高橋芳朗さんがTokyo FM『高橋みなみの「これから、何する?」』に出演。2017年2月に行われる第59回グラミー賞の有力候補や注目ポイントを解説していました。
(高橋みなみ)ここからはベスト3先生。その道に詳しいプロフェッショナルな先生にあらゆる事柄のこだわり3つ、教えてもらいます。今日は、来月にアメリカで行われる世界最大級の音楽の祭典、第59回グラミー賞を特集します。お話をうかがうのは音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんです。髙橋先生、はじめまして。お願いいたします。
(高橋芳朗)はじめまして。よろしくお願いいたします。
(高橋みなみ)先生、もともとはタワーレコードの編集をなされていたとおうかがいしましたが?
(高橋芳朗)タワーレコードで発行している『bounce』ってういフリーペーパーがあるんですけども。あちらの編集部に所属しておりまして。その後、ヒップホップ雑誌の編集を経て、20001年からフリーランスでやっております。
(高橋みなみ)そうなんですね。先生がこの洋楽に目覚めたきっかけというのは?
(高橋芳朗)ええと、80年代頭ぐらいですかね? 僕、当時小学生高学年ぐらいだったんですけど。いまよりも当時は洋楽がもっと身近だったんですよね。
(高橋みなみ)あ、いまより身近だったんですか?
(高橋芳朗)全然身近でした。小学校とかから帰ると、夕方からテレビ番組でビートルズとかモンキーズとかの番組をやっていたんですよ。
(高橋みなみ)ええーっ、そうなんですね。
(高橋芳朗)そうなんですよ。あと、コマーシャルで外タレさんが出ることも多かったですし。いまもソフトバンクのCMにジャスティン・ビーバーが出ていたりしますけども。ああいうケースがいまより多かったですね。
(高橋みなみ)ああ、80年代はもっと多かったんですね。リスナーさんでも、やっぱり洋楽に触れる機会がいまはちょっと少なかったりとかするので。すごい興味津々なんですよ。今日のグラミー賞に対して。
(高橋芳朗)ありがとうございます。
(高橋みなみ)先生は洋楽に大変詳しいということなんですけども。邦楽好きの人、どういうところに注目すれば洋楽にハマりますか?
(高橋芳朗)でもJ-POPも洋楽の足がかりになる曲は確実にあると思うんですよ。昔の歌謡曲からいまのJ-POPもずっとそうなんですけども。基本的には洋楽の影響を受けて、それで進化しているようなところがありますから。だから、なんかのある曲の影響源。インスパイア源になっている曲を聞くと楽しいかと思うんですね。
(高橋みなみ)で、本当にこうきっかけがあったら、グッとハマっていくのかもしれないですね。
(高橋芳朗)そうですね。だからたとえば、それこそAKB48で言うと『胡桃とダイアローグ』とか……
AKB48『胡桃とダイアローグ』
(高橋みなみ)ええっ! なんでそんなコアな曲を知っているんですか、先生!?
(高橋芳朗)(笑)。もう大好きな曲ですよ。
(高橋みなみ)それはシングル曲のカップリング曲で、チームAっていう私が所属しているチームが歌っている曲で。ほぼほぼの人、知らないですよ、それ。
(高橋芳朗)いや、そんなことはないと思う。チームAはずっとよく歌ってましたもんね。
(高橋みなみ)ありがとうございます(笑)。そう。ちょっとチームAはそういうかっこいい曲というか、多かったんですけど。
(高橋芳朗)『胡桃とダイアローグ』がお好きな方はブリトニー・スピアーズの『Toxic』っていう曲を聞くとちょっと面白いと思います。
Britney Spears『Toxic』
(高橋みなみ)えっ、私、『胡桃とダイアローグ』好きですよ。自分たちの曲ですけども。『Toxic』?
(高橋芳朗)はい。『Toxic』、ちょっと聞いてみてください。
(高橋みなみ)ええっ、なに? 気になるー!
(高橋芳朗)そうなんですよ。AKB-48の曲とかでも全然洋楽の足がかりになる曲、いっぱいあると思います。
(高橋みなみ)そうなんですね。AKBもそんなおしゃれさがあったんですね。そう言っていただけるとうれしいです(笑)。さあ、そんな髙橋先生に『いまさら聞けないグラミー賞』と題して1からグラミー賞について教えていただきたいと思います。初心者の方から、何年も見ているよというベテランさんにも意外と知らないよという情報を伝えていただきたいと思います! まずは、どこから行きましょうか?
(高橋芳朗)まずは、こちらから行きましょう。グラミー賞の基礎知識。今回の第59回授賞式の概要についてです。
(高橋みなみ)ありがとうございます。ありがたいです。そもそもこの「グラミー賞」という名前ですけど、これはもっと本当は名前、長いんですよね?
(高橋芳朗)いや、これは普通に「グラミー賞」なんですけども。グラモフォン(蓄音機)が由来になっているんです。
(高橋みなみ)あっ、そうなんだ!
(高橋芳朗)だからグラミー賞のトロフィーがあの蓄音機をかたどったものになったんですね。
(高橋みなみ)知らなかった! 面白い! そしてリスナーさんも気になったのが、他にはどのぐらい大きな賞なのか?っていう。
(高橋芳朗)まあ、世界でもっとも権威がある音楽賞という風に言われていますけども。漫画好きの高橋さんにわかりやすく説明するとすればですね、実質音楽の天下一武道会みたいな。
(高橋みなみ)ああーっ! 天下一武道会!
(高橋芳朗)だから、日本レコード大賞と比較して考えてみるとわかりやすいと思うんですけども。高橋さん、AKB48のメンバーとしてレコード大賞を2度、受賞されていますよね? その時、どんなアーティストと賞を競い合うことになっていたでしょう? たとえば、西野カナさんだったり……
(高橋みなみ)そうですね。氷川きよしさんだったり、いきものがかりさん。
(高橋芳朗)三代目J Soul Brothersさんとか。で、イメージとしてはそこにさらに、テイラー・スウィフトとかブルーノ・マーズとかアデルとかが参戦してくるような感じです。
(高橋みなみ)もう、とんでもない状況ですね。
(高橋芳朗)そうですね(笑)。
(高橋みなみ)ちょっと諦めちゃいますよ(笑)。
(高橋芳朗)厳しい戦いになってくると思うんですけど。ただ、日本レコード大賞と違ってグラミー賞はアメリカ国内でリリースされた作品全てが対象になります。
(高橋みなみ)すごいですよね。現在、ホームページを見るとたくさんのアーティストの方がノミネートされているんですけども。これ、どうやってノミネートは決まるんですか?
(高橋芳朗)これはですね、グラミー賞を主催している、NARAS(ナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンス)という組織がありまして。約2万人のミュージシャンとか音楽関係者で構成されているんですけど。彼らの投票によって。
(高橋みなみ)一般投票じゃないんですね。
(高橋芳朗)違います。彼らの投票によってまずノミネートが決まって。で、その後にもう一度、投票が行われて受賞者、受賞作品が決定するというそういう流れになっております。
(高橋みなみ)本当に栄誉ある賞ですけど、こちらグラミー賞を受賞することはアーティストにとっても価値がある。セールスにもつながってきたりするんですか?
(高橋芳朗)そうですね。こういう風に説明するとわかりやすいか、ちょっと難しいんですけども。賞金は、ゼロなんです。
(高橋みなみ)そっか……
(高橋芳朗)これがある意味、グラミー賞の価値を表しているところがあると思うんですけども。まあ、そのぐらいの見返りがありますよという。売上的にも名誉としてもそうですね。だから、映画のアカデミー賞とかも賞金はないですし。あと、アメリカの国民的イベントって言われてますけども、アメリカンフットボールのスーパーボウルのハーフタイムショー、ありますよね? あれもノーギャラです。
(高橋みなみ)あれ、ノーギャラなんですね!
(高橋芳朗)ノーギャラです。ノーギャラです。アメリカ、結構そういうのが多いかもしれないですね。エンターテイメントは。でも、それだけの見返りがあると。そういうことですね。
(高橋みなみ)そっかー! なんかアメリカンドリームというか。そんな感じですよね。ということで、いよいよ来月開催。今年のポイントを教えてもらってもいいですか?
(高橋芳朗)はい。まず開催日を改めて確認しておきましょうかね。日本時間の2月13日(月)、朝9時スタートになります。会場はカリフォルニア州ロサンゼルスのステイプルズ・センターですね。司会を務めますのがイギリス人俳優・コメディアンのジェームズ・コーデンという方なんですけども。この人、アメリカの深夜のトーク番組のホストを務めている人で、そのコーナーで『カープール・カラオケ』っていう人気コーナーがあるんです。ご存知ですか?
(高橋みなみ)いや、ご存知でなかったです。
(高橋芳朗)ジェームズさんが運転する車の助手席にセレブリティ……レディ・ガガとかマドンナとかブルーノ・マーズとかが乗って、一緒にカラオケするっていうそういうコーナーがあるんです。
(高橋みなみ)すごいコーナーですね!
(高橋芳朗)結構YouTubeとかでも公開されているので、ご覧になったことがある方も多いと思うんですけども。
Bruno Mars Carpool Karaoke
(高橋みなみ)贅沢!
(高橋芳朗)これがアーティストの素顔を引き出すすっごい人気コーナーなんです。
(高橋みなみ)もうナチュラルにこの運転の中で……
(高橋芳朗)そうです。一緒に歌うんですよ(笑)。
(高橋みなみ)すっごいな!
(高橋芳朗)で、そういうジェームズさん。すごいミュージシャンの信頼も厚いしノリもいい方なんで、きっと楽しいセレモニーになるんじゃないかと思います。
(高橋みなみ)いやー、なんかすごい楽しみになってきましたね。さあ、それでは今年度最多ノミネート、ビヨンセの曲を聞いてみましょう。『Formation』。
Beyonce『Formation』
(高橋みなみ)お送りしたのはビヨンセで『Formation』でした。Tokyo FM『高橋みなみの「これから、何する?」』、この時間はベスト3先生。今日は音楽ジャーナリスト、高橋芳朗先生をお招きしています。先生、いまさら聞けないグラミー賞、2つ目のポイントは何でしょうか?
(高橋芳朗)はい、こちらです。なんといっても、賞レースの行方。
(高橋みなみ)これですよね。一体誰が取るのか? 予想するのがすごい楽しみですよね。
(高橋芳朗)そうですね。そこがいちばんの醍醐味だと思いますけども。
(高橋みなみ)こちら、よく「主要○部門」とか言いますけども。これ、部門的にどれ位?
(高橋芳朗)トータルでは、年々カテゴリーが見直されて、去年は83部門だったんですけど、今年は1部門増えて84部門ですね。
(高橋みなみ)そんなにあるんですね!
(高橋芳朗)そうですね。ただ、基本的に日本とかでニュースになるのは「主要4部門」と言われているところで、こちらが最優秀レコード賞、最優秀アルバム賞、最優秀楽曲賞、そして最優秀新人賞。で、最優秀アルバム賞と最優秀新人賞はわかると思うんですけども、最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞、なんかちょっと似ている感じがしますよね?
(高橋みなみ)ちょっとゴチャッとしていますね。
(高橋芳朗)で、レコード賞はそのレコード制作に携わったパフォーマー、スタッフ全員に与えられる賞なんですよ。その楽曲トータルでの評価ですね。で、楽曲賞っていうのは作詞作曲をした人。ソングライターに与えられる賞です。
(高橋みなみ)へー。本当に主要4部門のことしか、あまり知らなかったかもしれないです。
(高橋芳朗)まあ、そうですね。他にも、たとえばジャズ部門とかレゲエ部門もありますし。チルドレン部門。子供用レコード。あと、コメディー部門。あと、CDのアートワークを評価するものも。
(高橋みなみ)これ、だから本当に日本時間の朝9時ぐらいから始まるわけですけども。
(高橋芳朗)まあポツポツポツと(笑)。
(高橋みなみ)本当、超時間ですよね。
(高橋芳朗)大変ですよね。80部門以上ありますからね。
(高橋みなみ)どうですか? その主要4部門の中でも注目されている部門とか、あるんですか?
(高橋芳朗)今年はやっぱりこの主要部門の争いになると、アデルとビヨンセ。イギリスとアメリカを代表する女性シンガー、ディーヴァの一騎打ちということになると思います。
(高橋みなみ)本当にこの『これ何』でもアデル、ビヨンセ、ジャスティン・ビーバーの楽曲、たくさんかけているので。本当に誰が取るのかな?っていうワクワク感があるんですけども。
(高橋芳朗)いま最有力と見られているのはアデルですかね。
(高橋みなみ)アデルなんだ! それは先生から見てどういうところなんですかね?
(高橋芳朗)やっぱりまず、今回対象になっている彼女の『25』っていうアルバムなんですけども、累計の売上がアメリカだけでも1000万枚以上……
(高橋みなみ)(笑)
(高橋芳朗)だからもう、実績だけでは十分彼女にあげてもいいんじゃないかな?っていう。
(高橋みなみ)1000万枚ですか?
(高橋芳朗)そうですね。ちょっとピンと来ない数字ですけどね。
(高橋みなみ)ピンと来ないですね。ただ、やっぱり最多ノミネートされている人でも、取るかわからなかったりするところもあるわけじゃないですか。
(高橋芳朗)そうですね。そこはわからないですね。売上がかならずしも評価されるとも限らないので。
(高橋みなみ)うわー! これ、何? まあ先生的にはアデルなんじゃないか? というお話が出てきましたけども。ここでちょっとLINEアンケートを取ってみたいと思います。今年のグラミー賞、誰がいちばん多く受賞すると思いますか? ということで、三択でございます。1.アデル、2.ビヨンセ、3.ジャスティン・ビーバーということで。最多ノミネート、いまのところビヨンセ?
(高橋芳朗)そうですね。ビヨンセが9部門となっています。
(高橋みなみ)うわー、誰なんだろう? 気になるところですね。本当に。ということで、お話にもありましたけども、年間最優秀レコードにもノミネートされている方の曲、聞いていただきましょう。アデルで『Hello』。
Adele『Hello』
(高橋みなみ)お送りしたのは、アデルで『Hello』でした。いやー、先生。もうアデルなんじゃないか? というお話が出ていましたけど、魅力は何なんでしょうか?
(高橋芳朗)まあ、聞いての通りとにかく圧倒的に歌が上手いっていうのもあるんですけども。アデルの歌が共感を集めているポイントとして、ある意味彼女はしくじり先生というかですね。
(高橋みなみ)おおっ、なんでしょうか? 日本人的な感じになってきましたよ。
(高橋芳朗)恋のしくじり先生なところがあるんですよ。
(高橋みなみ)結構波乱万丈なんですね。
(高橋芳朗)アデルはこれまでアルバム3枚リリースされているんですけども、全てタイトルが数字なんですね。『19』『21』『25』って。
(高橋みなみ)ええっ、なんでですか?
(高橋芳朗)これはその時々のアデルの年齢です。で、要はアデルのアルバムって、彼女の人生の記録であり、もっと言うと恋愛の記録なんですよ。で、もう本当にね、結構ダメ男につかまっている方で……(笑)。
(高橋みなみ)ええーっ! そうなのかー!
(高橋芳朗)ダメ男に苦しめられて、アルコール依存症になってしまったり。あと、たとえば「自分のアルバムは恋愛を糧にして作っているのよ」みたいなことをインタビューで言ったら、元カレから電話がかかってきて、「と、いうことなら俺もお前のアルバムの制作に貢献していることになるから、印税よこせ!」とか……(笑)。
(高橋みなみ)とんでもない男ですね!(笑)。
(高橋芳朗)とんでもないやつですね(笑)。で、いまかかった『Hello』なんですけど、これは誰に「ハロー」って言っているか? というと、元カレなんですよ。「昔の恋を懐かしんで、思わず元カレに電話してしまった」みたいな。
(高橋みなみ)でもね、なんかそのダメ男に引っかかる感じが共感を呼んだりとか?
(高橋芳朗)だから、そんなアデルのしくじり先生ぶりにリスナーは涙を流したり、ハラハラしたり……
(高橋みなみ)なんかね、幸せになってほしいところですけど、そういうい失敗が素晴らしい楽曲を生んでいると思うとね……
(高橋芳朗)そうですね(笑)。そういうところです。糧になっているわけです。はい(笑)。
(高橋みなみ)ということで高橋先生、ニュースの後もよろしくお願いします。
(高橋芳朗)はい。
(中略)
(高橋みなみ)(投稿メッセージを受けて)なるほどね。母の失敗はたしかに横で見ちゃいますよね。どうですか? グラミー賞で失敗された方とかいるんですか?
(高橋芳朗)さっきね、アデルが不幸の恋の物語を歌い続けているという話をしましたけど。そのアデルさんなんですけど……
(高橋みなみ)またアデルだ!(笑)。
(高橋芳朗)去年の授賞式で彼女、パフォーマンスしたんですけど、機材トラブルで全然上手く歌えなくて。
(高橋みなみ)ええーっ!
(高橋芳朗)それはちょっと気の毒でしたね。かわいそうでした。
(高橋みなみ)それはでも、生放送だから止められないし。これ、しんどいですね。終わった後、「ホワイ?」みたいな感じだったんですか?
(高橋芳朗)ちょっと不本意な表情はしていましたね。でも、今年もう1回パフォームできるんで。挽回してほしいです。
(高橋みなみ)リベンジをしてほしいところですけどね。
(高橋芳朗)あと、去年でいうとザ・ウィーケンドというシンガーが本番のパフォーマンスの時にローリン・ヒルっていう女性ラッパー、シンガーとコラボするはずだったんですけど、彼女がドタキャンして来なかったっていうのもありますよ(笑)。
(高橋みなみ)ちょっと! グラミー賞をドタキャンする人がいるんですか?
(高橋芳朗)そういう豪快な方もいらっしゃいますね。
(高橋みなみ)えっ、それ、ドタキャンされた時は、そのラップの部分は?
(高橋芳朗)それはもう、なかったことにして。
(高橋みなみ)歌うと? うわーっ! なんか、海外ってその面白さありますよね。
(高橋芳朗)そうですよね。結構そういうトラブルが多いですよね。
(高橋みなみ)日本だったらそれをやったら一発アウトじゃないですか。
(高橋芳朗)(笑)。もう追放ですね。本当にね。
(高橋みなみ)ねえ。でもそれもなんか、面白いというか。「あっ、今日来なかったんすねー」みたいな?
(高橋芳朗)そうですね。味として処理されるといいますか(笑)。
(高橋みなみ)今年は大丈夫そうですかね?
(高橋芳朗)今年は大丈夫だと思います。
(高橋みなみ)アデルのリベンジも見たいところですよね。
(高橋芳朗)そうですね。ただずっとね、不幸を引きずっているアデルさんなので(笑)。
(高橋みなみ)だから今年の目玉もアデルさんということでよろしいですか?
(高橋芳朗)そうですね。パフォーマンスですとアデルさんもそうですし、去年の4月に亡くなりましたプリンス。彼の追悼パフォーマンスがおそらく。で、噂レベルなんですけど、ブルーノ・マーズ、リアーナ、そしていま話に出たザ・ウィーケンド。噂レベルですけどね。
(高橋みなみ)いや、そこはちょっと……実現してほしいですね。ということで、この後2時台も高橋芳朗先生に今年のグラミー賞のポイントを教えていただきたいと思います。お願いします!
(中略)
(高橋芳朗)
(高橋みなみ)お送りしたのは今年のグラミーで年間最優秀アルバム、最優秀ポップパフォーマンス、最優秀ポップボーカルアルバムにノミネートされているジャスティン・ビーバーで『Love Yourself』でした。
Justin Bieber『Love Yourself』
(高橋みなみ)さあ、Tokyo FMアースギャラリーから生放送。『高橋みなみの「これから、何する?」』。この時間は音楽ジャーナリスト、高橋芳朗先生とグラミー賞予想をしているベスト3先生でございます。さあ、先ほどLINEアンケートを取ったんですけど、ここで結果を発表させていただきたいと思います。先ほどアンケートを取ったのは今年のグラミー賞で誰がいちばん多く受賞すると思いますか? 三択ということで、1.アデル、2.ビヨンセ、3.ジャスティン・ビーバーでございました。ということでリスナーさんの予想。第3位、ジャスティン・ビーバー。第2位、ビヨンセ。第1位、アデルという結果になりました。
(高橋芳朗)やはり。
(高橋みなみ)先ほど、アデルの話をたくさん聞きましたけど、ビヨンセ。どうでしょう?
(高橋芳朗)まあ心情的には僕はビヨンセに取ってほしいというところもあるんですけど。アデルがしくじり先生だとするならばですね、ビヨンセは怒り新党ですね。
(高橋みなみ)(笑)。なんか面白い! わかりやすいな(笑)。
(高橋芳朗)ビヨンセが何に怒っているか?っていうと、ここ数年、アメリカで大きな社会問題になっております人種差別問題でしたり、ヘイトクライムですね。今回、対象になっているビヨンセの最新アルバム『Lemonade』なんですけど、非常に社会的、政治的メッセージの強いアルバムで。セールス的にはこれまでの彼女のディスコグラフィーの中でいちばん低いんですね。
(高橋みなみ)あ、そうなんですか。
(高橋芳朗)そうです。でも、人種問題でしたり、ヘイトクライム出したり、あとはトランプ政権発足なんかで揺れるいまのアメリカの世相を強く反映したアルバムとしてものすごい高い評価を受けているんです。
(高橋みなみ)たしかに、こういう注目をされている方がそういうことを言ってくれるというのも大きいですよね。
(高橋芳朗)うん。まあでもその中でもこう、アデルとビヨンセに一矢報いる存在としてジャスティンにも……ジャスティン・ビーバーにもがんばってほしくて。
(高橋みなみ)いや、私もそれ、すごく思っています。ビヨンセとアデルはやっぱり受賞されていますもんね。
(高橋芳朗)そうですね。アデルは過去10回。ビヨンセは過去20回も取っているので、ジャスティンにはがんばってほしいな。彼、スキャンダルも多いんですけど、いま本当に立派なたくましい大人のシンガーに成長したんで。その真価をちゃんと評価してほしいというか。日本でもいまだに彼がテレビに出てくると、いまだに『Baby』がかかっちゃうんですよね。「ベイビー、ベイビー♪」って。だからAKB48でも、ヒット曲がいっぱい出てくるのに、出てくるといまだに『会いたかった』がかかると、ちょっと、ねえ。
(高橋みなみ)そうですね。それはたしかにちょっと、私も現役時代に「あ、『会いたかった』だ」って思っていました(笑)。
(高橋芳朗)(笑)。「もう進化しているのに!」っていう。ジャスティンもそこをね。
(高橋みなみ)「いまを見てほしい!」っていうね。
(高橋芳朗)そう。いまのジャスティンを評価してほしいなっていうところがあります。
(高橋みなみ)うわー、この三つ巴の戦い、一体どうなるのか? ですね。さあ、ということでいまさら聞けないグラミー賞。では、高橋先生。最後のひとつ、お願いいたします。
(高橋芳朗)はい。日本人ノミネートやパフォーマンスにも注目。
(高橋みなみ)日本人で言うと、以前に坂本龍一さんだったり、喜多郎さん。B’zの松本さんが受賞したのはニュースで見たことがありますけども。
(高橋芳朗)今回は日本人アーティストでノミネートされているのは3名いらっしゃいます。坂本龍一さん、あとクラシックのピアニストの内田光子さん。あと、R&B、ヒップホッププロデューサーですね。starRoさん。この3人になっておりますね。で、starRoさんは最優秀リミックス賞。リミックスというのは既存の曲を再編集して別の新たな曲を生み出すという手法なんですけども。そのリミックス部門でノミネートされております。いま、後ろでかかっておりますThe Silver Lake Chorusの『Heavy Star Movin’』。これをstarRoさんがリミしているんですけども。
The Silver Lake Chorus / Heavy Star Movin’ (starRo Remix)
(高橋みなみ)ここで、一通メッセージを読んでもいいですか? 「今回のグラミー賞でリミックス部門にstarRoさんがノミネートされたんですね。ご本人はそのことを知らず、知り合いのフォロワーさんからTwitterで結果を知ったそうです。すごい賞なのに、結構ゆるい感じなんですね。こういったスタイル、グラミー賞だけなんですか?」という。
(高橋芳朗)ああー、どうなんですかね? 直接連絡が来なかったのか、たまたま留守にされていたのか……
(高橋みなみ)ねえ。Twitterのフォロワーさんが言わなかったら、最後まで気づかずみたいなこともあるんですかね?(笑)。
(高橋芳朗)(笑)。starRoさん、結構ゆるい感じですごい面白いんですよ。Twitterをやられているんですけども、時々日本語でもツイートされていて。去年の12月にね、グラミー賞に関してこんなツイートをされていました。「グラミー史上もっともペーペーな候補。タキシード代を稼ごうとベガスでギャンブルしましたが、すでに運を使い果たしてしまった模様で残念な結果に」と(笑)。
グラミー史上最もぺーぺーな候補、タキシード代を稼ごうとベガスでギャンブルしましたが、すでに運を使い果たしていてしまった模様で、残念な結果に ??
— starRo (@starRo75) 2016年12月20日
(高橋みなみ)面白いなー!(笑)。
(高橋芳朗)面白いですよね。で、こういうのを読むと俄然応援したくなるなと。
(高橋みなみ)たしかに。すごくいま、ファンになりました。一気に(笑)。
(高橋芳朗)で、もともとstarRoさんは横浜出身で。で、会社員をしながら音楽活動をされていたらしいんですけども。
(高橋みなみ)すごい。一気に身近な存在になりますね(笑)。
(高橋芳朗)で、2007年頃から渡米して、本格的にロサンゼルスを拠点にして音楽活動をして。
(高橋みなみ)どうなんですか? 言葉の問題もあると思うんですけど、日本人の受賞っていうのはなかなか……
(高橋芳朗)かつて、オノ・ヨーコさんが旦那のジョン・レノンさんと一緒に作ったアルバムで賞を取ったことはありましたけども。それを除くと、基本的にはインストゥルメンタルで賞を取る機会の方が圧倒的に多いですね。
(高橋みなみ)ちょっとがんばっていただきたいですよね。
(高橋芳朗)そうですね。starRoさん、ご自身のフェイスブックに上げられていたんですけど、彼は2016年の年明けはドライバーの、運転の仕事をしながら迎えたらしいんです。
(高橋みなみ)ええーっ! グラミー賞なのに……
(高橋芳朗)2016年の年明けですよ。でも、その年の年末に、グラミーにノミネートされたなんていう、そんなニュースが入ってくるという。
(高橋みなみ)人生、なにがあるかわからない! 夢がいっぱいですね。
(高橋芳朗)そんなことを感慨深げにフェイスブックに書かれていて。
(高橋みなみ)ちょっと見たい。その人のTwitter、フォローしたいもん。
(高橋芳朗)やっぱり努力はかならず報われるっていう……
(高橋みなみ)ありがとうございます(笑)。
(高橋芳朗)身をもって証明されているかなという感じがいたしました。
(高橋みなみ)本当ですね。どうですか? グラミー賞の授賞式。ここ以外の見どころっていうのは?
(高橋芳朗)やっぱりさっきもちょっと話に出ましたけど、パフォーマンスも誰が取るか?っていう予想と同じぐらい重要度が高い醍醐味のところだと思います。で、さっきビヨンセの話をしましたけど、グラミーの授賞式のパフォーマンスだったりスピーチも結構その時々の社会情勢だったり社会問題が強く反映されたりするんです。
(高橋みなみ)いまね、この状況で何を言うのか?っていうのも難しいところですね。
(高橋芳朗)たとえば2014年だったら同性婚とか同性愛が結構大きなテーマだったし、2015年は黒人差別問題が結構クローズアップされたんですけども。
(高橋みなみ)今年ね、やっぱりトランプさんの就任もありましたから。
(高橋芳朗)そうですね。トランプ政権発足直後で、デモにも有名ミュージシャンも多数ね。マドンナとかケイティ・ペリーとかも参加していましたから。だからまず何か、トランプ政権に対して反トランプな声明とかを打ち出すアーティストが出てくるのは、まず間違いないかなと思いますね。
(高橋みなみ)これ、だからまたそれを聞いたトランプさんが「あいつは!」みたいに言うんですよね(笑)。
(高橋芳朗)そうですね。またTwitterで。ここでまたさらにビヨンセが受賞したりすると、非常に政治色の強いセレモニーになるかなという気がしますね。
(高橋みなみ)うわー、どうなってくるんだろうな? グラミー賞、日本時間の2月13日(月)朝9時からですよね。楽しみですよね。あと19日ですから。案外あっという間。
(高橋芳朗)あ、もうすぐですね。3週間ぐらいですか?
(高橋みなみ)でも先生の話を聞いて一気に楽しみになりました。
(高橋芳朗)ありがとうございます(笑)。
(高橋みなみ)ありがとうございます。そしてここから先生のお知らせがあるということで。
(高橋芳朗)はい。書籍の告知を2点、させてください。星野源さんの昨年の活動をまとめた超豪華なイヤーブック『YELLOW MAGAZINE』において、星野源さんのアルバム『YELLOW DANCER』の全曲解説インタビューを担当させていただきました。
(高橋みなみ)すごーい!
(高橋芳朗)2万字を超える大作なので、読み応えがあると思います。
(高橋みなみ)どうでした? お話をされて。
(高橋芳朗)いや、めちゃくちゃ面白いっす! 星野さんも洋楽も非常にお詳しい方なので。で、これは星野さんのライブ会場か、あとは星野さんの公式ホームページから通販でしかお買い求めできないので。
(高橋みなみ)なるほど! なんか限定感があって、またこれは手に入れたくなりますね。
(高橋芳朗)あと、ヒップホップを代表する名盤でNasというラッパーの『Illmatic』というアルバムがあるんですけど。その魅力に迫る書籍で『NASイルマティック』という本が……海外の本なんですけども。これの監修と解説を手がけております。1月30日発売です。
(高橋みなみ)もう間もなくですね。
(高橋芳朗)よろしくお願いします。
(高橋みなみ)いやー、ちょっと今日、学びが多かったです。私も本当に名前は知っていたんですけど、中身をちゃんと知らなかったし、聞けなかったので。ちょっとわかりやすく、すごく楽しくお話いただきました。
(高橋芳朗)今度、『AKB48の楽曲を通じて知る洋楽』とかをやらしていただきたいなと……
(高橋みなみ)おおっ、ぜひ! そんな、先生側から「ベスト3先生、こんなのいかがですか?」って提案いただけるとは!
(高橋芳朗)(笑)。よろしくお願いします。
(高橋みなみ)またよろしくお願いします。ということで、そろそろお時間が来てしまいました。それではプリンスの『RASPBERRY BERET』を聞きながらお別れです。高橋芳朗先生、ありがとうございました。
(高橋芳朗)ありがとうございました。
<書き起こしおわり>