プチ鹿島 日大鶴ヶ丘・勝又投手 西東京大会決勝戦後の熱中症搬送を語る

プチ鹿島 日大鶴ヶ丘・勝又投手 西東京大会決勝戦後の熱中症搬送を語る YBSキックス

プチ鹿島さんがYBS『キックス』の中で日大対決となった高校野球・西東京大会の決勝戦についてトーク。敗れた日大鶴ヶ丘高校・勝又投手が試合後に熱中症で倒れ、緊急搬送された件を報じた新聞各紙を読み比べていました。

(プチ鹿島)あの、今日のスポーツ紙なんか見ると、高校野球。夏の甲子園代表56校が出揃ったぞ!っていう。第100回ですよ。夏の甲子園。で、またこれが記念大会なんですけど、一方で暑くてね。

(塩澤未佳子)まあ、その暑さをどうしますか……。

(プチ鹿島)大変ですよ。これ。まあ、56校が揃ったということですごく賑やかなんですが、スポーツ報知を見るとですね、裏一面に桑田真澄さんが出てるんですよね。「夏の甲子園100回記念スペシャル対談」ということで、東大アメリカンフットボール・ヘッドコーチの森清之さんと対談をしてるんです。で、桑田さんは第1回目の今日――(記事は)3回予定されてるんですけどね――何を言ってるかと言うと、「まず球数制限が必要なんじゃないか」っておっしゃっているんですよ。高校野球ね、連戦や連投、過度の練習による怪我や故障が高校野球では以前から問題視されていた。タイブレーク制度ってのが導入されましたよね。延長である程度いったら、もうランナーを置いて早めに勝負がつくように……っていう。

だけど桑田真澄さんは「それよりも僕は有望な投手の将来を守るためには、球数制限を導入すべきだと思います」って言ってるんですよね。さらに「日本は力のあるエースほど連戦・連投を強いられます。どのアマチュア野球連盟もスポーツ障害から選手を守るという理念はあるのに、大会が始まると選手に気合や根性を強いるのが現状です」と。で、対談相手の森さんもね、「メディアは熱中症で選手が倒れたら問題視しますが、一方で『暑い中投げきった』とか、『猛練習に耐えた』とダブルスタンダードの部分もある。私たちが知らないところで潰れていった選手もいる」と。

(塩澤未佳子)ああー、なるほど。

(プチ鹿島)まあ実際、今年のこの暑さなんかを僕らレベルでも体感すると、たしかに夏の甲子園……「甲子園球場でやる」っていうのは彼らの目標、夢ひとつだから、「大阪ドームでやりましょう」っていうのもなんかね、冷たい感じがするんで。ただじゃあ、甲子園でやる限りは……だって桑田さんなんていちばん説得力がある人じゃないですか。甲子園で最多の20勝ですよ。20勝っていうことはもう1年生の夏から出ているんですから。その人が「やっぱり球数制限とか、投手の将来を守るためにはそういったものを改革していった方がいいんじゃないか」っていうのを裏一面で言っているんです。「ああ、なるほど。いい対談だな」と思って読んだんです。

で、先ほど各地の県大会とか代表校が決まったっていうのが1面、2面なんですよ。これ、同じ報知新聞を見ると、こんな記事があるんです。これ、昨日の西東京大会ですかね。勝又投手というのが日大鶴ヶ丘に……まあプロ注目の投手なんですけども。この投手が154球を投げたんだけど、力尽きるって言うんですよね。これ、154球を投げているのも凄いですよね。で、サヨナラホームランを打たれた。プロ注目の選手もサヨナラ負けをしたよということなんですが……「ええっ?」と思ったのが、緊急搬送、救急搬送されてるんです。この投手。試合後に熱中症で倒れちゃった。

(塩澤未佳子)うわーっ!

(プチ鹿島)で、実はこの投手、3回戦でも熱中症で途中降板してるんですよ。だからこれ、大変だよね。

(塩澤未佳子)うーん……それでもやっぱり試合は投げなきゃならないし。

(プチ鹿島)だから、さっきの桑田さんの論を読んだ後、こういう試合の記事を読むとやっぱりすごく現実と、桑田さんの言葉の重みを感じるんですよ。これ、他のスポーツ新聞でも報じてましたよ。サンスポ「燃え尽きたエース、熱中症で救急搬送 日大鶴ヶ丘・勝又」。これ、サンスポですね。「ベンチに戻ると脱水症状を伴う熱中症で歩行も困難になり、神宮球場から運ばれた」という。日刊スポーツも一面で勝った方をやっているんですけど、もちろん負けた方。特にこういうことなった……「154球、熱中症。救急車で搬送。閉会式の後に体調不良を訴え、報道陣への対応前に救急車で搬送された」という。この勝又投手がね。

こうやってスポーツ紙で報道されてるわけですけども、これはちょっともうこの暑さで連投、連投だと考えなくちゃいけないなと思うんですよ。で、一般紙にもですね、載っているんです。毎日新聞。「日大鶴ヶ丘・勝又投手。ライバルも認めた直球」ということで、すごい投手だったよっていうのも含めて。「最後、打球が吸い込まれた左翼席を見つめた。閉会式を終えた後、救急車で病院に運ばれた。脱水症状を伴う熱中症だった」。これ、毎日新聞ね。

読売新聞「鶴ヶ丘、熱闘及ばず。試合後、熱中症で搬送。両足がつって病院に運ばれた」という。これが読売新聞。で、東京新聞も「勝又投手、救急搬送」っていうことで。「脱水症状を伴う熱中症と診断。点滴による加療で回復に向かっている」という。まあこれ、だいたい僕がいま読んでるのが東京の都内版というか、東京版のがあるじゃないですか。そこでやっぱり日大のこの日大対決は大きく……もちろん勝った方も「劇的サヨナラ」ってあるんですけども、負けた方の勝又投手のことも書いてあるんですよね。

(塩澤未佳子)ええ、ええ。

(プチ鹿島)だからまあ、それだけ凄い投手で。1人で154球ぐらい投げたという。で、朝日新聞……朝日新聞はこれ、やっぱり主催者ですから。夏の甲子園、高校野球。高野連と一緒にね。今日、これ東京版でもね、見開きで2面なんです。この日大決戦。「日大三高サヨナラアーチ」と。で、もう一方の面では「日大鶴ヶ丘、夢へあと一歩」っていう。で、面白いのがですね、ちゃんとやっぱり「10奪三振・勝又投手」っていう風に勝又投手いんもスポット、焦点を当てたコラムが書いてあるんですよ。ところがですね、この勝又投手が熱中症で運ばれた、熱中症を起こしたっていうのは朝日新聞には一言も書いてないんです。

(塩澤未佳子)ああっ!

勝又投手の熱中症を全く報じない朝日新聞

(プチ鹿島)これ、すごくないですか。これ、たとえば「打倒日大三、渾身の投球。10奪三振 勝又投手」っていうので、まあまあ大々的なコラムですよ。「その瞬間、誰もが息を飲んだ。日大鶴ヶ丘のエース勝又温史が投じた154球目……」から入って、「……小学生だった2011年、西東京大会で日大三と日大鶴ヶ丘の準決勝を観戦」っていう。だから今回、自分がやったカードですね。「……その時に負けた日大鶴ヶ丘で日大三を倒したいと進学した」。すごい! リサーチ充分じゃないですか。「……試合後、整列時に(日大三高)日置は勝又に声をかけた。『ナイスピッチ』。これに対し勝又は返した。『ありがとう。そしてたのむぞ』」と。これで記事、終わっているんですよ。

(塩澤未佳子)ひゃーっ!

(プチ鹿島)この後、勝又投手が熱中症で運ばれたというのは朝日新聞、一切書いてないんです。これ、ちょっとおかしくないですか? 僕、調べたんですけど、産経新聞は実は勝った方の学校の記事ばかりで勝又投手にスポットを当てた記事はないので、緊急搬送というのは載っていないんですよ。だから記事の作り方もどうかなと思うんですよね。やっぱり敗者にもスポットを当てるべきだと思うから。でも、朝日新聞は書いてないんです。見開きでどこよりもこの日大決戦、決勝のことを書いているのに。僕も間違っちゃいけないと思ってね、さっきからずっと30分、時間をかけて何回も何回も朝日新聞を読んでるんですけど……載ってないんです。

たとえばじゃあ、他に何が載っているのか? 「壮絶な試合、両校をたたえる。都高野連会長。接戦となった決勝について『壮絶な試合でした』と評価」と。あと、「ご協力に感謝します」ってこれ、何かというと、朝日新聞高野連が「猛烈な暑さが続く中での大会でしたが、各チームとも温かい声援を励みに、激戦である東京の大会にふさわしい好プレー、好試合を見せてくれました」って。熱中症のこと、書いてないんですよ。

(塩澤未佳子)ええーっ!

(プチ鹿島)もう美談になっちゃっているんですよ。もう、ないことになってるんですよ。「温かい声援を励みに、激戦である東京の大会、好プレーで終わりました。どうもご声援ありがとうございました!」で終わっているんですよ。これはちょっと、どうなのかな?っていう。これ、もう1回言うと、読売、毎日、東京新聞は勝又投手が熱中症で搬送されたということは書いています。スポーツ新聞はもっと、なおさら大きく書いています。だけど、よりによって主催者の朝日新聞が書いてないんですよ。

でね、他のページを見ると、朝日新聞はちゃんと「熱中症に気をつけよう」って今日の朝日新聞、スポーツ欄で。「観戦、熱中症対策は入念に」というので、「熱中症を防ぐ球場観戦時のポイント。熱中症対策の例」って。まあ、お客さんも含めてね、熱中症対策。これから甲子園、気をつけようってあるんですけど。で、地方大会を振り返って、「豪雨・酷暑、野球できる尊さを痛感」っていう振り返り、総括のコラムもあるんですけど。「勝又投手が熱中症で運ばれた」というのは書いてないんですよ。これは、勘ぐられますよね。

(塩澤未佳子)うん!

(プチ鹿島)これはよくないなと僕は思いました。ちゃんと書くべきですよ。「熱中症がこれだけ問題になってる。対策は入念に」という記事を書くんだったら、「昨日、激闘だった。154球投げてたんだけど……」って。まあ、それもどうかと思うけど。「……勝又投手が試合後に」って。で、しかも報知新聞によると3回戦も熱中症で倒れてるっていうんですよ。スポーツ新聞の方がちゃんと事実を報じているんですよ。これはちょっと僕、「ええっ?」って思いましたね。

(塩澤未佳子)うわーっ! もちろん、知らないわけないしね。

(プチ鹿島)だからこういうことをやっているから、突っ込まれるんですよ。たとえば先週ね、「LGBTの人たちは生産性がない。だから税金は投入しない」って言った杉田さん。杉田水脈さんっていらっしゃいましたね。あの人、問題になってますけど、あれって元々『新潮45』というのの「日本を不幸にする朝日新聞」っていう特集の中の一文なんです。で、「朝日新聞にはLGBTの報道が多すぎやしないか?」っていうので噛みついてる。そういう記事なんですね。ということはもっと言うと、朝日新聞を叩く特集というのは売れるんですよね。

僕が『芸人式新聞の読み方』っていう本で書いたんですけども、ちょうどあの頃吉田証言……「ダブル吉田」って僕は呼んでるんですが。まあ、朝日新聞が謝罪したという。だから「朝日新聞、ほら間違えた! いままで嘘を書きやがって!」みたいな感じで。「朝日新聞は廃刊せよ!」みたいな、そういう声も多かったわけですよね。僕がその時に書いたのは、じゃあいざ廃刊したら、いつも朝日新聞を叩いて記事を作って喜んで報道している、もしくはそれでメシを食っている、そういうアンチの人の方が困るんじゃないか?っていう風に書いたんですよ。だから昔の強かったころの巨人と同じですよ。「巨人の負けを見たい」っていうアンチ巨人ファンです。これ、真っ当なファンよりもよっぽど熱意があって巨人のことを見つめている。アンチの凄さっていうのがあるじゃないですか。

だから朝日新聞アンチっていうのはいるわけですよ。で、僕はそれをやるなとは言わないですけど。だけど、それこそ度が過ぎる場合……「廃刊せよ」っていうのはやっぱり、廃刊したらアンチが困るでしょ?っていうのを僕が書いたんですけど、一方で甲子園の大会の主催で、熱中症で倒れた投手がいるっていうのを報じていないというのを……こうやって読み比べればわかりますよ。僕ですら、気付くんだから。それは突っ込まれる、脇の甘さはあるよね。

(塩澤未佳子)そこは、みんなが見つけるでしょうね。

(プチ鹿島)まあ、僕が今日、いちばん最初に見つけたと思うんですけど。だからそこはやっぱり都合が悪いことでも報じた方がいいと思う。だって「倒れた」っていうことはたしかなんだから。で、他の新聞はみんな報じてるんだから。で、「熱中症対策を」とか「熱中症に気をつけよう」っていう記事を書いたって、それは「いやいやいやいや……」っていう風に。

(塩澤未佳子)言われちゃいますよね。

熱中症対策を訴えても突っ込まれてしまう

(プチ鹿島)当然、主催者なんだから突っ込みの目線っていうのはありますよね。ただでさえさ、「旧時代的な価値観で……」とかって。でも僕は何度も言いますけど高校野球、僕らがうつつを抜かしてるお正月とかゴールデンウィークとか、その頃も彼らは「甲子園の土を踏みたい」っていうことで頑張ってるわけじゃないすか。だから僕は夏の甲子園、あった方がいいと思うし、変に球場を変えるとかはしてほしくないんですよ。でも、やるんだったら事実は全部報道しないと、突っ込みがどんどん増えますよ、これ。

(塩澤未佳子)うん。やっぱり主催しているっていうのはそういうことなんでしょうしね。

(プチ鹿島)僕、30分かけてね、朝日新聞を読んで。熱中症のこの勝又投手が運ばれたっていうのは載ってないんですよ。もう1回、あとで浅知恵くんに確認してもらいます。これがもし書いてあったら、この15分間ものすごくフェイクニュースなんですけども……。

(塩澤未佳子)フフフ、でも全部見たんですもん。

(プチ鹿島)だからこれはよくないなと思った。これは突っ込まれるわって思った。で、もうひとつ、これは今日の朝日新聞の報道ですけど、やっぱり甲子園、実際にさ、熱中症で2回倒れた投手を……さっきの桑田さんの記事じゃないけど、「よく頑張った! 投げきった!」みたいな美談にしていいのか?っていう話ですよね。僕は高校野球は何度も言うけど、あるべきだと思うし、甲子園でやるべきだと思うんです。だからナイターにするとか、日程を開けるとか、それこそ桑田さんが言うように球数制限を入れるとか、そういうケアをしつつ、続けるべきだと思うんですが。こういう大本営発表みたいなことを続けると、「そんなもん、やめろよ!」っていう声は出てくるよね。うん。だからちょっとびっくりした。ギョッとした。

(塩澤未佳子)そうですね。

(プチ鹿島)だからこれから夏の甲子園が始まって、なおさらですよ。観客の人とかが熱中症とかで運ばれると思うんですよ。なんだったら選手も、もしかしたらその危機があるかもしれない。。でも、それは粛々と、淡々と報じていかないといけないし、じゃあどうするのか?っていう、そういう目線付けが必要ですよね。別にこれ、朝日がやっているから「ほーら、倒れた!」とか、そういうことをするメディアももしかしたらあるとは思うんですけど。。そういうのにはは乗らずに、「じゃあこれ、どうすればいいんだ?」っていう。

(塩澤未佳子)本当に社会全体の問題というかね、甲子園のことを考えていくっていう。

(プチ鹿島)まあ、(24時間テレビマラソンの)みやぞんも気になるけどね。

(塩澤未佳子)走るの、どうなるんだろう?

(プチ鹿島)だからちょっとこれは、今日の新聞を見て。熱中症対策の記事はものすごいケアでね。たとえばこれ、27日(金)の朝新聞はスポーツ欄に「熱中症『もうダメ』と声をあげよう」っていう、そういう記事を書いてるんですよ。もう始まりが「この記事は主に中学・高校の運動部の皆さんに読んでもらいたいのです」って。中学・高校生の部活の運動部の人に語りかけてる記事なんです。「指導者や大人が万全の対策をとるのが先ですが、それでも漏れはある。『それは無理』と感じた時、『もうダメだ』と体に異変を感じた時、仲間の様子がおかしい時、自分や仲間を守るために声を上げましょう」っていう。これ、いいコラムなんです。でも、熱中症で倒れた投手のことを書いてないっていうことになると、「いやいや、それはそれ上っ面だけだろ?」って言われちゃうじゃない。

だから撲、この「熱中症『もうダメ』と声あげよう」っていうのは、夏の甲子園大会の両チーム、一塁側・三塁側のベンチに貼るべきだと思うんですよね。「もう無理すんな」っていう。意地とかさ、美談とかじゃなくて。それこそ、この朝日新聞の通りですよ。「もうダメ、それは無理と感じた時、体に異変を感じた時、自分や仲間を守るために声をあげましょう」ってこれ、ベンチに貼ってください! ということで、火曜キックス、スタートです。

<書き起こしおわり>

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