吉田豪 長谷川博己を語る

吉田豪 長谷川博己を語る たまむすび

吉田豪さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、『GQ JAPAN』でインタビューした俳優の長谷川博己さんについて話していました。

(安東弘樹)ということで、今日は誰の筋でしょうか?

(吉田豪)はい。俳優の長谷川博己さんですね。

(安東弘樹)おおーっ、もういまね、売れに売れているという感じですよね。では、まずは長谷川博己さんのあらすじとその筋をご紹介します。長谷川博己さん、1977年東京都生まれ。2001年に文学座附属演劇研究所に入団。翌年初舞台を踏むと、その後は蜷川幸雄さん演出作品など数多くの舞台で活躍。2010年に出演したドラマ『セカンドバージン』で一躍注目され、以降『鈴木先生』『家政婦のミタ』『MOZU』など話題のドラマに出演。2016年に大ヒットした映画『シン・ゴジラ』で主演を務め、さらに日曜劇場『小さな巨人』での主演でも大きな話題を呼び、日本を代表する俳優として躍進を遂げた実力派俳優です。

(玉袋筋太郎)うん。すごいな。

(吉田豪)この時点では僕との接点ゼロですよね(笑)。

(玉袋筋太郎)ゼロだね。本当だね。どこで結びついたのか?っていう。

(安東弘樹)この番組との接点もゼロですね。そして吉田豪さんの取材によりますと長谷川博己さんのその筋は……その1、共通項はリリー・フランキー。ポルノ映画のポスターに反応の筋。その2、オーディションに受かっていたら、いまのお前はない。もともとはアングラの筋。その3、飲んでいる時に出演決定。いまは全部が役立っているの筋。その4、低視聴率から一気に40%。人生変わった瞬間の筋。その5、言動すら変わるレベル。長谷川博己は変な人の筋。以上、5本の筋でございます。

(玉袋筋太郎)これはやっぱりその1から行った方がいいということだね。共通項はリリーさん。

(吉田豪)今回、『GQ JAPAN』の1月・2月合併号で「GQ MEN OF THE YEAR 2017」っていうので長谷川さんの受賞したということでインタビューに行ったんですけどね。

(玉袋筋太郎)すごいね。そのオブ・ジ・イヤーっつーのが。

(吉田豪)これがまた、この号がいま入手困難で。いまようやく増刷されてまた売られているんですけども。新しい地図の3人が受賞して、それが表紙になったんで、もう一気に書店からもネットからも消えて……で。すごかったんですよ。

(玉袋筋太郎)新しい地図だ。すごいんだ、広げちゃって。地図が。それと同じ号に載っているという。はいはい。

(吉田豪)っていうことで、その受賞を「おめでとうございます」って行ったんですけど、その時に長谷川さんにも言ったのが、「僕と長谷川さんの唯一の接点があるんですよ」っていうのが、リリー・フランキーさんなんですね。

(玉袋筋太郎)うんうん。

接点はリリー・フランキーさん

(吉田豪)僕と長谷川さんは確実に同じ時期に同じ場所にいた人なんですよ。長谷川さんは大学在学中にマガジンハウスでバイトをしていて。その当時、笹塚にあったリリーさんの家に原稿を取りに行っていたと。で、「1回、居留守も使われたことがある」って言っているんですけど、リリーさんは僕の師匠で。僕は一時期、リリーさんのラジオの手伝いをやっていた時代があって、かなりマメにリリーさんの事務所に行っていた時期があるんですよ。週1ぐらいのペースで行っていて。

(玉袋筋太郎)じゃあ、会ってるんじゃない?

(吉田豪)だから僕がいると、よくマガジンハウスの人が原稿を取りに来ていたんですけども、リリーさんはそれ、本当に無視するんですよ。「そんなことよりも、みんなで遊ぼうよ!」っていう感じでずーっとギターを弾いてダラダラして、酒飲んでみんなで話して……みたいな感じで。で、2、3時間放置してから「さあ、そろそろ書こうかな」で書くような感じでやっていたんで、何人か僕、バイトの人を見ていたんで。もしかしたら会っているかもしれないという。

(玉袋筋太郎)フハハハハッ!

(吉田豪)確実に同じ時期に同じところにいた人なんですね。それが、後に『東京タワー』という、大ヒットして映画、ドラマにもなった、あれの舞台になった笹塚ボウルがあるマンション。そこなんですよ。そこに同じ時期に出入りしていた人。

(安東弘樹)はー!

(吉田豪)っていう話をしたら、「そうなんですか!」っていう感じで長谷川さんは、「本当にあの2、3時間放置されるのも、こっちとしてはサボれるんでいいなと思ってね!」っていう(笑)。

(安東弘樹)ポジティブ(笑)。

(吉田豪)「こっちはその間、ずーっと煙草を吸って映画も見ていられたし。いろんな映画の話とかをすると、リリーさんもイラストを書くのを止めて夢中になってくれて。『どんな映画が好きなんだ?』とかそういう話ができた。すごい楽しかった」という。

(安東弘樹)ダメなバイトですね(笑)。

(吉田豪)ダハハハハッ!

(安東弘樹)遅らせている、みたいなね(笑)。

(玉袋筋太郎)そうだよな、うん。

(吉田豪)で、そのきっかけになったのが、リリーさんって事務所に当時、壁紙みたいに部屋中全部昭和の東映とかの映画のポスターを貼りめぐらせていたんですよ。で、僕はそれ、実はリリーさんの影響を受けて。僕もその当時、『紙のプロレス』の編集部とかをそういう風にしたりとかして(笑)。まあ、自宅もそうして。同じ店に行っていたんですよ。中野ブロードウェイの中にあった映画のポスター専門店があって。

(玉袋筋太郎)あったあった!

(吉田豪)そこがすごい厳しくて、ポスターの山を1枚1枚、隣にずらしていかなくちゃいけないんですよ。見方が間違っていたりとかすると、店の人に怒られるというすごい厳しい店で。そのかわり、ちゃんとやると「認めた!」っていう感じになって。リリーさんとかは「この前ね、缶コーヒーもらったよ」とか言っていて。「豪もいつか、もらえるようになれ!」って言われて、ずーっとやっていたらある日、その店主に呼ばれたんですよ。僕も「やった!」って思ったら、金を渡されて「コーヒー買ってこい」って言われて(笑)。

(安東・玉袋)フハハハハッ!

(吉田豪)パシリにされた事件っていうのがあって(笑)。まあ、買ってきたら1本くれましたけどね。そういうような話をしたら、同じような体験をしていて。「僕も行っていたんですよ」みたいな感じで。リリーさん曰く、「その壁に貼ってある映画のポスターに反応したのが、出入りのバイトだと長谷川くんぐらいだった」って言ってたんです。「古い映画の監督とかにまでちゃんと反応していた」と。

(安東弘樹)ああー。

(吉田豪)ただそれは、同じ風にマガジンハウスとかでバイトしていた女性とかは、「すごいエロチックなものばっかりあったから、目のやり場に困った。セクハラを受けた!」みたいな感じで長谷川さんに愚痴をこぼしていたらしいんですよ。

(玉袋筋太郎)ある意味リトマス試験紙になっていたんだろうね。それが。

(吉田豪)そうなんですよ。わかるかどうかっていう。

(安東弘樹)じゃあ、それを長谷川さんは……。

(玉袋筋太郎)わかっていたんだ。

(吉田豪)そう。長谷川さんも言っていましたよ。「まあ、そうだろうなと思って。わからない人にとっては」っていうね。

(玉袋筋太郎)それもわかる。

(吉田豪)で、リリーさんはその当時のことを説明する時、「長谷川くんとは実は古い付き合いだ。当時、ポルノ映画のポスターに長谷川くんが反応して……」みたいな表現をしているから、それも世間から誤解を受けているんでしょうけど、要するに石井輝男さんとかのエログロ的な映画とかのポスターに反応していたんですよ。

(玉袋筋太郎)そういうことだろうな。

(安東弘樹)別にポルノだから……じゃなくて。

(吉田豪)そうです。「石井輝男じゃないですか!」って言っていたのが長谷川さんだったっていう。

(安東弘樹)ああ、そういうことですよね。なるほど、なるほど。

(玉袋筋太郎)逆に言われるリリーさんもうれしいんだもんね。

(吉田豪)そうなんですよ。「おお、わかるじゃん。お前!」ってなって、盛り上がっていったっていうことなんですよ。

(安東弘樹)そしてね、俳優さんになるんですけど。オーディションに受かっていたら、いまのお前はない。もともとはアングラの筋。

(吉田豪)当時は監督志望だったんですね。長谷川さんは。で、リリーさんにそういう話をしたら、「撮ってみなよ」っていう話をされていたらしくて。「でも、撮る仲間もいないし、機材もない……」と。ただ、実は当時リリーさん、機材は持っていたんですよ。

(安東弘樹)ええっ?

(吉田豪)機材を持っていて、貸し出しとかしていたんですよ。リリーさんが当時、ロフトプラスワンでやっていた『スナック・リリー』っていうイベントで自主映画部っていうのを作って。自主映画を撮りたいやつにどんどん機材を貸していて。そういう人たちが実はいま、活弁士の山田広野くんとか、そこそこ有名になったりとかしていて。なので全然借りれたんですけど、「仲間もいないし……」でできなかったっていう。その頃に、熊切和嘉さんの『鬼畜大宴会』が上映していたぐらいの時で、「同世代だったからそういうことをしたいな」っていう話をして。そんな時、石井輝男監督の『盲獣vs一寸法師』っていう映画があったんですよ。これ、実はリリー・フランキーさんの映画デビュー作なんですよね。

(安東弘樹)出演の?

(吉田豪)主演の。そうなんですよ。で、そこに長谷川さんはリリーさんとは全然関係なくオーディションに行っていたと。

(安東弘樹)ああ、言われてとかじゃなくて?

(吉田豪)全然、全然。自分で応募して、そこで尊敬する石井輝男監督に会うことができたけど、「尊敬しすぎて目の前で自分の芝居を見せるという時に緊張しちゃって全くできなくて。やっぱり役者をやるなら訓練が必要だなと思って、落ちて劇団に入ろうと決めた」と。で、1年後ぐらいの公開された時、「誰がやっているんだろう?」って見たらリリーさんだったっていう(笑)。

(安東弘樹)なるほど(笑)。

(吉田豪)「なに、これ?」っていうね。

(玉袋筋太郎)まあ、ねえ。リリーさんにそういう劇団の経験っていうのはないわけで。なにもない人が主演を取っていたという。おおーっ!

(吉田豪)で、その後リリーさんには、「あの時にオーディションに受かっていたら、いまのお前はない。絶対に『ゴジラ』とかに出ていないし、日曜劇場の主役なんかもやれない。アングラの方にしか行けなかったはずだ」って。

(安東弘樹)そういうことか。

(吉田豪)アングラ好きの長谷川さんだけど、それと真逆の、いわゆる新劇の文学座っていうところに入ったのがよかったって思っているんですよ。

(安東弘樹)文学座ですもんね。

(吉田豪)それもだから、「石井輝男イズムもありながら、ド新劇なこともやっているやつがいる」って言ってくれて。「そういう両極端なところをいろいろやったっていうのも大きかったと思いますね。……って、全然関係ない話をしてますね」って言われたんですけど、「今日はそういう話を聞きに来たんです!」っていう。

(安東弘樹)もう、豪さんとしてはね。

(玉袋筋太郎)ある意味、『新劇の巨人』ですよ、これ。

(吉田豪)まさにね(笑)。そうなんです。「自分のことを客観的に見ると、正統派の王道の方がいいなと思った。自分はいまでもそういうもの(アングラ)も好きだし、王道的なものも好きなんだけど。どこか自分の中でアングラ的な、それこそ唐十郎さんのような人とか、石井輝男監督とか、そういうところの人たちの大胆さみたいなものをちょっとどこかで取り入れたりすることによって、自分の中ですごく楽しくなる。そういう風にアプローチすることも面白いと思っている」という。

(安東弘樹)ああーっ!

(吉田豪)根がアングラなんで。だから、「たぶんたまに冷静になると、『俺が月9?』とか『俺がマン・オブ・ジ・イヤー?』とか思いますよね?」って言ったら、「なります、なります! すごいなる!」って言っていて(笑)。「『えっ、俺がマン・オブ・ジ・イヤー?』って笑えている自分がいるのが楽しい」っていう。

(安東弘樹)『MOZU』とかの時はいい味を出してましたよね。長谷川さん、だからそういうところが出たのかな?

(玉袋筋太郎)こういう風に言えるようになりたいね。「俺がかい?」なんて言ってさ。「よせやい、よせやい!」なんて……言ってみたいもんだな(笑)。

(吉田豪)「アングラな俺が?」みたいな(笑)。

(玉袋筋太郎)「俺が? 玉袋筋太郎が?」って(笑)。……ない!

(安東弘樹)ちょっとうらやましいですよね(笑)。

(吉田豪)ちなみに監督……。

(玉袋筋太郎)そう。監督をやりたいっていうね。

映画監督・長谷川博己の可能性

(吉田豪)「その欲はまだ残っているんですか?」って聞いたら、「いまはない。すごい大変だなと思って。全体を見ながらそこで選択していかなくちゃいけないし、決断していかなくちゃ行けないっていうのは、監督がいちばんトップでやるのを考えると、ちょっと……。俳優っていうことで演技だけやるっていう方がいいかな。全体を見るっていうのはなかなか難しいかな」っていう風に言っていて。「ひとつひとつの決断をするのにも時間がかかっちゃいそうで。いまの日本の映画の短い期間でやると、たぶん終わらない気がする。でも、役者の気持ちがわかるから、演技を撮るのは上手くできるんじゃないかな?っていう気もするし……」みたいな感じで、ちょっとまだやる気があるっぽいんですよ。

(安東弘樹)そうですね。

(吉田豪)実はインタビューでずっとそれを煽り続けるような感じになっているんですけど。「やる気、ありそうじゃないですか」みたいな(笑)。

(安東弘樹)でも、そうですね。

(吉田豪)ちなみに「役者リリー・フランキーってどういう風に見ています?」って聞いたら、「ハハッ! それ、俺に言わせないでください!」って言いながら、言えないですと言いながらも、「あれはうらやましい。ああいう何もしないというか……もちろんいろいろとされているんでしょうけど、プロじゃないからこそできる演技というか」。

(安東弘樹)そうだよなー。リリーさん。

(玉袋筋太郎)いや、でも監督か。クリント・イーストウッドみたいに、自分が出て。あるいは、うちの師匠みたいに。

(安東弘樹)まさにそうでしょうね。次なんですけども、飲んでいる時に出演決定。いまは全部が役立っている。これはどういうことですか?

(吉田豪)僕もリリーさんに命令されて出た深夜番組の『真夜中』っていうのがあるんですけども。まあ、杉作(J太郎)さんも出ていた。実は、長谷川さんも呼び出されて、リリーさんのこの『真夜中』の最終回に出ているんですよ。それも番組に出ることになったのは、たまたまリリーさんと飲んでいた時に番組の企画をみんなで話していて。それが本当になんか笹塚時代みたいな感じで、リリーさんが言うことを周りのスタッフがメモしている。それがフジテレビのプロデューサーだったりするわけですけども。で、「ここに長谷川もいるんだから、長谷川も1回出なきゃダメだぞ」って言われて、「はい、わかりました」と。「断るという選択肢はなかった。でも、出られてよかった」と。企画の現場から一緒にいて「こういう風に番組を作っているんだな」っていうね。

(安東弘樹)うんうん。

(吉田豪)で、あれはすごい特殊な番組だったんです。実は編集もリリーさんの家でやったりして。

(安東弘樹)あ、そうなんですか?

(吉田豪)そうなんですよ。リリーさん、最終チェックまで全部自分でやっていて。キャスティングから何から、異常な番組だったんですよ。

(安東弘樹)へー! 僕も見ていましたけども。

(吉田豪)だから編集も、「ここももっとこうして、カットしようか」って言って、ディレクターの人が「わかりました」ってカットして……みたいな感じで。たしかにそうやって編集した方が締まって、すごいな!っていう。「監督、きっとやるでしょうね」って長谷川さんが言っていましたという。

(安東弘樹)ああー。

(吉田豪)で、「刺激を受けました?」って聞いたら、「刺激を受けるというか、リリーさんとは全然タイプが違うと思いますね。僕が作る映画はもっとオーソドックスで正統派なものになると思います」みたいな。

(安東弘樹)そこはそうなんですね。

(吉田豪)「アングラ魂はどこかに感じさせるようなものにしつつ……だから僕の演技の下に出るかもしれない。もしやるなら……いや、やらないですけど」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)フフフ(笑)。わかんないぞ、この含み笑いは。

(吉田豪)だから本当、「こういうのを思うと、これまでの紆余曲折は無駄じゃなかったというか、無駄なことも全部必要なことだった。なんでも理由はある。むちゃくちゃ映画を見てきたのも当然生きているし、いろいろやってきたこととかが、なぜかこんなことをやらざるを得なかったということも含めて全部役に立っていて。40年間生きて、『あと40年か』って考えるとひとつのターニングポイントだろうなっていう感じはする」というね。

(玉袋筋太郎)もう彼がそう言うんだったら、俺たちも熱湯風呂に入ってきたのも無駄じゃなかったんだっていうね。

(安東弘樹)いや、そんな玉さん、無駄なんてとんでもないですよ!

(玉袋筋太郎)雪山でパンツ一丁で雪の中で泳がされたりするのも、全て役に立っているのかな、豪ちゃん?

(吉田豪)マスクドメロンとかプロレスでやらされたりとか(笑)。

(玉袋筋太郎)そうだよ。マスクドメロンとかさ。本当だよ。まあ、こうはなっていないけどね。俺は(笑)。ここまで行ってないんだよ。

(安東弘樹)でもまだ40っていう感じ、しましたよ。

(玉袋筋太郎)40才。

(安東弘樹)若いんですね。

(吉田豪)遅咲きとはいえ……っていう。

(安東弘樹)そうですね。短期間にグワーッと来たということですね。そして、グワーッと来たという意味では、低視聴率から一気に40%。人生が変わった瞬間。

人生が変わった瞬間

(吉田豪)はい。「人生が変わった瞬間っていつだったと思います?」って聞いたら、「映像に出始めた時から少し状況が変わった。接する人とかもだいぶ変わってきて。それが6年ぐらい前。34才から35才ぐらい。テレビに出て、映画をやって。そこらへんから全然色々と変わった」と。

(安東弘樹)それはそうですね。

(吉田豪)ただ、テレビに出て主演ドラマ一発目の『鈴木先生』っていうのがいきなり低視聴率で騒がれたんですよ。「あの時、どう思いました?」って。

(安東弘樹)テレビ東京さんの。

(吉田豪)そうですね。内容的に評価はすごい高かったんですけど、視聴率が取れなくて。それに関しては「2011年はちょうど地震があったんで。原発が爆発したりとか。主演でこれからやるのに、全部これで流れちゃうのかな?って思っていたんで、低視聴率よりもやれてよかったということの方が大きくて。その後に『家政婦のミタ』でいきなり40%を取ったんで。超高視聴率。やっぱり視聴率って大事なんだとは感じたけど……」っていう。

(玉袋筋太郎)ねえ。

(安東弘樹)この頃、僕も「気になる人」っていうイメージでしたね。なんか画面に出ていて気になる人っていう。そうかー。

(吉田豪)「手応えと興行収入がちょうどハマッたみたいなのは『シン・ゴジラ』とかですかね?」って聞いたら、「主演とかになるとある程度責任を負わなくちゃいけないから、そりゃあヒットした方がいいけど。『ゴジラはやっぱりゴジラだから』と思って見ていた。あれは一応主役の役だけど、ゴジラが主役だと思いながら……でも、政治家の話になっているから結構ヒットするだろうなとは思ったけど、あそこまで行くとは思わなかった。ヒットしてよかった」っていうね。

(玉袋筋太郎)ああーっ!

(吉田豪)『進撃の巨人』の話はしたかったけど、時間がなくて。……聞きたかった!

(玉袋筋太郎)そうだよな(笑)。へー!

(安東弘樹)そして、言動すら変わるレベル。長谷川博己は変な人。

(吉田豪)そうなんですよね。長谷川さんっていうと「変な人」っていう言葉がすごい付いていることが多くて。具体例がよくわからないんで、「どういうことなんですか?」って聞いたら、本人も「わからないです。まあ、変な人なんじゃないですかね?」って言っていて。「現場での言動なり行動なり、何か問題があるんだと思う」と。

(玉袋筋太郎)それは小出恵介とか高畑裕太とか、そういったタイプの問題じゃないんでしょう?

(吉田豪)じゃないですね。事件性はないと思います(笑)。

(玉袋筋太郎)ああ、ない? よかったよかった。

(安東弘樹)よかったよかった(笑)。

(吉田豪)どういうことか?っていうと、「役に入り込んでいたい時がある」っていう。そうすると、「そういう感じの時に普通に話しかけてきたりすると妙な空気をまとっている。それで変な人なんだと思われているんじゃないか?」と。だから本人としては昔のオーソドックスな俳優さんの感じだと思うんだけど、そういうのをあまりやられていない人たちにしてみれば、「なんでずっと怒っているんだろう?」って思ったりするっていう。

(安東弘樹)うんうん。

(吉田豪)ただ、本当に入り込みすぎて、普段の言動すら変わるレベルらしいんですよ。「だからいろんな役をやっていて、いろんな人物が俺の中に入ってくると、その時によってキャラクターの感覚が自分の中に蓄積されていくから、普通に会話しながらもそれがたまに出てきて変なことを言っちゃったりすることもある。まあ、なんか変なんじゃないですかね? わかんないですけど。みんな言うから、きっと変わっている人なのかな? 普通だっていう言う人もいるんで自分がどんな人間か?っていうことは人には説明はできない」っていう。

(玉袋筋太郎)「憑依する」っていうことだね。

(安東弘樹)そうですね。『MOZU』っていうドラマの時、ちょっと変わった役だったじゃないですか。「チャオ!」とか言いながら出て来る敵役だったんですけど、やっぱりその撮影の時に僕、『MOZU』っていう映画で結構深く番宣とかで関わっていたんですけど。「その人そのものみたいに見えた」って周りの方は言っていました。普段はそうじゃないのに、その役に入っている時は、非常にエキセントリックな人に見えるぐらいその役に入り込んでいたっていう話は周りの俳優さん、していましたね。

(吉田豪)へー!

(安東弘樹)だから本当に憑依型で、その方になるっていう感じなんでしょうね。

(吉田豪)やりすぎちゃうタイプ。あと「無趣味」ってすごい言われているんですけど、「趣味はなんですか?」って聞いたら……そうなんですよ。もともと映画好きだった人がそれが仕事になっちゃったことで。「だから趣味という趣味はいまはない。映画は好きだけど、いまは映画を見ると疲れちゃう。日本の映画は特に。見方が変わっちゃうんで」っていう。

(安東弘樹)そこが現実ですもんね。

(吉田豪)まあ、「別の面白がり方はある。『ああ、こういう風に撮っているんだ』みたいな発見もあったりする。ただ、完全に楽しんでは見れないから趣味ではななくなって、義務っていうか勉強。自分がどうやるか? のお手本みたいな感じになっている」という。

(玉袋筋太郎)「自分だったらどうやるか?」っていうね。

(安東弘樹)僕もそんなかっこいいもんじゃないですけど、テレビ見ないですもん。あまり。そこに現場があるんで、こう、仕事のことを考えちゃったりとか。どうしても、趣味で楽しむっていう感じでは……だから僕、お正月もテレビは。

(吉田豪)息抜きにならないわけですね。

(安東弘樹)息抜きにならないんですよね。

(吉田豪)安東さんの場合、ジェラシーとかもあるんじゃないですか? 「俺がこっちに出たいのに!」とか?(笑)。

(安東弘樹)いやいや、ジェラシーは本当になくて。「大変だな」っていうのと、あと後輩が働いていたりすると、いま働き方改革で。「ああ、申し訳ない」って思ったりとか。

(吉田・玉袋)ダハハハハッ!

(安東弘樹)ずーっと。あのね、なんて言ったらいいのかな? 本当に現場なんですよね。「すまん! 杉山、すまん!」とか。「今月、どのぐらい残業なのか……ごめんな!」とか。そういう感じになっちゃうんで。本当に。

(吉田豪)なんかあると安東さんが叩かれかねない流れですからね。

(安東弘樹)いえいえ。他局に関しても、「ああ、このアナウンサーはこれぐらい働いているけど、残業はどのぐらいかな?」とか。

(吉田豪)計算しちゃうんですね。

(安東弘樹)全く楽しめないですね。えー、以上です。

(吉田豪)ダハハハハッ!

(安東弘樹)で、漫画も読まれるんですか?

(吉田豪)そうですね。「手塚治虫さんが好きらしいですね」って言ったら、「よく知ってますね!」みたいな感じで。「なんであんなのが書けるのかな?って思って。手塚さんの漫画を読んでいると、他のが全部その踏襲に感じちゃう。つげ義春さんとかも好きですけど。だから、手塚さんの漫画とかを映画にしたいなと思っているんですけどね。『鉄の旋律』って知っていますか?」みたいな感じで、順調に罠にかかっているという(笑)。「やっぱり撮りたいんじゃないですか!」みたいな(笑)。

(安東・玉袋)フハハハハッ!

(安東弘樹)「やってみたい」っていうのは「撮りたい」っていう(笑)。

(吉田豪)そうなんですよ。

(玉袋筋太郎)いやー、これからでも、まだ40才でしょう? ますます50とか歳を重ねることによって変化していく俳優さんになっていくんだろうね。

(吉田豪)ブレイクして5、6年とはいえね。

(安東弘樹)僕もそのドラマの制作発表なんかでお会いしたんですけど、普通の感覚を持ち合わせている方で。僕がはじめてお会いして挨拶した時、「ああ、僕、若い頃からずっと安東さんを見ていましたよ」って言われたんですよ。長谷川博己さんに。一瞬頭が真っ白になって、「ええっ、どういう意味なんだろう?」って思ってこれを見たら、たしかに30才ぐらいまで普通の生活をされていた感覚で……私がだから10、年上なので。長谷川さんが学生の時には俺、普通に仕事をしていたんだってその時に思ったんですけども。でも、普通の感覚を……。

(吉田豪)まあ、それ以上にマガジンハウスのバイトもすごい大きくて。いまだに映画とかで共演する人とかに、「僕はあの時、マガジンハウスの撮影で。スタジオの横で僕が手伝っていたんですよ」みたいな。それがあるんですよ。

(安東弘樹)そうか!

(吉田豪)相手の視界にも入らないぐらいの存在だった時代っていうのがあって。

(安東弘樹)それが大人であるわけですね。

(吉田豪)そうです、そうです。

(安東弘樹)そうかー。すごくバランスのいい人だなって。

(玉袋筋太郎)そういう人が成功するんだね。神様はちゃんと見ているっていうことだよ。

(安東弘樹)関係ないですけど、僕は名前が「ひろき」で同じなんで。なんか親近感が……。

(玉袋筋太郎)字が違うでしょう?(笑)。

(安東弘樹)全然字は違いますけども。ちょっと親近感がわくんですけどね。

(吉田豪)本当に懐にそれで入れたら、その後も雑談というか。「リリーさんのところに出入りしている時、オカンのご飯、食べました?」みたいなので。そういう同じ時代の人間ならではの確認作業をいろいろと(笑)。「あの時、リリーさん2部屋借りてましたよね?」みたいな。本当に当時、行っていた人しか知らないディテールが。「仕事場と自宅と……」みたいな(笑)。

(安東弘樹)でも、これからますます活躍しそうですね。長谷川さんは。

(吉田豪)映画も撮るんでしょうね。いつかね。

(玉袋筋太郎)撮るだろうな! うん。

(安東弘樹)でもマガジンハウスのアルバイトから『GQ』のマン・オブ・ジ・イヤーまで、こんな短い人はなかなかいないかもしれないですね。

(玉袋筋太郎)すごいよ!

(吉田豪)『GQ』のインタビューを受けている時も、『GQ』の編集の人に「○○さんってまだいますか? マガジンハウスから移ったあの人……」みたいな、現場の話ができるんですよ(笑)。

(玉袋筋太郎)言われた方もうれしいんだよ。

(安東弘樹)絶対にうれしいですよ! そうか、楽しみですね。豪さんによるこの長谷川博己さんインタビューは現在発売中の『GQ JAPAN 2018年1月・2月合併号』に詳しく掲載されています。なかなかいま、手に入らない?

(吉田豪)時期もあったのが、いまはまた手に入るようになったはずです!

(玉袋筋太郎)増刷!

(吉田豪)雑誌では珍しいパターン。

(安東弘樹)1月・2月合併号。ただ、Dマガジンなどでも読めるということですね。豪さん、今年はなにかありますか?

(玉袋筋太郎)2018年。

(吉田豪)なんかあったかな? ああ、はいはい。『ラストアイドル』騒動というのがまだ続いていて。そうですよ。それの展開がまだありそうですね。まだ言っちゃいけないようなやつが。知らない間にまだまだ巻き込まれているっていう。

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(玉袋筋太郎)巻き込まれる男だよ!

(安東弘樹)本当ですね。なんかこう、打ち返すというよりもサラッといなしていく感じがいいですね。豪さんね。今年もよろしくお願いします。

(吉田豪)よろしくお願いします!

(玉袋筋太郎)よろしくどうぞ!

(安東弘樹)吉田豪さん、ありがとうございました。次回の出演は2月2日でございます。

<書き起こしおわり>

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