宇多丸と原田知世『時をかける少女』を語る

宇多丸と原田知世『時をかける少女』を語る アフター6ジャンクション

原田知世さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。宇多丸さんと映画『時をかける少女』について話していました。

時をかける少女

(日比麻音子)今夜のゲストは女優・歌手の原田知世さんです。よろしくお願いします。

(原田知世)よろしくお願いします。

(宇多丸)はい。もう先ほどのオープニングトークから私がもう地に足がついてない状態でして。なかなか様子がおかしい瞬間が出るかもしれませんが、ご容赦いただいて。なるだけ失礼ないようにしたいと思いますので……。

(原田知世)フフフ、ありがとうございます。

(宇多丸)ということで原田さん、来週水曜日、28日。ご自身のお誕生日に4年半ぶりのオリジナルアルバム『L’Heure Bleue』を発売されるということで。まずはアルバム完成、おめでとうございます。

L'Heure Bleue (ルール・ブルー)(初回限定盤)(DVD付)
Posted at 2018.11.21
原田知世
Universal Music =music=

(日比麻音子)おめでとうございます。

(原田知世)ありがとうございます。

(宇多丸)本当に久々のアルバムということで。

(原田知世)そうですね。はい。オリジナルは久しぶりなので。

(宇多丸)後ほど、このアルバムについては結構僕も縁のあるというか。知人で一緒に曲も作っている堀込高樹さんとか土岐麻子さんなんかも参加されていて。後ほど、お話をうかがいたいと思うんですが……これ、やっぱり私、宇多丸の番組に原田さんにお越し頂いたとなると、どうしてもキャリア初期の段階から。「そこからかよ」というお話をさせていただいてもよろしいでしょうか?

(原田知世)フフフ、わかりました(笑)。

(宇多丸)実は私、昨年角川シネマ新宿で開催された……。

(原田知世)はい。来てくださいましたね。ありがとうございました。

(宇多丸)あ、いやいや……。えっ、に、認識が?

(原田知世)もちろんです。前の方にお座りになっていて。あの時は結局ご挨拶ができなくて。失礼しました。

(宇多丸)あ、急に私、遡ってガチガチになっておりまして。『音楽と私』のセルフカバーアルバムのリリースパーティーという形で『時をかける少女』とミニコンサートがあるということで。

(原田知世)はい。させていただいたんです。

(宇多丸)ああ、そうなんですか!

(原田知世)そうなんですよ。それでご挨拶できず……でも、ずっと見てましたよ。

(宇多丸)あ、いやいや……。

(原田知世)宇多丸さんがいらっしゃるというのはうかがっていたので。すみません。わざわざお忙しいのに。ありがとうございました。

(宇多丸)とんでもない……。原田さんに認識されていると知ったら、即座に後ろの席に移っていたかもしれません。その時に本当に、もちろん『時をかける少女』。私も何十回目かだとは思いますが拝見して。その前、コンサートの最後の方でサプライズ出演という形ですかね。劇中で深町一夫役を演じていた高柳良一さんが登壇されて、花束を渡されてというあのくだりでもう僕、そこで泣いていましたからね。

(原田知世)ああ、そうですか。うれしいです。

(宇多丸)で、そこでのお話で高柳さんといまでも家族ぐるみでのお付き合いがあるというようなお話を……。

(原田知世)そうですね。はい。

(宇多丸)それで僕やファン的にはもう、劇中では深町くんと芳山和子さんはちょっと悲しい結末だった分……。

(原田知世)ずっと長くね、私が東京に出てきて本当にいちばん最初にお友達になったのが高柳さん。同じ事務所の先輩でしたし。電車の乗り方とか、もうなにもわからなかったので。高柳くんもたぶん大学生だったのかな? それで、そこから始まって。高柳さんの家もお子さんも大きくなられて。

(宇多丸)たぶん僕の横に座られていたのが高柳さん家族だったんでしょうね。

(原田知世)ファミリーが。そうです。

(宇多丸)だからそれを聞いて「ああ、ファンとしてうれしいな!」っていう。ものすごくほっこりした瞬間でした。

(原田知世)長いお付き合いをしていて。ラジオに出ていませんでしたか? 高柳さん、宇多丸さんと……。

(宇多丸)いや、直ではないですね。高柳さんはニッポン放送の総務部長?

(原田知世)フフフ、ごめんんさい(笑)。

(宇多丸)あ、いやいや、全然いいんです。全然大丈夫です。で、それもあるのか、高柳さんも僕のことをわかっていていただいて。上映後に「宇多丸さんですよね?」って。「ふ、深町くんから話しかけられた!」って。そこでも私、死にかけたということがございました。

(原田知世)はい(笑)。

(宇多丸)で、ですね、ちょっとだけ『時かけ』についてお話をうかがいたいのは……。

(原田知世)はい。フフフ、なんか……面白い(笑)。なんかいまの言い方が、ほら。おまわりさんとかが「ちょっとうかがいたいことがあるんですけど……」みたいな(笑)。

(宇多丸)「ちょっとだけいいですか?」みたいな(笑)。

(原田知世)結構ツボでした(笑)。

(日比麻音子)アハハハハハハッ!

(宇多丸)「任意の取り調べです」(笑)。

(原田知世)思わず(笑)。

(宇多丸)僕、原田さんにお会いしたらぜひおうかがいしたいなって思っていたのは映画デビュー作品じゃないですか。その前はテレビドラマもありましたけど。で、あの作品ってとっても変わった作品でもあるじゃないですか。大林宣彦さん独特の。83年当時でもあんな話し方をする若者はいなかったし。

(原田知世)いませんでしたね。

(宇多丸)そういうあたりで、原田さん的にも撮影当時はさぞかし戸惑われたと思うんですけど?

(原田知世)そうですね。すごく「これでいいんだろうか?」って思って。でも、本当に監督がおっしゃる通りにやっていましたね。うん。

(宇多丸)で、出来上がった作品をご覧になって……出来上がりも話としても若干暗いというか、ダークさがある話だと思うんで。ご自分で見てどうだったんですか?

違和感が次第に自然になる

(原田知世)でも、そうですね。あのしゃべり方とかとっても最初は違和感がたしかにあったんですけど、だんだんと慣れて見ていくうちに2人が歌いだしてもすごくそれが自然に……本当に物語の世界の中に完全に連れて行ってもらえるというか。現実から離れたところに連れて行ってくれる作品なんだっていう風に思いましたね。ファンタジーの世界に。だから、なんだろう? こんなに長くいろんな方が新しく作品を作られたり、あの映画に影響を受けた方がまた別の作品を作られたり。そういったものってなかなかないものなので。うん。私は最初にそういう作品に出会えたことが本当に幸せなことなんだなって思いますね。

(宇多丸)うん。いや、まさにおっしゃっているように、僕はリアルタイムの映画館の雰囲気が……まあ同世代の若者たちが見ているわけですけど。最初、大林宣彦一流の現実から遊離したような感じにみんなものすごく戸惑っていて。ちょっとクスクス笑ったり。

(原田知世)そうですね。あの頃でもそうでしたよね。

(宇多丸)ってしていたのが、やっぱり一気に……前にいた大学生がずーっと最初は私語していてね、「うるせーな!」って思っていたんですけど、最後は彼らも含めてみんな、最後の歌のところで大拍手になっていて。やっぱりまさにおっしゃられていたように、見ながら引き込まれるみたいな。

(原田知世)そう。なんか心のすごいピュアな部分が引き出されてしまうっていうか。ちょっと突っ張っていたりとか、なんかあれをしていても、きれいな美しい心があれによって引き出されるような感覚。

(宇多丸)はい。僕、いまだに、49歳のおじさんですけども見ていて、自分の中の乙女ゾーンがものすごく引き出されますから。

(原田知世)うん。そういう力を持っていると思いますね。

(宇多丸)でもここまでずっと長年に渡って、ある意味大林作品の中でも突出してカルト的な人気を誇る作品になっていって。そういうのがちょっと呪縛じゃないですけど、重荷に感じることってありませんでした?

(原田知世)そうですね。やっぱり……そのイメージがずっとあって。自分自身はどんどん芳山和子さんよりも歳を取って大人になっていって。そこは感じるところは実際にありますね。うん。ありました。だけど、でもいつの間にか……もういまではね、本当に愛おしくさえ思います。あの時代の自分が幼すぎて。もっと前だと「恥ずかしい。見られたくない」みたいなのがあったのに、もういまはなんかすごく、うん。あの一瞬を映画の作品に残せていること自体が素晴らしい、すごいことですし。

(宇多丸)真空パックっていうかね。

(原田知世)そうですよね。で、あの一瞬ってもう、本当に自分でもおそらくあの中学から高校に上がるあの春休みしか、あの表情はたぶん撮れなかったと思うんです。だから、すごく奇跡のような作品だし、自分にとっても宝物ですよね。1年たっていたらあの感じは出せないし、その前でも無理です。

(宇多丸)本編のものすごく人工的に作り込んだところから、最後のカーテンコールで最後に原田さんが向こうから駆け寄ってきて。画面に向かって満面の笑みで拍手っていう。だからまさにあの瞬間の……いまだに見るたびに「この少女の未来に幸あれ!」って拍手をしちゃうんですよ。

(原田知世)フフフ、うんうん。

(宇多丸)それでいまご本人が時をかけてここにいらっしゃるっていうのがもう本当に僕は……いま、自分で話していてクラッとしてきたっていう(笑)。

(原田知世)うん。そうですね。なんか自分なのに客観的にそう思います。そんな風に「幸せになってね」って思えるぐらい、自分の作品なのにそういう風に思えるようになってきたというか。

(宇多丸)ああ、でも原田さんのご本人の口からそれが聞けると、ファンとしてもうれしい限りです。

<書き起こしおわり>

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