安住紳一郎 飛行機乗り継ぎ失敗で降ろされたミュンヘンの辛い夜を語る

安住紳一郎 飛行機乗り継ぎ失敗で降ろされたミュンヘンの辛い夜を語る 安住紳一郎の日曜天国

(安住紳一郎)そうです。それでその連絡しなきゃいけない、みたいな。なかなかね。本当にその、知らないところに夜中に着いて、知らない人にどこか連れていかれるっていうのは怖いね。しかも、初めてのドイツ人で。にっこりともしない怖いドライバーがタクシーで1時間も走って。しかもドイツの国内、高速道路飛ばしますでしょう? 制限速度120、一般道は80ですか? まあ、自動車に自信のある国なんでそれぐらい飛ばすみたいですけどね。でも、初めて着いたドイツで夜中に、ねえ。ドイツ車のバタン! みたいなドアを閉められて。それで、知らない道を真っ暗な中……私、スピードメーター見ましたけど、140から150は出ていましたよ。「ううーっ!」って思って。後部座席でもう、「どれぐらい行くのかな……」みたいな。「アイ・ラブ・ジャーマニー」みたいな(笑)。

(中澤有美子)とりあえず(笑)。

(安住紳一郎)とりあえず言っておいてね、機嫌を取ってね。で、暗闇の中を140キロぐらいで。多分タクシーの運転手さんも無理やり飛行機会社に呼ばれたみたいな感じで、ちょっとご機嫌悪いですね。それで1時間ぐらい走ったのかな? 真っ暗な中、降ろされて。で、窓のない大きな建物が並んだ、なんかでまっすぐな滑走路みたいな道路があって。人口都市みたいなところで降ろされて。私、刑務所に収容されるのかな?って思って。原田さんと「ここ、なんですかね?」みたいな。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)で、幕張メッセみたいな、ちょっと無機質な大きな建物が本当に見渡す限りに20棟ぐらい建っているのかな? で、売店とかないですし、人の気配もないんですよね。ちょっとなんか、三菱重工相模原工場みたいな。「なんですか、ここは? ええっ?」みたいな。そしたら、続々とその乗り継ぎに失敗した人たちがタクシーで送り込まれていて。ねえ。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)で、スペインも40度ぐらいあったんですよ。で、東京も35度を超えてましたもんね。それで私も35度から40度……世界的に猛暑っていうことだったんですけども、なぜかミュンヘンは13度、小雨。

(中澤有美子)フハハハハハッ!

(安住紳一郎)「はあ?」みたいな。全然猛暑じゃない。

(中澤有美子)辛い! 着るもの、ない!

(安住紳一郎)着るものないでしょう。で、カバンは預けちゃってますからね。原田さんも私もウェストポーチひとつ、みたいな。「寒い! ハロー、ミュンヘン!」みたいな。「とてつもなく寒い。小雨。傘ない……ええっ? あれっ、ヨーロッパって猛暑だったんじゃないですか?」みたいな。13度、小雨。いかついドイツ人。夜中。真っ暗。怖い! で、ドアを……ドイツっていうのは工業製品が重厚ですね。傘を借りたんだけど、傘開けたらバハン! ビャーン! みたいな。機関銃みたいな傘が開いちゃって。持ち手がドイツ車のハンドルみたいなごついやつで、もうボタン……親指が押しちぎれるんじゃないか?っていうぐらいに押したらブワーッ!って開いちゃって。もうそれで「ビクッ! なんだ!?」みたいな。

(中澤有美子)アハハハハハッ!

(安住紳一郎)で、なんか案内されてドアを開けるとシングルルームがもうなんか160室ぐらいブワーッて続いていて。向こうの端が見えないみたいな。そこでみんな、次々と「行け、行け!」みたいな感じで。

(中澤有美子)収容されていくんだ(笑)。

(安住紳一郎)「収容」とは言っていません。いけませんよ、それはね。

(中澤有美子)フフフ、すいません(笑)。

(安住紳一郎)「日独同盟ではお世話になりました!」みたいな感じだけど。空港からタクシーでね、次々と300人ぐらい送られてきて。それでちょっとドイツのホテルマンの方なんですけどね。ホテルの制服を着ているんで、軍人に見えなくもないっていう。「ネーヒスト!」みたいに言われて。「ネーヒスト、ヤパン!」って言われて。「俺のことか!?」みたいな。「ヤーッ!」なんて言ってね。こっちもノリがいい方だから。

(中澤有美子)ああ、なるほどね(笑)。郷に入っては郷に従え的な感じで。

(安住紳一郎)「ルームナンバー、ワン、エイト、トゥー!」なんて。

(中澤有美子)フフフ、こら!(笑)。

(安住紳一郎)「ヤーパン! ネーヒスト!」「アインス、アハト、ツヴァイ!」なんて言って。「ワン、エイト、トゥー、アズーミ!」「ワン、エイト、スリー、ハラーダ!」。

(中澤有美子)点呼だ(笑)。

(安住紳一郎)点呼だよ、もう本当。怖い。大きな声でドイツ語で呼ばれてごらん? 怖いから。めっちゃめちゃ怖かった。本当に。本当だよ。本当だから。本当にルームナンバーを言わされたんだから。

(中澤有美子)えっ、嘘じゃないの?

(安住紳一郎)本当だよ!

(中澤有美子)なぜ言わせるんだ?

(安住紳一郎)だから「あなたはどこか?」みたいな。「ネーヒスト」っていうのは「次(Nehist)」っていうことかな。わからない。「ネーヒスト」ばっかり言われたから。「ネーヒスト!」って。「日本」は「ヤーパン(Japan)」ね。「ネーヒスト、ヤーパン!」「ヤーパン」みたいなことで。「日独同盟ではお世話になりました」っていうね。「ワン、エイト、トゥー、ヤーパン!」っていうことだよ。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)「ルームナンバー、ワン、エイト、トゥー! プリーズ、コール・ミー、タクシー、トゥ・エアポート!」「ダンケシェーン!」。

(中澤有美子)アハハハハハッ! フハハハハハッ!

(安住紳一郎)「トゥー・コールド。アイム・ハングリー……」。

(中澤有美子)フハハハハハッ!

(安住紳一郎)地獄か!って思ったよね。しかも乗り換え失敗するとみなさん、予定外のところで降ろさてて。で、カバンを預けたまま空港の外に追い出されますからね。そうすると今度、もうスペインからそのまま乗り継いで東京の成田、羽田に戻ろうとしていますから、とりあえず持ち金がないんですよね。ユーロを使い切っちゃってますから。スペインのタックスフリーで「もうユーロは使わないからな」なんて。クッキーなんか買っちゃっているでしょう? お土産の。

(中澤有美子)いらんもんを(笑)。

(安住紳一郎)そしたら原田さんと俺で「原田さんはユーロ、いくら持ってますか?」「私は……4ユーロ60セント」って。「私は5ユーロ」みたいな。辛かったー! 45のおじさん2人、知らない街で2人で10ユーロで1日暮らしたんだよ!

(中澤有美子)アハハハハハッ! 丸腰(笑)。

おじさん2人が10ユーロで1日暮らす

(安住紳一郎)丸腰。次から次へといろんな情報が入ってくるんだけどさ、ないんだもん。だって食べるものもないんだもん。まあ、朝食は出してもらいましたけども。で、そこでドイツで結局18時間ぐらい時間を潰さなきゃいけなくなって。

(中澤有美子)ええーっ!

(安住紳一郎)で、Wi-Fiがね、ほら……。

(中澤有美子)ワイのファイが。

(安住紳一郎)ワイのファイがつながらなかったらもうどうしようもないですもんね。だからもう、どうしようかな? みたいな。ねえ。情報社会で情報を遮断されると、もう身動きが取れないなと思って。本当に気分はジョン万次郎ですよ。もう原田さんと一緒に「聞き取れるドイツ語、まず書き出してみましょう」みたいな(笑)。

(中澤有美子)フハハハハハッ! 「どうやらこういうシチュエーションの時は……」って。

(安住紳一郎)「どうやらこういうシチュエーションの時は『ネーヒスト』と言われます」「『ネーヒスト』と言われた時には「ヤーッ!」と大きな声で返事をすると若干向こうが愛想よくなります」みたいな。「ネーヒスト、ヤーパン!」「ヤーッ!」みたいな。

(中澤有美子)フハハハハハッ!

(安住紳一郎)「『1』が『アインス』で『2』は『ツヴァイ』ですね」なんつってね。「アインス、ツヴァイ……」なんて2人でやっていましたよ。「私、『8』の時は『アハト』って言われましたから『アハト』が『8』だと思います」みたいな。「アインス、アハト、ツヴァイ!」なんて、もう何回も言わされたから覚えちゃってね。「ルームナンバー、アインス、アハト、ツヴァイ」って言われたすぐに「アインス、アハト、ツヴァイ!」「OK!」みたいなことを言われて。「ヤー!」ってね。

(中澤有美子)フフフ(笑)。断片的……。

(安住紳一郎)断片的だけど、でもこうやってあれでしょう? 金田一春彦先生もこうやって覚えたわけでしょう? 金田一京助先生かな?

(中澤有美子)みんなそうだと思います。

(安住紳一郎)そうでしょう? アイヌ語をはじめて習得した時には「これはなんだ?」って言われて紙を見せて、アイヌ人の人がそれを言ったらそれを書くわけだよね。そうやってジョン万次郎もやっていたわけでしょう?

(中澤有美子)大黒屋光太夫とか。みんなやった。

(安住紳一郎)私もやった。やったやった。もう。「そうか……」みたいな。もう絶対に忘れない。「ネーヒスト」は。

(中澤有美子)フハハハハハッ!

(安住紳一郎)ねえ。結局ね、そこはドイツらしいですね。見本市をやる大きな会場で。そこに私、着いた時に原田さんと一緒に「なんだか巨大な幕張メッセのようなところですね」って言っていたのが実は、それがドンピシャで。次の日、原田さんと散歩をしたらバス停とか住居表示みたいなところに「メッセ(Messe)」って書いてあって。「GReeeeN」みたいに「e」がいっぱい書いてあって。「メッセ」ってドイツ語で「見本市」みたいな意味らしくて。だからそこはメッセ町だったんだね。だから「幕張メッセみたい」じゃなくて、むしろそこがメッセの本家なわけね。だから巨大なメッセの展示会などがある時に世界からやってくるビジネスマンとか関係者、スタッフが泊まる巨大なホテルに「今日はイベントがないから空いている」っていうことで、ミュンヘン空港から多数車で送りこまれていて。で、シングルルームが端の端まであるっていうのはそういうことなのかな?っていうことですね。

(中澤有美子)はー、なるほど!

(安住紳一郎)21世紀とは思えない私の旅行記、いかがですか?

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)いや、わかってますよ。私が情報弱者だということはわかっています。わかっていますけども……本当に知らない街で降ろされたら、怖いよ。

(中澤有美子)そうですね。いや、21世紀ゆえのね。

(安住紳一郎)闇がそこにはあったかもしれない。

(中澤有美子)エキサイティングな。

(安住紳一郎)エキサイティングなね。で、お分かりかと思いますけども、後半はちょっとドイツ語を元気に言うということにちょっと楽しみを覚えてましたね。もうね。

(中澤有美子)よかったです。

(安住紳一郎)上手でしょう?

(中澤有美子)そうですね!

(安住紳一郎)ねえ。「ヤーパン! ネーヒスト! アインス、アハト、ツヴァイッ!」っていう。

(中澤有美子)突き刺さる(笑)。

(安住紳一郎)突き刺さるよね。「ダンケシェーン」。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)スペインは40度を超えてましたね。今年は世界的に猛暑ということで。でもね、日本の湿度を伴った40度とはヨーロッパは違うんでしょう?って私も言われてましたし、そう思っていたんですけどね。行きましたらその通りでした。やはり湿度がないのでカラッとしているんですけども。なので日本よりも過ごしやすいなとは思いましたけども。一方で逆に湿度がないので体の脂を一気に持っていかれる感じはありましたね。驚きました。

(中澤有美子)水分じゃなくて、脂?

(安住紳一郎)水分とね、脂も持っていかれる感じ、ありましたよ。1日でね、唇がカサカサになりますし。手の甲とか足のくるぶしとか膝のあたり、水分とか油分をまとめてメセタの風に持っていかれましたね。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)なので湿度がないのはないので大変だなという感じ、ありましたね。今年は東京だけ、関東だけ、日本だけではないということで。世界のみなさんも暑さに耐えてるということで。ぜひそんな気持ちになってお過ごしになれば、少し涼しくなるのではないでしょうか。ならないか? ミュンヘンは涼しかった。本当に涼しかった。

(中澤有美子)涼しいですね。

(安住紳一郎)本当に涼しかった。13度だって。すっごい寒かった。ものすごい寒かったね。本当。夏休み、海外旅行に行かれる方、多いと思いますけども。乗り継ぎには十分ご注意ください。あとね、少しやっぱり情報と現地のお金っていうか、ユーロとドルは持っていた方がいいのかなと思って。結局日本円を両替してくれるところなんか、そのミュンヘンのメッセの街には1ヶ所もなくて。

(中澤有美子)カードも意味をなさないんですか?

(安住紳一郎)カードは使えるんだけど、私たちがほしいものが売っているところはカードを使うような店じゃないんだよね。だからちょっとね、パンをほしいんだみたいなところでは、カードではなくて……みたいなことでしたね。はい。ちょっと長くなりましたけども、無事に戻ってまいりました。

(中澤有美子)よかったです。楽しかったです(笑)。

<書き起こしおわり>

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