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町山智浩 スタン・リーを追悼する

町山智浩 スタン・リーを追悼する たまむすび
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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で亡くなったスタン・リーさんを追悼。マーベルコミックスの多くの作品を手がけたスタン・リーさんの偉大さについて話していました。

(町山智浩)今日は急遽、スタン・リーという方がお亡くなりになりまして。ちょっとまあ、日本であまり詳しくは知られて……いるのかな? オタクの人しか知らないんで、ちょっと説明したいんですけれども。この人、95歳でした。すごい長生きで。この人はいわゆるアメコミ、アメリカンコミックの編集者で原作者なんですね。この人、どういった作品を作ってきたかと言いますと、『ファンタスティック・フォー』『ハルク(超人ハルク)』『スパイダーマン』『アイアンマン』。あとは『アベンジャーズ』に出てくるものみんな……『キャプテン・アメリカ』とか『マイティ・ソー』とか。あと『アントマン』とかね。それで『X-MEN』ですね。だから、もうほとんどマーベルコミックスの全部なわけですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうなんですね。

(町山智浩)アメリカにはマーベルコミックスと老舗のDCコミックスっていうのがあるんですけど。DCは『バットマン』『スーパーマン』『ワンダーウーマン』なんですけども、それと対抗するマーベルコミックスの中心人物がこのスタン・リーという人です。で、『アベンジャーズ』とかそういう映画を見てると、かならずこの人は出演しています。

(赤江珠緒)ああ、御本人も?

(町山智浩)だから、スタン・リーさんを知らない人でも、このへんの『スパイダーマン』とか『ハルク』とか『アベンジャーズ』を見てる人はみんな、この人を見ています。すごくハンサムなおじいさんで、ヒゲが生えていて、大抵の場合はサングラスをかけていますね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)すごく特徴的なんで、ファンはそれが楽しみで見に行くんですよ。マーベルの映画は。スタン・リーさんが出てくるシーンを楽しみにしているんですけど。
だから最近だと、『デッドプール』の一作目でストリップバーでDJやってたおじいさんだったりするんですけどね。

(赤江珠緒)ああーっ! 写真がここに届いてますけども。本当だ。ファンキーな感じでDJされている白髪というか銀髪のね、かっこいいおじいさん。

(町山智浩)ハンサムなおじいさんなんですけども。でね、この人はいつも笑顔ですね。僕、会いました。サム・ライミ監督の『スパイダーマン』一作目の時、スタン・リーさんのロサンゼルスの事務所に行って会うことができまして。本当にね、噂どおりの笑顔ニコニコの「スマイリー・スタン」と言われてる、本当に愛想が良くて優しいおじいさんでしたね。で、この人はただインタビューに行った時に、「『スパイダーマン』とかをクリエイトしたスタン・リーさんですよね」って言うと、「いや、私じゃない」って言うんですよ。

(赤江珠緒)なんで?

(町山智浩)「私は絵が描けないから」って言うんですね。この人、絵は描かないんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(山里亮太)じゃあ、どうやって?

(町山智浩)この人はだいたいのお話とかキャラクターを打ち合わせで決めて、あとは漫画家さんに書いてもらうんですね。

(赤江珠緒)はー! 構想みたいなのを出されて?

(町山智浩)そうですね。だいたいのざっとしたストーリーを書いて、それを漫画家さんがちゃんとした漫画にして、それのセリフを最終的に修正して出すという方式をしていると本人が言ってました。で、この人の絵を実際に描いていた人はジャック・カービーという人と、スティーヴ・ディッコっていう人なんですよ。「この2人が本当にこのキャラクター、スパイダーマンやファンタスティック・フォーを作ったんだよ」っていう風に非常に謙虚におっしゃっていましたね。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)だた、このスタン・リーという人はすごくマスコミ映えする人なんですよ。ハンサムだし、しゃべりも上手いし。すごく意見もはっきりしていて……この人、セリフを書いているわけですから言葉の使い方も上手いんで、非常にまあ漫画家さんっていうのは表に出る仕事じゃないですから。この人が表に出ちゃうんで、この人がそういうマーベルコミックスの顔みたいになっちゃったんですね。それはね、非常に謙虚に「あんまりそういう風に思わないでほしい」って本人は言っていたんですけれども。ただ、やっぱり彼は、やっぱりこのへんの作品の作者なんですよ。っていうのは、このスタン・リーさん独特の世界というものがあるんですね。作家性が。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)絵じゃないんですけども。キャラクターとか物語に。で、いちばん顕著な例はスパイダーマンなんですよ。スパイダーマンって、スーパーマンとかバットマンと比べて決定的に違うところがあるんですけど、なんだと思います?

(赤江珠緒)スパイダーマンに?

(山里亮太)「飛べない」?

(町山智浩)「飛べない」っていうのもありますね。

(赤江珠緒)えっ? 「痩せてる」?

(町山智浩)そう! その通りです。筋肉モリモリじゃないんですよ。

(山里亮太)ああ、そうだ! 細い。ピーターは。

(町山智浩)はい。これはさっき言ったジャック・カービーさんっていうのは筋肉モリモリのいわゆるアメコミを描く人なんですけど、最初にスパイダーマンをジャック・カービーに描いてもらったら「違う」っていうことになったんですよ。スタン・リーさんが「これは俺の考えているスパイダーマンじゃない」って。それでスティーヴ・ディッコさんという人にスパイダーマンを描いてもらったんですね。っていうのは、スパイダーマンってオタクの高校生なんですよ。

(山里亮太)そうだそうだ。

(町山智浩)ガリ勉の貧乏な引っ込み思案の気の弱い高校生、ピーター・パーカーがスパイダーマンなんで。筋肉モリモリの大男で顎ががっちりしているスーパーマンとかバットマンのような人じゃダメなんですよ。

(赤江珠緒)ああーっ!

(町山智浩)顎が細くて首も細くて、ちょっと気が弱い感じなんですよね。体もやせっぽっちで。それが画期的だったんですよね。だって、漫画を読んでいる人たちなんだもん。読者なんですよ。それまではものすごくたくましい、かっこいい人ばっかり見ていたんですよ。それまでのアメリカの漫画の読者は。

(赤江珠緒)ヒーローというものはそういうものだった。

(町山智浩)それが、自分が出てきたんですよ。「このヒーローは君なんだ!」っていうことなんですよ。で、これはスタン・リーさん自身がほとんどピーター・パーカーの元になっていて。スタン・リーさんはハンサムなんですけど、若い頃は貧乏で痩せていたらしいんですよ。で、しゃべりが達者なんですけど、昔はそうじゃなかったって本人、言ってますね。で、この人はユダヤ系の人で、貧しい移民の子供で。で、スパイダーマンもユダヤ系のやっぱり同じニューヨークの下町の出身なんですけども。貧しくて。で、ピーター・パーカーはお父さんとお母さんがいなくて。好きな女の子がいても声をかけられなくて。で、学校では時々いじめられるっていうキャラなんですよ。ただ、ものすごく本が好きで勉強家で。で、オタクと思われているんですね。その頃、オタクっていう言葉はないですが。

(赤江珠緒)うんうんうん。

(町山智浩)で、だから彼、スタン・リーは「すごく簡単に描いた。自分のことを思い出して描けばよかったから」って。で、それはその当時としてはすごい画期的なことだったんですよ。

(赤江珠緒)そうか。等身大のヒーローか。

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等身大のヒーロー

(町山智浩)その通りなんですよ! 等身大のヒーローなんです。英語では「等身大じゃないもの」を「Larger Than Life」って言うんですよ。本物よりも大きくなっているっていうことですね。等身大なんですよ。その通りなんです。それが画期的だったんですよ。英語ではよくね、「ヒューマンリアリティーをアメコミに持ち込んだ人がスタン・リーだ」という風に言われているんですよ。「人間のリアリティーを持ち込んだ」っていう。だから、人間のリアリティーを持ち込んだため、スパイダーマンは大変な問題をいっぱい抱えていくんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)お金に困る。

(赤江珠緒)ああ、そういう話もありますか。そうか。

(町山智浩)そう。ヒーローってああいうことをやって悪人退治しているけど、お金をどうすんの?ていう問題があるじゃないですか。

(赤江珠緒)たしかに。どうやって稼いでるんだ?っていう。

(町山智浩)その問題が出てくるんですよ。で、あとは彼女がいたり、結婚をしたりした時に家庭生活をどうするの?っていうね。

(山里亮太)リアルなところでね(笑)。

(町山智浩)ねえ。スパイダーマン、夜な夜な奥さんが寝てからベッドを抜け出して悪人退治に行くんですよ? それは「お前、いったいどこに行ってるんだ?」ってことになるじゃないですか。で、あとはいくらがんばって戦っても全く報われないんですよ。誰もピーター・パーカーっていう人だということを知らないから。それで、ノイローゼになってきます。精神科医にかかったりするんですよ。

(赤江珠緒)ええっ? そんなところまでリアルに描かれてましたっけ?(笑)。

(町山智浩)もう超リアルなんです。で、とにかくもうその軋轢で、「こんなもん、やめちまえ!」って、やめることもありました。「スパイダーマンなんてやってられっか!」みたいな感じで。

(赤江珠緒)うんうん。割に合わないもんね。

(町山智浩)そう。割に合わないでしょ? そういう風に徹底的に問い詰めていったんですよ。もし本当に普通の人がスーパーヒーローとしての力を偶然持ってしまったら、その後はどうなるのか?っていうことを徹底的に真面目に考えていったんですよ。

(赤江珠緒)ああー、面白い!

(町山智浩)このアプローチが画期的だったんですよ。で、もうひとつはスパイダーマンって突然蜘蛛の力を持ってしまった普通の少年なんですけれども。敵がね、みんなスパイダーマンみたいな人たちなんですよ。いろんな実験とか突然超能力を持ったり、突然怪物になってしまったのが全部スパイダーマンの敵なんですね。ところが、スパイダーマンの敵は条件が同じなのに、それを金儲けに使ったり、権力を持つのに使ったり、復讐に使ったり、テロに使ったりするんですよ。でも、スパイダーマン、ピーター・パーカーも一歩間違っていればそうなっていたんですよ。

(赤江珠緒)そうですね。特殊能力を得たんだから。

(町山智浩)そうそう。貧乏なわけでしょう? それでいじめられっ子なわけでしょう? 下手したら、そうなっていたんですよ。金儲けしたり、銀行強盗したり。そこでそういう風になるかならないかっていう非常にモラルの問題に踏み込んできたんですよ。

(赤江珠緒)ほー! はいはい。

(町山智浩)バットマンっていうのは大金持ちの息子なんですよ。お金はいらないんですよ。スーパーマンは神のような力を持つ宇宙人なんですよ。全能なんですよ。人間の苦しみから離れてる人たちなんですよ。でも、スパイダーマンは我々と全く同じ苦しみや悩みや欠点をいっぱい持っているんですよ。そこがすごかったんですよ。だから、スーパーマンが戦う敵は自分の鏡なんですよ。深いんですよ。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)で、それが1962年に出てきて、ちょうどアメリカっていうのがその1962年から大きく変わっていくわけですね。どういう風に変わっていくのか?っていうと、ロックンロールが出てくるだけじゃなくて、ベトナム戦争とかケネディ暗殺とかで政府というもの、いままで信じていた正義とか体制とか大人というものが信じられなくなっていくんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)つまり、ひどいことをしているわけですからね。差別とか。で、それまで信じていたアメリカの歴史というものも、実はインディアンと呼ばれる先住民を虐殺して奪った土地だったということが明確になってきたり。それまでアメリカが豊かだったのは黒人を奴隷労働者として搾取していた上になり立っていた経済だったという。そういうことがどんどんあからさまになっていくわけですね。あとは女性差別とか。その中で、正義は探さなきゃならなくなるんですよ。

(赤江珠緒)はー! 深い話ですね!

(町山智浩)「国を守れば正義」とか「学校の人が教えるものが正義」とか「大人の言う通りにすれば正義」じゃないんですよ、もう。この1960年代のアメリカは。正義はどこにも見えないんですよ。もう1人1人が探していかなきゃならないんですよ。という中で出てきているんです。だから、戦う中で正義を探していくのがすごく難しい物語として展開していくんですね。で、出てきたのが『X-MEN』なんですよ。

(赤江珠緒)うん!

(町山智浩)X-MENっていうのはある日、だんだんと人類の中に新しい進化の段階に入っていって……「進化」っていうのは突然変異で起こりますから。突然変異でいろんな人が出てきちゃうんですよ。で、もちろんその過程で、進化というのは適者生存だから生き残れるか生き残れないかっていう話になってくるんですね。ところが、そしたら「旧人類が新人類に全部進化の過程で殺されてしまうんじゃないか?」っていう風に普通の人類、多数派の人たちが思い始めるんですよ。

(赤江珠緒)はいはい。恐怖を感じ始める。

(町山智浩)そう。新人類が出てきたから。で、新人類狩りというのを始めるという話なんですよ。差別して、収容所にぶち込んだりして。下手するともう全部収容所に入れて絶滅させてやるというような方向になっていくんですよ。で、この『X-MEN』という物語はX-MENといわれるミュータント、突然変異の人たちのことなんですね。その人たちが主人公なんですよ。

(赤江珠緒)そうか……。

(町山智浩)これは画期的なんですよ。人類……要するに読む人たちはみんな普通の人類なわけですけど、その人たちの話じゃないんですよ。差別される側なんですよ。それは、スタン・リーという人自身がユダヤ系で。彼の親戚……彼はルーマニア系ユダヤ移民なんですけども。親戚は第二次大戦中にホロコーストで虐殺されているわけですよ。

(赤江珠緒)ええっ!

(町山智浩)で、一歩間違ったらそれが自分にも起こるかもしれなかったわけですよね。そういう恐怖なんです。『X-MEN』っていうのは。「いつ、誰が差別されて収容所にぶち込まれるか、わからないよ。『彼らは人間じゃない!』って言われるかもしれないんだ」っていう。実際に日本人、日系人は第二次大戦中にアメリカで収容所に入れられちゃうわけですよ。敵として。そういったもの、あと当時は黒人の人たちが自分たちの人権を勝ち得るため、マーティン・ルーサー・キング牧師が戦っていたわけですけども。そういったものも漫画にぶち込んでいったんですよ。X-MENという形で。

(赤江珠緒)へー! そうか。これ、ヒーロー物ってそういう単純な善悪じゃなくて、すごくメッセージが込められていたんですね。

(町山智浩)だってこの話、善と悪ってどっちなんですか? なにが善なんですか? なにが悪なんですか?

(赤江珠緒)たしかに。

(町山智浩)多数派の人類なのか、少数派の人類なのか。で、多数派の方も自分たちが生き残りたいという気持ちでやっているわけですね。善とか悪とかの話じゃないんですよ、すでにこの段階で。で、X-MENの中でも2つ、分かれて。ひとつは人類と共存しながら生きていこうという人たち。もうひとつは我々は被害者なんだから、逆に人類を滅ぼして新しい新人類の世界を築くべきなんじゃないかっていう過激派に分かれて内部抗争が始まるんですよ。で、それは当時、黒人の公民権運動の中でキング牧師のような非暴力派と暴力も辞さないというマルコムXとかブラック・ムスリムのような過激派がいて。その対立を反映しているんですね。

(赤江珠緒)うん。

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現実の政治や社会を漫画の中で描く

(町山智浩)だから、その現実の反映とか時事問題とか政治とか社会を漫画の中で描くということをこの人がやり始めたんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)それまではそうじゃないんですよ。

(赤江珠緒)そうなのか! スタン・リーさんからなのか。

(町山智浩)いま、テレビのニュースで起こっている問題を漫画の中に入れていくということをやっていったんですよ。だから彼自身は「僕は絵を描かないよ」って言うんですけど、でもこういった方向性を作ったのは彼、スタン・リーなんでね。やはりそれは偉大で。で、もうひとつ偉大なのは、ユーモアですね。

(赤江珠緒)ユーモア?

(町山智浩)彼自身のスマイリーな感じ。ちょとふざけている感じとか。だからマーベルシリーズっていうのはDCシリーズと違って、映画版でもみんな楽しく家族みたいにふざけているじゃないですか。

(山里亮太)うんうんうん!

(赤江珠緒)ちょっと笑えるところがあったり。

(町山智浩)あれはやっぱりスタン・リーさんのもともとのキャラクターなんですよ。で、そういうところでいろいろと……要するにヒーロー物なのに「正義だ!」とかそういうのじゃなくて、ちょっとふざけたりするところも新しいんですよね。

(赤江珠緒)そうか。じゃあ、スタン・リーさんが亡くなったことでマーベル作品もちょっと作風が変わるとかそういうことも?

(町山智浩)いや、ここまで彼が完全に路線を確立しているんで、そこからは外れないとは思いますけどもね。で、彼のいちばんいま、掘り起こされているのは1968年にキング牧師が暗殺された時、彼は毎回マーベルコミックの作品で「意見箱」っていうコーナーがあって。スタン・リーは毎回、その社会とかに対して注意喚起をするような。毎回毎回意見箱に子供たちへのメッセージを書いていたんですよ。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)だからその時、キング牧師が暗殺された前後に書かれたものの中ではこういう風に書いているんですよ。「もっとも恐ろしい悪とは何か? それは差別とか偏見なんだ。ところが差別や偏見はスーパーヒーローがパンチで殴っても、光線銃で撃っても倒すことはできないんだ。差別と偏見は会ったこともない人をその人の人種や民族や国籍で勝手に決めつけることなんだ。そうじゃなくて、会ってその人個人の人格や言動からその人を判断することにならねばならないんだ」っていうことを意見箱で子供に書いているんですよ。

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スタン・リーの意見箱

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)だから「外れない」って言ったのは、そういう意見箱にスタン・リーがそういう意見を書いてきたからですよ。それが「聖書」ですからね。

(赤江珠緒)なるほど! そんな真理があるんですね。マーベル作品には。

(町山智浩)そう。特に彼のいちばんのマントラというか、いちばん大事な意見っていうのは「Excelsior」っていう言葉です。

(赤江珠緒)それはどういうことでしょうか?

(町山智浩)「Excelsior」っていうのは昔の言葉なんですけど、「上に行け、前に行け」っていう意味です。「下に行くなよ。差別とか偏見とか憎しみとか、そういうった欲望とかの下に行くなよ。上を目指すんだ。Excelsior。前に行け、上に行け!」っていう。それがスタン・リーとマーベルヒーローのテーマなんですよ。

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「Excelsior」

(赤江珠緒)へー! いや、これは子供というよりも大人でも克服できてない……。

(町山智浩)だって敵も同じスーパーパワーを持っているわけですから。ヒーローとヴィラン(悪役)を分けるのは何かっていうと「心」だけなんですよ。っていうことで、スタン・リーという人は本当に偉大だったなと思いました。

(赤江珠緒)うわー、町山さんに解説していただいて「なるほど!」っていうね。人類のいちばんの敵はそういうところですか。

(町山智浩)だからこれから、マーベル作品を見る時にはスタン・リーさんをみなさん、探してください。サングラスにヒゲのイケてるオヤジですから。

(赤江珠緒)そうかー。『ファンタスティック・フォー』では郵便局員になっていたりとか、『デッドプール』ではストリップバーのDJをされていたり。

(町山智浩)でも、今度の次にやる『アベンジャーズ』の最後には「スタン・リーに捧ぐ」って出るんですよ。最後に絶対! もうそれをいまから想像すると涙がブワーッと出る自分が想像できます。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)でも、生きている間にお会いできてよかったです。

(赤江珠緒)本当ですね。11月11日、95歳でおなくなりになったスタン・リーさんについてうかがいました。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)「Nuff Said」!

<書き起こしおわり>

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