ライムスター宇多丸さんが出演する東京MXテレビ 5時に夢中サタデー!で朝日新聞の記事に反論。その記事は「イライラするカタカナ語」。IT技術の進歩によりビジネスの世界だけでなく日常でも自然に飛び交っているカタカナ語。しかし、わざとらしいカタカナ語にイライラする人も多いと報じる朝日新聞の記事。特に、そんなわざとらしいカタカナ語の代表格として、「リスペクト」や「マスト」などを記事では紹介し、「リスペクト」という言葉に対する「『尊敬する』でいいじゃん」・「『尊敬』の重さが軽々しくなる」などといった読者の意見を取り上げていました。この記事に対して宇多丸さんが語ったことは・・・
(町亞聖)はい、ということで逆にね、日本語で言ったら意味がわからないみたいな意見もあったり・・・
(宇多丸)ニュアンスが違うものとか、どうしても日本語だとちょっと長くなっちゃうみたいなものがあるじゃないですか。だからこの手のね、おじさん的な「物申してやる」的な記事・・・余計なお世話だよ!
(町亞聖)宇多丸さん、嫌なことあったんですか?
記事自体がケンカを売っている
(宇多丸)もう、まずね、この記事自体完全に俺にケンカ売ってますね。ライムスター、1999年のサード・アルバム、タイトル「リスペクト」です。すみません!しかも、99年のリスペクトっていうアルバムを出した時に、まさに朝日新聞に「最近の日本人ラッパーは右傾化がどうのこうの」・・・しかも、ロクにアルバムも聴いていないような記者がなんか揶揄するような記事を書いたので、当時やっていた連載と連動して長文の反論の手紙を送って、文句あるんならこれに返して来いみたいな。全然(返事が)返ってきませんでしたけど。チキンな朝日新聞が!
(町亞聖)まさに(この記事に)リスペクト・・・十何年経っても同じ事書いているんですね。
(宇多丸)99年ぐらいの時はまだ、(リスペクトは)若者でも使っている人が少なくて、要はHIP HOPやレゲエ用語的なニュアンスだったんですね。で、「軽い」って言うけれど、「尊敬」というよりは「敬意」・・・『お前に敬意をはらうよ』みたいな。そういう軽い意味もあるので、この(記事の)人の言うように、だから軽いニュアンスが入るんだから、「尊敬」とは違うんだよ!
(町亞聖)同じ記者の方じゃないんですか?
(宇多丸)同じ記者じゃないです。その人は「西田さん」って人で・・・
(玉袋筋太郎)名前まで言っちゃったよ。
(宇多丸)西田さんね、今でもご健筆をふるってらっしゃいますね。はい。なんですけど、とにかくね、こんなのはその業界の中で、ある集団の中で使われる言葉じゃないですか。たとえばコンピューター用語だとかっていう話であって。それを外側から見てね、自分で勉強もせずに、やれ分かんないって言って、なにか「言ってやった」的な、薄っぺらな批判的な・・・
(町亞聖)これ以上続くと愚痴になっちゃうので、次行きましょうかね。
(宇多丸)ちなみに「ディスする」って最近よく若者使いますけど、「ディス・リスペクト」から来てますんで。本当にもう「ディス」してやりたい気持ちでいっぱいですよ!
(玉袋筋太郎)まあまあまあまあ。でも分かんないカタカナって多いからさ。
(宇多丸)ヴァ◯ナとかペ◯スとか!
(玉袋筋太郎)それは分かるけど、「ブスタマンチ(※ブラジルの総合格闘家・柔術家)」だとか「ドルゴルスレン・ダグワドルジ(※朝青龍の本名)」とかさ。
(宇多丸)聞いたこと無いです!
(玉袋筋太郎)わかんねーんだよなー。
(宇多丸)なんですか、今の?
(玉袋筋太郎)「ガララーガ(※メジャーリーガー)」とか、わかんねーんだよ。
(宇多丸)何語ですか?
(玉袋筋太郎)わかんねーんだよ。「アレハンドロ・ホドロフスキー(※映画監督)」とか。
(宇多丸)それは映画監督!
(町亞聖)それじゃあ、ググってみましょうかね。
(宇多丸・玉袋筋太郎)ググれ!ググれ!
<書き起こしおわり>
※宇多丸さんが触れていた1999年の朝日新聞の記事、ネットに情報が落ちていました。以下、引用です。
探検キーワード『リスペクト』 ~ラップで語る空虚な倫理~
『○○をリスペクトする』『リスペクト××』。若者の間で、この言葉をよく 耳にする。英語のRESPECT(尊敬、敬意)をカタカナ化しただけだが、少し気になる。人気バンドのドラゴン・アッシュは「父への尊敬、母への敬意」と歌い、『リスペクト』と題された別のグループのアルバムには、軍服姿で帯剣した写真が載る。様々な価値観が壊れつつある今、若い世代に封建的な価値観を求める動きがあるのだろうか。(西田健作)
リスペクトという言葉は、黒人が生み出したヒップホップによってニューヨークから日本に入ってきたそうだ。ターンテーブルでレコードを回し、ラップを刻むヒップホップで、なぜリスペクトが多用されるようになったのか。音楽雑誌『ロッキング・オン・ジャパン』の編集長、山崎洋一郎さんに聞いてみた。
「黒人と白人では音楽のとらえ方が微妙に違う。奴隷として連れてこられた黒人は、ビートがあるアフリカの音楽をルーツとする。リスペクトは、黒人音楽を発展させてきた先人に対する敬意を表すために使われるようになった」。どちらかというと先人への反発が強いロックとは違い、自分たちの歴史を意識することから生まれた言葉、か。なるほど。
「ヒップホップは黒人の歴史の改革運動だった」と話すのは米国の黒人社会に詳しい工学院大学非常勤講師の酒井隆史さん(社会学)。白人中心の米国で、白人に同化することは、苦難にあえぐ同胞を忘れていくことにつながる。ヒップホップは、黒人の置かれた現状を変えていく武器として、先人に対するリスペクトを主張してきたと言う。「黒人歌手のジェームス・ブラウンをリスペクトし、彼のレコードを回して自分のラップをぶつけることは、過去と現在の歴史をつなげることになるのです」だが、人種のあつれきを肌で感じることが少ない日本では、リスペクトの使われ方がかなり違ってきているようだ。ヒップホップを取り入れたドラゴン・アッシュの曲には他にも、「この地この国に生を授かり」「日出ずる国に生まれ育ち」というように、ドキッとする言葉が出てくる。ライムスターという別のグループは、アルバム「リスペクト」の一曲で、マイクを持った自分らを刀を手にした侍に例えている。
「心や体の痛みを、紋切り型ではなく自分の言葉で語るべきなのに、なぜ、飲み屋で親父が説教するような空虚なモラルで語ってしまうのだろうか」と酒井さんは心配する。「ヒップホップのメンバーの多くが男性で、マイノリティー性を背負った女性ではないこと、日本のヒップホップグループの多くは中流以上の階層が中心だったこと、さらに『日の丸・君が代』の法制化という時代の空気も反映しているのでしょう」
その上で酒井さんはこう主張する。「日本にも沖縄や在日などマイノリティーの人々が造り上げたヒップホップが、逆にマイノリティーを抑圧する側に回ってしまうことに、もっと想像力を働かせるべきです。」一方、山崎さんは「封建主義への回帰では決してない」と話す。「ドラゴン・アッシュが『父を尊敬する』と歌っても、それは自分のお父さんであって『父』という立場ではない。『日出ずる国』といった表現についても、一つの舞台を選んだにすぎない。外国に舞台を借りなくても表現できるようになった感性の成熟と見たほうがいいのではないか」
雑誌でドラゴン・アッシュを思想的に批判したエッセイストの三田格さんは、リスペクトを「共同体が断片化していくなかで、若者にとっては誰かとつながっていたい心の動き」とみる。「米国と違ってコミュニティー意識も人種意識も希薄なので、誰に感情移入していいのか分からない。だから例えば『リスペクト坂本竜馬』といって、竜馬とつながったような気になっているのではないですか」
(以下略)