みうらじゅん マイ遺品を語る

みうらじゅん マイ遺品を語る 大竹まことゴールデンラジオ

みうらじゅんさんが文化放送『大竹まことゴールデンラジオ!』に出演。「マイ遺品」について話していました。

(太田英明)なんかご本が今日、発売になったみたいで。

(みうらじゅん)今日発売の『マイ遺品』っていう本なんですけども。

(太田英明)「私の遺品」という。

(みうらじゅん)もうそろそろ「遺品」と考えて集めるっていうことに切り替えたんですよ。最近。

(大竹まこと)老い先のこととかを考えて?

(みうらじゅん)老い先のことを逆に言うと考えないで。だから、そろそろ「終活」とか。なんかなくしていく方向に行っていますけども。でも、いままでずーっとその集める癖をつけてきたのに、なんでそんな死ぬぐらいで物を捨てなきゃならないのかな?っていう疑問はずっとあったんですよ。たかが死ぬぐらいで。

(大竹まこと)たかが死ぬことぐらいで。

(みうらじゅん)うん。何十年も集めてきた物とかを……。

(大竹まこと)始末なんかしてんじゃねえよと。

(光浦靖子)その考え方があったか。

(みうらじゅん)ええ。いまでもまだ集めているものもあるし。それはなんか亡くなってから鑑定団的に出してもね、すごい値打ちがあるものとかって言うならまだ周りもあれだけど、自分のずっと集めていたものってほぼ価値がないっていうか、まあ価値は自分でしか見いだせないものだったから。世間的には認められていないものかもしれないですけども。「とっておきのもの」はないけども、「取っておくのもの」っていうので俺、集めていたんですよ。

(大竹まこと)はい。

(みうらじゅん)捨てないで取っておくっていうことで集めて小学校1年ぐらいの時から集めたものがずーっとありますんで。いまだに。それをもうたかが死で捨てるということがね、やっぱり……それは考え方が間違っているんじゃないかな?って思って。世の中的にね。だから、これからは集めても自分の遺品だと思って。だからマイ遺品。人の遺品を集める気はないですから。「マイ遺品を今日、中野ブロードウェイに買いに行こう」とかね。そう思って行くとね、ますますその物が大切に見えるっていうか。遺品になるわけですから。ええ。いままで買っていたものたちよりもグッと逆に箔がつくっていうか。

(大竹まこと)うんうん。

(みうらじゅん)つまらないものとされていたものでも量がありますし。で、それもずーっと捨てていないので。俺、倉庫を借りているんですよ。

(光浦靖子)でしょうね。すごい量だと。

(大竹まこと)これさ、どのぐらいの倉庫を借りてるの?

(みうらじゅん)かなり広くて。去年、展覧会をやったんですけども。川崎でやったやつ。あれがまだ、物は倍以上あるんですよ。

(太田英明)個展もものすごいアイテム数でしたよ。

(みうらじゅん)でも、なにを見ているのかわからないっていう評価でしたけども。数だけで。でももっと……あそこには精鋭たちが行っているわけで、もっとあるんですよ。でもその人たちはその倉庫でずーっとお呼びがかかるまで、ずーっと待っていたもんで。もうかなりしびれを切らしているやつも。展覧会のもまた戻ってきて、またいますんで。「今度はいつだ?」っていうのを物から言われているんですけど。今度、また富山の方であれをまんまこっそり、ごっそり。大きい会場を貸してくれるところがあるんで、持っていくことになったんですけど。

(大竹まこと)うん。

(みうらじゅん)でもその間、またそのずっと寝ているわけで。遺品が。で、まあ遺品整理をするっていう意味でもその1個1個に「これはこういう思い入れがあって、こうやって買ったものだ」とかっている取説みたいなものがほしいじゃないですか。価値があるものだったら鑑定団の人たちに見てもらえばいいけど、価値がないってわかっているわけだから。自分で判定しておかないとダメなんで。

(大竹まこと)でも、見ているともしかしたら価値が出ちゃうんじゃないかって。

(みうらじゅん)わからないですよね。中には、わからないけどサザビーズとかに行くかもしれないじゃないですか。わからない。そのサザビーズにもし行った時、「これはなんなんだ?」ってなった時に、学芸員っていう展覧会場とかで説明を書く人。あれがいないものだから、自分でやっておかなきゃならないんじゃないかって思ったんで、その本を作ったんですよ。だからその本、今日出たその『マイ遺品』っていう本を読むと、「ああ、これはこういう経緯で入手し、こういうことでカテゴリー分けして、こういうことで遺品として残ったんだ」っていうことが克明に書かれているんで。だから、後に困らないと思うんですよね。

(大竹まこと)冒頭のいちばん最初の遺品は「海女」?

(みうらじゅん)海女人形。

(太田英明)海女さんって、海に潜る?

(みうらじゅん)そうです。俺、その高校の時にロマンポルノを見に行って、その海女シリーズっていうのがあまりにも引っかからなくて。っていうか、まあ童貞の高校生に海女ってちょっと遠いじゃないですか。

(大竹まこと)まあね。

(みうらじゅん)で、うちは男子校だったんで、女教師すら遠いのに、海女ってめっちゃ遠かったけど、なんかそこではすごいとてもセクシーなことをされたりするから。

(太田英明)濡れるのがまず、グッと来ますよね。

(みうらじゅん)そうなんですよ。磯着がベチャッとボディコンみたいになるでしょう? 濡れて。でも、まあ遠いわけですよ。磯笛とかを吹かれても。童貞には。なんかでやっぱりずーっとそれがしこっていた……やっぱり宿便みたいに頭に残っていて。で、ある時に海女人形をどこかの海岸で見つけたんですけど。貝殻の上に人形が座っていたりするんですよ。海女の。

(大竹まこと)海女さんがね。

(みうらじゅん)その貝殻がもう古いもんでボロッボロなんですよ。で、家に持って帰ってもうそれがバラけて、床がすごい汚れる嫌なもんだったんですけど、なんかやっぱり気になると集めたくなる癖は治らないので。それからいろんな日本の海女が出現するようなところにいろいろと行って。絵葉書から人形から、もう最終的には海女のタライまで買おうかなと思うぐらい、海女ノイローゼがあって。

(大竹まこと)ノイローゼですね、もうね。

(みうらじゅん)もう完璧にノイローゼだったんですけど。タライはいらなかったんですけど。でも、ドーマンセーマンってあのね、磯着にマークをつけるんですよ。こう、縦横に棒が引いてあるようなやつが。

(大竹まこと)えっ、もう1回言って。なに?

(みうらじゅん)ドーマンセーマンって言ってね、魔除けなんですよ。海に行くとね、その自分とそっくりな姿をした人を見ると死ぬっていうのがなんかあるんですよ。で、それを守るドーマンセーマンっていうのがあって。あと、五芒も書くんですよ。星の。当然その五芒星とかドーマンセーマンが書いてあるギュッとするやつもほしいじゃないですか。で、そういうやつの温度計とかも出ていたんですよ。その頃。まあ、大量に買って。で、将来的に海女になろうかな、ぐらいのそっちのノイローゼまで行ったから、もうすごい量の海女人形とか海女グッズがあったんですよ。

(大竹まこと)うんうん。

(みうらじゅん)で、いまはすっかり飽きていますけど、やっぱり飽きないふりをしていたもんで。ずーっと。飽きてないふりをして……。

(大竹まこと)ちょっと待ってください。自分で集めているとやっぱり波が来て……?

(みうらじゅん)飽きますよ。4年でかならず。

(大竹まこと)4年で。

(みうらじゅん)たぶん付き合いとも似ているんだと思うんですけども。4年ぐらいするとね……。

(大竹まこと)全ての恋愛は4年で冷めるって言いますからね。

(みうらじゅん)「ヤバいな」って思うぐらい、ちょっと1回冷めるんですけども。

(大竹まこと)冷めた時、どうするんですか?

集めても4年で飽きる

(みうらじゅん)でも、やっぱり恋愛も一緒のように、冷めないふりをするっていうのはやっぱり相手のためじゃないですか。「冷めた!」ってそんなすぐに言っても相手が傷つくわけで。

(大竹まこと)じゃあ、そこでいったん自分を裏切るわけだ。自分は冷めているんだけど……?

(みうらじゅん)そうです。「冷めてないぞ!」って。この場合、海女が重要なわけで、僕が重要ではないわけですから。自分は騙される方に回ればいいじゃないですか。

(大竹まこと)大事なのは海女だと。

(みうらじゅん)そうです。

(大竹まこと)それを集めている俺は、ただの通りすがりの男だと……?

(みうらじゅん)そうです。僕はそういう立場じゃないと物は集められませんので。「自分が!」っていうのではダメですから。飽きちゃいますから。だから飽きないふりをして。

(大竹まこと)自分を外す?

(みうらじゅん)もちろん。そこで「自分なくし」ですね。自分をなくして。できたら自分の意見とか……その人形について、言わない方がいいことはいいんですよね。

(大竹まこと)言いたいんだ?

(みうらじゅん)うん。やっぱりはじめは言いたいじゃないですか。「この人形よりもこの人形の方がいい」とかぐらいは言いたいじゃないですか。でもそこをグッと我慢して、ただ集まっていく様を見つめるっていうのがやっぱりやり口なんで。

(大竹まこと)やり口っていうか、なんかあれだよね。なんかとても自分の対象に抱きつかないというか……。

(みうらじゅん)そうですね。抱きつくとやっぱり人間の本性が出てしまう。飽きてしまうという。

(太田英明)一度愛した海女さんに対する誠意ですかね?

(みうらじゅん)だから死ぬまで……まあ、死んでもですけど、「海女の人形が好きだ」と言い張りたいわけですよ。こうなると。となると、捨てるわけにはいかない。

(大竹まこと)「変わらないぞ!」って。飽きているんだけど、変わらないぞって。

(みうらじゅん)ずっとキープ・オン・フォーリン・ラブだぞっていうことで死ぬのが正しいでしょうっていう。

(大竹まこと)そこまではわかりました。

(光浦靖子)男気ですか? なんですか?

(みうらじゅん)男気というか……義務ですかね。なんかの義務感があって。

(大竹まこと)そこまではわかりました。で、その先ですけども、集めてみたらどうやらこの海女を作っている会社は……。

(みうらじゅん)同じ会社らしいっていうことはわかりますよね。当然、俺もバカじゃないから、何十体か見ると「同じ匂いがするな」「同じ製法だな」っていうのはわかってきて。

(大竹まこと)それは勝浦に行こうと、熱海の端っこの漁場に行こうと、全国を仕切っているのは……。

(みうらじゅん)大概、たぶん上野のへんで作っていたりするわけですよ。でもそれは……気が付かないふりですよ。もちろん。

(光浦靖子)また「ふり」だ。

(大竹まこと)でもそこはだって愕然とするわけでしょう? 地方にその会社があって、その地方地方がこの海女を作っているんじゃないか?っていう幻想があって。それのもとに集めていたのに、集め始めたら「なんかこれとこれはちょっと似ているぞ?」って。

(みうらじゅん)当然、塔・タワーにあるメダリオンっていう、メダル刻印機みたいなの。あれももう、ずいぶんと集めたんですけども、当然同じ会社ですよね。それは当然わかっているんだけども、「違う! この地方でしか売ってないんだ!」っていう意気込みですかね。

(光浦靖子)この子たち、一緒だもんな。写真の……。

(みうらじゅん)ええ。一緒です。下にね、「千葉」とか「御宿」とかっていう名前が違うだけなんですよ。でもそれは「違うもの」って考えないと。

(大竹まこと)でも、そうやっているうちに、一瞬世の中は『あまちゃん』ブームになるじゃないですか。

(みうらじゅん)ああ、全然違うところから来る時もありますから。

(大竹まこと)NHKから『あまちゃん』ブームが来ちゃったじゃないですか。

(みうらじゅん)僕の何の手も汚していないのに来ることもありますから。わからないもんですからね。その時はごっそりと倉庫から出す時が来ますからね。ええ。出してこなきゃならないから。そんな本です。

(太田英明)そういった風に思い入れがあるものをいっぱい並べているっていう。

(みうらじゅん)はい。プレゼントしますんで。

(大竹まこと)なんかみうらさんの葬式、楽しみだよね。

(みうらじゅん)葬式、楽しみですよ。もう倉庫を一周して燃やそうかなって思っているぐらいで。

(大竹まこと)フハハハハハハッ!

(太田英明)文藝春秋から今日、発売になったばかりのみうらじゅんさんのご本『マイ遺品セレクション』を5名様に差し上げます。

『マイ遺品セレクション』

<書き起こしおわり>

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