(ASKA)そうね。だから1人でやらなきゃいけなくなったところから、以前から考えていることに向けて動き出せたっていうかな。で、結局これをしゃべると、みんなミュージシャンは共鳴してくれる。「じゃあ、やろうか?」っつった時に、「いや……実は契約があるんだよ」っていうところでの縛りの中で動けないから。でもまあ、そうは言わず、音楽業界の活性化ができるならこんないいことはないので。少しがんばってみようかなっていま……「少し」じゃないな。かなり本気で思っているかな。
(吉田豪)たしかに、大手の配信の会社とかも、パーセンテージがすごい低いんですよね。1回、調べたことがあるんですけど。
(ASKA)ああ、そうなんだ。そりゃあ、調べているよね。そうだよね。
(吉田豪)ポッドキャストを配信しようとしたんですよ。そしたらもう、全然こっちに(収入が)入らないってことがわかって。
(ASKA)そうね。だって、向こうはフォーマットを1回組んでしまって。あとはサーバーの問題でしょう? 容量が増えていくだけだから。フォーマットを組むのに時間はかかる。アプリケーションを作るのにも時間はかかる。でも、作ってしまうと高速道路と一緒で、ある時にリクープできるわけですよ。リクープしてからが全ての利益となっていくわけだけど。まあ、もちろんそれをね、会社として……「ベンチャー」と呼ぼう。これをベンチャーの生業としてやっているんだったら、それはそれでありなんだけど。
僕らはベンチャーじゃないから。音楽がやっぱり90年代の時に、自分たちじゃないよ。音楽がさんざん世の中に重宝されたり、大事にされていた時期。その時期をもう一度目指さなきゃいけない。みんな諦めているから。「もう音楽では食べていけない」だとか、「音楽産業はもう終わった」ってみんな、口を揃えて言うんだけど。
(吉田豪)「ライブでは稼げるけど、楽曲では難しい」みたいな。
ミュージシャンが食えない時代
(ASKA)そうそう。で、口を揃えてみんな言う、そんなあなたは音楽業界の人じゃないか?って思うわけ。あなたが言っちゃダメでしょう!っていうのが。で、まあ本当にいま言われたようにね、これから先はもうライブをやれる人しか残らないという時代に入ってしまったんだけど。これはひとつのあり方として、間違いじゃないから。でもね、やっぱり音楽にはいろんな種類があって。ライブが得意な人と、ライブはやらないけど、楽曲を作るのは得意な人と、住み分けがあるんだよね。その住み分けさえもなくなってしまって、ライブをやれる人だけが残っていくこの……全てが単一志向で動いていくことはね、これはどこか、常に選択がないといけないと思っているので。
だからそういう意味ではね、ちゃんと作った人に還元されるべきもの。還元されたもので、また新しい音楽を作っていく。より良いいい環境で。たとえば、弦(ストリングス)にしても、生弦をみんな使いたい。でも、使うお金がいまはない。なぜかと言うと、楽曲を世の中に買ってもらえないから。お金が入らないから。「制作費、これで作ってくれ」と言われて、この中で作らなきゃいけない状況の中では、とても贅沢な、ゴージャスな音作りができない。
(吉田豪)はいはい。
(ASKA)これができない自分を受け入れてやるしかない。でも、次はもっとこうなる。もっと次は……って。これ、音楽やれないよ。ミュージシャンは。そんなこんなでね、今回は「無謀だ」とか「音楽業界に背いていろんなことをやり始めた」とかさっそく、いろんなことを言われて始めて。まあ、ある意味「敵」と呼ぼう。なる人たちの影はちらつき始めているんだけども。でもね、最終的にミュージシャンが集まって、一人ひとりが個人商店で独立して。ただそこに、隣にやつがいて、隣にやつがいて、隣にやつがいて……いつの間にかこういう風な広がりになっていれば、それはもう全てじゃないかと思っていて。だからそういうような意識改革をする時代なんだと思う。いまは.
(吉田豪)ASKAさんはすごい、そういう世の中の流れとかを考えるタイプだと思うんですよ。いま思うのが、ちょうど元SMAPの3人が「新しい地図」として、そんなに地上波メインじゃない活動を……だから地上波メインじゃなくても芸能活動とかを続けていける時代になってきたと思うんですよ。まあ、このAbemaもそうですけど。ASKAさんとかは、それをどういう風に見ていますか?
(ASKA)うん。比重はテレビなんだけど、実のところは芯を食っているのはどこか?っていうと、やっぱり「見たいものにアクセスする」という行動を取らせてしまうネットの力っていうのは大きいと思うの。ということから考えると、実は音楽番組なんていうのもそういうところに来ていて。もちろん、大衆に自分の音楽を聞いてもらうのはテレビなんだろうけど、でも本当に心を打っていく、心を刺していく歌となっていくには「見たい」と思う人の気持ちに対して応えていくっていうそのオンリーワンの時代だよね。そういう意味ではね、実はこのAbema TVの枠の中で今回僕は初回に選んでいただいたことはすごい光栄で。いみじくも、数日前に「これから音楽番組はネットが音楽番組として台頭していくんじゃないか?」っていうことをしゃべっていた矢先だったんで。
(吉田豪)はい。
(ASKA)だから番組の内容も聞かずに「やろう!」ってそう決めて。で、この番組が逆指名インタビューって、後で聞いたことなのね。
(吉田豪)なるほど、なるほど。
(ASKA)でその時に僕はひとつ条件を出して。もう昔からこだわってきた、「フルサイズを歌わせてくれるんだったら出演させてください」っていう。これだけだったかな。
(吉田豪)テレビサイズでは……まあ、ある時期からは歌っていたけど、もともとはフルで歌ってきた人なわけですよね。
(ASKA)そうだね。うん。ずっとデビュー当時から、ある意味どこか尖っていた部分があって。テレビサイズっていうのにすごい抵抗があって。でもそれを……テレビサイズを受け入れなかったから自分たちの輪郭っていうのを世の中に見てもらえるようになって。たとえば『SAY YES』のヒットのあたりから、いまそれをやるとかえって敵を作るんじゃないか? これ(天狗)に見えてしまうんじゃないか? ということで、テレビサイズというものを受け入れるようになったら……スタッフも入れ替わりがあるでしょう? 若いスタッフと。現場のスタッフ。そうすると、次の打ち合わせは知らないスタッフが来て、いきなりテレビサイズから始まるから。もう、それが当たり前になってきて。
(吉田豪)それが。はいはい。
(ASKA)だから、結局自分たちの世の中に対してこう映らなきゃいけないと思った考え方っていうのは、まあ正解ではあるんだけど、諸刃の剣でもあって。結局それは、いま考えるとやっちゃいけないことだったなっていう風に思っているところもある。
(吉田豪)受け入れたことでバカ売れしたみたいな部分はあるんですか? そこって。
(ASKA)いや、結局受け入れなかったことで、自分たちの足場が作れたので。受け入れてしまったことで、足場が崩れてしまったと思っている。まあでも、とはいえ番組の中でたくさんのシンガーが集まって、いろんなことを紹介するのがテレビ番組なので。それに対して、気持ちはあれど、それを述べることはなくて。「だったら出なければいいじゃないか」っていうことに徹していたので。だから、そうだね。もちろん、必要な時はプロモーションと考えてテレビサイズっていうのはあるのであろうけど、そうじゃない時には、「だったら、出ない」っていうことを強くやっていくことが、これから先の音楽生活の中で自分を表現していくことになるんじゃないかなと思っているんだよね。
(吉田豪)いまのところは、その九州のローカル番組に出て、そしてAbemaに出て……っていう感じですかね?
(ASKA)うん。そうですね。福岡ではね。もうコンプライアンスの問題で……いろんなところではじめてコンプライアンスっていうのを味わって。それで発表されたものはマスコミにとっては格好のネタで、どんどんそれが広まって。
(吉田豪)匿名コメントは多いですからね。こういうのは。
(ASKA)ねえ。自分のことがきっかけなのかどうかわからないけど、世間がやっぱりそういうスクエアにかっきりされた報道の中での、ここの外側を読むようになってきたから。ここだけが報道されているんじゃないっていうことをずいぶんと気づいてくれだしたので。だから、今回はAbemaTVに出していただいたんですけど。いろんなことがすごく、誤解も解けてきたし。やったことは悪いんだよ。絶対に悪いんだよ。だけど、そうじゃないところで接してくれる方がすごく僕の場合は増えてきて。そこに対してはちゃんと応えていこうっていう気持ちはすごくあるかな。だから、今回の音楽配信なんていうのも思い切ってやれたんだと思う。うん。
(吉田豪)ASKAさんはたぶん、昔からメディア不信みたいな部分があった人だと思うんですよ。
(ASKA)うん。ある時期からね。
(吉田豪)ある雑誌とちょっとモメて、それを丸々単行本の半分ぐらい、そのバトルについて書いたりとかっていう。
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(ASKA)うんうん。あれはね、世の中っていうよりも、やっぱりすごくライブ活動をやってきて、僕らのことを本当に愛してくれているオーディエンスがいて。まあ、何気に今日聞いてくれている人はその次の予備軍みたいなオーディエンスで。僕らのことを愛してくれている人たちの。だけどね、結局そのコアな人たちに誤解を与えたままじゃないけないと思ったわけ。だから、あの本は世の中に訴えるつもりじゃなくて、本当にコアで応援してくれる人たちには、ちゃんとこの出来事はしゃべっておかないと。「そういう人じゃない」っていうことをわかってくれたとしても、でもああ書かれると信じてしまうので。だから書いたんだけど、結果的にね、やっぱりほら。ないことをカギカッコを付けて書いてくるわけだから。それにはちょっとね、ちゃんと反論しなきゃいけないなと思ったな。ああ、それも書いてくれたもんね。本当にありがたかったですよ。
(吉田豪)面白い本だったんですよ(笑)。
(ASKA)まあまあ、ここでね、そんなことを言ってもしょうがないので。未来を語りましょう。ねえ。これはしょうがない。
(吉田豪)ええ。いろいろあって、大変だったけど。
(ASKA)大変だったけど。とりあえず僕はいま、音楽を作ることに専念していて。さっきもおっしゃったように、とかくいままでのプロモーションではどれだけお金をかけても届かない世代が、ある種皮肉なことに事件によって音楽を聞くようになってくれて。10代の子たちなんかが聞いてくれるようになっている状況が生まれているから。それはとてもいま、自分の中では起こった現象というか、そうそうこういうことを体験できるシンガーはいないので。やっぱりある程度の年齢、それからキャリアを持つと、いろんなものを自分の中で抱えるけど、失うものがひとつだけあって。「新鮮さ」。
(吉田豪)ああ、はいはい。
(ASKA)この新鮮さっていうのは、絶対に得ることはできないから。これは無理ですよ。新鮮さを持っているのは、デビューした人だけ。表で。それからどんどん失っていくのが……でもね、今回あの事件によって僕は二度目の新鮮さっていうのを持ち合わせることができたんだな。これが。
(吉田豪)ですよね。
(ASKA)だからそこは大切に。その層に向かってもちゃんと歌を歌っていかなきゃいけないなと思っていますね。
(吉田豪)たぶん人前で歌える喜びみたいなものを改めて味わえた。
(ASKA)そうかな。うんうん。ですよ。
(吉田豪)プラスにするしかないですもんね。
(ASKA)うん。いまはね。そう。背いちゃいけないこともしっかりあるので。といって、そのことばっかり考えて、頭を垂れて生活するなんていう人生も送りたくないので。やっぱりある種、区切り目をつけて。あったことはあった。でも、前を向いて行かなきゃっていうところをすごく自分の中で、ある種区切り目ができたので。それからはどんどん前に向かっていってるかな。いまは。うん。だからそういうところをもう、精神状態だとかさ、起こったこととか全部知ってくれているから。僕はもう、記事を見ていて読ませてもらいながらもう笑うところもあったよ。俺。
(吉田豪)自分で?(笑)。
(ASKA)「こんなところも細かく知ってくれている」なんていうのはね。
(吉田豪)ファンクラブ会報からなにから、相当買っていますからね(笑)。
(ASKA)ああ、そうだったんだ! それでよく知ってくれていたんだね。
(吉田豪)もともと興味があったのが、まあ事件きっかけでよりちゃんと調べようと思って。で、調べれば調べるほど、好きになるんですよ。
(ASKA)ありがとうございます。
(吉田豪)「この人、面白いわ!」っていう(笑)。そこを伝えたくなっちゃったんですよ。
(ASKA)ああ、そうかそうか。いやいや、本当に読ませていただいておりますよ。
(吉田豪)よかったと思いましたよ。変に叩いたりしていなくて(笑)。
(ASKA)アハハハッ! いやいや、もうね、叩かれた人もね、その部分はストレートに受け止めて。とはいえ、当然だよなと。あのね、『バイキング』の坂上(忍)くんがそうだった。
(吉田豪)ああ、はいはいはい。
(ASKA)彼も最初は叩いてくる側にいたから。でもね、彼を見ているとね、いろんなことをフラットに言う人だから。「ああ、叩いて当然だな。このフラットな坂上くんという人を、知りたいな」って僕は思ったのね。で、自分から「会いたい」ってアプローチしたのよ。で、会うことになって、2、3時間しゃべったのかな? だいぶ面白いわ。やつは。すごいいい男だなと思って。それからね、まあ、ことがあるごとに連絡はしたりしているんだけど。そういう風に、叩かれてもかえって僕は面白いと思った人には会ってみたいなっていう気持ちは変わらないかな?
(吉田豪)ちなみに、井上公造さんとかに対してもそんな感じ?
(ASKA)ない!(キッパリ)。
(吉田豪)ない(笑)。
(ASKA)フハハハッ!
(吉田豪)「あの野郎、曲流しやがって!」みたいなことも、ない?(笑)。
(ASKA)ないない。まあ、ジョークジョーク。まあ、そんなこんなで、ここであんまり語れないからさ。
(吉田豪)ですよ(笑)。でも、ついいろいろ言っちゃうタイプですよね。
(ASKA)うん。我慢できないからね。そうそうそう。なんかね、こうやって共有すると、みんな仲間だと思ってしまうわけ。これが俺が騙されるところなんだよ。
(吉田豪)ダハハハハッ!
(ASKA)もしかしたら敵になる人がいるかもしれないから。これ、気をつけなきゃいけないんだけど。これ、みんなこうやって共有すると、「よーし、仲間だ。家族だ!」って言ってしまう、俺はダメだよな? フハハハッ!
(吉田豪)ダハハハハッ! まあでも、信用できますよ。そういうところも。
(ASKA)そうっすか? いやいや、まあこれからもね。本当にありがとうございました。今日は。
(吉田豪)ありがとうございました!
(ASKA)今日って俺がインタビューされる側なのに、なんで毎回インタビューするのよ?(笑)。
(吉田豪)ダハハハハッ!
<書き起こしおわり>
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