星野源さんがニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中でアルバム『POP VIRUS』についてトーク。アルバム収録曲の『KIDS』について話していました。
(星野源)ここで星野源ニューアルバム『POP VIRUS』の中から1曲オンエアーしてそのお話をしたいと思います。今日オンエアーする曲のタイトルは『KIDS』です。ちょっとメールが来ていますので読もうかな。「『KIDS』のTR-808(ヤオヤ)の打ち込みサウンドがすごく好きなのですが、あれはどれくらい時間をかけてビートを作ったのでしょうか?」という。ええと、『KIDS』という曲は実は、あれは『Family Song』のカップリングだっけ? カップリングカップリング曲で僕はいつも「ハウスバージョン(House ver.)」っていうのを作っていてですね。
それで、ハウスバージョンはもともと僕がですね、CDを星野源という名前で出すようになってから、ファーストアルバムを作って。その後にファーストシングルを作るってなった時にカップリングを作りたいんだけども予算がないぞって。最初はね、全然出してもらえなかったんです。予算を。この恨みは一生消えぬ恨みでございますが……(笑)。
いや、いまはもう大変にお世話になっていますから。で、じゃあもう「これ以上曲は増やせないよ」って。とはいえ、シングル作品で当時、結構その1000円とか1200円取って、まだあのいわゆる配信とかあんまりされてない頃でもあったんで。1200円ぐらい取って曲が2曲しか入んないみたいな輩が存在したわけですよ。「輩」って言ってますけど。そういうミュージシャンが。「いや、こんなの買わないよ!」っていう。
で、その中でシングル2曲とかだと買わないし、そこそこちゃんと入れてちゃんとたしかな、しっかりとしたものを作り、初回限定のDVDもミュージックビデオ1曲分とかだと、「ミュージックビデオって基本的に宣伝のために作るもんじゃん? じゃあ、そこになんの予算もかけないままにするのかい?」みたいな。そういうのが非常に好きじゃなくてですね。それを全くありがたがることができず。DVDだからSD画質なので、YouTubeの方かきれいじゃん、みたいな。そんなのもあったんで、ちゃんと企画を立ててですね、1時間分ぐらいの企画を立てて、ライブを入れたり、街ぶら企画をしたりね。そういうのをもうほぼ全員、ノーギャラでやってました。
監督の山岸聖太さんね。最近売れているという……フハハハハハハッ! 最近、非常に売れてきている山岸聖太くん。先輩なんですけど。年上なんですけど、山岸聖太くん。『キャンダル専門弁護士 QUEEN』の監督もやられることでおなじみの……おなじみじゃないけど(笑)。ねえ。楽しみにしておりますが。山岸聖太さんもね、あれどれぐらいギャラをもらっていたのかわからないけど、たぶんほとんどもらっていないと思いますけどね。ちなみに僕は1円ももらっておりませんが。
そんな中でどうしたら曲数が増やせるか? じゃあ、僕はノーギャラでやります!っていうことで家で1人で録るという作ったのがハウスバージョンの起源なんですけれども。その名残がありまして、家で1人で作るのも好きで。で、「瞬発力で作る」という。家で1曲、1人で作るってのもあるし、カップリングでね、いちばん最後に入ってるおまけみたいなもんですから。だいたい一晩で作るみたいなのをルールとして設けまして。なので曲自体、ほぼ一晩で作ったと思います。歌詞も含め、『KIDS』は。
で、この打ち込みはどのぐらいだろうな? でも2時間もかかっていないと思う。1時間ちょいぐらいだと思います。パッと作れました。じゃあ、続いてメールを。「先日、カーステレオでアルバム『POP VIRUS』を聞いていたら、隣に乗っていた娘(中1)が『最近、源ちゃんはいろいろな音にチャレンジしているんだね』という感想を聞いて、その真っすぐな感想に嬉しくなりました。その時ちょうど聞いていたのが『KIDS』でした。娘はSTUTSくんの奏でる音が好きみたいです。これからもいろんなチャレンジを重ねる源さんの音を楽しみにしています」。
あ、そうそう。『KIDS』はね、STUTSくんじゃなくて僕です。これをやっているのは。家で1人でやってるので。なので家にそのヤオヤの機械……実際はTR-8というヤオヤ、昔あった808っていう機械の音をシミュレートした音でですね、いわゆるスイング。ちょっと跳ねたりとか、平坦にしたりとかっていう調整もちょっとできるという。で、すごく僕は音が好きで。それを鳴らしながら曲を作ったりすることが多いんですけども。
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で、それをリズムとしてちゃんと音も出して作ろうということで自分でを打ちながら録音をしました。続いて、徳島県の方。「アルバム『POP VIRUS』に収録されてる『KIDS』にはシングルのカップリングに入っていた方のハウスバージョンにはない音が入っています。何の楽器を使ってるんでしょうか? この楽曲の雰囲気と『KIDS』というタイトルにぴったりな遊び心のあるアレンジだなと思っていつも聞いています」。ありがとうございます。
そうですね、あのアルバムの方はですね、1個だけ音色が足されていまして。あれはなんだっけ? JUPITER-8だっけ? Juno-60かJUPITER-8のどっちか。いまね、スタッフのみんなが「ワーッ!」ってなっておりますが(笑)。大丈夫です。どっちかです! あ、Prophetか。そうか、違った。ごめん。Prophetです。さすがですね。記録していると違いますね。ありがとう。Prophetでございます。おそらく(笑)。すごく昔のアナログシンセサイザーでございます。
なので、実機が、ちゃんと動くのが少なかったりとかで、僕が使ったのも昔のをそのまま使っていたので途中で音が出なくなったりとか、急に半音上がったりするんです(笑)。「えっ?」っていう。あと、1音だけでなくなったりとか、全部出なくなったり。あとは音質が急に変わったりとか、そういう生き物みたいな感じで。それをジャズピアニストの小林創さんに弾いていただきまして。大好きな、いつもお世話になっている方なんですけども。
で、なんでか?っていうと、僕はこのハウスバージョンの『KIDS』が自分でもすごく気に入っておりまして。で、アルバム作業を始める前に作った曲あるんですが、アルバムの作業を進めていて、こんなに今回の『POP VIRUS』っていうアルバムの中にぴったりな曲はないぞ。もうこのアプローチを僕はすでにしていたじゃないかっていうことで、これを入れたいなと思ったんですが。
ちょっと間奏とアウトロの部分だけ、なんか寂しいなと思っていたので。そのシンセの音を入れたいなって。アナログシンセサイザーの音を入れたいなと思って、小林さんにお願いしました。で、そのハウスバージョン……家で録ったっていうことも含めて、自分の生活の音。自分が生活している場所。日本の空気。僕が住んでいるのは東京ですが、東京の空気っていうものが、なんだろう。いわゆるちゃんとしたスタジオとかじゃなくても、世界に発信できる。恥ずかしくない音楽なんだっていう自負のもとで作った音楽なので、これをわざわざハウスバージョンと言わなくても、これが本チャンですっていう風に。
これでもうシンセに入ってばっちりです!っていう思いも込めて「House Ver.」っていうのは取りましてアルバムに収録をせていただきました。じゃあ1曲、ここで聞いていただきましょう。星野源のニューアルバム『POP VIRUS』収録曲で『KIDS』です。
星野源『KIDS』
(星野源)お送りしたのは星野源で『KIDS』でした。メールを読みます。31歳の方。「『KIDS』の真ん中にあるギターをチューニングしてるとこが好きです。なぜチューニングしてるところを入れようと思ったのですか? よければ教えてください」。ええと、1人で作っていて、なんかの間奏でギターソロをしようと思ったんだけど……「もうチューニングでいっか」って思って(笑)。で、間奏前、間奏後って作っておいて、その間を無音で開けておいて、そのギターのところだけを秒数をあまりちゃんと把握せずにチューニングして、ちゃんと復帰できるかっていう遊びをしてやっていました。
それで1回、チューニングを悪くして、もう1回チューニングをよくして、ちゃんと曲に復帰できるかっていう遊びを1人でやっていて、成功したテイクがこれです。はい(笑)。まあ、別にちゃんと弾かなくてもいいじゃんって思って(笑)。面白いじゃんって思って。面白いでしょう、こういうの?
三鷹市の19歳の方。「『KIDS「』、好きです。歌詞やテンポにごく当たり前の日常の中でどうしてもありやがる疲労感や……」。いいね。「ありやがる」って、いいね。「……ありやがる疲労感や義務感。そこにありふれたちょっとおかしいことが、体験こそはないですが簡単に思い描けるくらい詰め込まれていて気に入っています」。素敵な言葉をあなた……ありがとうございます。「……チャリに乗りながら立ちこぎで歌っちゃう曲ナンバーワンです。そこで質問なんですが、歌詞に散りばめられている生活感の源流はどこなのでしょうか。聞いてみたいです」。
そうですね。しまった。こういう時なのに歌詞を用意するのを忘れた(笑)。ええと、まあいいか。ええと……うーん……(スタッフから歌詞を受け取って)ありがとうございます! でもね、あまり覚えてないっていうのが正直なところなんですけども。すごい短い時間で歌詞を書いているので。なんかもう「ワーッ!」って書いてるので。そういう時っていわゆるグッとなにか、よくいうとゾーンみたいなのに入って「ワーッ!」って書いているので。たぶん半分白目みたいな、ちょっとイッちゃっている状態で書いているので。
なんかその曲を作りながらも歌詞もちょっとずつ書いてみて……みたいな感じだったんですけど。まあ音にいちばん合っているようなものとして、なんか自分の家だったり作業場、そういう自分はいつもいる場所で録ってるっていうもあるんで。自分の身近な生活感っていうのがたぶん自然に出てきたんだと思うんですけど。なんかでも「火の鳥には出会えないが寝癖の君、鳥みたいだ」っていうのが思いついた時に「やった!」って思いましたね。なんか。
「火の鳥」っていわゆる捕まえると……あれは食べるとだっけ? 手塚治虫の漫画では不死身になるっていう。なんで、『火の鳥』……命をずっと繰り返してるみたいな話なんですよ。で、その火の鳥を巡っていろんな人間が争ったりとか協力したいとか、そういう話でどんどんいろんな世代に火の鳥という伝説が受け継がれていくみおたいな、まあぼんやりしたストーリー。概要としてはそうなんですけども。すごい面白い漫画で。
でも、その火の鳥っていうのは実際にはもちろんいなくて、不老不死もなくて。なんだけど、いまそばにいる君の寝癖は鳥みたいだよっていう。自分にとって火の鳥のように大事な存在だよっていう、なんかそういう歌詞が書けたなっていう。なんか急いで作ってたんだけど「ああ、やった! いいのが書けた、やった!」みたいな、なんかそんな感じでした。
で、自分自身があんまりその、もうおっさんなんだけど、子供の時からあんまり感覚が変わってなくて。まあ、そういう人は多いと思うんですけど。「20代ぐらいで止まっちゃっています」みたいな人って。でもなんか体だけ大きくなって、中身は子供だなっていう思いもあったんで、大文字で『KIDS』っていうタイトル。意味としては「子供なんだけど形だけ大きい」っていう意味で大文字で『KIDS』っていうタイトルを思いついてからワーッと歌詞が書けたっていう感じですかね。
なんかメール、他にもあったな。大阪府の方。「『KIDS』はゆっくりなのにしっかり乗れる曲と感じています。乗れると言っても跳ねたりというよりかは、流れるように緩やかに踊るようなイメージなので。僕は聞くとふらふらと歩き出してしまいます。『POP VIRUS』に収録されてる『KIDS』』は新しく加えられた音がまた別の楽しさを持って雰囲気を少し変えてくれるのが好きです。あの加えられた音の話を聞きたいです」。そうですね。さっきのProphetね。あれもいいですよね。
あと、そうだ。思い出したけど。すっげー細かい話なんだけど(笑)。加えたっていうか、一緒なんだけど。同じTR-808っていうのをシュミレートしたTR-8っていうものを最初、僕は使って作曲をして録音をしたんですけど。さらにより本物に近い音のTR-08っていうのが出たんですよ。
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それを以前の……まあ、録り直しとかをあんまりしたくないんで。こういう時。歌とかを録り直すのがあんまり好きじゃないんで。そういうのも含めてもともとの音と全く同じ場所にいわゆるヤオヤの音を貼り付けるという作業を。で、さらに音質が良くなってるんで、家で作った時はステレオでバスドラ、キックもスネアもハイハットの音も、ポーンっていうカウベルの音もステレオの2チャンでミックスした状態で完パケしたんですけども
そうじゃなくて1音1音ちゃんとミックスできる状態にして、音をより、その音の音色とか長さとかは極力んまんま同じになるように。でも音質は良いという。で、この音質が元々のヤオヤに近づけば近づくほど腰が動くというのが分かりまして。やってみて。より、やっぱりダンスミュージックでたくさん使われた機械の音っていうのもあって、より踊れる感じになったので。
いわゆる元々の『KIDS』という曲よりもよりちょっと動かせる感じっていうのは、そういうのもあると思います。そんな感じですかね。沢山みなさんメール、ありがとうございました。
<書き起こしおわり>