春風亭昇太さんと安住紳一郎さんがTBSラジオ『日曜天国』の中でお城についてトーク。足軽甲冑姿でお城に行く話や、日本の中世城郭の魅力について話していました。
(安住紳一郎)さて、春風亭昇太の生活。2つ目は「足軽スタイル」。
(春風亭昇太)これはもうね、以前出していただいた時に散々しゃべりましたけども。お城が大好きで。
(安住紳一郎)で、甲冑をつけて見に行ってるんですか?
(春風亭昇太)そうですね。
(安住紳一郎)(笑)
(春風亭昇太)っていうかね、お城のイベントがあるんですよ。で、以前に滋賀県にある佐和山城っていうお城を見に行った時に、彦根城の甲冑隊の人たちも一緒に登ったんですよ。で、その人たちがすごい甲冑を着て、ガチャガチャいわせながらずーっと佐和山城に登ってきたんですよ。そしたらみんなその人たちを写真撮っているんですよ。当たり前だけど。まあ、僕も撮りましたけども。で、ちょっと悔しくなって。「あ、そうだ。イベントなんだから、僕も普通の格好して登っちゃダメだ。お城好きのみなさんと一緒に山城に登るという企画だから、僕もなんかそういう格好をした方がいいだろう」と思って、慌ててインターネットでいろんなものを販売しているじゃないですか。○○オークションで。それで、安い足軽の甲冑を買って。ボロボロだったんで着色をして、肩のヒモとかもついてなかったんで、それも自分でつけて。それで、いろんなところから脇差しとかそういうのを買ってきて。で、そういうお城を見に行くイベントに参加するようになったんですよ。
先々月、石川県七尾市の七尾城のイベントで春風亭昇太師匠とご一緒したんだが、自前の足軽衣装までお持ちなのにビックリ、まさに座布団十枚上げたい気分。 #七尾城 #nhk #軍師官兵衛 pic.twitter.com/iuszY9wgld
— sakaikazunori (@sakaikazunori) 2014年12月7日
(安住紳一郎)へー! いくらで最初、オークションで買ってきたんですか? ボロボロの甲冑を。
(春風亭昇太)ボロボロの甲冑を、ええと8900円ぐらいで。
(安住紳一郎)ああ、そうですか。
(中澤有美子)本物なんですか?
(春風亭昇太)いや、それは要するに現代に作られたもので。
(安住紳一郎)時代劇とかで使いそうな?
(春風亭昇太)使ったやつでしょうね。はい。
(安住紳一郎)甲冑をつけてお城を見に行くと、気分は盛り上がりますでしょうね。
(春風亭昇太)あのね、上がるんですよ(笑)。気持ちが。
(安住紳一郎)そうですよね。
(春風亭昇太)で、鎧がカチャカチャいうでしょう? あのカチャカチャ音がちょっと覚醒させるんですね。
(安住紳一郎)はー。ちょっとなんかやっぱり、あれですね。下駄の音みたいな感じで、ちょっと雰囲気が出ちゃうんでしょうね。
(春風亭昇太)出ちゃうんでしょうね。山中を何時間歩いても平気なんですよ。
(安住紳一郎)そうですか(笑)。
(春風亭昇太)普段ね、地下鉄の階段を上がるのでも、ヒーヒーいっているのに、お城に行くとね、全然平気なんですよ。1回、1人でお城を見に行って、山中を4時間歩いた時があって、何の疲れも感じなかったですね。
(安住紳一郎)(笑)。やっぱりもう、足軽の気持ちになっているので?
(春風亭昇太)そうなんでしょうね。たぶん、お城を見に行く時は足軽の格好をしなくて平気だと思います。そのぐらいお城を見に行くと気持ちは上がるんですよね。
(安住紳一郎)私も城、好きなんですけど。なんかタイムスリップしたような、勝手な情景描写が入りますよね。
(春風亭昇太)入りますよね。
(安住紳一郎)私も、なんか出張で行ってちょっと時間があるので午前中にお城を見に行くってなると、かならずその藩の江戸詰めの侍が5年ぶりに地元に戻ってきたみたいな感じのイメージになっちゃって。
(昇太・中澤)(笑)
(安住紳一郎)それで、天守閣に登城するみたいな雰囲気になるんですよね。勝手に、あれなんですよ。
(中澤有美子)「ひさびさに帰ってきた」と。
(安住紳一郎)地元にひさびさに帰ってきたみたいな感じで(笑)。「変わらないな」っつって(笑)。
(春風亭昇太)僕も北条が作ったお城に行くと、なんか北条家の足軽になったような。で、武田に行くと、武田の足軽になったような気がするんですよ。
(安住紳一郎)あれは不思議なんですよ。なんでなんでしょうね(笑)。さて、昇太さんはお城の中でも中世のお城が好きということで。これもちょっと説明しなくちゃ伝わらないところだと思いますけども。
(春風亭昇太)そうですね。お城というと天守閣っていうのを想像する方が多いんですが、天守閣っていうのは戦国末期から江戸時代初期にかけて……まあ、例外はありますけども。短い間に作られた、本当に珍しい、……まあ、日本のお城の中で言ったら変な形のお城。異型のお城なんですよ。
(中澤有美子)そうなんですね。
(春風亭昇太)それ以前は天守閣、作られていなかったし。江戸時代に入ってもそれ以後は天守閣作られないんですよ。なぜか?っていうと、無駄だから。まあ、江戸時代が平和な時代になるというのもあるんですけど、維持管理が大変だし。ああいうのがなくても、全然戦えるんですよ。お城って。
(中澤有美子)一時期のブームで作られたと?
(春風亭昇太)まあ、言ってみればブーム。天守閣ブームがあって。その時に作られたものなんですよね。だから、ああいうお城は実は少ないんですよ。本当に。日本人って戦国時代と幕末が大好きでしょう? なのに、戦国時代が好きなのに、お城をイメージすると今度は江戸時代のお城をイメージしちゃうんですよ。戦国時代のお城であんなお城はないんですよね。
(安住紳一郎)うん。
(春風亭昇太)普通、丘とか山の土を掘ったり削ったりなんかして作ったお城が日本のお城の中心なんですよ。だからお城っていう感じは「土」+「成」と書いてお城なんですよ。
(中澤有美子)はー。
(春風亭昇太)ここに天守閣の「天」の字もないわけですよ。
(安住紳一郎)そうですね。いわゆるその、中世城郭というものが好きということで。もう、ほぼ土木遺構ですよね。
(春風亭昇太)土木遺構。そうですね(笑)。土木工事の跡を見て回っていますね。
(安住・中澤)(笑)
(中澤有美子)地味ですね(笑)。
(春風亭昇太)いや、あのね、残りがいいんですよ。一山全部残っているから、城郭遺構としての残りとしては、残りがいいんですよ。近世のお城って残っていないんですよ。
(中澤有美子)そうなんですね。
(春風亭昇太)だから、天守閣のある街だったら天守閣の周辺しか残っていないんですよ。だから本丸ぐらいしか残っていないところも多いんですが、中世のお城っていうのは一山全部残っているから、すごく遺構としての残りがいいんですよ。
(安住紳一郎)うん。でも、行きますと建物ないですからね。ただの凸凹した野っ原みたいなことになりますね。
(春風亭昇太)そうですね。そうですね。
(中澤有美子)読み解く力がすごい必要ですね。
(春風亭昇太)で、これがね、いくつか見ているとその力が人間の頭の中に沸いてくるんです。だから、中世城郭を見に行くようになると、もうちょっとたまらないですよ。なにしろ、たくさんあるんで。もう、そこら中にあるんですよ。
(中澤有美子)そうなんですか。
(春風亭昇太)で、近世のお城って作り方が結構決まってくるんですけど、中世のお城って作った人や作った土地によって作り方が変わるんですよ。だからバリエーションが多くてたまらなくなります。
(安住・中澤)(笑)
(安住紳一郎)私も昇太さんがお書きになった本を見て、中世城郭はそんなに興味がなかったんですけど、静岡の山中城っていう、いわゆる土の凸凹なんですけども。そこに行ったらもう楽しくて楽しくて。びっくりしました。
(春風亭昇太)あれはすごいですよね。本当に。北条家が作ったんですけど、北条がお城を作ると、堀のところに間に障壁を作るんですよ。これが畝堀(うねぼり)とか障子堀(しょうじぼり)っていって、北条家の特徴的な掘り方なんですけど。これがきれいに残っているんですよね。
(安住紳一郎)すごいんですよ。いわゆる風雲たけし城みたいな感じで、本当にいっぱい罠が土で作ってあって。それが残っているんですよ。で、細い畝の道しかないんで、一列にならなきゃダメみたいな。それで上から狙われて……みたいな。で、ちょっと曲がっちゃったりしていて、落ちるみたいな。で、落ちると、いまだに観光で行って落ちたらちょっと上るのに難儀するみたいな。芝で滑る、みたいな。で、「あっ、やられる……」みたいな(笑)。
(中澤有美子)へー!(笑)。
(春風亭昇太)たぶん、地質が関東ローム層なんで、乾くとサラサラに乾いて、堀内に入ったら上がれないんですよ。濡れたらツルツルに滑って上がれないんですよ。だから、関東で石垣はたぶんあんまり必要じゃなかったんですよ。土で作った方が効率がよかったんですよ。
(安住紳一郎)ですよね。見た目は石垣の方がかっこいいですけど、関東ローム層のベッタベタのツルッツルにしておいた方が滑って……。
(春風亭昇太)絶対に上がってこれない。関東ローム層で2メートル、土で障壁を作ったら上がってこれないですよ。
(安住紳一郎)そうですよね。江戸城も鉢巻郭ですもんね。
(春風亭昇太)そうですよ。江戸城もあんまり石垣を使ってないでしょう?
(安住紳一郎)うん。
(中澤有美子)そうなんですか?
(春風亭昇太)大阪城とかに比べると。西の方のお城はね、石垣で作ったお城が多いんですが、関東は石垣は必要ないんですよ。っていうか、石垣なんてあったらかえって取っ掛かりがあって、上ってこれちゃうじゃないかって関東の戦国大名たちは思っていたと思いますよ。
(安住紳一郎)そうですよね。
(中澤有美子)あんなものは。上れちゃう。
(安住紳一郎)あと、手についたら大変ですもんね。だってね。それでなんか、刀とか取ったら手がベッタベタになっちゃって(笑)。
(春風亭昇太)ご飯なんか食べづらいよ
(安住紳一郎)意外にそういうので意気消沈しますよね。私たちも外出して手が汚れたりなんかしたら、ちょっともう、気力を失うみたいな(笑)。
(春風亭昇太)で、「おにぎりを食べましょう」なんて言われたら、「ええっ?」って思いますよね。
(安住紳一郎)「ちょっと水道を」なんて。
(中澤有美子)元気なくなっちゃうんだ(笑)。
<書き起こしおわり>