(町山智浩)でもね、イーストウッドっていうと先ほど、赤江さんがおっしゃったみたいに『ダーティ・ハリー』であるとかハードボイルドなガンマンの役のイメージが非常に強いんですよね。でもね、この人実は半分ぐらいは女にだらしないダメ男の役をやっているんですよね。
(赤江珠緒)ああ、そうですか。
(町山智浩)これね、あんまりご存じないと思うんですけど。この人自身が製作した映画で『白い肌の異常な夜』っていう映画がありまして。それは女ばっかりが住んでいる屋敷があって。女性の寄宿学校にイーストウッドが怪我をして匿われて。南北戦争中に。で、女の園だから若い頃のイーストウッドは自分の魅力で女性たちを次々と騙してコントロールしようとするっていう話なんですよ。
(赤江珠緒)はー! まさに適役(笑)。
(町山智浩)若い子からオールドミスまで、全部行くわけですよ。それを「うーん」みたいな感じで1人1人うまいこと言って利用しようとして最後に全部バレてめちゃめちゃにされるっていう話なんですよ(笑)。
(赤江珠緒)はー!(笑)。
(町山智浩)バチ当たりっていう話なんですけど。そういう映画、イーストウッドってすごく好きでせっせと作っている人で。『トゥルー・クライム』っていう映画では、ジャーナリストの役なんですけども女好きすぎて仕事を全部失敗していくっていう役でね(笑)。
(赤江珠緒)フフフ(笑)。
(町山智浩)で、それも自分の娘と出ているんですよ。
(山里亮太)なぜそんな娘を映画に出させたいの?(笑)。
(町山智浩)そう。で、浮気のかけ持ちする間に娘の子守の世話をしなきゃいけないとか、ひどい映画なんですけども(笑)。それを実際の娘でやっているという。すごいんですよ。だからこの人、なんなんだろう?っていうぐらいにね、ちょっとエッセイみたいなところがあって今回の映画も面白いんですね。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)で、今回の彼はだから自分が88歳で……88歳ですよ。僕、お会いしたんですけども。で、88歳なんだけども、セックスを演じてますよ(笑)。
(赤江・山里)はー!
(町山智浩)これ、すごい。映画史に残る最高齢セックスシーンじゃないかな?
(山里亮太)想像つかないな……。
(町山智浩)いや、だからムチムチのお姉ちゃんが出てきて。で、こうやってグーッて裸のお姉ちゃんを抱きしめたりしていますよ。しかも2人同時に!
(赤江珠緒)うわっ! やっぱりクリント・イーストウッド、すごいんだな!
(町山智浩)しかも2回も。
(山里亮太)2回!?
(町山智浩)2回も! 「お前にできるか、これが?」って言われているのかと思いましたけどもね。「お前にこれができるかな?」みたいに言われているのかと思いましたけども。「すげえ!」って思いましたよ。イーストウッド、さすが!っていうかね。で、もちろんそういうことをやっている人だからバチが当たっていく映画なんですけども(笑)。
(赤江珠緒)いや、そうですよね。運び屋ですもんね。
(町山智浩)運び屋なんですよ。その運び屋で儲けたお金でエッチばっかりしているジジイなんですけども。で、家族に捨てられてバチが当たっていくわけですね。で、自分のいままでの人生の中で家族に対しておかした罪を償おうとするっていう話です。
(赤江珠緒)フフフ、なんかちょっといまの説明を聞くと、クリント・イーストウッドが自分の人生を省みて反省している思いが込められているのかな?っていう感じですね。
自分自身の人生を省みる
(町山智浩)そうなんですよ。彼自身がそう言っているんですけども、実際にそうですよね。もうちょっと家族を大事にすればよかったとかね、言ってましたし。それでやっぱり「自分が作っている芸術とか仕事で評価されれば、人は私生活とかがいくらめちゃくちゃでも、周りの人を傷つけても別に構わないんだと思っていた。ただ、それは俺だけじゃないだろう?」ってインタビューの時に言われたんですよ。
(赤江珠緒)はいはい。
(町山智浩)「俺の世代の男ってみんな、そうだろう? 俺はこれだけ仕事しているんだ。これだけ会社で評価されているんだ。俺はこれだけ立派なものを作っているんだ!って言いながら、どれだけ他の人たちを傷つけてきたのか。でも、それはそういう昔の価値観なんだ。ただ、その価値観っていうのは変わっていくものなんだよ」って言われたんですよ。で、「そこで自分が変わっていかないと、イヤなジジイになっちゃうんだよ」って。
(赤江珠緒)ほう!
(町山智浩)で、彼が「Catch Up(追いつく)」って言ったんですけども。時代に。まあ、いまの若い人の言葉でいうと「Update(アップデート)」っていうね。「アップデートしていなかいと、イヤな嫌われ者のジジイになってしまうんだよ」っていうことを言っていて。まあ、「昔さんざん悪いことしたけども、いまは反省しているから許してくれ」と言っているようにしか聞こえないんですが(笑)。
(赤江珠緒)アハハハハハッ! 要約するとね(笑)。
(町山智浩)で、「なんでいまも映画を作り続けるんですか?」って言ったらはっきりと「自己表現だ」って言っているんで。まあ、これは本人の話ですよ(笑)。
(赤江珠緒)へー! でも、88歳でそれを監督・主演っていうのはやっぱりすごいですね。
(町山智浩)しかもこの映画、楽しい映画なんですよ。イーストウッドが飄々とコカインの運び屋をやるんですけど、基本的にコメディーとして作っていて。普通、巨匠になっちゃうと自分が偉いように飾っちゃうじゃないですか。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)そうじゃなくて、「俺はな、みんなには尊敬されているけど、ダメ人間だよ」っていう話なんですよ。「笑ってくれよ」みたいな。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)そういうところがすごいなって思いましたね。僕は非常にビートたけしさんに似た感じを感じたんですよ。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)たけしさんっていくら巨匠になっても、バカげた格好して出てくるじゃないですか。くっだらないギャグを言うじゃないですか。とにかく「尊敬しないでよ!」っていうアピールをするんですけども。「俺、ダメ人間だから」って。それをね、イーストウッドもやるんですよね。
(赤江珠緒)へー! そういうところにやっぱり女の人もついていくのかな?
(町山智浩)わからない。だから僕はこの映画を見て、ダメ人間っていうところから真似していこうと思いました!
(山里亮太)いやいや、そこだけ抽出しちゃダメですよ!
(赤江珠緒)フフフ、入り口だけ真似しても(笑)。
(町山智浩)全然教訓になっていないっていうね。という映画が『運び屋』という映画で今週末に公開ですね。
(赤江珠緒)はい。『運び屋』は3月8日公開です。町山さん、ありがとうございました。
(山里亮太)ありがとうございました。
(町山智浩)どもでした。
<書き起こしおわり>