町山智浩『TAR/ター』を語る

町山智浩『TAR/ター』を語る たまむすび

町山智浩さんが2023年1月31日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でケイト・ブランシェット主演の映画『TAR/ター』について話していました。

(町山智浩)アカデミー賞のシーズンが近づいてるんで。僕、WOWOWのアカデミー授賞式でずっと、解説をやらせてもらってるんで。アカデミー賞の話をします。

(赤江珠緒)今年は3月ですか。

(町山智浩)3月ですね。で、今回アカデミー賞に作品賞、監督賞、主演女優賞とかでノミネートされてる作品を紹介します。これがすごく言いにくいんですが。『TAR/ター』っていう映画なんですよ。

(赤江珠緒)珍しい。『TAR/ター』ですね。

(町山智浩)『TAR/ター』っていう……「これから、『TAR/ター』を見に行くよ」って言っても「なにを言ってんの?」ってなりますね。「すごい『TAR/ター』、よかったよ!」とかね。ものすごく説明が難しい、困ったタイトルの映画なんですけども。これ、人の名前なんですよ。主人公がリディア・ターっていう名前の人なんですね。で、これを演じるのはケイト・ブランシェットさん。

彼女は今回のアカデミー主演女優賞を、もう1本の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』という、『たまむすび』で紹介させていただいた、時空を超えてお母さんが娘を取り戻すため、全宇宙でカンフーバトルをするという、なんだかよくわからない映画。それに出ていたミシェル・ヨーさんとこのケイト・ブランシェットさんが主演女優賞をめぐって一騎打ちをするという状況になっていますね。

で、この『TAR/ター』っていう映画、このリディア・ターっていうヒロインはクラシックの指揮者なんですよ。で、これはクラシック音楽映画でもあるんですけども。こう言うと「なんか面倒くさくねえ?」とか思う人もいると思うんですが、これがめちゃくちゃ面白い映画でした。

(赤江珠緒)へー! 指揮者の方の人生を描いている?

(町山智浩)主人公が女性のクラシックのシンフォニーの指揮者なんです。リディア・ターさんが。で、この映画で何がびっくりするかって、映画が始まるといきなり、エンドクレジットで始まるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)エンドクレジットって今、すごく長いじゃないですか。10分ぐらい、いろんな人の名前が出てきて。

(赤江珠緒)関わったスタッフの名前が。

(町山智浩)あれ、お弁当屋さんの名前まで全部出さないといけないですからね。あれ、昔は出さなくてよかったんだけど、『スター・ウォーズ』ぐらいから関わる人が多くなったんで。全ての関わった人の名前を出さなきゃならくなっちゃったんですよ。で、かつら屋さんから、いろんな服とか手伝ってくれた、タイアップした企業から、全部が入るじゃないですか。あれ、自動車の運転した人まで名前が入ってるんですよ。入れなくちゃいけないんで。あれ、組合の要請なんですよ。ただそれがね、映画の最初に出てくるんですよ。

(赤江珠緒)先に?

(町山智浩)で、延々と続くんです。映画の最初に。全スタッフ・キャストリストが。で、「なんでだろう?」って思ったんですけども。これ、最後まで見てわかりました。この映画ね、最後にびっくりするようなオチがついてるんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、「なんだ、これ?」と思ったところでいきなり幕が上がって、場内が明るくなるようにするために、先にエンドクレジットを出しちゃってるんですよ。

(赤江珠緒)はー! そうなんだ!

(山里亮太)おもしろい!

(町山智浩)で、この映画は最後にね、終わった後に映画館がみんな、ザワザワザワッとしているんですよ。「今のは一体、何? どういう意味なの?」「わかんない。あれ、何?」とかって。お客さんたちがみんなで話し合って。で、わかる人がちょっといて。「あれはね……」とか言って説明したりしてるという、非常に奇妙な映画です。

(赤江珠緒)へー! ちょっと面白いな。

(町山智浩)で、僕ははっきり言って、わかりませんでした。

(赤江珠緒)えっ、町山さんが?

オチの意味が全くわからなかった

(町山智浩)僕はわかんなかった。ただ、そのざわざわしてる中で「あれは実はね……」っていう人がいたんですよ。で、みんな、劇場中の人がその人の周りにバーッと集まって。「あれは一体なんなの?」「それはね……」って説明して。みんな「ああ、なるほど!」って言っているっていう。ものすごい奇妙な映画でした。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)ちなみに説明していた人は、すごい若い人でした。僕のようなお年寄りは、オチがわからなかったです。

(赤江珠緒)あら? どういうことなんだろう?

(町山智浩)という映画が『TAR/ター』なんです。ちょっと見たくなるでしょう?

(赤江珠緒)なる!

(町山智浩)でね、ストーリーを説明しますと、主人公のリディア・ターという人は世界一のクラシック指揮者なんですよ。で、もうとにかく世界中で引っ張りだこでですね。本も出しているんですけども。で、ニューヨークフィルでも主任指揮者をやっていて。現在はベルリンフィルの首席指揮者なんですね。で、彼女はですね、「EGOT(イゴット)」の1人なんですよ。

(赤江珠緒)なんですか、それは?

(町山智浩)EGOTっていうのは、頭文字じゃないんですけど。テレビの最高の作品に与えられるエミー賞が「E」。最高の音楽家に与えられる賞がグラミー賞で「G」。それから最高の映画に与えられる賞がアカデミー賞でこれはオスカーの「O」。それから最高の演劇とか舞台劇に与えられるのはトニー賞で「T」なんですよ。で、EGOTっていうのはその全てを制覇した人を言うんです。

(赤江珠緒)ええっ、これ全部を? すごいですね! 1個、取るだけでもすごいことなのにね。

(町山智浩)1個、取るだけでもすごいことなんですけども。全部取った人って、歴史上15人しかいないそうです。で、レナード・バーンスタインとかも入っているのかな? まあ、そういう本当に人類史上に残るような人しか取ってないんですよ。EGOTっていうのは。だから彼女はどこに行っても「ターさん」とは呼ばれなくて。「マエストロ」って呼ばれるんですね。「巨匠」と呼ばれるんですよ。で、それを演じるのがケイト・ブランシェットなんですけども。これね、ケイト・ブランシェット以外の誰も演じられない役ですよ。

(赤江珠緒)どうしてですか?

(町山智浩)だって他に誰が……そんな人類史上に残るような指揮者の役をやってリアリティーがあるような俳優って、いますか? 想像しても、誰も思いつかないですよ。これね、最初は男性の話として監督のトッド・フィールドという人がシナリオを書いたんですけども。男性でもこれを今、やれる人というのを思いつかなかったですよ。で、しかも本当に指揮するシーンもあるんですよ。で、世界一の指揮者・作曲家を今、演じて「なるほど」と思わせる人って、いないですよ。

(赤江珠緒)そうですね。これは難しいことを求められましたね。へー!

(町山智浩)トム・ハンクスだと、庶民的すぎるでしょう? ちょっと、いないんですよね。これね。だから、ケイト・ブランシェットぐらいしかいないから、主人公を女性にすることになったそうです。で、ケイト・ブランシェットっていう人がどのくらいすごいかっていうと、まず映画女優になって4年目で『エリザベス』という映画でアカデミー主演女優賞を取っちゃうんですね。で、『エリザベス』というのは、イギリスを世界一の大英帝国にしたエリザベス一世を演じているんですけど。つまり、歴史上世界一の女王ですよ。そんなの、誰が他に演じられる?

ちょっといないんですよ。他には。で、世界中の映画賞を取って。そのあと、『ロード・オブ・ザ・リング』というファンタジー映画で、中つ国っていう架空の世界の女王を演じてるんですよ。これも、なかなかできないですよね。架空の世界の女王ですからね。他の人、これはできないんですよ。やっぱり。

(赤江珠緒)スケール感の大きい女優さんっていうことですね。

(町山智浩)そうなんです。それだけではなくて、いわゆるジェンダー。男女も超えてる人なんですよね。この人は『アイム・ノット・ゼア』っていう映画ではボブ・ディランを演じています。

(赤江珠緒)えっ、ボブ・ディランを?

(町山智浩)ボブ・ディランっていうのは男ですよね。フォーク、ロック歌手ですけど。彼女、普通にボブ・ディランを演じてるんですよ。でも、全然違和感はない。そんな人、いないんですよ。普通は。で、『キャロル』っていう映画ではレズビアンだった作家のパトリシア・ハイスミスの理想の女性、キャロルを演じたりしていて。非常に性別を超える人気女優なんですね。

で、この人の場合、男女完全に超えてて。あともう善悪も超えてるところがあって。『マイティ・ソー』っていうマーベルコミックスのシリーズがありますけど。『マイティ・ソー バトルロイヤル』では神々が集まるアスガルドっていう国があるんですね。神々の世界ですよ。神しかいない世界ですよ。それを1人で滅ぼしちゃう人をやってましたね。ケイト・ブランシェットは。

(赤江珠緒)神々の国を?

(町山智浩)神々の国を滅ぼすって、それ以上に強いものは存在しないわけですよ。彼女以上に。だから、超最強の女神を演じていて。だから、俳優史上というか、人類史上最強の女性なんですよ。彼女はね。それがケイト・ブランシェットっていう人なんですよ。

超越したケイト・ブランシェットの存在感

(町山智浩)だから、この役は彼女にしかできないんですよ。で、そのターさんはクラシックの作曲家でもあって。で、その最高の、人類史に残る音楽家の役なんです。これね、脚本を書いたトッド・フィールドもこれを誰が演じると思って書いていたのか?って思いましたけども(笑)。ただ、この人はもう本当に神のような人なんで、ものすごく傲慢なんですよ。

で、すごいシーンがあって。アメリカの名門音楽学校のジュリアード音楽院で彼女は先生をやっているんです。教授やってるんですが。で、1人の生徒が「僕はあんまりバッハとか好きじゃないんですよね」って言ったら、ブワーッとその学生を論破するっていうシーンがあるんですよ。で、ありとあらゆるクラシックとか、いろんな政治から、芸術の歴史の……たとえば「フルトヴェングラーっていう指揮者はナチスに協力しながらユダヤ人を匿った」とかですね。ありとあらゆる知識をぶつけて。ワンカットで、1回もカットを切らずに5分間の大罵倒と、大論破をしてですね。で、その学生をやめさせるっていうシーンが出てくるんですよ。

(赤江珠緒)そこまで追い詰めちゃうの?(笑)。

(町山智浩)そこまで追い詰めるっていう。「これ、いいの?」って思うんですけど。この彼女のものすごい、ありとあらゆる知識を使っての大論破は、ちょっとびっくりするようなシーンなんですよ。で、まあすごいんですけど。で、元々この彼女の役は男として最初、書かれたものだったんで、奥さんがいるんですね。同性婚をしている奥さんがいてですね、その奥さんとの間に娘さんがいるんですけど。その娘が、学校でいじめられるわけですよ。10歳ぐらいの娘でね。

「お前のお母さん、レズビアン」とかって言われていじめられたらしいんですけど。その後、いじめっ子を捕まえてこのリディア・ターさんがですね、「私は女だけど、この娘の父親だ。今度うちの娘をいじめたら、あんたの人生を潰す!」って言うんですよ。

(山里亮太)おおっ!(笑)。

(町山智浩)10歳の子に対して。それも、ケイト・ブランシェットが見事なドイツ語で言うんですよ。彼女、オーストラリアの人ですけど。見事なドイツ語でですね、「あんたを潰す! 誰かに言いつけても無駄だ。私のような有名人とあんたなら、人はみんな、私を信じるからな!」って言うんですよ。

(赤江珠緒)うわっ、すごい(笑)。

(町山智浩)これ、あまりにもひどいんで爆笑してしまいましたけどね。映画館で。「こんなこと、あるの?」っていうね。

(赤江珠緒)そうですね。学生とか子供にも、容赦なく。

(町山智浩)子供に対してもすさまじいパワハラなんですよ。で、あまりにもすごいんでね、爆笑しちゃうんですよ。で、このケイト・ブランシェットさんが指揮者の燕尾服を着ている姿がまた、凛々しくてかっこいいんですけどね。で、やりたい放題でですね、非常にかわいいチェロを弾く女の子がいると、その子をひいきしてですね。彼女にソロをやらせたりとか。まあ、そのへんはちょっとね、「いいの、この人?」っていうところですよね。

で、これはね、結構実際にあった事件を基にしてるんですよ。最近ね、世界中のオーケストラでこういった形の指揮者の職権乱用事件が結構、問題化してるんですよね。一番最近には2021年。だから、一昨年かなんかにあった事件で、これは世界的に報道されたんですけど。ニューヨークで一番のオペラ、ニューヨークメトロポリタンオペラの首席指揮者っていう、トップ中のトップの名誉指揮者でジェームズ・レヴァインっていう人がいたんですよ。この人、超巨匠で、日本でもすごく有名なんですけど。40年間もトップに君臨していた人なんですけども。2017年に1人の男性がこのレヴァインさんから性的にされたと訴え出て。まあ、両方とも男なんですけどね。

で、その後、すごくしっかりした調査が入って。実はそのようなことが複数、あったことが発覚して。で、このレヴァインは名誉指揮者を解任されて、そのまま亡くなったんですよね。これ、すごい事件だったんですよね。だからこのへんからね、この監督のトッド・フィールドは指揮者の物語を書こうとしたみたいなんですけども。まあね、とにかくこのケイト・ブランシェットさんがすごすぎて。とにかく、彼女は耳がすごくいいから、ノイズとか、ちょっとした雑音が聞こえちゃうんですよ。で、ものすごい遠くの音も聞こえるんですね。

でも指揮者って、全員がものすごい音量で……要するに何十人もの人が一斉に弾いてるのに。「ああ、あの人は音が狂ってる」とか、聞き分けるんですよ。

(赤江珠緒)そうですよね。うん。

(町山智浩)すごくない? 普通、できないよね。

(赤江珠緒)いや、できない。そりゃそうですよ。

(町山智浩)ねえ。俺なんか、どんなに目覚ましをかけても起きないような人だから。まあ、それはまた別ですけども(笑)。ものすごい神経な人なわけですよ。音に対して、細やかなわけですよ。で、神経質で、ちょっとした雑音でものすごく怒るんですけど。その時にね、ある話をするんですよ。哲学者でショーペンハウアーっていう人が昔、ドイツにいたんですよね。ご存知かと思いますが。「人生、生きててもしょうがない」という哲学を言っていた人で。別にそれ、大したことではないと思いますけども(笑)。

で、そのショーペンハウアーって人はすごく……なんていうか、嫌な人でね。雑音が嫌いだったんですよ。要するに、ちょっとでも音があると気になるような人だったんですけど。彼はアパートに住んでいて、そのアパートの廊下で掃除をしていた人かな? 掃除をしていたおばさんが話し込んでいたその音がアパートの部屋の中に聞こえてきて。それがうるさくて、仕事ができないっていうので、そっとそのおばさんの後ろに近づいて、後から階段へ突き落としたんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)ショーペンハウアーが。それで、そのおばさんは大怪我をして、一生残る障害を負いました。で、ショーペンハウアーは裁判で賠償を命じられて。そのおばさんが亡くなるまでずっと賠償金を払い続けていたんですよ。これ、ひどい話ですよ。

(赤江珠緒)いや、本当に。

(町山智浩)でもこれ、調べてもたぶん、あんまり出てこないんですよ。

(赤江珠緒)なんでですか?

(町山智浩)ショーペンハウアー、学校で教えたりしてるから(笑)。「ショーペンハウアーが悪い人だ」って言えないから、隠滅されている歴史ですよね。だから学校でショーペンハウアーを教える先生も、そんなことは言わないと思いますよ。まあ、でもそんな話があるんですけども。このリディア・ターっていう人はちょっとそのショーペンハウアーに感情移入するような人なんですよ。「自分が一番だ」と思ってるから。

で、さっき言ったみたいにひどいことをして、自分のオーケストラのアシスタントをクビにしたりとか。チェロの人をえこひいきしたりね。とか、めちゃくちゃやっていくわけですけれども。そのうちに、ちょっとどんどん怖いことんなっていくんですよ。この映画、途中からホラー映画みたいになってくるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)そう。でね、これは1回見ただけでは気がつかないんですけども。まあ、1回見て気づく人もいるかもしれないけども。2回見るとですね、心霊写真みたいなことになってますよ。この映画は。あんまり言いませんが。ちょっとね、すごい……「えっ、一体この映画、何なの?」っていうようなところがあるんですよ。全く展開の予想がつかないし。それこそ自家用ジェットに乗って世界中を飛び回っていて、世界で誰も知らない人がいないっていう。本屋に行くと、そこにこの人の写真を表紙にした雑誌とか本がずらっと並んでるような人なんですけど。でも、この人がどんどん大変なことになっていくっていう話なんですよ。

(赤江珠緒)才能があって、大成功してて、地位もあって。

(町山智浩)地位もあって。しかし、それでたくさんの人を傷つけてきたので。だんだんだんだん、ホラー映画になっていくんですよ。「えっ、そっちに行くの?」って思いました。見ていてね。

(赤江珠緒)ええっ、そういう映画なんだ。

(町山智浩)「ええっ?」っていうね。これは面白いですよ。一種のジェットコースターですね。

(赤江珠緒)うわっ、見たいですね!

だんだんホラー映画になっていく

(町山智浩)これは、本当に面白いです。びっくりするんですよ。で、画面の中に仕掛けがいっぱいあるんで。画面の隅々まで見てないとならないんですよ。これはね、まあよくできた映画なんで、アカデミー作品賞、監督賞の候補にもなってますけれども。まあ、主人公は全然共感を呼ばない人なんですけど(笑)。

(赤江珠緒)そういうことですね。なんか全く人格的には問題ありな人なんですね。

(町山智浩)問題ありなんですけども。ただ、ほら。あまりにも豪快だから。あまりにも強いから。まあ、ある種のカリスマがあるんですよね。でも、カリスマがあるからこそ、なんでもめちゃくちゃをやっていいのか?ってことの問題でもあって。人はカリスマある人を許しちゃうところがあるんですよね。「あの人はいいんだよ。天才だから」って。でも、それがまた非常に危険なことなんだっていう映画でもあります。まあ、すごくいろんなことを考えさせられるんですけども。

(赤江珠緒)で、エンドロールがないわけですもんね。バンッ!って終わるんですもんね。

(町山智浩)エンドロールがないんですよ。で、最後のオチがですね、「えっ、これは一体、何が起こってるの?」っていうね。僕は本当にわからなくて。で、誰もわからなくて。その時、映画館にいた人はおじさん・おばさんばっかりですよ。僕みたいな白髪交じりのね。ただ、「これはね、こういうことですよ」って説明していたのは高校生ぐらいの、オタクの男の子でしたね。

(赤江珠緒)へー! じゃあ、ちょっとそれがヒントになっているのかな?

(町山智浩)その意味は、彼にしかわからなかったんですよ。

(赤江珠緒)で、町山さんもそれを聞くと納得?

(町山智浩)それを聞いて、初めてわかったんですよ。「ああ、そういうことなんだ!」っていう。で、今、後ろでかかってる音楽がこの映画のエンディングでかかる音楽なんですけども。というね、これ以上は言えないんですよ。びっくりさせる映画になっているんで。

(赤江珠緒)そうでしょうね。そこが大事なところですもんね。

(町山智浩)映画が終わった後、他の人に聞くまでが込みで、映画なんですよ。この映画は。だから日本でも映画が終わった後に「えっ、これって何なの?」っていう。そこまでが込みで映画なんですね。

(赤江珠緒)じゃあ、まさしく映画館で観るべき?

(町山智浩)観るべき映画なんですよ。1人だと、なんだかわからないままで終わっちゃうと思います(笑)。

(赤江珠緒)そうですか(笑)。この『TAR/ター』は日本では5月12日公開ということでございます。

(町山智浩)ということで、だいぶ先なんですが。あんまりそんなに先にしちゃうと、こういうオチでびっくりさせる映画って、オチが少しずつ流出していくんでね。よくないと思いますけどね。会社の人、頑張ってなるべく早く公開してほしいですけどもね。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)ということで、『TAR/ター』でした。

<書き起こしおわり>

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