映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『赤江珠緒たまむすび』で、ブラッド・ピットが制作した黒人奴隷の世界を描く映画、『それでも夜は明ける・12 Years A Slave』を紹介していました。
(町山智浩)あの映画(『第9地区』)は差別する側が差別される側になっちゃったらどうなるか?っていう映画だったんですけど。今日紹介する映画もそういう話なんですよ。ちょっと違うんですけど、見た人が、黒人奴隷にされちゃうような気持ちになる映画なんですよ。
(赤江・山里)へー・・・
(町山智浩)これ、いまアメリカでものすごい話題になっててですね。もうセンセーションになってるんですけども。これ、日本語タイトルが決まってないんで、英語タイトルを言いますと、『12 Years A Slave』っていうタイトルなんですね。『12年間奴隷だった』っていう意味なんですよ。これは、奴隷じゃない人が誘拐されて奴隷として売られたっていう実話を元にしてる映画です。
(赤江・山里)はー。
(町山智浩)はい。普通に生活していたらいきなり誘拐されちゃうんですよ。で、そのまま『俺は奴隷じゃない!』って言っても、なにも証拠とか書類とか残ってなくて、奴隷として12年間、むちゃくちゃ酷い目にあうっていう話なんですよ。これ、制作しているのはブラッド・ピットです。
(赤江珠緒)あ、ブラピはいま、結構映画作られてますね。
(町山智浩)ブラピ、次々と映画を作っている社長さんなんですけど(笑)。この映画に関しては黒人奴隷の本当にキツい現実を扱った映画っていうことで、映画会社が、具体的に言うとパラマウントっていう映画会社が『商売になんないから作りたくねーよ』ってブラピとモメてたんですよ。ずっと。
(赤江・山里)ふんふん。
(町山智浩)したらブラピは、『じゃあいいよ!他から金とって作るからよ!』っつって、作った映画がこの『12 Years A Slave』なんですけど。やっぱりね、非常に商業的に当たらないかもしれないと。要するに、見ててすごい辛い映画なんですよ。それでもブラピは作ろうとしたんですね。『金じゃねーんだよ!』みたいな感じなんですよ。
(山里亮太)かっこいいなー!ブラピ。
(町山智浩)なかなかね、男気のある人なんですけど。この映画ね、そういった感じで名優が集まっててですね。主役の奴隷として売られちゃう黒人の人を演じるのはですね、ほとんど知られていない非常に不思議な名前の人で。キウェテル・イジョフォーっていう人なんですよ。
(山里亮太)キウェテル・イジョフォー?
(町山智浩)この人ね、ナイジェリアの人なんですよ。お父さんがナイジェリアで。でもイギリス生まれの人なんですけど。ちょっとね、言いにくい名前なんですけど。それ以外の俳優さんは、結構名優どころ集まっててですね。日本ですごい人気のイケメン俳優で、ベネディクト・カンバーバッチっていうんですね。
(山里亮太)あ、カンバーバッチ。
(町山智浩)この人は『シャーロック』っていうTVシリーズで大人気になった人で。
(赤江・山里)はいはいはい。
(町山智浩)あと、『スタートレック』の一番新しいのでも悪役やってましたけども。すごく不思議な顔のですね、俳優さんですけどね。彼も出てるし。あとね、マイケル・ファスベンダーがすごい役で出ています。
(赤江・山里)ふーん!
(町山智浩)マイケル・ファスベンダーっていま、アメリカではもっともセクシーな俳優の1人なんですよ。全然ご覧になってません?映画とか。
(赤江珠緒)マイケル・ファスベンダーってなにに出てらっしゃるのかしら?
(町山智浩)この人は、『シェイム』っていう映画に出て。SEX中毒の男を演じたんですけども。その時にノーカットでですね、日本はボカシが入ったのかな?アメリカだとね、ボカシが全く入らないでこの人のアレが映っちゃうんですよ。画面に。
(赤江・山里)えっ?
(町山智浩)それがすごいデカいんですよ!
(山里亮太)ええっ!?そこなんだ?
(町山智浩)そこなんです!ジョージ・クルーニーがゴールデングローブ賞のスピーチの時に、『マイケル・ファスベンダーくん、君がうらやましいよ。君はゴルフやる時、クラブとかいらないだろう?』って言ったんですよ。
(赤江珠緒)なんちゅう下ネタを言ってるんですか(笑)。
(町山智浩)俺が言ったんじゃないです!ジョージ・クルーニーが言ったんです!
(山里亮太)『とんでもないドライバーを持ってるじゃないか!』っつって。
(町山智浩)そう。『すごいもの持ってるね!』って、あのジョージ・クルーニーがうらやましがった人がマイケル・ファスベンダーなんですけど。そういうね、イケメンとか巨根の人がいっぱい出てくる映画なんです。よくわかんないです。言ってることが。
(山里亮太)作品がすごいんでしょ?出てた作品がすごい方なんでしょ?ファスベンダーさんは。
(町山智浩)そうなんです。そのマイケル・ファスベンダーの『シェイム』っていう問題作の監督だったスティーブ・マックイーンっていう監督さんがこの映画の監督なんですけど。スティーブ・マックイーンっていうと有名なアクション俳優の名前とおんなじなんですけど、全然違う人なんですよ。スティーブ・マックイーン、何十年も前に死んでますから。この人はおんなじ名前のイギリス系の黒人の人なんですね。アフリカ系の英国人なんですけど。で、この映画、元々南北戦争よりも前に書かれて出版された手記を元にした映画なんですね。
(赤江・山里)ええ。
(町山智浩)これね、1841年。南北戦争っていうのは終わったのが1865年だから、それよりもかなり前ですね。20年以上前に、ニューヨークで生まれた黒人の人でですね、名前がソロモンっていう人がいたんですね。ソロモン・ノースアップっていう人がいて。この人は生まれた時から1回も奴隷だったことがないんですよ。お父さんは奴隷だったんですけど、解放されて。その息子だったんで、1回も奴隷生活とか体験をしたことがなくて。それで、ニューヨークでミュージシャンをやってたんですね。
(赤江・山里)ふん。
(町山智浩)で、33才になって奥さんもいて、かわいい子供たちもいて。中流の生活をしてたんですよ。したらある日、彼自身はミュージシャンでバイオリニストなんで、首都ワシントンで仕事があるから来てくれって言われて、雇われて行くんですね。で、行ったら呼んだ人たちが、『まあ飲め、飲め。打ち上げだ』って酒飲ますんで、飲んでって泥酔したら・・・目が覚めたら手足を鎖で縛られてるんですよ。
(赤江・山里)うん。
(町山智浩)『なんてことなんだ!?俺はソロモンっていう人間なんだけど、どうして俺を縛ってるんだ?』って言うと、『お前はソロモンじゃない。お前は奴隷だ』って言われて。『これから南部に売るから』って言われるんですよ。
(赤江・山里)ええっ?
(町山智浩)これはね、南部ではずっと奴隷をアフリカから輸入してたんですけど、輸入が禁止されちゃうんですね。で、されたんだけど、南部の方ですごく奴隷を必要としてたんで、非常に高価なものとして内部で売られるようになってるんですよ。で、南部の方で奴隷主たちが黒人を売買するだけじゃなくて、北部の方で普通に暮らしている黒人も誘拐して、南部に売っている業者があったんですね。当時。
(赤江・山里)ふーん!
北部で誘拐した黒人を南部で売る
(町山智浩)で、売られてですね。ルイジアナで売られるんですけど、その時売られていく人たちが酷いのはね、普通のお母さんとかわいい子供たちも一緒に売られるんですよ。誘拐されて。で、ルイジアナに行ったら奴隷市場っていうのがまた酷くて。全員裸にされるんですよ。お母さんが子供の前で裸にされて売られるんですよ!
(赤江珠緒)ええー!?
(町山智浩)しかも、親子は引き離されるんですね。黒人奴隷の統治の仕方っていうのは、まず家族を作らせないっていう問題があったんですよ。家族とか作ることによって結束が生まれてくるから。1回暴動があったんですね。反乱があったんで、反乱を起こさないように友情とか家族とか親子とか結婚とか、そういった関係を全部断ち切っていくんですよ。
(赤江珠緒)とことん人権はないわけですね。
(町山智浩)人権はない。くっついたら、団結しちゃうじゃないですか。だから仲良くなったら全部切り離すんですよ。親も子も。だから結婚とかないんですよ。で、バラバラに売られてくんですけども。売られた先が、カンバーバッチくんの農場なんですね。そしたら、カンバーバッチっていう人は奴隷で農場を経営してるんですけど、奴隷制度は間違っているっていうことに気がついている人なんですよ。これは酷いと思ってるんだけど、全員が奴隷は正しいって思ってるから、逆らえないんで仕方なく君臨してるっていう、非常に消極的な奴隷主なんですね。
(赤江珠緒)うーん。
(町山智浩)こういう人、たぶんいっぱいいたと思うんですよ。これは酷いと思いながらも、みんなやってるからそれが言えないっていう。やめよう!って言えない人たちが結構いたと思うんですね。南部の方にね。そういう典型的な人で。これね、12年間体験した後、全部細かく書いてるんですね。このソロモンさんが。当時出版してるんで、非常に貴重な記録なんです。っていうのは、南部では奴隷は字を教えてもらえなかったから、彼らの手記っていうのはほとんど残ってないんですよ。
(赤江珠緒)あー・・・
(町山智浩)だから何人かが北部に逃れて、それをしゃべったと。その後勉強したり、自分でしゃべったインタビューが本になったものがあるんですけど。元々文字・言葉が書ける人が奴隷体験したっていうのは非常に珍しい例なんですよ。
(赤江珠緒)そっかそっか。町山さん、最近ね、私もたまたま南部から逃げて当時手記を残したっていう女性の本を読んだんですけど。本当に、財産として。南部の白人の奴隷制度を賛成している人は奴隷を見てるので、もう自分が死んだら今度は娘にそれを譲るというような。人を財産として考えているっていう感じでしたから。逃れられないんですよね。
(町山智浩)はい。だから非常に有名な事件だと、自分の子供が奴隷になるのが嫌だから、子供を殺した奴隷のお母さんっていうのもいるんですね。で、この次にですね、どんどん売られていくんですね。転売して。ソロモンさんが。で、最終的にいちばん酷い奴隷主のところに行っちゃうんですよ。それを演じるのが、マイケル・ファスベンダーなんですね。このエップスっていう奴隷主なんですけど、この人のいちばん問題なのはものすごく敬虔なキリスト教徒で、聖書の言葉を徹底的に覚えてるんですけども。南部の人たちってみんなキリスト教徒で敬虔だったんですけども、彼らの中では黒人は人間ではないと信じられてたんですよ。
(赤江・山里)うーん・・・
(町山智浩)だって神は全てを救うんだったら、黒人の人に酷いことをしたら白人も罪人になるじゃないですか。それを論理的に整合性を持たせるためには、黒人は人間ではないってことにしちゃったんですよ。南部では。だからものすごい黒人を殺したり、拷問した後、神様にお祈りして『私は天国に行けますよね』って言ってるんですよ。
(山里亮太)矛盾してるはずなんですけど、自分たちでこじつけて。
(赤江珠緒)成立してるんですね。
(町山智浩)いくら虐待しても自分たちは天国に行けると思ってるんですよ。人じゃないと思って。どのくらい人じゃないと思ってたかというと、いちばん典型的な例は南部では黒人を殺してもペットを殺したのと同じ罪にしかならなかったんですよ。だから、相手の財産に対する損害を与えたってことでしか裁かれなかったので、奴隷主が自分の所有している奴隷を殺すことは自由だったんですよ。
(山里亮太)うう・・・
(町山智浩)これ、完全に人権ないですよ。で、しかも病院に行くときも獣医にしか見せなかったんですね。人間じゃないとされていたんで。それを200年間続けてたんですよ。アメリカで。南部では。完全に異常な状況なんですけど、この主人公は全くそれを知らないから。完全に初めてのものとして体験してくんですよ。だから、奴隷の人たちは200年間ずっと続いてるから全くそれに違和感がないんですけど、この主人公は完全に新しいものとして体験するんで、いまの観客と非常に近い立場なんですよ。
(赤江珠緒)あ、なるほど。
(町山智浩)それが衝撃的なんですよね。だから、観客がたとえ白人であっても、日本人であっても、同じような気持ちで見れるんですよ。全くいきなり誘拐されて奴隷として売られる体験をする感じになるんですよ。それで孤立無援なんですよ。たった1人なんですよ。誰もいないんですよ。味方は。これ、この間の『ゼロ・グラビティ』で宇宙の彼方にたった1人で放り出される話しましたけど、それと全く同じですよ。
(山里亮太)また見ててずっと息苦しくなってしまうような。
(町山智浩)ものすごい息苦しくて。これね、英語で『gut-wrenching』っていう言葉があって。レンチで内蔵をえぐられるような気持ちって意味なんですけど。見てる間、ずっとそうでした。はらわたをねじくられているような気持ちになってくるんですよ。
(赤江・山里)ええー!?
(町山智浩)強烈で。で、これで酷いのは、エップスっていうマイケル・ファスベンダー演ずる奴隷主が自分の所有している奴隷の中に女の子でパッチーっていうかわいい女の子がいるんですね。この子のことが大好きなんですよ。明らかに恋してるんですよ。でも自分はものすごい差別主義者で、黒人は人間じゃないと思っているから、自分が彼女に恋をしていることに気がついてないんです。全く。全く気がついてないんですよ。
(赤江珠緒)あ、恋とは認めないんですか。
(町山智浩)認めないんですよ。何度も犯して子供も産ませてるんですけど、それでも全然人間と思ってないんですよ。相手を。でも、このマイケル・ファスベンダーの奥さんは、自分の旦那がその子に恋してることはめちゃくちゃわかっちゃってるんですよ。どう見てもそうなんだもん。誰が見ても。この人以外、全員わかってるんですよ。彼はあの子に惚れているってわかってるんですよ。
(赤江珠緒)ああ・・・
(町山智浩)で、この奥さんが自分の旦那が惚れている女の子の顔をぐちゃぐちゃに切り刻むんですよ。嫉妬して。で、奥さんに責められると思っているから、自分はこの女を好きじゃないと証明するためにまたいじめまくるんですよ。ムチで打ちまくるんですよ。
(赤江珠緒)はー・・・
(町山智浩)で、それもまた酷くて。自分ではやっぱり愛してるから打てないんですよ。だから、主人公のソロモンに打たせるんですよ。もうめちゃくちゃですよ。
(山里亮太)えっ!いま聞いてても、気分が・・・
(町山智浩)地獄なんですよ。もう、ただの。
(山里亮太)これ、実話にもとづいてるっていうのがね。
ブラッド・ピットが制作をした意味
(町山智浩)すごいんですよ。すさまじい映画なんですよね。で、これをブラッド・ピットが作ろうと思ったっていうのはすごい勇気があることだなと思いましたね。ただブラッド・ピットっていう人は南部の出身なんですよ。
(山里亮太)ってことは、その思想がまだ残っている・・・
(町山智浩)この人、ミズーリの出身なんですけど、ミズーリっていうのは南部と北部の戦争のまっただ中で、真っ二つに別れたんですよ。で、同じ家族でも、親兄弟でも奴隷制度を守るか、奴隷制度に反対するかで2つにわかれて殺し合いをしたんですよ。で、ブラッド・ピットのお母さんっていうのはものすごいキリスト教原理主義者で、保守的な人で。『オバマ大統領なんか許せない、オバマ大統領はアメリカ人じゃないんじゃないか?』みたいなことを新聞に書いたりしてる人なんですよ。
(山里亮太)ふん。
(町山智浩)ブラッド・ピットは逆にオバマ大統領にものすごい寄付をして、オバマの応援をしてる人なんですよ。だからミズーリ州で南北戦争の時に起こった親子の対立みたいなことを、ブラッド・ピット家で起こってるんですよ。現在も。
(赤江珠緒)いまでも?
(町山智浩)いまでも起こってるんです(笑)。でも、『親子は政治と関係なく、仲良くしてる』と言ってるんですけど、『政治的には思想が違うよね』ってコメントしてるんですけどね。だからね、面白いなと思うんですよ。ブラッド・ピットが作っているってことはね。非常に意義があるなと思って。
(赤江珠緒)これ、でもアメリカでアカデミー賞を獲るかもしれないって話題になっているってことですけど、アメリカの人としては受け止め方も、受け止めきれない人とか、もうこんなのも見たくないっていう人もいるわけですか?
(町山智浩)やっぱり南部の人は見たくないでしょうね。特にすごく問題なのは、白人の奴隷主の人たちが子供をいっぱい黒人奴隷に産ませていたっていうことなんですよね。で、生まれた子供を自分の血がつながっているにも関わらず、売っぱらってたんですよ。
(赤江・山里)ははー・・・
(町山智浩)だから現在のアメリカの黒人の、アフリカ系の人たちの30%以上は、3人に1人は白人の血が入ってるんですよ。で、それはどういう風に血が入ったかもだいたい分かるんですよ。黒人は不動産と一緒で全部登記されてたんですね。当時から。税金の申告の時に。だから所有物として記録が全部残ってるんですよ。だからどういう系統から白人の血が入ったか、分かってるんですよ。ほとんど。
(赤江・山里)ははー・・・
(町山智浩)しかもDNA検査もありますしね。有名なのはミッシェル・オバマさんが、ひいひいおじいさんかなんかが奴隷主だったことがわかってますよね。だからこれ、本当にアメリカの恥なんですよ。
(赤江珠緒)そうですよね。
(町山智浩)いまこれを作ることが意味があるのか?って。昔やった悪いことをほじくっていいのか?っていう風な批判もあるんですよ。でもこれ問題なのは、南北戦争で負けて南部は奴隷を開放したんですけど、彼ら自身の意思で奴隷制度を止めたことは1回もないんですよ。負けたからなんですよ。で、『42』っていう映画でも描かれてるんですけど、1964年まで黒人差別を南部はずっと続けてたんですけども。あれも連邦政府の方で憲法違反であるってことで新しい憲法ができて、初めて人種差別がなくなって。1964年にね。つい最近ですよ。それで選挙権も与えたんですけど、それも南部はずっと反対してて。徹底的に反対して、最後まで反対してたんですよ。
(赤江珠緒)ええ。
(町山智浩)だから無理やり黒人を平等にされただけで、南部の人たちが自分の意思で黒人たちを開放したり平等にしたことは1回もないんですよ。だから変わってないんです。彼らは。で、現在オバマ政権に対して反対しているティーパーティーっていうグループとか、保険改革に対して反対している人たちも、州も全部南部の州なんですよ。南北戦争で北部と対立した州なんですよ。だから現在も全く同じです。
(山里亮太)そういうところへの問題提起として、今回ブラッド・ピットはこの映画を・・・
(町山智浩)そう。リンカーン大統領に反対して南北戦争を始めたのと、オバマ大統領に反対してるのと全く同じです!だからいま、作る必要があったんですよ。なにも変わってないんです。貧乏な人に保険を与えるな!って言ってるんですけど、貧乏な人って誰を指してるか?っていうと、黒人の人たちがかなり入ってくるんですよ。だから彼らに保険を与えたくないんですよ。自分たちの税金を。
(赤江珠緒)そっか。なんか自由と平等の国アメリカ!みたいな感じでいってますけど・・・
(町山智浩)自由と平等で黒人を解放したのは北部の人たちなんですよ。南部の人たちは自分の意思で1回もそれをしていないんです。投票とかでそれを決定したことは1回もないんです。南部は。彼らの意思で。いまもなお続いてる。だからこの映画は非常にキツい映画ですけども、見る意味があるし、奴隷っていうものを本当に体験する意味で全人類が見る映画だと思いますね。
(赤江珠緒)そうですね。
(町山智浩)日本公開は3月だそうです。
(山里亮太)あ、来年春だ。これ、まだ聞けないですけど最後はどういう結末になるのか・・・
(町山智浩)あ、それはタイトルでわかるように、12年間で終わりますから。
(山里亮太)あ、そっかそっか。よかった。
(町山智浩)それは僕のせいじゃないです。これをネタバレとか言うな!バカ!と思いますけど。はい(笑)。
(赤江・山里)(笑)
(町山智浩)だって書いてあるんだから。12年後って。
(赤江珠緒)じゃあ今日は『12年間の奴隷』、ご紹介いただきましたけども。これは邦題がまだ未定ということですからね。変わる可能性もありますね。来年春には公開予定。町山さん、今週もすごい映画、ありがとうございました。
(町山智浩)どうもでした。
<書き起こしおわり>