(町山智浩)でね、ちょっと今日は知られていない映画で『キスカ』っていう映画の話をしたいんですが。『太平洋奇跡の作戦 キスカ』っていうものなんですが、これは日本がアリューシャン列島というアメリカのアラスカのあたりにある国土を占領したことがあるんですよ。一瞬だけ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)1942年、43年に日本がそこにあったアッツ島という島とキスカ島という島を占領したんですね。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)日本ってアメリカの国土を占領していたことがあるんですよ。ただ、そこがほとんど無人島みたいなところだったんで、結局占領をした後にミッドウェー海戦で負けちゃったりして、そこが戦略上意味がなくなっちゃうんですよ。占領したのに。で、どうするか?っていうと、日本軍が海外のいろんな島に行きましたけど、そのほとんどを見捨ててしまいましたよね。兵隊たちを。
(赤江珠緒)そうですね。
(町山智浩)で、多くの兵隊さんたちが敵と戦って死ぬというよりは、自ら万歳突撃をして自滅したり、自決したり、あとは餓死したり。まあほとんど自滅していったわけですよね。見捨てられて。ガダルカナルだったり沖縄だったり硫黄島だったり。ほとんどは自滅していく形で見捨てられていったわけですけども。
(赤江珠緒)そうですね。援護がないという状況でね。
(町山智浩)そうですね。「死んでこい!」っていう世界ですよね。ところが、このキスカだけはそこにいた5200人の兵士を全員救出しているんですよ。
(赤江・山里)へー!
(町山智浩)これは三船さんがいたからですよ。
(山里亮太)はー!
(町山智浩)いや、いないんですけども(笑)。
(山里亮太)三船さんがやるから「救出する」っていう物語だと。
(町山智浩)木村(昌福)中将という将軍の役をやっているんですけども。まあ名前だけ「大村」っていう風に映画の中では変えていますけども。彼がものすごく緻密な作戦でこの5200人を救出する映画がその『太平洋奇跡の作戦 キスカ』っていう映画なんですよ。
(赤江珠緒)ああ、じゃあ実際にその史実をベースに。木村中将の采配で助かったということなんですか?
(町山智浩)そうなんですよ。これ、映画の中では大村少将ってなっていますけども。(作戦の当時は)木村少将ですね。で、彼がすごいのは、とにかく絶対に助けるんだっていうことで無茶な作戦をしようとしたり、「もう行きましょう!」っていうのを全部止めていくんですよ。「勝たなければ意味がないんだ。気合じゃないんだよ」っていう。
(赤江珠緒)うんうん。
気合ではなく、緻密な作戦で仲間を助ける戦い
(町山智浩)要はほとんどが気合で行ったりしていたんですよね。沖縄なんかでもやらなくてもいい突撃をやったりしているんですけども。「そうじゃなくて、勝つことが大事なんだ。メンツとかそういうんじゃないんだ。耐えることも大事なんだ」って緻密にキスカの5200人を助けようとするっていう話なんですよ。
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(町山智浩)『沖縄決戦』、海軍がアメリカ軍の軍艦に対して神風特攻を仕掛け続けているから、陸軍も特攻しなきゃいけない!みたいな話になってくるんですよ。粘ればいいのに『総攻撃を仕掛けよう!』みたいに。メンツの問題で。— みやーんZZ (@miyearnzz) 2018年8月14日
(赤江珠緒)はー! やっぱり上に立つ人の采配でずいぶんと結果が違うんですね。
(町山智浩)そうなんですよ。ただね、決死の作戦で。戦艦というか駆逐艦を連れて行くんですけども、ものすごい霧の中を通らないといけないんですね。敵が囲んでいるから。米軍艦隊が周りを囲んでいるからそこを突破するには敵が撃ってこれないようにものすごい霧の中を進むんですよ。だから、自分たちも見えないんです。非常に危険で、いろんな岩礁とかあるわけですね。そこに激突しそうになりながら行くんですよ。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)テレビゲームとかにするとすごい感じなんですけども。で、しかもアメリカ軍はレーダーで撃ってくるんですよ。目視できないから。だから砲弾が雨のように降り注いでいる中、岩礁を避けながら進んでいくわけですよ。すごい作戦なんですね。で、これは映画としても円谷英二さんが『ウルトラQ』というウルトラシリーズの第一作をやる直前の状態なんですね。これ、1965年の映画なんで。だから円谷の特撮がもう脂が乗り切っている時にやっていますんで、この戦闘シーンとか海上を突き進んでいくシーンとか、ものすごい東宝特撮の粋が込められていて素晴らしい映画になっていますね。
(赤江珠緒)はー! それはまたすごい。円谷プロの方たちが。
(町山智浩)円谷っていうのはもともとさっき言ったうしおさんとかと一緒に第二次大戦中に『ハワイ・マレー沖海戦』っていう映画で真珠湾攻撃とか、あとプリンス・オブ・ウェールズっていうイギリスの戦艦を沈める時の空戦を映画にしているんですよ。戦時中に。特撮で。
(赤江珠緒)へー! 戦時中に?
(町山智浩)戦時中に円谷英二は。で、あまりにもよくできているから、アメリカ軍はそれを全部記録フィルムだと思っていたんですよ。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)でも、全部ミニチュアだったっていう。
(山里亮太)それ、いまも見れるんですか?
(町山智浩)いまも見れますよ。
(山里亮太)見たいな、それ。
(町山智浩)だから円谷英二の特撮っていうのは異常だったんですよ。世界的な水準の中では。
(赤江珠緒)そこに三船さんの演技も入る。
(町山智浩)そうなんですよ。しかも、日本軍の話だともう陰惨だったりひどいことをしたりするんじゃないか?って思うじゃないですか。そういうの、一切ないですから。三船さん、1人も殺さないですから。「助ける」戦いなんですよ。だから僕、『ダンケルク』っていう映画が公開された時、「これは日本が先にやっているよ」って言ったのはそういうことなんですよ。「『キスカ』があるよ。殺さない戦いの話があるよ」って言ったんです。
町山智浩『ダンケルク』を語る https://t.co/kvzkZZGKZo
キスカの方も映画になっていますね。『太平洋奇跡の作戦 キスカ』という映画で1965年に映画化されているんで。円谷英二監督の特撮が素晴らしいんで、ぜひご覧になってください。はい。(町山智浩)— みやーんZZ (@miyearnzz) 2018年8月14日
(赤江珠緒)そうなんだ。それが『太平洋奇跡の作戦 キスカ』。
(町山智浩)そうなんです。助けることの方が偉大な戦いなんですよね。
(赤江珠緒)本当ですね。
(山里亮太)これ、DVDとかでいまも見れるんですね。
(町山智浩)いま、いろんなので見れます。ネット配信とか、いろんなので。
(赤江珠緒)そうですか。ふーん!