

(安住紳一郎)こぼれでる表情をね。「えっ、こんなに!?」っていう表情とか、リアルに商品券を数えてる表情とかあるから(笑)。

(中澤有美子)それは……(笑)。

(安住紳一郎)「なんでこんなところを写真に撮るんですか!」みたいな、そういう怒りの表情もあったりね。なかなかないもんね。こういうテーマの写真はって思って。そういう時代が来るかな?って思いますよね。来ないかな?

(中澤有美子)フフフ、楽しみですね(笑)。

(安住紳一郎)そうですよねー。

(中澤有美子)「いいね」「いいね」ってね。やっちゃうだろうな。

(安住紳一郎)入学式、先週、そして今週と迎えた方が多かったようですね。東京都内もたくさん新入学生、あとは新入社員のみなさんですか。すぐわかりますよね。やっぱりスーツとか着慣れてないからかなと思いますけれどもね。

(中澤有美子)わかりますよねー。

(安住紳一郎)そうですね。ところがね、5月ぐらいになると全く……「あんなにたくさんいたのに!」とか思いますけどね。

(中澤有美子)そうですよね。紛れちゃうんですよね。

(安住紳一郎)はい。新しい生活、どうぞ励んでください。

<書き起こしおわり>

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