プチ鹿島 映画『パディントン2』を語る

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プチ鹿島さんがYBS『キックス』の中で、映画『パディントン2』についてトーク。『パディントン2』をはじめとする最近の映画に共通して見られるテーマ性について話していました。


(プチ鹿島)いい天気というかあったかい天気で逆に思い出したんですけど、先月、東京でも雪が降った時、あるじゃないですか。

(塩澤未佳子)ありましたね。

(プチ鹿島)あの日、僕は午後からが仕事だったんですよ。で、午前中は普段だったら子供も公園とか行っているんですけど。まあ雪が積もって晴れたら外に遊びに行こうねって。で、まだ降っている時は自宅の中で遊んでいようかっていう日だったんです。で、「どうしようか? お昼まで、どう時間を潰そうかな?」っていう時に、「『パディントン』っていう映画を見たい」って言ったんです。

(塩澤未佳子)ああーっ!

(プチ鹿島)先月ですから、ちょうどいま『パディントン2』っていうのがやっていて。その予告がよくCMで流れていてね。熊のね。で、それが3才ですから気になっちゃって。いま、よくしたものでAmazonとかでも見れるんですよね。あれね。で、自宅で子供の付き合いで午前中に見ていたんですよ。そしたら『パディントン』、面白くてね。

(塩澤未佳子)はい。

パディントン(字幕版)
Posted with Amakuri at 2018.3.21
ポール・キング, デヴィッド・ハイマン

(プチ鹿島)僕、恥ずかしながら今年になってはじめて『パディントン』を見たんですよ。あれ、2014年に作られた映画で、日本にも2015年とかそのぐらいに公開されてヒットされたんですけど。それが面白くて。「じゃあ俺、『パディントン2』も見に行こうかな?」って思って。子供だとまだ、『パディントン2』の映画館に3才の娘を連れて行くっていうのはなかなかね。『アンパンマン』とかと違って。あれだったら子供とかしかいないから。で、こっそり先週『キックス』が終わった後に見に行ったんです。

(塩澤未佳子)ああ、行ったんですね。

(プチ鹿島)『パディントン2』、これがまたいい映画だったんですよ! これ、ご存知ない方に説明しますと、熊がペルーのジャングルから、おじさんおばさんに育ててもらって、1人で憧れのロンドンにやってくるんですよ。で、人間の言葉は話せるという、そこは物語上人間の言葉は話せるんですが、そうは言ってもはじめて来る土地じゃないですか。だから最初は苦労してね。で、当然周りも最初からかわいがってくれる人もいれば、「なんだよ、こいつ?」みたいな。だって熊ですから。

(塩澤未佳子)そうそう(笑)。

(プチ鹿島)不審がられたり、ちょっと冷たくされるんですよね。でも、このパディントン……ちなみに「パディントン」っていうのはロンドンでお世話になる家族と出会った駅の名前なんですよ。だから別に日本だったら「甲府」でもいいんですよね。「甲府の熊」だとリアルすぎる感じですけども(笑)。

(塩澤未佳子)アハハハハッ!

(プチ鹿島)まあ、駅名からつけたんです。で、家族と生活を続けるんですけども。コミュニティーというかご近所とも仲良くなり、でも1人、2人は「なんだよ、お前!」みたいなのもいたり。でも、このパディントンという熊がとにかく礼儀正しくてね。誰にでも親切にするんですよ。で、そうやっていって、周りに受け入れられるっていう、それがパート1だったんです。さらにパート2。そのままイギリスでね、ホームステイ先の家族と一緒にのんびり楽しく生活をしているんです。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)もうオープニングの風景だけでも僕、お金を払う価値があると思って。というのは朝、出勤するんですけどね。そうすると、ひょいと通りがかったお姉ちゃんの自転車に乗って。いつも、その時間にその人は通ってくれるんですよね。で、新聞スタンドのおばちゃんと会話して。向こうは新聞をバッてパディントンに投げてくれて。で、町内を回っていくと、みんな「おはよう」「おはよう」「おはよう」みたいな感じで、パディントンが出勤する風景で町がパッと回転しだすというか。明るくなるんですよ。

(塩澤未佳子)ああーっ!

(プチ鹿島)ところが、ある事件がきっかけで……ここまでは言っていいと思うんですけど、パディントンが捕まっちゃうんです。で、その濡れ衣を晴らすために刑務所からどうやって濡れ衣を晴らそうか?っていう、そういう映画なんです。で、パディントンがいなくなっちゃうと、途端にあれだけ朝、活気づいていたその町、界隈がすごく暗くなっちゃってね。で、なんかみんなから笑顔が消えちゃって、ギスギスしちゃって。1人だけ喜んでいる人がいて、パディントンのことをパート1から気に入らないっていうお巡りさんみたいな格好をした人なんですよ。お隣さんが。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)でも、それはお巡りさんでもなんでもなく、自称・自警団なんですよ。1人だけなんですよ。「自警団」とは言いますけども。で、最初から「こんな熊、不審者だ。ほら、あいつはやっぱり悪者だった! 出ていって清々した!」みたいな感じになるんですけど、自警団が――1人ですけど――そのおじさんの声が大きければ大きいほど、町はどんどん暗くなって、ギスギスしていくんですよ。「なんかこれ、この町のことだけじゃねえな。自警団っていうのはいまの世の中をすごい象徴しているな」とか思ったりしてね。

(塩澤未佳子)ああーっ!

(プチ鹿島)ねえ。で、もっと言うと、そのパディントンっていまさらですが。パート1は娘とのんびり見ていたから。「ああ、大変だな、熊」とか思って(笑)。で、パート2をじっくり見ると、「ああ、これは移民の話じゃん」って思ったんですね。

(塩澤未佳子)はー! そうなるのか。
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『パディントン』は移民の話

(プチ鹿島)ねえ。パディントンって、要はイギリスという町にやってきた移民の苦労というか。でも、そのコミュニティーの中に溶け込む、もしくは溶け込むだけじゃない。コミュニティーの方がパディントンを受け入れる。そういうお話なんだなって、ちょっと僕は「ああ、いい解釈をしたな」なんて思って、映画館を出てパンフレットを買ったら思いっきりそういう解説があって。

(塩澤未佳子)あ、書いてあったの?(笑)。

(プチ鹿島)もうそれ、言い尽くされてるらしいんです(笑)。

(塩澤未佳子)私、もういま、「ああ、そうか!」なんて思って。

(プチ鹿島)そうそう。パンフレット、いま手元にあるんですけど。「ペルーのジャングルから憧れのロンドンにやってきた熊がブラウン家の人々と出会い、慣れない都会暮らしで次々とハプニングを起こしながらも、家族の一員となっていくまでを描いた笑いと感動の物語」。これがパート1ね。で、「原作は40ヶ国語以上で翻訳されて全世界3500万部売上のベストセラー。今回、原作のスピリット(魂)を『見かけで判断せず、国籍や種族の異なる相手を受け入れることだ』と考える」という。そういうコンセプトなんですって。「パディントンは誰に対しても礼儀正しく親切だ」と。だから最初はそういう壁があっても、やっぱり人間って親切を受けたり、親切にされたりすると心を開いていくじゃないですか。パディントンって見事にそれを実践しているんです。見かけは熊なんですよ。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)で、みんながどんどん受け入れていく。だから、最初に見た時って「この町の人って熊とかそんなにこだわりがないんだな」って思うけど、もともとイギリスって移民社会で受け入れているから。だからそこのこだわりというのはほぼ、多くの人はないんだけど……でもやっぱり、「なんだよ、あいつ」っていう人は当然いるという。そこは見事に、ねえ。

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(塩澤未佳子)そうですね。いまの世界というか、社会というか。

(プチ鹿島)で、この監督がパンフレットの中で質問に答えていて。「いま、(SNS・Twitterの)140文字で人の人生を破壊したり、また政権が人を分離し支配しようとしたり。嫌悪や不寛容主義を謳う世の中では、パディントンの世界は素敵な解毒作用があるかもしれない」って書いてあるんですよ。で、さらに、ちゃんとこういう「社会派としての映画『パディントン』」という、こういう解説文を森直人さんという映画評論家の方が書いていて。「要するに、彼は移民だ」って2行目で書いてあるんです。

(塩澤未佳子)ああー、もうはっきりね。

(プチ鹿島)俺だけの発見じゃなかったんですよ、もう(笑)。

(塩澤未佳子)アハハハハッ!

(プチ鹿島)「世間からコミュニティーに溶け込めないあやしいやつ、圧倒的なマイノリティーとして最初は扱われる。移民の受け入れに関して、長い歴史を持つイギリス。弱い者がさらに弱い者を叩くなど、様々な形で差別主義がはびこっているのが、いまの世の中における最大の負の側面だ」ということなんですね。だから、パディントンっていうのはまだまだ社会的弱者なんだよという。そういう人をこれ、僕もさっき「溶け込む」って言いましたけど、溶け込むんじゃなくて、やっぱり受け入れる側の物語なのかな?って思うんですよね。

(塩澤未佳子)そうですね。

(プチ鹿島)だからこれ、パート2から見ても大丈夫なんで。まだ映画館でやっていると思うんで、ぜひ見ていただきたいんです。で、僕はこの映画を娘のおかげで、パート1をつい1ヶ月に見て。パート2を先週の火曜キックス終わりでポンポンと見て。「ああ、いい映画だったな。なるほど、そういうテーマか」って思ったんですけど、ハッと気づいたんです。「あれ? 今年、最近俺が見た映画って、だいたいそういうテーマじゃなかあったかな?」っていう。

(塩澤未佳子)おおっ?

最近見た映画に共通するテーマ性

(プチ鹿島)たとえば、『羊の木』という映画があるんですけども。これ、吉田大八監督が描いている、錦戸亮さんが出ている作品。これ、僕は『キックス』でちょいちょいお話しました。っていうのは僕、事前にこれ、「推薦コメントがほしいから見てください」って言われて。で、僕は見て、コメントを出したんです。その時の僕のコメントがパディントンとつながっているじゃんって思っていて。まず、ストーリーを言いますよ。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)この『羊の木』というのは寂れた港町に新規転入者の受け入れ担当を命じられた、市役所に務める人(錦戸亮)が主人公なんですよ。ところが、その寂れた田舎の港町に6人の男女がやってくるんですよ。それは国家プロジェクトなんですけど、その6人は全員、仮釈放された元受刑者たち。殺人犯とかなんです。で、これは刑務所のコスト削減と地方の過疎対策を兼ねた極秘の国家プロジェクト。だから町の人は新規で6人、転入してきたけど、その人たちがまさか殺人犯とは知らないわけですよ。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)だけど、過疎を救うために新しい人を入れなくちゃいけない。さらに、そういうプロジェクトが成功すれば、刑務所の人員削減にもなるという、まあ奇想天外な物語なんですけども……言ってみれば、これも結局、究極の他者であり、誰かを受け入れる感覚の話であり、他者との共生の話でもあるんですよ。ものすごい仕掛けだからハッ!って思って見るんだけど、途中から「あれっ? これって別にここだけの話じゃないな」と。都会なんか、そうじゃないですか。隣近所で誰が住んでいるか、わからないという事態で。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)この人たちは素性は知らないけど、コミュニケーションを始めなきゃいけないわけですよ。これはなかなか、将来の移民問題とか……移民問題までいかなくても、いかにコミュニティーでみんなでどう暮らしていくか?っていう、これも「他者を受け入れる」っていう話なんですよ。

(塩澤未佳子)たしかに。

ラッパーにしてラジオDJ、そして映画評論もするライムスター宇多丸が、毎週ランダムで決まった映画を自腹で鑑賞。その後、生放送で評論を語り下ろす「週刊映画時評ムービーウォッチメン」。ここではその書き起こしをノーカットで掲載いたします...

(プチ鹿島)ねえ。それだけじゃなくて、僕がお正月明けに見た映画で『希望のかなた』っていう映画があるんです。これもすごく面白かった映画で。これはアキ・カウリスマキ監督の作品なんですけど、これも結局、北欧フィンランドの首都ヘルシンキを舞台に、シリア難民の青年が妹を探しに来るんです。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)ただ、難民申請は受理されず、収容施設を逃亡して妹を探すために不法滞在者としてヘルシンキに留まるんです。で、差別や暴力にさらされる。だけどやっぱり、あたたかく迎えてくる人もいて。その人はその人で人生が行き詰まっちゃってね。だからそういう2人の物語が交差するんですよ。だけどやっぱり、結局は世界を覆い尽くす理不尽な不寛容への抵抗を示す辛辣なユーモアの精神っていうのがこの監督がこの映画で訴えたいことらしいんですって。全部同じじゃないですか。

(塩澤未佳子)そう言われると……。

(プチ鹿島)不寛容とか寛容とか、他者との共生とかね。で、僕は知らなかったんですけど。これ、1週間前の2月14日の日刊スポーツなんですけども。アカデミー賞が来月、発表されるでしょう? それで最多の13部門にノミネートとなった映画というのが『シェイプ・オブ・ウォーター』っていう映画なんですって。当然僕はまだ見ていないんです。3月1日から公開らしいんですけど。これが面白いんですよ。怪獣好きが描く、女性に愛される怪物っていう。アメリカとソ連が核と宇宙開発を競っていた1962年のNASAを舞台に、アマゾンから運ばれてきた謎の生命体と清掃係の女性が恋に落ちる異色のラブストーリーっていうんですよ。

(塩澤未佳子)ほう!

(プチ鹿島)この監督(ギレルモ・デル・トロ)いわく、「よそ者を恐れ、嫌ういまの時代に愛と寛容な心を描きたかった」っていう。またここで「よそ者」とか「寛容」とかっていうことなんですよね。

(塩澤未佳子)ええーっ! なんだろう?

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(プチ鹿島)だからどれだけいま、ギスギスしてるんだろう?っていう話でもありますよ。だからこの間、オリンピックでね、小平奈緒選手が(金メダル)見事だったじゃないですか。でも、あれ以上に話題になってみんなをほっこりさせたのは、韓国のライバル選手と抱擁してね。あれがむしろセットになってワーッ!ってなったじゃないですか。すごくあったかくていいシーンで、ああいうのを見ると、「いいな、やっぱり」って思うんですけども、ふと思ったんですが、子供の頃のオリンピックってこういうの、普通にあったし。これをことさら美談で、「ああ、よかった、よかった!」って……そんなにみんな感動していなかったよなっていう。それはいい意味でですよ。

(塩澤未佳子)それが当たり前のようにあったからですよね。

(プチ鹿島)だからこれを取り立てて、みんなすごく感動する、ほっこりするっていいことだと思うけど、いかに平常モードがギスギスモードなのかな?っていう裏返しにも僕は思えたんですよね。だってスポーツ選手だから、別にどの大会でも顔を合わせるわけだから。特別にあれ、特殊な物語じゃないと思うんですよね。やっぱり他の国のトップアスリートとライバルとか、ライバル=友達であったり。ねえ。

(塩澤未佳子)そうなんですよね。

(プチ鹿島)それをことさら、みんなの心を打つっていうことは、どれだけお隣の国、お隣界隈となんかいろいろと……怒っている人もいれば、そこまで怒らなくてもいいだろうっていう人もいるし。で、またそこの界隈のケンカになっちゃったりとか。そういう時にポーンとあの画を見せられると、みんな「ああっ!」って、いい意味で肩の力が抜けるというか。これもいまの時代の特徴的なお話だったのかなと。

(塩澤未佳子)そうだったのかな。

(プチ鹿島)あれがみんな、ホッするのはって思いました。

(塩澤未佳子)なんか際立ちますもんね。

(プチ鹿島)でも本当にこの映画、面白かった。だからこの『シェイプ・オブ・ウォーター』も3月1日で。全然この日刊スポーツの記事しか知らないんで。面白そうだな、見に行きたいなって思うんです。ねえ。だからある意味、これが時事ネタだよということで、大上段にかまえて詰め込むというよりも……物語ってそうじゃないですか。これも『スリー・ビルボード』って先週お話しましたけど、そこの解説で映画監督の方が解説していたんですけど。あれもやっぱり、いまの社会を映し出しているんですよね。

(塩澤未佳子)うんうん。

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(プチ鹿島)だけどことさら、「トランプが……」とか「セクハラが……」とかっていうエピソードは入れなくても、田舎の町の人々を描くことによっていまの時代が浮かび上がってくるという。だから、物語を作る・表現するってそういうことなんだなと。結局、今を描くことになるんだろうなって思っていた矢先に、『パディントン2』でね、僕はいまさらですが、思い知らされて。いい映画だったんですよ。2から見ても大丈夫ですから。で、これが落とし所もいいんだな、これが……。

(塩澤未佳子)ああ、そうなんですか。

(プチ鹿島)みんながいい感じに。

(塩澤未佳子)うわーっ、そういうの、いいな。

(プチ鹿島)ということで火曜キックス、スタートです。

<書き起こしおわり>

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