宇多丸さんがMXテレビ『バラいろダンディ』の中で映画『バーフバリ』の魅力と見どころをプレゼンテーションしていました。
(宇多丸)はい。ということで私はこの週末というか、これからみなさん、ゴールデンウィークとか時間ができると思いますので。この時間を使ってぜひ見ていただきたい映画がございます。それはこちらです。どうぞ! 完全版公開決定、映画『バーフバリ』ということですね。
(関谷亜矢子)『バーフバリ』。
(宇多丸)『バーフバリ』はインドの歴代興行収入でナンバーワンを樹立した、あと製作費とかもインド映画史上最大規模だったりするんですけども。ストーリーは古代インドの架空の王国マヒシュマティを舞台に王族の英雄バーフバリの、その血族を巡る三代に渡る愛と復讐の物語が繰り広げられていくという話なんですけど。とにかくこれがもうアホみたいに面白いんですよ。びっくりするぐらい面白いスペクタクル巨編で、パート1とパート2に分かれていて『伝説誕生』がパート1。それからしばらくして『王の凱旋』というパート2が去年日本で公開されて、この2つをセットで見るとあまりの面白さにもうリピーターが続出。僕も夢中になっちゃって。
(関谷亜矢子)へー!
(宇多丸)で、これはもうDVDソフトとかも出ているのに、映画館でやるともう全席埋まっちゃうんですよ。売り切れちゃう。そんぐらい大人気。私も本当に太鼓判の作品です。で、この『王の凱旋』……二本あわせると5時間ぐらいある作品なんですけども、はっきり言ってね、一度見だすとその欠点は「短い」っていうね!
(関谷亜矢子)へー! それぐらい面白いんだ!
(宇多丸)なんとこの6月1日に完全版……もともとインドのテルグ語という言語でしゃべられているんですが、テルグ語公開版の(30分以上)長いバージョンが公開されるということで、ご紹介をさせていただきたい。私、先ほどもいいましたけども、S・S・ラージャマウリ監督にさっきインタビューしてきたんですよ。
(関谷亜矢子)先ほどお会いしたばかり!
(宇多丸)で、いろいろと質問をしてきたんですけど、すごい印象的だったのは「日本ですごい大人気じゃないですか。それをどう思いますか?」って聞いたら、やっぱり世界的にも大ヒットしているんです。アメリカとかヨーロッパとかでも公開してヒットしているんですけど、そこは要するに各国にいるインド系の住民の方が見に来て、それでそれだけヒットしたりしているという背景があるんだけど、全くインド系とかは関係なく、完全に違う人種、民族なんだけど大ヒットしているという点で日本はかなり異例だというようなことをおっしゃっていて。
(関谷亜矢子)喜んでらっしゃってるんですね。
(宇多丸)日本のファンの様子とかを見て、本当に監督も泣いちゃって、みたいな。そんな感じで。これ、本当にあのね、インド映画における『七人の侍』級と言っていいと思う。素晴らしい。
(関谷亜矢子)「博士はこの映画、ご存知でしたか?」って聞こうと思っていたんですけど、「バーフバリ!」ってずーっと叫んでましたよね。一時期。
(水道橋博士)『バーフバリ』に関しては「『バーフバリ』以前・『バーフバリ』以後」って言われるぐらい世界映画史で娯楽アクションっていうことだとエポックメイキングすぎるぐらい……評判を聞いてみてもすごいですよ。
(宇多丸)かなりハードルを上げて見ても楽しめるというのが素晴らしいんですよね。ということで、私がおすすめする映画『バーフバリ』のわくわくポイント、こちら。どうぞ! 「真の理想のリーダーに会える」っていうことなんですよ。
(関谷亜矢子)へー!
理想のリーダー・バーフバリ
(宇多丸)王族なんですけども。バーフバリとその息子の話なんですけど。まったく偉ぶらない。インドなんてカースト制の国ですから、身分制があって。たとえば奴隷の剣士・カッタッパっていうのが出てくるんですけど、彼にも全く分け隔てなく接するどころか、「俺の父親代わりだ」って言ったりとか。そういうインドの身分制度や、あと女性の立ち位置。この作品だとすごく本当に女性キャラクターがみんな自立していて強いんです。
(関谷亜矢子)へー!
(宇多丸)特にバーフバリのお姫様・デーヴァセーナなんかは家族制度とか国家の威信とか、そういう押し付けられる抑圧に対して、自分の女性の個人の尊厳を守るために戦うっていう、そういうキャラクターで。そして実際に強かったりするんですけど。で、こんな風にいろんな策謀にあってバーフバリが王の座を追われてしまって、ただの一市民になった後も彼が率先して民の中で汗を流して働くわけです。そしてどんどん自分のご飯も子供とかにあげちゃうから。そうすると民から「私のご飯、食べてください!」ってくるわけです。これ、日本の権力者のみなさん、見習ってくださいね、これね!
#Baahubali
Please teach me, what is this food?
Hmm…biryani? bread? Something another?
I want to eat in japan. pic.twitter.com/fEOcUyWEqJ— バーフムシ (@DagooBBQ) 2018年3月9日
(一同)フハハハハハッ!
(宇多丸)もう本当に、ノブリス・オブリージュというのはこういうことだっていうのを体現するような。王を追われても結局民の間で「やっぱりこいつが王様だ!」っていう風に慕われてしまうっていうね、そんな男なわけですね。すいません、洋七師匠、ベラベラしゃべってしまって。
(関谷亜矢子)師匠、どうでしょうか?
(島田洋七)大丈夫!
(宇多丸)「大丈夫」(笑)。
(島田洋七)説明がわかりやすい! それと、VTRが会話と合うているから。いままであんまりここで紹介されても「すぐ行こう!」とは思わんかったけど、これは行ってみたいね! 要するにそのお金持ちが一般市民に物を分けてあげたりとか。水戸黄門じゃないけども、ああいうの好きやからね。
(水道橋博士)師匠は一生に2回しか映画を見ていないんで。
(宇多丸)結構長いんでね。なかなか……。
(島田洋七)本当に5時間あるの?
(宇多丸)二作合わせると5時間あるんですけど。前編と後編があって。
(島田洋七)1日で見なアカンの?
(宇多丸)いやいや、分けて見ても全然構いませんけども。前編のエンディングを見たらすぐに後編が見たくなりますから。そういう、すごく見たくなるエンディングで。
(金村義明)漫画で言うと本宮ひろ志漫画みたいな?
(宇多丸)すぐ本宮ひろ志を!
(一同)フハハハハハッ!
(関谷亜矢子)自分のフィールドに(笑)。
(宇多丸)フィールドに引っ張ってくるっていうのがありますけども。いや、でも全くおっしゃる通りでね。そうなんです。時代劇とかがお好みだったら絶対に好きですよ。「この印籠が目に入らぬか!」じゃないけど、「ああ、あなた様の身分は本当はそうだったんですかー!」みたいなところもありますけども。
(島田洋七)見たくなる。
(宇多丸)で、みなさん、これです。タイムリーな話題を私、お届けしますね。優しいだけではないです。バーフバリは不正に対して厳しい! いま話題のセクハラ問題に対してどのように対処すべきか? これをバーフバリは教えてくれる。
(関谷亜矢子)へー!
バーフバリのセクハラ対応
(宇多丸)これ、見てくださいね。女の人が通る時、役人がこうやって体を触って。「次はお前だ」っつって。これ、バーフバリの奥さんを指さして嫌がらせをして「体を触るぞ」ってすると奥さん、ズバッ!
(関谷亜矢子)うわっ!
(宇多丸)法律で認められたセクハラへの自己防衛として、相手の指を斬り落とす。で、これを見てください。こうやって裁判にかけられるわけです。指を斬ってしまったから。そしたら、(バーフバリが)「なにがあったんだ?」って聞きますよね。そうすると、「体を触ってきたのよ」って言うじゃないですか。そうすると、バーフバリが言うことを聞いてください。「それはお前が悪い。斬るべきは男の指ではない。首だっ!」って。スパーン!ってその役人の首を斬る! みなさん、ご覧ください。これがセクハラ問題に対する正しい対応です。
(一同)フハハハハハッ!
(金村義明)すごい!(笑)。
(宇多丸)ということなんですよね。これはだからやっぱり、セクハラ後の対応が悪かったっていま、財務省が大モメしていますけども。これ、麻生大臣が『バーフバリ』をご覧になっていればね、「斬るべきは職務上の首ではない。お前の首だっ!」ってスパーン!って。で、まあ逮捕っていうことになると思いますけども。そんな感じでね、痛快です。本当に難しいことは1個もないです。アクションシーンもただ単に派手なだけじゃなくて、ちゃんとストーリー、テーマと一致したアクションシーンになっています。
(関谷亜矢子)ええ。
(宇多丸)これ、ご覧ください。姫は弓の名手なんです。で、追手がこうやって狭い廊下を追ってくる。強いから1個1個はやっつけられるんだけど、だんだん(廊下の)後ろが迫ってくる。「危ない!」ってなったところで、バーン!ってバーフバリ登場。で、ここまでバーフバリはちょっと愚鈍な男として、ふりをしているんです。で、こうやってボンボンボンボン、矢を3本ずつ射って。この瞬間、姫は恋に落ちていく。その姫がまさに恋に落ちる瞬間というのがアクションと一致する。そしてこうやってダンスのように矢を射っていく。で、これは監督もお気に入りの場面として挙げていました。
(関谷亜矢子)へー!
(宇多丸)こんな感じでアクションが派手なだけじゃなくて、ちゃんとストーリーとキャラクターとが一致しているんですよ。だから見ていて面白いのなんのっていう。敵を倒す時の快感とかも最高ですし。いちばん悪いやつをやっぱり最後にちゃんと倒した時のもう痛快さっていうことですよね。といったあたりでぜひぜひ、様々なバーフバリがいかにすごいか……だから見終わった後も「バーフバリ! バーフバリ!」ですよ。もうそれしか言わなくなっていますから。大変です。あと、問題はそのへんでやっている中途半端な娯楽映画が見れなくなっちゃうっていう。これが問題なんですけど。
(関谷亜矢子)うわーっ、強烈な。
(宇多丸)ぜひね、映画『バーフバリ』は前編・後編ともに普通にソフトも出ていますから、ご家庭でも見ることができます。そして6月1日に完全版も公開されますので。ぜひ気になった方はこれ週末にどうぞ! みなさん、わくわくできそうでしょうか? どうぞ!
(島田洋七&金村義明:わくわく 水道橋博士:がっかり札を提示)
(宇多丸)えっ? 博士がいちばん価値をわかっているはずじゃないですか?
(水道橋博士)もうね、宇多丸さんのこの言葉がまだそれでも足りないぐらい。本当にすごいですよ、これ。
(金村義明)家でも借りてきて見れるんですか?
(水道橋博士)でも、映画館で見る方が、より、ね。
(宇多丸)そう。前編・後編が結構それぞれ長くて。で、前編の部分ではまだ物語の全貌が見えないまま話が進むので。たぶん前編の途中まで見ていると、「なんの話だろう?」って思う人が結構いると思うんですけども。ちゃんと、言い方が悪いですけども、我慢して前編を見終えてもらって後編の最後まで見るともう1回前編を……「よくできている、この映画!」ってなる。
(関谷亜矢子)へー!
(宇多丸)エンディングの最後。最後の最後で立ち上がって拍手したくなりますから。
(水道橋博士)本当に神話ってこういう話なんだっていうのがうなずける。
(宇多丸)インド映画だからちょっとキッチュというか、ちょっと変な感じで面白いんだろう?って思っている人がいたら、そういうことじゃないんです。めちゃめちゃ、ちゃんとよくできていて面白いんで。ぜひぜひご覧いただきたいと思います。
(関谷亜矢子)本気度が伝わってきました。本日宇多丸さんが紹介したわくわく作品『バーフバリ』はパート1、パート2のDVDが絶賛発売中です。さらに『王の凱旋』完全版も6月1日から公開ということで、そちらもあわせてご覧ください!
<書き起こしおわり>
https://www.tbsradio.jp/217873