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町山智浩『COLD WAR あの歌、2つの心』を語る

町山智浩『COLD WAR あの歌、2つの心』を語る たまむすび
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(町山智浩)あのね、こういう女の子なんですよ。たとえばだから、なにもかもものすごい困難を突破して、やっと一緒になれたとするじゃないですか。で、また彼女がね、天才的な歌手なんで、まあ予告編に出てくるので言っちゃっていいと思うんですけども。結局、この2人はフランスに亡命をするんですね。で、予告編の中でいちばんいいシーンでパリで彼女は『2つの心』をジャズにアレンジして歌うんですよ。ちょっと聞いてください。

(町山智浩)はい。桂三枝さんを思い出す人もいるかと思うんですが……。

(赤江珠緒)いやいや、「オヨヨ……」って(笑)。

(町山智浩)これ、フランス語で歌っているんですよ。で、たちまち彼女はフランスでジャズのスターになっていくわけですよ。「天才だ!」って。で、彼は演奏家というか作曲者として2人でね、もう何も困難はないじゃないですか。社会的にも成功して、2人は結ばれて自由な国フランスで……そうすると、彼女はこう言うんですよ。「あんた、私があんたの物になったと思って安心してない?」って。

(赤江珠緒)フフフ(笑)。ほう!

(町山智浩)「あんた、命がけで私と一緒になりたいっていまはもう思っていないでしょ? 自分のものになったと思っているでしょ? つまんないわ!」って言うんですよ。「もっと命がけで、命をかけて私を愛しなさいよ!」って。

(山里亮太)あらら。結構大変な女性よ。

(赤江珠緒)これはなかなかですね! 「常に着火してなさいよ!」っていうような?

(町山智浩)そうそうそう! だから愛っていうのは自分がハンコを押して結婚をしちゃったら終わりっていうんじゃなくて、常に命をかけ続けてなきゃ燃えないのよねっていう。

(赤江珠緒)下火になりそうだったらもう薪をどんどんと投入するみたいな?

(町山智浩)そうそうそう。ということで、そこからとんでもないことをし始めるんですけども。この彼女が。で、彼女がすごいのはすごく魅力があって、見た目も歌も。だから、やろうと思えばなんでもできるっていうことで、それこそ共産党幹部だろうと、どこかの国の大金持ちの親父だろうと、なんでもかんでも自分のいいなりにしちゃうんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そこも魅了しちゃうんですか?

(町山智浩)そう。だから彼女にとっては別に東も西も、共産主義も資本主義も関係ないんですよ。やりたいことはなんでもやれるんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、そういうすげえなっていう女性、ズーラちゃん。それに振り回されていく主人公ヴィクトルの話なんですよ。

(山里亮太)なるほど! ピュアな恋の話じゃないんだ。

(町山智浩)で、見ていると「すげえな、これ。ここまでやる?」みたいに思っていると、あっと驚くんですけども。これ、実話なんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)監督のお父さんとお母さんの話なんですよ。監督のお父さんとお母さんは両方とも超モテモテで、そういうような感じで東に行ったり西に行ったり。共産主義国に行ったりイギリスに行ったりっていう感じで。子供の頃からこの監督、名前がパベウ・パブリコフスキという人なんですけど。子供の頃から自由奔放なお父さんとお母さんに振り回されて、あっち行ったりこっち行ったり大変な生活だったそうですよ。ポーランドに10歳までいて、その後にイギリスに難民として行って……とか。で、お父さんとお母さんは両方ともとにかく他の異性の人と勝手にどんどんどんどんくっついたりやったりして。それでも2人は何度も何度も会って愛し続けるっていう。

(赤江珠緒)ほう!

(町山智浩)他の人と結婚をしても、この2人の愛っていうのは、そのズーラとヴィクトルって本当に名前もその通りなんですよ。で、本当にもう死ぬまで愛し続けるんですけど、それに巻き込まれる人たちは大変じゃないですか(笑)。

(赤江珠緒)アハハハハハハッ!

(町山智浩)すごい話で。

(山里亮太)その国の政治の粛清の合間をぬってとかそういう話じゃなくて。ただひたすら……。

(町山智浩)そういうものさえも凌駕するようなものすごい情熱なんですよ。彼女の……歌が素晴らしいっていうのは彼女の心の中に秘めている情熱がすごいんですよね。で、それを最初、ヴィクトルという人はポーランドの心だと思うんですよ。だから歌を発見するようにしてポーランドの共産主義の中でも絶対に決して滅びない、ものすごい情熱みたいなものを彼女に見出して発見するんですけど、コントロールできなくなっていくんですよ(笑)。

(赤江珠緒)アハハハハハハッ! パッションの熱量が思っていた以上に(笑)。

(町山智浩)でね、彼女はどんどんどんどん音楽も、最初はいまみたいに非常に抑えた恋の物語。秘めた恋の物語なんですけど、それが時代で音楽が変わっていくとどんどんどんどん彼女の歌とか踊りも情熱的なものになっていって。次はロックンロールになっていくんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)ロックンロールになって、あとはマンボになって。どんどんどんどん彼女の情熱は音楽として激しく開花していくんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)周りは振り回されて大変だっていう(笑)。

(赤江珠緒)そうかー。まあでも才能もあって、停滞しない女性という意味では魅力的ではあったんでしょうね。

(町山智浩)「政治なんかに負けないわ!」っていうことなんですけど。だからもうどんどんどんどん彼は滅びていくんですけど(笑)。

(赤江珠緒)滅びていっちゃうの?(笑)。

(町山智浩)でもこれはすごいなって。だから芸術そのものをもね、象徴しているんですよね。その共産主義とかには負けないよ。政治には全く負けない情熱であり、芸術であり。ポーランド人の民族的な心のルーツの問題だったり、いろんなものをそのズーラっていう女性が象徴していて。で、しかも監督のお母さんであるっていうね(笑)。すごいな!って思いましたよ。

(赤江珠緒)モデルがいるという。

(山里亮太)細かい情報まで全部持っているわけですね。

(町山智浩)そうそうそう。で、お父さんとお母さんは、まあちょっと言えないですけどすごい結末になっていくんですけども。「ええっ、この結末か!」って思うとそれも実話らしいです。

(赤江珠緒)フフフ(笑)。事実は小説より奇なり、みたいな。

事実は小説より奇なり

(町山智浩)そうそう。だから監督はね、「大変だった、大変だった」って言っているんだけども、ネタもらっているなって思いましたよ。親から。この人、その前の映画もアカデミー賞を取っているんですけども。『イーダ』っていう映画で、それも実際の彼のおばあさんの話なんですね。

(山里亮太)へー! 家族を映画に(笑)。

(赤江珠緒)血筋がちょっとネタの宝庫ですね(笑)。

(町山智浩)強烈な体験を持っている人だから。しかもこの監督、ハンサムだし。

(赤江珠緒)ああ、そうか。お父さんもお母さんもそれだけモテモテで。

(町山智浩)そう。お父さんはグレゴリー・ペックみたいな。ハリウッド俳優みたいな人だったらしくて。で、「お父さんもお母さんもいっつも違う男とか女と付き合っていて大変だった」ってインタビューで言っていて(笑)。すごいんですけど、まあそういうね、素晴らしい映画ですね。白黒の映像も本当に美しくてね。この映画『COLD WAR』、タイトルを聞いて政治的な映画なんじゃないの?って思うかもしれないですけど、これはすごい。圧倒的に面白いラブストーリーで、しかもミュージカルです。いろんな音楽が出てくる。

(赤江珠緒)そうかー。山ちゃん、こういう女性はどうですか?

(山里亮太)いやー、ちょっと振り回してほしい……?

(町山智浩)フフフ、でしょう?

(赤江珠緒)嫌いじゃない?(笑)。

(町山智浩)顔の上に座ってもらったりとかね!

(山里亮太)そうそうそう(笑)。「私を椅子にしてください」って、いや、町山さん、違いますよ。

(町山智浩)あ、違うか(笑)。そういう話なんで、すごかったですよ。

(赤江珠緒)へー! そうですか。映像は白黒なんだけども、実に美しい映画だと。

(町山智浩)実に情熱的で。

(赤江珠緒)情熱的ですね!

(山里亮太)これが『万引き家族』の前に立ちはだかるのか!

(町山智浩)そうなんですよ。はい。『ロブスター」ともちょっと似ているところがありますね。「私を愛しているなら、できる?」っていうやつがあるんですよ。

(山里亮太)なるほど。試されるやつが。お父さん、大変だったろうな……(笑)。

(赤江珠緒)『COLD WAR あの歌、2つの心』は日本では6月28日の公開になります。今日は町山さんに『COLD WAR あの歌、2つの心』を紹介していただきました。じゃあ町山さん、アカデミー賞もがんばってください。

(町山智浩)はいはい。どうもです。

<書き起こしおわり>

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