吉田豪と絵恋ちゃん アイドルが歌に感情を込めるべきでない理由を語る

吉田豪 80年代女性アイドルソングを語る ラジオ

吉田豪さんがYBS『909 Music Hourz』に出演。絵恋ちゃん、加藤響子さんとアイドルがやりがちな「歌に感情を込めて歌う」ことをすべきでない理由について話していました。

(加藤響子)続いて、地下アイドルについて聞いていきたいんですが。絵恋ちゃんも活躍する地下アイドルシーンで豪さんが注目するアイドルっていうのも気になるんですけども。

(吉田豪)すごいですね。この流れで僕はこれを流すんですか? これ……僕、この流れで絵恋ちゃんの曲を流すんですね。絵恋ちゃんが宍戸留美さんっていう元祖インディーズアイドル。僕、さっきも言いましたがリリー・フランキーさんとの関係で宍戸さんとの付き合いも20年以上なんですよ。

(加藤響子)あ、長いですね。

(吉田豪)それこそカラオケも一緒に行ったぐらいの感じで。僕がまだペーペーで全然しゃべれなかった頃から知っている人なんですけども。その人がなぜか……だから絵恋ちゃんが宍戸さんのファンで知り合って。最近出た宍戸さんのコンピレーション・アルバムで僕が昔、20年ぐらい前からずっと聞いていた宍戸さんの曲を絵恋ちゃんが歌う。そしてそれがちゃんといい化学反応というか。「あっ、ちゃんといいカバーになっている!」っていう曲があるんで。

(絵恋ちゃん)うれしい!

(加藤響子)じゃあ、さっそくお聞きいただきましょう。絵恋ちゃんで『君はちっともさえないけど』。

絵恋ちゃん『君はちっともさえないけど』

(加藤響子)ねえ。カバー曲ということでしたが……。

(吉田豪)あっ、ヤバいですね。「#ybsradio」がトレンドになっているらしいですよ!

(加藤響子)嘘でしょう? 本当ですか!(笑)。

(絵恋ちゃん)そんなに聞いてるんだ。おおっ!

(吉田豪)16位になっている(笑)。

(絵恋ちゃん)じゃあ、いまから言っちゃいけないこといっぱい言おうぜ!

(加藤響子)アハハハハハッ! いまから(笑)。残りが10分ちょっとです。

(吉田豪)もうないよっていう(笑)。

(加藤響子)惜しみなくお二人にはおしゃべりいただきたいです。この曲、歌ってみてどうでした?

(絵恋ちゃん)もともと好きな曲だったので。忠実にはできていないんですけど、セリフの部分とかの宍戸さんのちょっと訛りがあるんですよ。実は。そこもそのまま、あえて直さずに言わせていただきました。けど、出来上がって、他の方もいろんな宍戸さんの曲をカバーされているんで。それを聞いて「あ、みんな結構個性を出しているな」って思って。「それでもよかったんだ」って思って。私はそうやってやった方がいいんじゃないかって作曲家の方と相談をしてこういう形になったので。

(吉田豪)これは正解だと思いますよ。Twitterのコメントでも「なるほど、こういうのがいいバラードなんだな」っていう素晴らしい意見が来ていますけども。

(加藤響子)わーっ、ありがたいコメントが来てますね!

(吉田豪)さっきの中嶋美智代さんに近いですよね。歌い方のやりすぎ感っていうか(笑)。

(絵恋ちゃん)絵恋の?

(吉田豪)そう(笑)。

(加藤響子)なんか「ほっぺにチュッ」みたいいなところがありましたけども。キュンって来ますもん。

(吉田豪)「あざといわー!」っていうぐらいの(笑)。

(加藤響子)そう! でも、わかっているんだけど……みたいなところですよね。なんか。かわいいって思っちゃうみたいな。

(絵恋ちゃん)ありがとうございます。フフフ(笑)。

(加藤響子)絵恋ちゃん、歌う時の声はまた全然違いますね。

(絵恋ちゃん)なんかでも、クセなんですよね。歌うとそういう感じになっちゃうし、自分がそういうのが好きだからそれに寄せていっているところもあるし。

(吉田豪)いま、あんまりそれぐらいまでやっている人がいないから際立つんだと思いますけどね。

(加藤響子)ねえ。

(絵恋ちゃん)アイドルソングでいちばん絵恋の中で大事だなと思うのが「大丈夫?」っていうところなんですよ。

(吉田豪)ん?

(絵恋ちゃん)絵恋の中のアイドル論なんですけど、宍戸留美さんのアルバムの帯に書いてあった言葉で「あれれ、留美ちゃんどうしたの? 大丈夫? でも、とってもかわいいね」っていう言葉があったんですけども。それがすごく大好きで。アイドルとはそういうものでありたいと絵恋は思っているので。「あれれ、どうしたの? 大丈夫? でもとってもかわいいね」っていうのを目指して歌っているんですよ。

(吉田豪)「やりすぎでしょ、これ。大丈夫なの? でも、かわいいからいいか!」みたいな着地にするっていう。

(絵恋ちゃん)そうです。

(加藤響子)ああーっ、それがいちばんの褒め言葉。

(絵恋ちゃん)不安定さとかもあったりするけど、でもまあとってもかわいいねっていうところが。

(吉田豪)そうなんですね。全然正解ですよ。変に完成度を求めるというよりかは、こういうリアリティーというか生々しさというか、それを出すべきです。

(加藤響子)さっきもお話されていた、ちょっと音程をずらすとか、テンポをちょっとずらして歌うとか。

(吉田豪)それがナチュラルにできる人もいれば、こうやって努力してやろうとする人もいるっていう。

(加藤響子)フフフ(笑)。

(絵恋ちゃん)なんかやっぱりシンガーさんとかダンサーさんとか、そういう専門家はいるわけなので。アイドルがやるべき歌っていうのはこういうのかなっていう。

中田ヤスタカのきゃりーぱみゅぱみゅへのアドバイス

(吉田豪)そうなんですよ。わかります。だから、昔きゃりーぱみゅぱみゅさんがデビューした頃、インタビューで会った時に「中田ヤスタカさんにどんなアドバイスをされました?」って聞いたら「ボーカルレッスンとか一切行くな! かわいい声を出すことだけを考えろ」って言われたという。

(加藤響子)ええーっ!

(吉田豪)「正解!」っていう(笑)。さすが、わかってらっしゃる!っていう。

(絵恋ちゃん)正解ですねー。

(加藤響子)ええーっ! レッスンに行くなと?

(吉田豪)「そういうのは、いらないんだよ」っていう。「なに、歌唱力とか? かわいさが重要!」っていう(笑)。

(絵恋ちゃん)それで絵恋もボイトレに通っていたんですけど、「あ、これ直されちゃう」って思って行くのを止めました。

(吉田豪)そうなんですよ。だからアイドルがつまらなくなるのってそれなんですよ。結局、歌唱力がよくなろうとするのはまだいいんですけど、ちょっと方向を間違えることが多くて。歌に感情を込める路線に行く人がすごく多いんですよ。

(加藤響子)えっ、だって感情を込めたくなりますよ。

(吉田豪)込めちゃいけないんですよ。

(加藤響子)ダメなんですか?

(吉田豪)込めれば込めるほど、感動できなくなるんですよ。これは八代亜紀さんも言っています。八代亜紀さんが歌にだんだん感情を入れていった時、全然人が泣かなくなった。で、ある日、全然感情を入れずに歌ったら、刑務所の慰問とかでみんなボロ泣きして。だから人が感情を乗せられる隙間を作らなくちゃいけないっていう。

歌に感情を込めれば込めるほど、感動できなくなる

(加藤響子)はー!

(吉田豪)「ほら、聞いて! 泣けるでしょう!」って押し付けちゃいけないんですよ。
(絵恋ちゃん)押し付けがましいと冷めちゃう。

(加藤響子)へー!

(吉田豪)それがすごい……アイドルってどうしても自分が向上したいじゃないですか。運営の仕掛け以外で自分が何かをするには、ダンスの向上とか歌の向上しかなくて。それはまだいいんですけど、そこで感情を込める路線に行きがちなんです。それ、毎回僕は警鐘を鳴らしていて。「間違っているよ、それ。やめて!」っていう。

(加藤響子)そうなんだ! 表現をしすぎるのもダメなんですかね。そうか。新たな視点でした。

<書き起こしおわり>

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