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町山智浩『1987、ある闘いの真実』を語る

町山智浩『1987、ある闘いの真実』を語る たまむすび
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(町山智浩)で、「私たちはそんなことをしていないのに……」って言うと、「君たちには家族がいるだろう? 家族がどうなっても構わないのかね? もしこれで君たちが『拷問をやった』っていうことにしてくれれば、君たちの罪は後でいくらでもごまかして軽くする」と。

(山里亮太)ああー……。

(町山智浩)これもどこかで聞いた話ですね。

(山里亮太)「やったということにしてくれれば」と。

(町山智浩)「……さらに退職金や恩給などで家族もお金の面倒も見るから」って言ってその2人に罪を押し付けて刑務所にぶち込むんですよ。で、全斗煥大統領自身もその学生が殺されたことに関してデモとかが起こっているんですけども。選挙を求める運動も起こっているんですけど、「選挙はしないけど、うちの党内で後継者を決めるから。政権はちゃんと移譲するから」っていう形で自体の沈静化を図るんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)濡れ衣と党内人事で。ところが、その刑務所に入っている2人の濡れ衣を着せられた刑事のところに警察官が面会に来て、口車を合わせようとするんですよ。これはでも、当然面会に来ている状態だから。刑務所っていうのはかならず面会に来ている人との会話は聞くことができるわけですよね。刑務官がそこに立ち会っているわけですよ。

(赤江珠緒)そういうことですよね。

(町山智浩)で、刑務官は口車を合わせようとしているその場にいるわけですよ。でも、かならず面談記録っていうのは残しますよね。刑務所って。で、面談記録を残すんですけど、そうするとそこに大物が来まして。その事件を全部仕切っている警視総監のすぐ下のナンバー2のバク・チョウォン治安監っていう人がいまして。これは警視総監のナンバー2なんですけども。その人が「書類とか面談記録とか全部、破棄しろ。焼却しろ」って言って。「証拠文書を全て消滅させろ!」って言うんですよ。

(赤江珠緒)うわー……。

(町山智浩)どこかで聞いたような話なんですけども。

(山里亮太)たしかに……。

(町山智浩)で、どうなるか?っていうと今度はその刑務官、看守がその消滅させたふりをした面談記録をなんとかマスコミに流そうとするんですよ。

(赤江珠緒)すごい! 奇跡的に心ある人が要所要所でいたということですね。

(町山智浩)要所要所にいたんですね。というのをずっと描いていくのがこの『1987、ある闘いの真実』という映画なんですね。で、これがすごいのはまず多くのシーンが……デモとかいろいろな状態があるんですけども。当時の記録映像をかなり忠実に再現しているんですよ。車とか服装とか景色とか、現在とはかなり違うわけですけども。ただ、それが後半にSFXスタッフがザーッとクレジットで流れるので。相当コンピューターグラフィックスでやっていますね。それと、リアルなだけじゃなくて出てくる書類、文書がありますよね。証拠文書。それも本当の現実のものを再現しています。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)その後、裁判になっているのでね。でね、ただこれがすごいのは、文書を運んだりするっていうのがすごく難しいんですよ。当時、交差点ごとに警察官がいるんですね。で、検問があるんですよ。だからそれをいちいち突破しないと道を何ブロックか歩くこともできないっていう状態なんですね。その当時の韓国は。

(赤江珠緒)そんなに厳しかったんですね。

(町山智浩)はい。これは映画になっていますけども、『サニー 永遠の仲間たち』っていう映画が何年か前にあったんですね。で、日本でちょうどいま、リメイクされて公開されているんですけども。あれの舞台が1986年でこの事件の前年なんですよ。で、あの映画の中で女の子たちがちょっと歩いているだけでも次々に検問があって……という状況があるんですけど。あれがかなり忠実なものなんですね。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)あと、デモをやる時にもデモは一切禁止。反政府活動とか反政府的なことを言うのは全て一切禁止の中でデモをやるっていうのもね、なかなか面白いんですよ。つまり、「デモをやります」っていう許可を取ることはできないんですよね。全て違法だから。全員逮捕されちゃうんです。だから、まあデモがあることを気がつかれないようにするんですよ。っていうのは、デモがあるとわかったら警察が……その頃、戦闘警察っていう完全な戦闘部隊がいるんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)それがもう完全武装で突入してくるし。あと、白骨部隊っていうのもあって。これはね、『タクシー運転手』にも出てくるんですけど、私服の暴力部隊なんですよ。だからこれがいろんなところにいるから、デモをする時に完全に潰されちゃうから、デモはどういう風にやるかというとその頃、ネットとかはないですが。いろんな形でみんなに伝えてフラッシュモブみたいにしてやるんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)「○○に集合」とかって言って。もうそこに普通の通行人として集まって、時間が来た時に一斉にデモを始めるんですよ。完全にフラッシュモブみたいですよ。

(赤江珠緒)そうですね。でもネットとかない時代にそれだけ広めるって難しいことですよね。

オールスターキャスト

(町山智浩)そう。大変なんですよ。そういうのもなかなか面白いんですけども。この映画、まず見どころは俳優たちが結構オールスターで。さっき言った黒幕の事件つぶしをやるパク所長を演じている人。この人はキム・ユンソクっていう人で、さっき言った『チェイサー』っていう映画でデリヘル屋の親父をやっていた人ですね。殺人鬼であるハ・ジョンウと戦うデリヘル経営者のいい親父。正義のデリヘル親父をやっていた人です。

(山里亮太)はじめて聞いた単語ですね。「正義のデリヘル親父」って(笑)。

(町山智浩)で、今回は髪型が昔の梅宮辰夫さんみたいになっていて。わかるかな、昔の梅宮辰夫さん。

(赤江珠緒)ああー、親しみありますね。なるほど。

(町山智浩)『不良番長』のころの梅宮辰夫さんなんで。この人、警視庁のナンバー2であるにもかかわらず、体のでっかい刑事とかが逆らったりすると素手でボッコボコにしめちゃうんですよ(笑)。さすが不良番長だ!って思いましたけども。それと、反逆のチェ検事、ハ・ジョンウが戦うんですけども。このへんが完全にノワールになっていて、本当じゃねえだろ! 作りすぎだろ!っていう感じになっていて。完全にエンターテイメントなんですよ、この映画。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)だからこのパク所長が言うわけですよね。「検事だとか言ってるけど、お前らはただの猟犬だ。飼い主に言われた獲物だけを追ってりゃあいいんだ」って言うんですけど、そうすると検事が「あのな、俺ははぐれ犬さ。お前にも噛み付くぜ! 楽しみにしな!」とか言うんですよ。それ、ノワールだろ?っていう(笑)。

(赤江珠緒)そんなセリフを(笑)。

(町山智浩)警視総監と検事が話し合うような内容じゃねえだろっていう(笑)。お前は東映映画か?って思いましたけども。そういうところで徹底的にエンターテイメントなんですよ。

(赤江珠緒)内容自体は骨太っていうかヘビーな内容ですけども。

(山里亮太)この間の『タクシー運転手』も内容は歴史の中ですごい事件だったけど、見せ方としては楽しい映画として見せていましたもんね。

(町山智浩)これも完全にレジスタンス映画として、いかにどうやって書類を渡すか、どうやってリークするかっていうサスペンスで見せていくんですよ。

(山里亮太)町山さん、あれもあったじゃないですか。ご紹介いただいた教会内での出来事を新聞社が……。

(赤江珠緒)暴いていくっていうね。

(町山智浩)はいはい。『スポットライト 世紀のスクープ』っていう映画でしたね。あれとも非常に近いですけども。でも、韓国映画だからもっとサービスをしていますよ。

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(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)たとえば、1人の女子大生がいて。その子はファッションとコスメと男の子にしか興味がないんですね。かわいいんだけど。で、それは『お嬢さん』っていう映画に出てきた美少女のキム・テリちゃんが演じているんですよ。

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(赤江珠緒)ああー、あの映画の。お手伝いさん役をやっていた。

(町山智浩)かわいかった子。彼女はデモとかそういうのが嫌いなんですよ。で、「政府に逆らうとかそういうの、よくないと思うわ」とか言っているんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)「デモなんかしたって世の中変わらないわ」って言っている女の子で。まあ、そういう普通の一般の人たちを象徴しているんですけども。彼女は「やっぱりこの政府はおかしい。これは倒さなきゃならないんだ」っていうことに目覚めるのは、ある学生の運動家と出会うからなんですね。なぜなら、彼がイケメンだからなんですよ(笑)。

(赤江珠緒)理由はそういうところから入っていった(笑)。

(町山智浩)まあ、そういうところから入ってくるのが基本なんですけども。で、その学生を演じているのはカン・ドンウォンというイケメン俳優なんですけど。37歳で大学生でふざけるな!って思いましたけども(笑)。

(赤江珠緒)フフフ(笑)。

(町山智浩)このカン・ドンウォンが演じているイ・ハニョルという学生さんは非常に重要な人物です。民主化運動では。いま流れているのはその韓国の民主化運動の時の歌なんですね。『その日が来るまで』という歌なんですけど。まさに民主的な選挙が行われるまでということを歌った歌なんですけど。だから韓国がいま現在、まあこの間の朴槿恵大統領をデモで辞任に追い込んだというのはこの時、1987年に彼らが本当に実際に闘って勝利を得たからという経験があるんですよね。

(赤江珠緒)韓国は民主化を自分たちで勝ち取ったみたいなところがあるんですね。

(町山智浩)あるんですね。それで、だからいま作られた映画なんですよね。で、これは韓国がどんどんどんどん豊かになっていって中産階級ができていって、それで自分たちは国民なんだ。国民が国を決めなきゃいけないんだっていうことに目覚めていったからこそ、起こった事件で。しかもテレビとかの普及ですごくマスコミとかの力が強くなっていく過程で起こったことなんですけども。だから景気がよくなっていったこと。それから中産階級がどんどん増えていったこと、力が増えたこと。それからマスコミが強くなっていったことの中で民主化が達成されていったという形なんですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)だからソウルオリンピックは非常に素晴らしいオリンピックになったんですよ。その民主化の後のオリンピックだから。

(赤江珠緒)ああ、そうだったんですね。

(町山智浩)それはもう本当に韓国の再生のオリンピックになったのは、この1987年があったからなんだっていうことなんですよ。

(赤江珠緒)ふーん! そんな歴史があったんですね。

(町山智浩)日本のことを考えると、完全に逆の状態で。中流がどんどん崩壊していって、マスコミがどんどん弱くなっていく中でオリンピックに向かっていっているというのが非常に面白いなと思いましたね。

(赤江珠緒)はー……。なんかちょっと考えさせられますね。

(山里亮太)これ、見たい!

(町山智浩)非常に素晴らしい映画でした。

(赤江珠緒)今日は『1987、ある闘いの真実』。こちらは9月8日、日本で公開。もう間もなく公開となります。本当の歴史ということでね、じっくりと見るのもいいかもしれません。

(町山智浩)はい。イケメンもかわい子ちゃんも出ますんで。

(山里亮太)そうか。『お嬢さん』のあのお手伝いさんが出るんだ。

(町山智浩)僕は梅宮さんのファンです。はい(笑)。

(赤江珠緒)フフフ、ありがとうございました!

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

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