星野源『ニンゲン御破算』と中村勘三郎を語る

星野源『ニンゲン御破算』と中村勘三郎を語る 星野源のオールナイトニッポン

星野源さんがニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中でかつて出演した舞台『ニンゲン御破産』の再演、『ニンゲン御破算』を見に行った話をしていました。

(星野源)それで最後。『ニンゲン御破算』という舞台を見に行ったんです。シアターコクーンで行われていた松尾スズキさん……うちのボス。大人計画という僕が所属している事務所のボス、松尾スズキさんが作・演出で。『ニンゲン御破産』という舞台があって。それは15年前に上演された舞台の再演なんですね。で、15年ぶりの再演。で、コクーンってすごく大きな劇場で、演劇をやる場所としては本当にいちばん大きいぐらいの場所なんですけども。

松尾スズキさんが『キレイ』という作品をコクーンではじめてやって。で、そのコクーン進出第二弾みたいな感じだったんです。で、その時に僕が22、3で。まだその時は事務所にも入っていない状態でフリーの役者としていろんな劇団のオーディションとかを受けたりして。受かったら単発で出るみたいな。で、チケットノルマをめっちゃ払ってみんなにチケットを買ってもらって……みたいなことをやっていた頃なんですけども。

その頃に松尾スズキさんから「楽器を弾ける役者を探しているから、どうだ?」って言われて。で、アンサンブル……メインの役ではなくてたくさん出てくる、たくさん出てきていろんな細々とした役をやるという、そういうアンサンブルの1人に入れていただいたんですよ。で、僕は高校生の時に松尾さんのワークショップを受けていて、松尾さんと知り合ってはいたんですけども。そこから連絡先とかは交換せず、ただの大人計画のファンだったんですけど。

で、そこでお声がけいただいて舞台に出させていただいて。で、その舞台をきっかけに僕は事務所に所属することになって、お芝居がお仕事になったんですけども。だからものすごく思い入れのある舞台というか。いわゆる大きい舞台、そしてお金をしっかり、ギャランティーをいただけるという(笑)。ノルマがなくギャランティーをいただけるという舞台にはじめて出させていただいたのかな? で、それがね、本当に思い出深くて。当時は「中村勘九郎」という名前でしたけども、中村勘三郎さんが主演の舞台で。その勘三郎さんを見て「なんてすごい人なんだろう」と。

中村勘三郎のすごさ

で、なんですごい人なのかな?っていうのは、あんなにすごい人……もう雲の上の人のような。でも、みんなから好かれていて、みんな大好きで、大スターなのにいわゆる僕とかにも本当に普通に話しかけてくれたりとか。で、いわゆる小劇場の若手とかに対しても対等にお芝居をぶつかるというか。すごく、なんというか悔しがったりするんですよね。若手の芝居に。「面白いねえ! すっごいね、面白いね! 俺もそういうことをやりたい!」っていうような、そういうものすごくハングリーで、そして気持ちのいい方で。で、そのお芝居でカーテンコールで最後に奥から勘三郎さんが、全員役者が出た後に1人だけ出てくるという。いちばん最後に、もう主役なので。

で、その時に手を引いて出る人を誰かつけたいということで。それを、勘三郎さんが僕を指名してくれたんですよ。それで、手を引いて出るという役を全日ではなかったんですけど、半分ぐらいやらせていただいて。そこでお話したこととか、そういうのをすごく覚えていて。それで再演で、今回はその役を阿部サダヲ先輩がやられていて。で、すっごく面白かったんです。その舞台が。もう本当にいろんな気持ちになって、感慨深くて。内容もちょこちょこ変わっていて、すごくわかりやすいお話になっていてすごく面白かったんですけど。

音楽とか、ちょっと一緒のところとかあって、そこでちょっと「うっ……」とこみ上げるものがあって。この15年間というもの、あの時にこの役をやっていた自分っていうものの残像を見るような感じというか。全然違う方がやっていて、違うお芝居なので全く違うんですけど、なんかいろいろと思い出したりとかして、すごく複雑な……ものすごく面白くてものすごくうれしいという気持ちと、ものすごく寂しいっていう。いまいない人のことを思ってですね、ものすごく寂しくなるという。最後の暗転で本当にうつむいてしまいましたけども。そんないろんな気持ちにさせてもらえた『ニンゲン御破算』はちょっと忘れらないなということで、この曲をかけさせていただきたいと思います。勘三郎さんのことを歌った歌です。星野源で『化物』。

星野源『化物』

お送りしたのは星野源で『化物』でした。

<書き起こしおわり>

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