能町みね子さんがTBSラジオ『ナイツのちゃきちゃき大放送』の中でお相撲好きのナイツ塙さんと横綱・稀勢の里の引退について話していました。
2019.1.17 デイリースポーツ
稀勢の里引退『一片の悔いなし』怪我に泣いた横綱でしたが、横綱になるまでは休場した事が1度もない事にビックリです。お疲れ様でした。https://t.co/V5fIAwkHkd pic.twitter.com/xLCb7kvDeQ
— やーパパ (@bm32k) 2019年1月16日
(土屋伸之)さあ、能町さん。気になったニュースですが……。
(能町みね子)稀勢の里のことは語りましょう。「自分の中では一片の悔いもありません」っていうことを会見で言ったんですよね。で、まあ漫画好きの方はすぐにわかると思いますけども、これは完全に『北斗の拳』のラオウのセリフなんですよね。
(土屋伸之)ええ。
(能町みね子)まあ、稀勢の里がラオウが好きっていうのは前から有名で。三つ揃いの化粧まわしっていうのを横綱になったらプレゼントされるんですけど。その化粧まわしに描かれた3つのキャラクターがケンシロウ、ラオウ、トキっていう風になっていて。
【ニュース】稀勢の里が夏場所から着用予定の「ラオウ化粧まわし」のデザイン初公開。師匠の「孤独にならないと強くなれない」という教えから、北斗三兄弟の中でもラオウを選択。締めた姿は夏場所で公開の予定。https://t.co/dUfH3oLy5c #稀勢の里 #ラオウまわし #夏場所 pic.twitter.com/Au7f6vaFUK
— MdN Design Interactive (@mdn_net) 2017年5月8日
(能町みね子)で、普通だったら主人公はケンシロウなのでケンシロウを選ぶところなんですけど、稀勢の里は自らラオウを選んだんですよね。「ラオウの孤独な生き様が好きだ」っていうことで。だからこの「一片の悔いもありません」っていうのは間違いなくラオウなんですよね。で、冷静に考えてみて、私はこの言葉だけを先に聞いたんですよ。会見を見る前に。このニュースだけを先に見て、ちょっとなんて言うんですかね? 「引退してやりきった」っていう気分で少し微笑みながら、ちょっと冗談めかして言ったのかなって思ったんですよ。
(塙宣之)うんうん。
(能町みね子)そしたら、映像を見たらもうガチ泣きなんですよ。大真面目に、本当に涙を流しながら「一片の悔いもありません」って言ったんですよ。……ちょっと変だと思ったんですよ、やっぱり稀勢の里は(笑)。
(塙宣之)フハハハハハハハッ!
(土屋伸之)ちょっと変だと思いましたか?(笑)。
(能町みね子)ちょっと変だと思うんですよ。
(塙宣之)そういう流れになったんじゃなくてね。
(能町みね子)そうなんですよ。
(塙宣之)自分で決めてたのかな?
(能町みね子)いや、「一片の悔いもありません」はたぶんその場では出ないと思うから。おそらくはまあ、前の日に負けて「もう引退しよう」と決めて、いろんな思いが交錯する中、「でも、引退会見でなにか言わなきゃいけない」ということで。で、ここで歴代の横綱の誰かの名言とかを取ったり、武将とかそういうのの言葉を取るんじゃなくて、すっごい真面目に考えた結果で「ラオウで行こう!」ってなったわけですよ。
(塙宣之)フフフ、推測ですよね?(笑)。
(能町みね子)推測です。
(土屋伸之)稀勢の里の性格を考えるとね。
(能町みね子)考えた結果、「俺はラオウだ」って思った稀勢の里が私はすごい好きなんですよ。
(土屋伸之)フフフ、いや、わかります。
稀勢の里の不思議な子供っぽさ
(能町みね子)稀勢の里って横綱で、あんまり知らない人からすると「無口、無愛想、ストイック」みたいなイメージなんですけど、ファンの方はちょっと気づくんですけど、どこかちょっと子供っぽいんですよ。なんか不思議な子供っぽさがあるんですよ。
(土屋伸之)そうなんですか。なんかいたずら心みたいなのを持っている?
(塙宣之)かわいげがあるというか。
(能町みね子)言い方は悪いですけどちょっと幼稚な部分があるというか。そういうのを私、昔からずーっと思っていて。
(土屋伸之)あの中にそれを見つけるのが……。
(能町みね子)そうなんですね。相撲ファンとしてはそれがうれしいところなんですけど。ちょっと緊張をしている時にすごいまばたきが多くなっちゃうとか。
(土屋伸之)見てますねー(笑)。
(能町みね子)で、相撲を取る前にまばたきが多くなるのがあまりよくないから、逆に変な顔をしていたりするんですよ。
(塙宣之)なんかニコニコしていた時もありましたもんね。
(能町みね子)そう。変に笑顔をうかべて……みたいなのとか。なんか無理やり目を見開いてみたりとか。いろいろと試していた時とかあって。そういうのを考えると、なんか稀勢の里ってすごいかわいいなっていう風に思っちゃっていて。
(塙宣之)いや、そのある程度のレベルを超えた人しか行かないですよね。「かわいい」まで行く人ってなかなかいないですよね。
(能町みね子)そうですね。ラオウからここまで行けるのはなかなかないと思いますけども。
(塙宣之)ねえ。親だけですよ(笑)。
(能町みね子)ああ、そうですね。まあ私も親に会ってますからね(笑)。
(土屋伸之)でも、なんかね、「漫画にひっかけたぞ」みたいな顔をして言うんじゃなくて本当に大真面目に言うところがいいですよね。
(能町みね子)なんなら織田信長とかそういうところと並べてラオウがあるわけですよ。稀勢の里の中には。そこがいい。
(土屋伸之)なんだったらラオウだって真面目に言ったわけですからね。
(能町みね子)まあ、そうですね。ラオウの世界の中でもね(笑)。
(塙宣之)武論尊が書いたんだよ、武論尊が。武論尊が考えたのを、原哲夫が書いただけだよ(笑)。
(能町みね子)あの世界観の中ではラオウは大真面目に言ってますから。ラオウ、死の直前ですからね。
(出水麻衣)やっぱりここでの引退っていうのは避けられない感じだったんですか?
(能町みね子)まあ避けられないと思います。私はファンですけど、ちょっと遅かったぐらいだとも思っていて。で、二日目がちょっとかわいそうだったんですよ。立ち会いがなかなか合わなくて。で、変な相撲になっちゃって中途半端になったから、まあ本来は前の場所で四連敗をしていて。で、次の場所で二連敗ってなったらここで引退でもおかしくないんですけど。まあ、たしかにあの相撲で終わりっていうのはちょっと本人の中でも納得がいかない部分もあったのかもしれないし。
(土屋伸之)うんうん。
(能町みね子)まあ、最後にね、「往生際が悪い」みたいなことは言われていましたけども。まあ結果としてあそこでよかったんじゃないかなって私は思っていますけど。ただ、ファンとしては「たられば」はものすごい考えちゃいますね。
(塙宣之)怪我ですか?
(能町みね子)まあ怪我ももちろんそうですね。怪我をしていなければ……。あとは師匠が亡くなっていなければ。
(塙宣之)鳴戸親方。隆の里。
(能町みね子)そうですね。大関に上がる直前に亡くなっちゃったんですけども。まあ本当に心酔していて。ものすごいスパルタな親方なんですけど。そのスパルタがあったからこそ稀勢の里ができたと言われているので。師匠が突然いなくなっちゃったっていうので、心の拠り所としてはなかなか厳しいものがあって。あとは、時代が違えば……みたいなこともつい妄想しちゃうんですよね。
(土屋伸之)時代?
(能町みね子)もし稀勢の里が5、6歳若かったら……もうちょっとかな? 7、8歳若かったら。いま、白鵬はやっぱり全盛期よりはちょっとは弱くなっていますから。
(塙宣之)だからいまで言う貴景勝とかね。
(土屋伸之)そうか。白鵬の全盛期とやらなきゃいけなかった。
(能町みね子)そう。それはやっぱり「不運」って言っちゃうと白鵬には悪いですけども。もしちょっとズレていたら、もっと優勝ができたんじゃないかって。
モンゴル三強時代とぶつかった稀勢の里
(塙宣之)だから日馬富士、鶴竜、白鵬っていうモンゴルの三強の時代っていうのが相当大変だったと思いますね。
(能町みね子)いや、大変ですね。
(塙宣之)いまはもうそんなに別にモンゴルの人が強いわけじゃないですから。いっぱいいますけどね。あの3人、やっぱりめちゃくちゃ強かったんですよね。
(能町みね子)めちゃくちゃ強かったです。
(塙宣之)だいたいあの3人で優勝していたからね。よく稀勢の里、横綱までなったよ。
(土屋伸之)よく言われるけども、やっぱりその中でプレッシャーが。「日本人だから」って言われて。
(塙宣之)あと西岩親方がね、独立されたじゃないですか。あれもちょっと、ねえ。
(能町みね子)あれもちょっと気の毒なところはありましたね。
(土屋伸之)誰ですか?
(塙宣之)元若の里。兄弟子ですよ。すごい尊敬していた兄弟子が独立して。西岩部屋という部屋でね。それでいなくなっちゃったんですよ。
(能町みね子)前の親方が亡くなって、しかも信頼していた兄弟子も別のところに独立しちゃったんで、直接頼れる存在ではなくなっちゃったんですよね。それもまあ不運といえば不運だし。まあ、あとはいまさらなんですけど。これは結果論なんですけど。怪我した直後の場所に出たんですよね。で、その時にすごく「なんで出るんだ? 怪我なら休め」って言われていたんですけど、私はいま見ると、出ていてよかったんじゃないかって思っていて。
(塙宣之)あの時に?
(能町みね子)それは、出た場所は6勝4敗までいって結局休んだんです。でも、いま見ると6勝4敗はまあまあよくやっているんですよ。当時の全盛期の稀勢の里が突然そうなったから、当時は「うわあ……」って思っていたけども、その後に出ては休み、出ては休み。どんどん悪くなっていったんで。その最初の場所の方がまだよかったんですよ。だから、無理して出る、出るって言われたけど、稀勢の里としては1回も休んだことはなかったから、多少無茶があっても出て、まあ6勝4敗から7勝8敗、8勝7敗ぐらいで終わって、やんや言われたとしてもそうやって毎回出て、気持ちをずっと保ちながらやった方が意外とよかったんじゃないか?っていうようなことも、結果論ですけど思うんですよね。
(塙宣之)最後に休むイメージがついちゃったけど、稀勢の里といえば1回も休まなかった力士なんですよ。
(能町みね子)そう。鉄人みたいな。腸捻転でも出たんですからね。
(土屋伸之)腸捻転?
(能町みね子)腸捻転でも出たことがあるんですね。
(塙宣之)決まり手みたいだね。腸捻転って。
(能町みね子)フフフ(笑)。
(土屋伸之)なんかどっかひねったみたいなね(笑)。
(塙宣之)「腸ひねり」(笑)。
(能町みね子)腸ひねり、死んじゃいますね(笑)。
(塙宣之)殺人技になっちゃいますね。そうなんだよねー。やっぱり稀勢の里に関してはね、もう……。
(能町みね子)そう。いろいろと考えちゃいますね。
(土屋伸之)でも本当に本人が悔いなくやったっていうことが何よりの救いですね。
(能町みね子)まあ、そうですね。本人はそうだと思います。
<書き起こしおわり>