カルロス矢吹 2018年ニューヨークのキャッシュレス化と炊き出し事情を語る

カルロス矢吹 2018年ニューヨークのキャッシュレス化と炊き出し事情を語る たまむすび

(カルロス矢吹)日本でもやっているじゃないですか。ご飯を。

(ピエール瀧)国際石原軍団かよ?っていう話ですけども(笑)。

(カルロス矢吹)フハハハハハハッ!

(赤江珠緒)急にそんな参加できるんですか?

(カルロス矢吹)で、なんでそんなことをしたのか?って言いますと、僕が泊まったホテルっていうのがマジソン・スクエア・ガーデンってあるじゃないですか。格闘技とかスポーツとかコンサートをするホール。マンハッタンのど真ん中のすぐ横にあるホテルなんですけど、そこは個室でお風呂も別々になっているようなすごくいいホテルなんですが、1泊1万円しない。4泊したけど、3万円払ったか払わないかぐらいの、すごい格安でいいホテルに泊めてもらえたんですよ。で、なんでそこが安いのか?っていうと、そこのホテルのオーナーさんがホテルの利益を全部、ホームレスの炊き出しに回していて。

(ピエール瀧)ほう!

(カルロス矢吹)その代り、宿泊客の人で手が空いている人がいたら、ホームレスの炊き出しを手伝ってもらえますか?っていうシステムで。

(赤江珠緒)そんな慈善的なホテル?

(カルロス矢吹)まあ、怪しい感じじゃないんですけど、宗教家みたいな人で。ガンジーの写真とか、イエス・キリストの写真とかいっぱい飾ってあって。なんで安いのか?っていうとそのオーナーさんがずっとそこにいて、夜はその人が1人でやっているんですよ。

(ピエール瀧)ああ、管理人というか?

(カルロス矢吹)だから人件費を削って、自分の身を削る代わりに……朝と夕方はハウスキーパーみたいな人に入ってもらって、そこで朝と夕方は慈善活動に行くというような人なんですよ。

(ピエール瀧)で、そこに泊まって「じゃあ、僕もやります」っていう?

朝6時から炊き出しの仕込みの手伝い

(カルロス矢吹)そうなんです。ホテルからのメールにもうそういうことが書いてあって。まあ、面白そうだからやってみようと思って行ったら、まず朝は6時に起きて、7時にキッチンに移動するんですよ。で、エプロンをつけて料理を2時間かけて仕込むんです。

(赤江珠緒)ああ、料理もするの?

(ピエール瀧)えっ、できる・できないは関係ないの?(笑)。

(カルロス矢吹)そうです。「とりあえず、来い」と。で、来て、野菜を切ったり、包丁を持つのが怖い人はレタスをちぎったりとかいろいろと作業があるんで。で、作ったメニューがまず、炊き込みご飯ですね。ライス。

(ピエール瀧)はあ?

(赤江珠緒)ニューヨークで?

(カルロス矢吹)ニューヨークで。野菜がいっぱい入ったサフランライスみたいな。で、あとはサラダ。トマトとかレタスとかパプリカとかいろいろと入った。で、ケーキですね。

(ピエール瀧)甘い物も。

(カルロス矢吹)ケーキも作って。あとはフレッシュジュース。この4つを2時間かけて大量に仕込んで。それを全部車に積んで。それで近くの公園脇みたいなところにテーブルを出して。それでドンと置いて配膳をするんですけど。まず、サラダとか炊き込みご飯とかもいま、ニューヨークってベジタリアンの方とかがすごく多いので。あと、アレルギーに対する知識とかもすごく広がっているので、もう完全にグルテンフリーのアレルギーにもすごく配慮をしたメニューで炊き出しも揃えてあって。

(ピエール瀧)なるほど!

(カルロス矢吹)で、それをバーッと並べたら、ホテルのオーナーさんがまず法螺貝を吹くんですよ。

(ピエール瀧)法螺貝?

(カルロス矢吹)法螺貝。本物の。すっごい大きい法螺貝を「ブオオォ~~~♪」って吹くんですけど、そうするとどこからともなくいろんな人が集まってくるんですよ。

(ピエール瀧)へー!

(カルロス矢吹)で、一列に……もうみんな慣れているんで。一列にちゃんと列を作って。で、こっちでお皿も用意するんですけど、人によってはもう大きなすごいタッパーを用意していて、夜の分も取っていくような感じでみんな並ぶんですけど。それを見て、僕もびっくりしたのはホームレスがほとんど来ないんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(カルロス矢吹)もう、普通の人が並ぶんですよ。

(ピエール瀧)ええっ? 会社員とか?

(カルロス矢吹)そうです。スーツで並ぶんですよ。で、すごい人になると、僕らが配膳する横で道路工事をしていたんですけど、「あ、来た来た。はい、休憩、休憩!」って、その列に並びだして。その作業の休憩が僕ら待ちだったんんですよ。

(ピエール瀧)はー! じゃあ本当にフリーランチとして使っている人も結構いる?

(カルロス矢吹)だからブランチぐらいの気分で。別に無理に4つのメニューを全部取らなくてもよくて。「俺、ケーキだけでいいわ」とか「サラダだけ」とか。全然自由に選べるんですよ。で、そんなに慎ましい感じでもなくて、割とみんな結構要求が強くて。

(赤江珠緒)タダなのに。

(カルロス矢吹)僕、サラダの配膳をやっていたんですけど、サラダがいちばん人気なんですよ。野菜がどうしても足りなくなるんで。

(赤江珠緒)野菜、高いですからね。

(カルロス矢吹)「トマトが足りない。トマトをもっと!」って言われて。「は、はい……」ってトマトをやっていたら、オーナーに「スピードが大事だから!」って怒られたりして(笑)。「すいません」っていろんな人に謝りながら。

(ピエール瀧)へー! それ、毎日やっているの?

(カルロス矢吹)月水金ですね。

(ピエール瀧)月水金。で、矢吹くんも含め、宿泊客というかそういう人たちがボランティアで手伝うんだろうけど、何人ぐらい手伝っているの?

(カルロス矢吹)全部で5、6人なんですけど、宿泊客は僕だけでしたね。「手伝うやつはあんまりいない」って言われました(笑)。

(赤江珠緒)ああ、泊まっても手伝うところまでやる人はいない?

(カルロス矢吹)いないって。で、要するにそのオーナーさんの考えに賛同している方が一緒に手伝っているという感じなんですけど、なんでそんなサラリーマンとか、あとは学生さん、工事現場の人とか子連れのお母さん。割とちゃんとした格好をした方が並んでいるのか?っていうと、ただただもうニューヨークの食事が本当に高いんですよ。物価が。

(ピエール瀧)ああーっ!

(カルロス矢吹)まず、外食をしようと思うと、少なくとも20ドルはかかるんですよ。だから2000円ぐらい。少なくとも。それにプラス、チップとか。で、ニューヨークはいま、もうお金さえ払えば世界中の美味しいものが食える街ではあるんですけど、その代りめちゃくちゃ高いんですね。で、「じゃあ、自炊すればいいじゃん」って思っている方もいると思うんですけど、マンハッタンとかブルックリンみたいな都市部になると、スーパーも高いんですよ。

(ピエール瀧)ああ、そこで売っている野菜がもう、土地代が価格に乗っかっているわけね。

(カルロス矢吹)で、もう食に対する意識が高すぎて、本当にオーガニックにこだわった高い野菜とかお肉しか売ってなくて、自炊で済ませようとしても10ドルを超えるぐらいの感じなんですね。で、その分、ニューヨークで働く人たちの給料っていうのは高いからいいんですけど、そこにどうしてもあぶれてしまう人たちっていうのがいるわけですよ。低賃金で働いている人とか、あとは学生さんとか。それから家計が苦しい主婦の方とか。そういう人が並んできて。ホームレスはいても1割ぐらいっていう感じですね。

(ピエール瀧)へー!

(カルロス矢吹)で、中華系のおばちゃんとかも、もう金の指輪をじゃらじゃらつけて並んでくるんですよ。でっかいタッパーを持って。そういう人に限って、サラダの前で粘るんですよね。「もっとよこせ、もっとよこせ」みたいに。で、やって、はけたらもう1周並ぶんですよ。その中華系のおばちゃんが。

(ピエール瀧)おおーっ!

(赤江珠緒)ええーっ! やっぱりちょっと日本の炊き出しでイメージするのとちょっと違いますね。

(カルロス矢吹)だから「ホームレスの炊き出し」っていう言い方はしないんですよ。「Meal Distribution」。直訳で言うと「食料配布」っていう風な名前でやっているんですけども。それで9時からずーっと1時間半ぐらい炊き出しをやったら、どうしてもライスが余るんですよ。炭水化物は多めに作っているんで。で、他のがはけたらもう1回、最後に法螺貝を鳴らして。それがお終いの合図なんですよ。

(ピエール瀧)はいはい。

(カルロス矢吹)で、「ああ、終わった」って思ったら「もう1軒、行くから」って言われて。「お前、まだ空いているだろ?」「まあ、いいけど……」「もう1軒行くから、手伝え」って言われて、その残ったライスをもう1回、車に積んで。別の炊き出し場みたいなところがあるんですよ。で、そこはもうガチのホームレスの人しか来ないようなところがあるんですよね。で、いまアメリカって若年者ホームレスって言われている人が全米中にすごく多くて。10代、20代のホームレスが。

(赤江珠緒)10代で!?

(ピエール瀧)まあ、仕事もなくて……っていう。

(カルロス矢吹)みんな、男の子が多いんですけど。これがまたよく食うんですよ、みんな。若いから。そうなると、ライスがいちばん人気なんですよ。そこは。

(ピエール瀧)ああ、腹持ちもいいしっていう。

(カルロス矢吹)とにかくみんな、お腹が空いているからっていうので。僕らが持ってきたらもう「待ってました!」とばかりに、我先にとライスを取っていって。結構余っていたんですけど、それがあっという間になくなって。で、空になったので「じゃあ、帰ろうか」ってオーナーに言われて、11時ぐらいに帰ってやっとキッチンに着いたら、「はい。じゃあ片付けしよう」って言われて。そこから30分かけてまた寸胴とか全部洗って(笑)。

(赤江珠緒)結構な作業量ありますね!

(カルロス矢吹)そう(笑)。結局ね、6時に起きて11時半まで延々ずーっとなんかやっていましたね(笑)。

(ピエール瀧)そうなんだ!

(赤江珠緒)でも、やっぱりそこに泊まるのは物価が高いっていうのもありますけども。普通のホテルに泊まるよりも圧倒的に安くなるんですか?

(カルロス矢吹)安いです。圧倒的に安かったですね。で、11時半に終わって、「お疲れ様。じゃあ、これ食っていいよ」って言われて、ちょっと残しておいたライスがあったんで。それを食ったんですけど、まあ美味い! もう労働の後のメシは本当に美味いんですよ! そんな大したもんを僕ら、作っていないんですけど。なんせ作っているのもプロのシェフとかじゃないんで。

(ピエール瀧)うんうん。

(カルロス矢吹)ニューヨークでそれなりに美味いもん、食いましたけどもどんな高いメシよりもそのライスが美味かったですね。

(ピエール瀧)ああ、やっぱりね。働くと美味いんだなっていうことだ。

(カルロス矢吹)で、まあ最初の話に戻るんですけど、じゃあなんでそんなことをしなくちゃいけないのか?っていうと、若年者ホームレスが増えているっていうのも理由は1個で。まあ、仕事がないわけじゃないですか。

(ピエール瀧)そういうことだね。

(カルロス矢吹)だからトランプさん、「Make America Great Again」って言うんだったら、トランプタワーで売っているトランプグッズを中国で作るんじゃなくて……。

(ピエール瀧)ああ、これメイド・イン・チャイナなの?

(カルロス矢吹)チャイナなんですよ、この土産物。

(赤江珠緒)あんなに中国とモメているのに?

(カルロス矢吹)そうなんですよ。全部メイド・イン・チャイナなんです、これ。

(ピエール瀧)「アメリカ人の雇用を創出して……」とか言っているのに。

(カルロス矢吹)それを言うんだったら、自分の土産物ぐらいアメリカで作って、アメリカに税金を収めましょうよ!っていう。

(ピエール瀧)ああ、そういうことだ。しかしその、メラニア夫人のボブルヘッドのメラニア夫人の顔、全く遠慮なく作っていていいね(笑)。

(カルロス矢吹)フハハハハハハッ!

(ピエール瀧)ねえ。いいなー。

(赤江珠緒)そうか。でもそんなにニューヨークって若い人が失業したりしているんですね。

(カルロス矢吹)多いですね。

(ピエール瀧)でもその、最初の炊き出しじゃないところ、2番目に行ったところとかにはもともとのホームレスの人とかが来ているっていうわけでしょう?

(カルロス矢吹)そうですね。

(ピエール瀧)そうかー。ねえ。

(赤江珠緒)ニューヨークならではの情報ですね。

(ピエール瀧)たしかに、外食も高いだろうし、自炊も高いだろうしっていう感じはするよね。

(赤江珠緒)アメリカ、野菜が高かったっていうイメージありますもんね。だからサラダとかちゃんと食べられないとか。

(カルロス矢吹)モーニングとかも高いんですよ。みんな、こだわりすぎちゃっていて、コーヒーが4ドル。マフィンが4ドルとかなんで、それにプラスしてチップも入れるとモーニングセットで1000円近く行くんですよ。

(ピエール瀧)まあ、そうね。行っちゃうかもしれないね。そうか。

(赤江珠緒)そう考えると、日本はもっとお手頃な価格でいいものが食べれますもんね。

(カルロス矢吹)牛丼380円ですからね。

(ピエール瀧)まあ、そうだね。それを考えると、朝定食もあるしね。うん。

<書き起こしおわり>

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