高橋芳朗 映画『パディントン』のテーマとカリプソを語る

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高橋芳朗さんがTBSラジオ『ザ・トップ5』の洋楽紹介コーナーで、映画『パディントン』で使用されている音楽、カリプソについてトーク。映画のテーマと絡めて話していました。

(高橋芳朗)というわけで、今週の洋楽コーナー、行ってみたいと思います。今週はですね、この後の映画動員数ランキングで紹介する新作映画『パディントン』。先週の金曜日から公開されましたね。で、『パディントン』を切り口にして曲を紹介したいと思います。

(熊崎風斗)はい。

(高橋芳朗)『パディントン』ですね、児童文学の『くまのパディントン』を実写映画化したものになります。で、熊崎くんも見たんだよね?これね。

(熊崎風斗)見ました。

(高橋芳朗)で、ペルーのジャングルで生まれ育った小さな熊が海を渡ってロンドンにやってくるというお話なんですけども。これね、鑑賞前から、なんか『最近のイギリスの移民問題とシンクロしている』みたいな情報が耳に入ってきたんですよ。で、実際に映画を見た後の印象としては、もうシンクロしているレベルじゃなく、明確に移民問題を主題としている映画なんじゃないかな?っていう気がしました。で、映画を見ていて、これは真っ向から移民問題を扱ってくるなっていうのは割と映画の序盤の段階で気づいたんですけど。それ、劇中で使われている音楽がきっかけなんですね。

(熊崎風斗)ええ。

(高橋芳朗)どういうことか?というと、この映画だと、狂言回し的な役回り。パディントンの心情を代弁するような感じで、粋なおじいちゃんのバンドが要所要所で登場しますよね?登場してくるんですけども。あのじいちゃんバンドが演奏していたのは『カリプソ』っていう音楽なんですね。

(熊崎風斗)はい。

(高橋芳朗)日本だと、『バナナボート』を歌った浜村美智子さんが『カリプソの女王』なんて言われましたけども。まあ、僕の年齢でもピンと来ないような話なんですけども。まあ、カリプソ。簡単に説明しますと、かつてイギリス領だったカリブ海の島国トリニダード・トバゴ共和国で20世紀初頭に生まれた音楽になります。で、第二次世界大戦が終わった後、1940年代後半になって、イギリス領だったトリニダードの人たちが出稼ぎでイギリスに渡ってくるようになりますね。それに伴って、カリプソもイギリスに輸入して、それで広まっていったんですよ。

(熊崎風斗)はい。

(高橋芳朗)で、そんな中で、人気を博したアーティストがカリプソの父といわれるロード・キチナー(Lord Kitchener)という人なんですね。で、このロード・キチナーもトリニダードからイギリスに渡ってきた移民なんですけども。で、彼の代表曲に『London Is the Place for Me』っていう曲があるんですよ。ちょっといま、かけてもらえますか?

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Lord Kitchener『London Is the Place for Me』

(高橋芳朗)これね、映画の劇中でパディントンがブラウンさん一家に引き取られて。ペルーから渡って、ロンドンに到着してね。で、ロンドンでの生活がスタートする時に、例のじいちゃんバンドが演奏している曲のオリジナルです。

(熊崎風斗)おおー。

(高橋芳朗)1948年の作品ですね。で、この『London Is the Place for Me』。タイトルは『ロンドンは俺の街・ロンドンは俺のための場所』みたいな意味になると思うんですけども。歌詞をざっくりとまとめるとですね、こんな感じです。『フランスやアメリカ、インド、アジア、オーストラリアに行っても、最後はきっとロンドンに戻ってくるはず。ロンドンは本当に住みやすくて、イギリスの人たちはとっても社交的なんだ』というような・・・

(熊崎風斗)はい。

(高橋芳朗)歌詞になっています。だからロンドンへの賞賛で埋め尽くされているような、まあロンドン讃歌って言っていいと思うんですけど。この歌詞から、当時のイギリスにいかにカリブからの移民が多かったかっていうのがよくわかると思うんですけども。

(熊崎風斗)うん。

(高橋芳朗)で、こういう背景をもったカリプソという音楽をもうパディントンの心情を代弁する曲として映画のサウンドトラックとして使っている段階で、これはもう、どうしたってイギリスの移民の歴史を意識せざるを得ないし、ひいてはもういま、まさにイギリスが直面している移民問題を意識せざるを得ないと思うんですね。で、もうパディントンの存在自体が移民問題そのものっていうか。パディントンの受け入れの是非をめぐる台詞が全てさ、移民問題に置き換えて受け取れてしまうようなね。

(熊崎風斗)うん。

(高橋芳朗)で、ここまで劇中で全面にカリプソを押し出してなかったら、きっとまた印象が変わっていたんじゃないかな?と思います。そのぐらい、この映画ではカリプソが大々的に使われていて、それが大きな意味をなしているんじゃないかな?と思っています。で、この『パディントン』っていう映画のテーマは『多様性に対して寛容であることの尊さ』みたいなことだと思うんですけど。まあ、『尊さと難しさ』みたいな感じですかね?うん。で、そのへんを踏まえてこの映画にちなんでどんな曲を紹介すべきか考えるとですね、オリジナルのカリプソを聞いてもらうのももちろんいいんですけど。ここはやっぱり、カリプソがイギリスに入ってきて、後のイギリスのポップスにどんな影響を与えたか。

(熊崎風斗)はい。

(高橋芳朗)カリプソの影響によってイギリスのポップスにどれだけ素晴らしい作品が生まれたのかを知ってもらうのがベストというか、筋だと思って、こんな曲を選んでみました。1960年代にロンドンのモッズたちに人気だったシンガーです。ジョージー・フェイム(Georgie Fame)の1963年の作品で『Eso Beso』です。

Georgie Fame and the Blue Flames『Eso Beso』

(高橋芳朗)Georgie Fame and the Blue Flames。1963年の作品で『Eso Beso』を聞いていただきました。というわけで、映画『パディントン』の魅力に音楽面から迫ってみましたけども。映画本編のね、内容に関してはこの後の映画動員数ランキングのコーナーで詳しく紹介したいと思います。

(熊崎風斗)はい。

<書き起こしおわり>

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