宇多丸 雨の『人間交差点2018』を振り返る

宇多丸 雨の『人間交差点2018』を振り返る アフター6ジャンクション

宇多丸さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で前日に開催されたRHYMESTER主催のフェス『人間交差点2018』についてトーク。あいにくの大雨の中、行われたフェスの模様を振り返っていました。

(宇多丸)ということで、まず熊崎さん、昨日来ていただきましたけども。

(熊崎風斗)いやー、本当に宇多丸さん、お疲れ様でした。

(宇多丸)いえいえ、とんでもないです。昨日ね、私どもRHYMESTER主催の野外フェス『人間交差点2018』が東京お台場の野外特設会場で。以前からこの番組でゲスト来てもらって、1週間に渡ってライブしてもらったりして盛り上げた挙げ句、昨日開かれたんですが……みなさんご存知の通り、なにしろ昨日の天気が朝開場して昼ぐらいかな? 昼すぎぐらいまでは「あれっ? 行けるんじゃね?」みたいなね。

(熊崎風斗)ええ。

(宇多丸)曇りではあったし、パラパラパラパラ降ったんだけど、降ってはやんで、降ってはやんでみたいな感じで。「この調子だったらたとえ雨が降るって言っても、むしろ見やすいぐらいじゃね?」って思ったら、うーん。やっぱり2時すぎあたりから、我々の用語でいう「精神論ではどうにもならない」というレベルの雨が……。

(熊崎風斗)昨日、すごかったですね。

(宇多丸)「これもアリじゃね?」とかそういう自己欺瞞ではどうにもできないレベルの、もう自分を騙しきれないレベルの雨が降ってきちゃって。なので、お越しいただいた方、ご覧いただいていた方には本当に多大なる身体的負担をね、かける状況になってしまって。本当に心苦しかったんですけども。そんな中、熊崎さんを含めアトロクパートナーのみなさん、5人とも勢揃いで来ていただいてありがとうございます。

(熊崎風斗)もうね、あの雨があったからこそ、最終的にあの雨も味方につけていた感じもありましたし。みなさんが本当にそのファンの、集まった人のことをすごく気にかけてくださっていて。

(宇多丸)いえいえ、それはしますよ。とにかく本降りになってからずーっと裏で「うわーっ、もうお客さん……ごめーん!」みたいな。もうね、ずーっとやってる側も事務所の連中もメンバーも身悶えして。なので、たとえばMummy-Dさんの雨に打たれながらお客の気持ちになるとかっていうのもあったりとか。

(熊崎風斗)それがものすごく伝わってくる感じで。マイクがどうしても雨に濡れてしまうとダメだということで。宇多丸さん、マイクを置いて雨の方に来たりとか、途中であったじゃないですか。

宇多丸の滝行パフォーマンス

(宇多丸)いや、どうしても……RHYMESTERのライブの時ですけど、ステージの際のところまで行って、できるだけ雨を浴びてっていうんだけど、あそこはちょうど雨だれが落ちるポイントでさ。途中で僕、滝行のように手を合わせて。しかも僕はライブで身体が熱くなっているから、そこから湯気がジョバーッ!って出るっていう(笑)。なんのパフォーマンスだ?っていう(笑)。

(熊崎風斗)不思議な光景でしたね(笑)。

(宇多丸)あそこは特にビチャビチャビチャッて滝のように落ちてくるところで。後ほどたぶん、いろんな形でcherry chill willさんが撮ったイベント写真も上がってくると思うんで。映像も上がると思うんで。でも、とにかく最後。僕らの時間帯までみなさん、あちこちでたぶん体力温存のためにスポットに行ったりしていたとは思うんですけど、最終的にはものすごい人数があの雨の中、満場でいていただいて。もうね、ありがとうございましただし。

(熊崎風斗)一体感、ある感じでした。

(宇多丸)あと、やっぱり入れ替わり立ち替わり……熊崎くんなんて競馬の実況をやってから。

(熊崎風斗)東京競馬場で昼過ぎぐらいから、芝が「良馬場」から「やや重」に変わった時に「これは人間交差点、ヤバいな……」っていう感じはあったんですけど。でも、うかがうことができてよかったです。

(宇多丸)で、メールもたくさん頂いておりまして。ちょっと代表的なところをご紹介すると、たとえばこの「スーパーミツくん」さんという方は、長いんで要約させていただきますけども。この方は32才。「学生時代にヒップホップが本当に流行っていました。が、私はヒップホップが大嫌いで。リア充はみんなヒップホップ。街を歩けばみんなB系。RHYMESTER? そんな勝ち組の奴らが聞く音楽なんて!」。これ、RHYMESTERを聞いていただければそういうんじゃないのはわかると思うんですけども(笑)。

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(宇多丸)で、パンクが好きで。今回もラジオから僕のことを知っていただいて。とはいえ、ラッパーというよりはラジオパーソナリティーとして聞いて頂いてたようなんですけども。「BRAHMANのライブを目当てで来ていただいて。そしたらRHYMESTERも見たら良かった」という。「BRAHMANも数えきれないほど行っていますが、今日のライブは本当に素晴らしく」っていうね。パンクのモッシュやダイブが起こるイベントではないんだけど、BRAHMANのライブということで、ファンの方も盛り上げていただいてということで。そんなこんなですごく楽しんでいただけたと。「学生時代のすねていた俺に教えてあげたい」という。こちらこそ、ありがとうございます。

(熊崎風斗)フフフ(笑)。

(宇多丸)あと、「ホットパワーズ・ミクラ」さん。この方は先週の人間交差点の出演者のLIVE&DIRECTのコーナーでNakamura Emiさん。今回だと一番手バッターだったんですけども。Nakamura Emiさんをラジオで聞いて、ラジオを聞きながら泣いてしまって、それで今回はじめて来たと。で、Nakamura Emi素晴らしかったと。本当にNakamura Emiさん、完全にロックしていましたね。「Nakamura Emiさんもそうですか、全ての出演者がすごかった。全てが楽しくて気持ちよくて最高なフェスでした。フェスってこんなにも多幸感があるのかと、何度も泣きながら腕を上げました」という。ありがとうございます。

(熊崎風斗)すごいですね!

(宇多丸)あと、「カヌー高田」さん。僕がRHYMESTERのライブの一発目、この番組『アフター6ジャンクション』のオープニングのラップテーマ曲をラジオバージョンともっとラップが長いフルバージョンでやったじゃないですか。

(熊崎風斗)テンション上がりました!

(宇多丸)あれをやった瞬間にパートナーの5人組がギャーッてなっていたとか。とっても僕はその光景が見たかったぐらいなんですけども。

(熊崎風斗)ギャーギャーギャーギャー騒いでましたよ。フフフ(笑)。

(宇多丸)で、「あいにくの天気でしたが雨で全身びしょ濡れになったおかげでもうどうでもいいやと理性をぶっ飛ばして楽しみました」。まあ、そういう面もある。幸いにも大雨だったんだけど、気温がそこまで低くならなかったこと。あと、風がそこまで強くならなかったという点で不幸中の幸いというのはあったのかもしれませんが。で、この方ね、「……いちばん感動的だったのはアトロクのテーマを観客がみんなで大合唱していたこと。放送でしか聞けず、歌詞カードもないのにみんな一言一句間違えずに歌っていたのは本当にすごいことだと思いました」。

(熊崎風斗)すごい!

(宇多丸)ねえ。これはうれしいことで。でも僕も自信をもってサビのところとかもマイクを向けられましたからね。「アフター6!」っていうね、やっていたんでね。ありがとうございます。あともう1件。「ダルマ」さん。この方、43才。「昨日は最高のライブ、ありがとうございます」。メシを食べたり酒を飲んだりして楽しかったっていうんですけども。で、雨が……伝説のライブっていうのはだいたい大雨だったりするんですけど。すいません。お客に負担をかけておいて僕が言うことじゃないんですけども。まあ、そう思っていただけるのは幸いなんですけども。「……宇多丸さん、私は雨も滴るいい男、Mummy-Dさんの髪の濡れ具合がセクシーで宇多丸さんの滝の修行も最高でしたが、周りの人が『宇多丸さんが番組で天気をディスるからこうなった』と怒っていたので、今日から天気にやさしくしてあげてください」。

(熊崎風斗)フハハハハハッ!

天気ディス=天に唾する行為

(宇多丸)そう。これはみんなに言われた件ね。要はこの番組のオープニングで1ヶ月に渡って天気をディスり続けた。まさにその「天に唾する」とはこのことですよね。わかりやすいですよね。天に唾する。そうすると返ってくるっていう。これの典型。

(熊崎風斗)わかりやすくあんなに雨になるなんてね。

(宇多丸)ところがね、それでさ、しかもさっき「風も吹いてなくて」って言っていたけど、俺がRHYMESTERのライブで途中、どうしても我慢できず「ちょっとこの野郎! 天気、この野郎!」みたいなことを言ったらその瞬間に横風がバーッ!っていうね(笑)。

(熊崎風斗)フハハハハハッ!

(宇多丸)でさ、要はいちばん土砂降りだったのは俺らの時だったじゃないですか。

(熊崎風斗)圧倒的に土砂降りでしたよ。

(宇多丸)で、俺が文句を言った瞬間にブシャーッ!って横風がさらに吹き出して。で、終わった後、帰る頃には止んでんの!

(熊崎風斗)そうなんですよ!

(宇多丸)で、今日の天気、晴れ。

(熊崎風斗)雲ひとつない、晴れ。

(宇多丸)これは俺ね、終わった後もずーっと言っていたんだけど。「えっ、マジで性格悪すぎじゃね? ありえる? そりゃあ俺もよくないけど、なんぼなんでもこれはちょっとなんか粘着質すぎませんか?」みたいな。

(熊崎風斗)相当恨みを買っていたんですかね。

(宇多丸)わかんないけど。それで、ひでーなと。むしろ昨日はずーっと天気最悪みたいな。あとは後ろでの、誰が雨男かの責任の押し付けあい。「だいたい俺は降らねえんだ」とか言っていて。「あいつじゃねえか?」「こいつじゃねえか?」って。醜い押し付けあい。あと、行いの話。BRAHMANのボーカルのTOSHI-LOWくんとかね、「いやー、やっぱり主催者の行いが悪いとこういうことに……」とか言って(笑)。「いやいや、あんたに言われたくないわ!」って言ったら「たしかに……90年代の俺の行いは謝りたい」とかね(笑)。

(熊崎風斗)アハハハハハッ!

(宇多丸)MCでも言っていたもんね。「90年代の俺らの周りに降っていた血の雨と比べれば大したことはない」って。アハハハハハッ!

(熊崎風斗)なかなかの話だな……。

(宇多丸)なんなんだよ、それは?っていう。そういうのもあったんですけどね。なので、天気ディスね、控えるべきという意見もあると思います。ただ、僕はこれね、天気という圧倒的な力にたしかに負けましたよ。圧倒的な力。まさに『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』におけるサノスですよ、これはまさに。

天気という名のサノス

日々是決戦(サノス予備校)

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(熊崎風斗)まあ、たしかに。

(宇多丸)でも、そこでこういうことになったから天気ディスはやめるなんて、俺は本当に頭に来ているのに。ひどい目にもあったしね。みなさんもですよ。ひどい目に合わせたのは天気なんですよ。俺じゃないからね。天気のやつが悪い目に合わせたのに、「あんたが怒らすからだ」っていうこの考えは要はサノスに屈する考え方ですよ。

(熊崎風斗)フフフ(笑)。そういう考えになってくるんですね。

(宇多丸)「ああ、そうですか! じゃあ、『インフィニティ・ウォー』のあそこで話が終わっていいのね、お前ら、そういうやつらは。じゃあ、そこで話をやめますわ。諦めちゃう。いいんですか?」っていう。俺は、やっぱりそこは立ち上がって行きたい。

(熊崎風斗)永遠に天気と対峙するわけですか?

(宇多丸)『インフィニティ・ウォー』ですよ(笑)。アハハハハハッ!

(熊崎風斗)天気に勝つ時が来るのかな?

(宇多丸)各アクトのここが素晴らしかったっていういろんな話もしたいんですけども。ちょっとお時間もあれなので。そんな感じで本日も『アフター6ジャンクション』、メニュー紹介行ってみましょう!

(中略)

(宇多丸)すいませんけどもオープニングトーク、締めの部分でいちばん大切なことを言い忘れました。会場にお越しいただいたみなさん、そして雨にびしょびしょになってしまったりとかいろいろあったと思いますが、お風邪などひかれていないでしょうか? お越しいただいたみなさん、本当にありがとうございました。これで締めるべきでした。失礼いたしました。

<書き起こしおわり>

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