東日本大震災後の伊集院光・ピエール瀧・宇多丸・山里亮太メッセージ

伊集院光 深夜の馬鹿力 伊集院光の深夜の馬鹿力

東日本大震災発生から10日後の2011年3月21日 深夜に放送されたTBSラジオ『伊集院光 深夜の馬鹿力』の中でピエール瀧さん、宇多丸さん、山里亮太さんが選んだ曲とメッセージをまとめてみました。東日本大震災後でですが、あえて下らないことを話すというテーマで、リスナーから超下らない質問をメールで受け付けていた回。その下らない質問受付(例:年老いた母に今からスライダーを覚えさせるにはどうすればいいですか? 等)と並行して、TBSラジオの人気番組のパーソナリティーからのメッセージと曲の放送もしていたのですが、これが非常に素敵でした!

ピエール瀧選曲 ソウル・フラワー・ユニオン 満月の夕

(伊集院光)ええと、それじゃですね、ここでちょっと曲を1曲かけるんですけど。うちの池田ディレクター・プロデューサーがバカなのかわかんないけど。この企画が同居できるのか?っていうのがあるんですけど。いろんなTBSに来てくださっているパーソナリティーのみなさんから、こんな時だからこそっていうことで、リクエスト曲をいただいているということで。じゃあですね、あとでリクエストカードの方は読ませていただきますが、いただいたのがピエール瀧さんからのリクエストで、ソウル・フラワー・ユニオン『満月の夕』。


(伊集院光)えー、TBSラジオのお昼の人気番組『キラ☆キラ』の木曜日を担当しています電気グルーヴのピエール瀧くん。ピエール瀧さんから選曲とメッセージをいただきました。いま、聞いてもらったソウル・フラワー・ユニオンの『満月の夕』なんですけども、これにちょっとメッセージをつけてもらっています。

(メッセージを読む)『今回の地震で被災された皆さん、心からお見舞い申し上げます。そして現場で命をかけて戦ってくれている皆さん、本当にありがとうございます。昨日は満月でした。この曲は、ソウル・フラワー・ユニオンが1995年の阪神大震災の直後に、歌で現地の人を勇気づけようと神戸入りし、現地を回っているときに作った曲です。震災直後の状況をとつとつとつづる曲なのですが、生きる勇気・生命の強さを感じさせてくれるとても強い歌です。どうにもならない時がある。深い悲しみの底にある時がある。しかし、我々は強い。そして、必ずもう一度立ち上がる。必ずです。そう遠くない未来、またともに笑い合える日々を約束して。ピエール瀧』

(伊集院光)あの、本当にこのピエール瀧という男とは僕は齢が一緒で。で、あとまあその、ラジオを始めたばかりの頃から交流があるので、まあ彼が人一倍下らないことを言いたがりで、言うセンスがある人で。で、それがプロデューサー・ディレクターの池田を通じて、伊集院の番組にこういうことをほしいって言って。二つ返事で承知してくれて。まっすぐなメッセージを送ってくれるということに対して、感謝にたえないです。まああの、僕はこの『満月の夕』っていう曲を初めてこれで聞きましたけども。なんかとても・・・優しくて強い歌だなと。

まああの、この温度差とかにどうしたらいいのか?って戸惑っていると思いますけども。僕もその温度差の中でしゃべることに戸惑いながら、しゃべらせてもらうと、一緒にね、草野球をやっている芸人仲間に、何人かこう、阪神大震災を経験している若手芸人がおるわけですよ。で、僕らその時のことがわからないから、『どうだったの?』って聞くと、まあそれはそれは悲惨な状況ですよ。そうすると、『自分の直接ど真ん中の被災ではないまでも、関西にいると、自分が名前を知ったり、声を聞いたり、言葉を交わしたことが1人も死んでないなんていう人がいないんですよ』っていうレベルでみんな被災してて。

でもね、すげーな!って思うのは、そいつ、たかだか草野球でファインプレーすると、笑うよね。たかだか草野球でホームラン打つと、喜ぶよね。いや、俺、それがすごいって思うんだよね。なんかその、その起きた時からしてみたら、すごくどん底のことで、二度と、どんなに面白いことがあっても、どんなに楽しいことがあっても、面白くも楽しくもない人生になっちゃうんじゃないかな?ってたぶん思うし、いま、思っている方もいるだろうし、思ったんだろうと思うのね。ややこしくてごめんなさい。

だけど、でもね、その彼らは学生時代にそういう経験をしたけど、お笑いになって、面白くないんだけど。残念ながら面白くねーんだけど、お笑いになって。まだ売れてはいないけど、人を笑わせたいと思っていて。で、いて、彼らはとても本当にへっぽこ草野球のちょっとしたファインプレーで笑う。時間はかかったと思うし、俺の知らないところでまだ何か思い出すことは当然、あるでしょう。当然あるんでしょうけど、それでもあの、どんなもんだい!っていう顔をしてホームインしたり、すげーだろ?っていう顔をして速球を投げ込んだりするんだなってことは、いま、そこにぶち当たっている人に報告しておきます。えー、温度差が激しくて申し訳ないですけど。CMが明けるとまた、頭の悪いことをいいます。

ライムスター宇多丸選曲 ロッキーのテーマ

(伊集院光)それじゃここでですね、ライムスターの宇多丸さんから頂いております。ライムスターの宇多丸さんはですね、すごい長考。悩みに悩んでこの曲をいってくれました。もうお馴染みなんですけど、映画『ロッキー』から、『ロッキーのテーマ』です。

(伊集院光)えー、これまたTBSラジオの人気番組『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』を担当しているライムスター宇多丸さんからいただきました。映画ロッキーのサントラから、『ロッキーのテーマ Gonna Fly Now』という曲ですが、メッセージをいただいております。

(メッセージを読む)『こういうときこそ、多くの人に文脈を共有されている古典が真価を発揮するものです。ということで、過去30年以上に渡って世界中で、無数の折れそうになった心を奮い立たせてきたこの曲を。たった1人の売れない役者と、その仲間のガッツが世界を変えたんですから、俺たちが本気を出して力を合わせれば、日はまた昇ります。

(伊集院光)ロッキーは本当に低予算で撮っていて。それこそ、街角で撮っているから、有名なロッキーがね、ランニングしてる時にリンゴをポンって投げられて、それを片手でパシッと取って、ロッキーがそのまま走って行くシーンは、あのリンゴは普通にそこでリンゴを売ってたおっさんが投げたっていう。台本にはないの。で、そのロッキーはそれを取って、そのままお礼だけ言って走って行くっていうあのシーンの生き生きしているのは、低予算映画だからこそっていうことらしいですね。

まあ、なんか本当、その古典はいい。そのシンプルさ、それと長く伝わってきたのにはそれなりの理由があるんだとか、あと古典だからって許せるようなところもあるんだよね。それがすごく新しいものだと、この表現はもしかしたらこういうことに対して嫌味で言ってるんじゃないか?みたいなことを疑わなくていいじゃないですか。ベタで。要するにこの、事象が起こる前からずーっとあるものだったりするから。なんか、願わくばテレビでいまこそ、それこそ落語的なものとか、すごくベタベタな古い面白いこととかをやってほしいなと思いますね。で、またCM明けるとまた、この口で・・・っていうぐらい変わりますけど。なんか、なんかすいません!

山里亮太選曲 ももいろクローバー 未来へススメ!

(伊集院光)もう1枚もらっています。南海キャンディーズ山里亮太。『水曜JUNK山里亮太の不毛な議論』担当。ええと、選曲してくれたのはももいろクローバーの『未来へススメ』。

(メッセージを読む)『東北地方のファンのパワーは結束力はスゴイとアイドルの関係者から聞いたことがあります。今、復興のためにみんなで結束して、がんばっている若い人たちにこの曲を届けたいと思います』。

(伊集院光)まあ、山ちゃんらしいっていうか、そうだよね。そういう意味じゃ、上手い言い方できないけど・・・『逃げる』って言ったら言葉が悪すぎだな。ええと、やっぱり1人でも嫌な思いをしないで聞いてもらうために、割とインストをかけたり、ちょっと悔しかったりするのは、洋楽をかけたりすることが、僕は音楽の関係者ではないから、音楽を専門にしてないから、この悔しさ自体はまだ少ない方なのかもしれないけれども。

割と、今日は情報と音楽をという時に、洋楽、インスト、クラシックあたりになることが多いじゃないですか。それが悪いっていうんじゃないんだけれども。なんか、日本語の曲を聞きたかったりとか、こういうその、『アイドルが好きです。いま、アイドルの曲を聞いて元気出したいんですけど』っていう人の立場に立った選曲はなかなか難しかったりするんで。山ちゃん、やっぱりいいですね。

(メッセージを読む)『「どんなどんな困難でも きっときっと立ち向かえる 1人じゃ挫けそうな時も 助け合えば大丈夫」。ももいろクローバーのファンも結束力が強くて有名です。どんなときも、いつでも助けてくれる仲間が全国にいます。未来へススメ! 山里亮太』。

(伊集院光)ということで、ももいろクローバー『未来へススメ!』


(伊集院光)ちゅうことで、南海キャンディーズの山ちゃんのリクエスト曲を聞いていただきました。曲の方は『未来へススメ!』ももいろクローバーっちゅうことでした。えー、じゃあいただいているくだらないメールを読んで中和していきます。まあね、あんまり感動ばかりしていると悔しいですからね。ましてや、山ちゃんの手柄ですからね。だから山ちゃんね、もう、こういう時だからこそ、こういう、いま世の中の人がすごく大変な時・・・

こういう週だったら、えっ?あるよね?山ちゃんも水曜日、やるよね?山ちゃん、今度の水曜日、品川の悪口、もう一回言えば?(笑)。たぶん品川もドタバタしてるから、もう聴いてねーと思うからさ。もっかい言っておいたほうがいいって!さあ、えー・・・(笑)。ほら、山ちゃんもね、選曲とメッセージくれたから恩返しに、先輩のアドバイスっていう。ラジオっていうのはどういうことが盛り上がるっていうのをね、ちゃんと教えてあげるとね、もう1回、勃発させちゃえばいいってことで。

伊集院光の番組最後のトーク『ワッハッハおじさん』

(伊集院光)えー、もうなんか本当に下らないことばっかり言ってる間にもうエンディングなんですけどね。その空脳のコーナーでよく子どもの頃にどんなおじさんを見たみたいな話を募集するんですよ。で、僕は突然現れて、バケツに入ったサワガニを素手で取れたらあげるっていうおじさんが来て、いまだになんであのおじさんがそのサワガニをくれる運動をしてたのか、いまだにわからないみたいなのがあるんですけど。

そん時にそれもね、若手の芸人に聞いた話なんだけどね。あの・・・あの人、なんだっけ?『気合だ!』っていう人。ねえ。気合田さんね(笑)。気合田俊太郎さんが(笑)。こと、アニマルさんが、ね、『気合だ!気合だ!』っていうのと『ワッハッハ!ワッハッハ!』ってやるじゃん?あれを見る度に、そいつがワッハッハおじさん、ワッハッハ星人を思い出すっていう話をしてて。こんなことがぜんぜんある前ね。いまみたいな感じになる前ね。

ワッハッハ星人っていうのがいて。それがまた、いい話でさ。いい話っていうか、不思議だけどいい話でさ。その、阪神大震災の時に、家にヒビが入ったんで、避難するところに避難してて。その時、何歳って言ってたかな?まだガキだったらしいんだけど。子どもだったんだけど。その時に、そのワッハッハ星人っていうおっさんが来て。まあ基本、役に立たないおっさんらしいんだよ。そういうところで、大人がいろんな世話をしてるところに、『ワッハッハ星人だ』っておじさんは言うんだって。で、『おじさんに触ったら、もう「ワッハッハ」って言わなきゃダメだ』っていうルールを勝手に作って、鬼ごっこみたいなことをしてるんだって。

それで捕まえて。捕まると、もうしょうがないからみんなでワッハッハ、ワッハッハ言ってるだけなんだって。それで、そのワッハッハおじさんが、ある日突然、『全員ワッハッハにしたらおじさんは次の星に行く』みたいなことを言うんだって。そしたら、そいつはもうちょっとガキの中では大人だったし、足が速かったから、ワッハッハ星人に捕まんなかったんだけど、みんなが捕まってワッハッハやってるのに自分だけやれないのがちょっと寂しくなってきて、夜、そのワッハッハおじさんのところに、ばったり会ったふりして捕まっちゃったらワッハッハ仲間になれると思って行こうと思ったら、おじさん、泣いてたんだって。1人で。

もうそれが、なんかすっごいいい話でさ。その・・・俺はたぶん、ワッハッハ星人になりたいなってちょっと思ったりとか。あといま、そういうところにいてさ、あんまりやることなかったらさ、そういう役目もあんじゃない?ってちょっと思ったりするね。あと、『がんばれ』って言うのが普通かもしれないけど、がんばってるよ。みんな、がんばってるっていうか、もう、そこでただ息をしていることでもう、がんばっているっていう意識を持ったほうがいい。

もうその、みんながこれ以上がんばれって言ったところで、がんばりようなんか誰もわからないのに、つい、僕らはリズムで『がんばれ』って言っちゃいがちなんだよね。失礼のない言葉だと思って。で、その気持はわかってほしいんだ。その短い言葉で、自分たちはあなたたちの味方ですって言うために、『がんばって』っていうので締めちゃうけど。自分たちはたぶんがんばっていると思うので。あの、とりあえず今日をやり過ごしてみませんか?っていう。あの、いろいろ失礼ありましたけど、本当に、いい明日が来るように。

<書き起こしおわり>

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