町山智浩さん、前嶋和弘さん、神保哲生さんがTBSラジオ『荻上チキ Session-22』に出演。ドナルド・トランプ大統領就任演説の注目ポイントと、ファクトチェックについて話していました。
【音声配信】「トランプ大統領の就任をめぐる混乱と就任演説の注目ポイント」荻上チキ×町山智浩×神保哲生×前嶋和弘▼1月23日(月)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」) https://t.co/HhawApnXc4 #ss954 pic.twitter.com/tLiq4BkpMz
— 荻上チキ・Session-22 (@Session_22) 2017年1月23日
(荻上チキ)さて、ここからは演説の注目ポイントについてうかがっていきたいと思います。ではまず、前嶋さんが注目したポイントをうかがっていきたいと思うんですけども。前嶋さん、今回は3つ、挙げていただいたようですね。ということで、ひとつ目のポイントから順に紹介していきたいと思います。ひとつ目のポイントは、こちらです。
(ナレーション・トランプ演説日本語訳)今日から新たな考え方で我が国を治める。今日からは、ひたすら「アメリカ第一」だ。アメリカが第一だ。
(荻上チキ)「アメリカ・ファースト(America First)」って2回、言ってましたね。
(前嶋和弘)言ってましたね。
(荻上チキ)ここに注目した理由は何ですか?
アメリカ・ファースト
(前嶋和弘)これはやっぱり、私もずっと、町山さんみたいに生々しい素晴らしい話じゃないですけど、ずっとテレビ中継を担当していたので。解説をしていて、その時に見て、「来たな。なんだろう?」っていう。まあ、出てくる言葉ですよね。「アメリカ・ファースト、いつ出てくるだろう? 来たな!」って。意外と早い方で出てきて。「この後、じゃあアメリカ・ファーストを説明するよね? でもやっぱりアメリカ・ファーストが出てきた。何をもってアメリカ・ファーストって言うのかな?」っていうきっかけですよね。次に何が出てくるか? という。
(荻上チキ)そうですよね。このアメリカ・ファーストっていうスローガン、神保さんはいかがお考えになりますか?
(神保哲生)アメリカ・ファーストの前にね、「新しいビジョンで我々はこれから国を治めるんだ」って言っているでしょ? それがアメリカ・ファーストだと。で、その新しいビジョンっていうのが非常に重要なポイントで。アメリカはだから、どこまでさかのぼるかによっていくつか議論はあるんだけど、すごい端的に言うと冷戦が終わった直後にアメリカが国防計画指針(DPG)っていうのを出して。そこで、「アメリカは世界の警察官をやり、アメリカのような超大国の他の出現を絶対に許さない」っていう方針を明確に作ったんですよ。つまり、世界中にコミットして「ちゃんと自分が管理をする。そのかわり、他に絶対大国は作らないぞ」っていう。要するに、外国にしっかりコミットしていくという姿勢を出したんです。それが、ある種破綻してどうにもならなくなったのが、この間のイラク戦争であり、アフガンにいま起きていることなんですよね。
(荻上チキ)はい。
(神保哲生)まあ、9.11も起きてしまったということなんだけど。「絶対にそういうのは許さない!」っていろいろやっていたら、「あれ、やられちゃった」っていうことなのね。そこで明確に……オバマは結局それを明確には展開しなかった。今度ここで、新しいビジョンを。もうアメリカ・ファーストっていうことは、簡単に言えば、「もう外国のいろんなことにコミットしません」という、ある種孤立主義への回帰ということを明確にうたった。だけど、それを「孤立主義」っていう言い方だとすごい否定的じゃない? だからアメリカ・ファーストみたいないいものを取りに行ったように言っているけど、ここがたぶんいちばん重要なポイントだと思う。つまり、少なくとも20年、30年アメリカがずっと取ってきた世界にコミットしていく政策をこれでトランプ政権は転換しますということを明確に宣言したということですね。
(荻上チキ)はい。
(神保哲生)日本にも影響がいちばん大きいのは、僕はそこだと思います。みなさん、通商のことをいちばん心配しているけど、ここの方が……いちばん日本がその恩恵に浴してきたのね。アメリカが世界中にコミットしてくれて、日本が資源を輸入したりするのもちゃんと全部その輸送路を守ってくれていたということでね。石油を筆頭に。それが、これからはなくなる可能性があるっていうことを言ったということですね。
(荻上チキ)うん。だからその安全保障の話、通商の話、いろんな話を含めてアメリカ・ファーストっていう風に言っているという。その中身を議論しなくてはいけない。その中身が、前嶋さんが選んだ2つ目のポイントにかかわってきます。お聞きください。
(ナレーション・トランプ演説日本語訳)我々は2つの簡単なルールを守る。アメリカ製品を買い、アメリカ人を雇う。
(荻上チキ)というわけで、アメリカ第一のもうひとつが、アメリカ製品を買い、アメリカ人を雇うということになるわけです。前嶋さん、こちらのポイントは?
(前嶋和弘)これは安全保障じゃない方なんですけどね。シンプルなルール。どんなルールだろう? 「アメリカ製品を買い」……というか、「買え」ですよね。「アメリカ人を雇え」なんですよね。
(荻上チキ)「お前はクビだ」って言っていた人がね、「アメリカ人を雇え」っていう風に言っているのがすごく冗談みたいですけど。
(前嶋和弘)すごくシンプルな話。これから、アメリカ・ファーストだと。安全保障じゃなくて、通商の方に限って行くと、「これからはアメリカ・ファーストであって、アメリカ製品を買ってアメリカ人を雇うことだけなんだよ。どうだ、世界よ?」と。いちばん最初に「世界のみなさん」と言っているんですよね。大統領の名前を言った後に、急に「世界のみなさん」って来たんですけど。「世界のみなさん、これからアメリカ製品を買おうね。アメリカ人を雇おうね」って。「えっ?」って思ったんですけど。まあ、そのポイントですよね。これを新しいビジョンの通商の部分の説明がこれで出てきたんですよね。
(荻上チキ)なにかを「ファースト」と言うことは、先ほどニュースの部分で別のニュースで言いましたけどね、他の部分に関してはセカンド以降というか、優先順位が落とされるということになるわけですよね。となった時に、この場合優先順位でいう「アメリカ人」に、たとえばどの人種のどういった人なら入るんだろうか? とか、いろいろな議論が行われるような、ちょっと大きいキーワードということになりそうですよね。神保さん、いかがですか?
(神保哲生)だから、まさにそれですよ。アメリカ・ファーストなんだから、要するに外国のもの(製品)……「インポーツ・セカンド(サード)」ですよ。っていうことは、たとえばそういうものを買っている人間が石を投げられるとか、そういうものを売っているお店。たとえば輸入車……まあ輸入車のかなりの部分は実はアメリカで作っているんだけど、でもそんなのなかなか見ただけではわからないですから。そうすると、そういうものが迫害を受けるようなこととかも、逆に大統領がここまで「アメリカを買え!」って言っているのにアメリカのものを買わない、あるいは外国のものを売っている店みたいなところがそういう目にあったりする危険性もあって。これは結構、実は大統領がここまでこんなことを言うというのはどうなんだ?っていう話だと僕は思いますね。
(荻上チキ)いままでトヨタとかを含めて、いろんな企業を名指しして来たので。そうしたものの延長線上の文脈でこれは読み取れるというところもあるわけですね。では、3つ目のポイントはこちらです。
(ナレーション・トランプ演説日本語訳)みんなでアメリカを再び強くしよう。アメリカを再び豊かにしよう。アメリカを再び誇り高くしよう。アメリカを再び安全にしよう。そう。みんなでアメリカを再び偉大にしよう。Thank you. God bless you. And God bless America!
(荻上チキ)まあ、最後は神の名を連呼してましたけども。その前に「Make America Great Again」というキラーフレーズが出てきましたね。こちらを注目した理由は前嶋さん、いかがですか?
(前嶋和弘)キラーフレーズだからなんですけどね。「出てくるだろう。いつ? やっぱり出てきたな、最後に」と思って、これで終わると思ったんですけども。結局、なにが「グレート」なにか、私にはよくわからなかったんですが。たぶん、「『Buy American, Hire American, America First』がグレートだよ。世界よ、よく聞け!」って啖呵を切ったんだな、もう1回って思いましたね。
(荻上チキ)なるほど。
(前嶋和弘)通商だけに絞ればね。もちろん、安全保障とか、あといくつかのポイントはありましたけどね。
(荻上チキ)そうですね。町山さんはこの前嶋さんが挙げた3点についてはどうお感じになりましたか?
(町山智浩)そもそもこの「アメリカを強くしよう」って言う時に、実はこれ、ヒラリーも同じことを言っていて。ヒラリーのスローガンは「Stronger Together」っていう言葉で。「みんなで手を組んで仲間を増やせば強くなる」っていう、それはいままでのアメリカの国内的・国外的考え方だったんですよ。で、国外ではさっき言ったみたいにバルト三国のようなちっちゃい国でアメリカにとって全くメリットもないような国も守っていくということで、どんどんどんどん味方を増やすことで、全体として強くなるという考え方と、国内でも人種を超えて仲間になっていくことでアメリカという国を強くするっていう考え方。それが実は、ウッドロウ・ウィルソン大統領……1910年代の大統領ですが、そこからずーっと続いてくるアメリカのポリシーだったんですね。
(荻上チキ)うん。
(町山智浩)それを捨てていくということで、みんなで強くなるんじゃなくて、アメリカにとって得になることしかしない。そうすると、小国は切り捨てられますよね。メリットがないですから。バルト三国だけじゃなくて、世界中にいっぱい小国はあるわけですが、そことは手を組まない。それでロシアとも、得があれば手を組む。「ディール(Deal)する」っていう。トランプは「俺はディールの名手だ」って言っているわけですよ。取引すると。でも、理念とか正義では行動しないよ。同情でも行動しない。どこかの国の国民がひどい目にあっていても、それでは行動しないっていうことですよ。取引だから。アメリカにとって得にならないから。アメリカ第一だから。
(荻上チキ)シリアの例なんて、わかりやすいですよね。
(町山智浩)シリアの難民が何人死のうと関係ないわけですね。はっきり言って。
(神保哲生)まあ、シリアだけならいいんだけどね、やっぱりここ日本だと思うんですよ。実はいちばん大きな影響を受ける国が日本とエストニアじゃないか?って言われているんだけどもね。
(町山智浩)(エストニアは)バルト三国ですね(笑)。
(神保哲生)要するに、アメリカは3億人の人口がいるし、それから農業生産も農業大国だし。しかもいま、石油の生産も世界最大の産油国になっている。だから、ほとんど外国に何もたよらないでも孤立主義を貫くことが可能な可能性が……その場合、アメリカの生活水準が落ちるか上がるかはこれからまだわからないんだけど、少なくとも彼らは外国に依存しないでも行きていける国ではあるわけね。問題は、じゃあそれでアメリカが「もう他の国にコミットしません」ってなった時に、世界がどうなっちゃうのか? アメリカの外ではいったいどうなっちゃうのか? と。しかも、アメリカがそこにコミットしていることを前提にして、全ての外交だの全ての資源の確保だのを考えている日本みたいな国っていうのは、これはもう一大事でね。本当にそんなことになれば。外は大混乱。アメリカは一国至上主義みたいなのでそこそこの繁栄を維持する可能性っていうのが、もし本当にこの政策が行われたら、あり得てしまうっていうことなんですよ。アメリカはそれができる国だと。で、そんなことができる国はちょっとしかないわけ。国内調達だけでほとんどできるっていうものがね。
(荻上チキ)そうですね。
(神保哲生)特に資源のない国は。
(町山智浩)石油政策と絡んでいますよね。だからロシアとアメリカでもって産油国同士で、はっきり言って手を組もうとしているわけですよ。で、中東を攻撃しているでしょう? これ、すごい新しい石油っていうかエネルギーのブロックを作ろうとしているんですけど、これ完全に日本はヤバいですよね。
(荻上チキ)うんうん。そうですね。やっぱりエネルギーがない国で、貿易にたよらなければならない国で。しかも安全保障を自前では調達できないような状況にあるという中においては、やっぱりいまの方向を受けてどうするのか?っていうのは、議論が必要でしょうね。
(神保哲生)日本の場合は食料生産も問題だしね。
(前嶋和弘)アメリカは武力、経済力、ずっと1位ですもんね。当分はね。それが「どうだ、ファーストで行くぞ。アメリカ製品を買え。アメリカ人を雇え。一人勝ちするぞ。世界よ、見ておけ!」っていう話ですもんね。
(町山智浩)食料自給率も非常にアメリカは高いですから。
(荻上チキ)ただ、そこの中身をちょっとガバッと開けてみると、実際にその工場は、たとえば日系企業がアメリカの雇用を増やしていたりとか、いろんなところもあったりするので。その統計の中身についてはまた後ほど、しっかりとやりたいと思います。では、続いて神保さんが注目したポイント、お聞きください。
(ナレーション・トランプ演説日本語訳)聖書にこう書かれている。神の民がひとつになって共に生きることは、なんと幸せで楽しいことか。率直に自分の考えを語り、違いがあれば正直に議論をしなければならないが、常に結束を目指さなければならない。アメリカが団結すれば誰にも止めることはできない。恐れることはない。我々は守られている。これからも常に守られる。軍の偉大な人々によって。そして、法の力が我々を守ってくれる。そしてなにより重要なことに、我々は神に守られている。
(荻上チキ)さて、ここに注目した理由はなんですか。神保さん。
(神保哲生)これはね、もともとのアメリカの孤立主義の根本にあるモンロー主義的な考え方っていうのは、一方でアメリカ学の先生の前で僕が言うのは恥ずかしいんだけども。要するに、「マニフェスト・デスティニー」っていうね、アメリカには明白な使命があるという考えに基づいて孤立主義というのは取られたんだけども。まあ、それを彷彿とさせるという意味がひとつと、もうひとつはまさに町山さんがさっき言った、今回トランプが一般投票では300万票近く負けたのに、結局ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア、オハイオも入れてもいいんだけど、まあラストベルトっていうところを取ったことが結果的に選挙人で上回った原因になっていると。ラストベルトっていうのは基本的には「錆び」という意味で鉄鋼とか自動車産業が栄えたところが錆びちゃったという意味ですよね。
(荻上チキ)はい。
(神保哲生)実は同時にそこにバイブルベルトっていう要素があってね。要するに、さっきもちょっと町山さんが言ったけど、今回、女性がみんなすごく怒っている理由っていうのはそこにあるわけ。要するにね、今回、実はあのへんでいちばん有効だったキャンペーンっていうのは、「今度、もしヒラリーが大統領になったら、最高裁のスカリア判事というコテコテの保守の判事が1年ぐらい前に死んで出た欠員を、リベラル(の判事)で埋めるよ。そうすると、最高裁のリベラルと保守のバランスが壊れて、また中絶が一気に合法化。あるいはそれが広がるよ。そんなことでいいのか? 神様は怒るよ」みたいな話がすごく有効で。トランプ側がなれば……トランプの本当の政治信条は実は誰にもわからないんだけどね。そもそもそんなものがあるかどうかもわからないんだけど。「トランプ側がなれば、保守派がかならず最高裁のスカリア判事の後釜になる。そうすれば、いまかなり中絶が制限もされているというのを維持される。それは、クリスチャンのあなたにとってはとても大事なことなんじゃないの?」っていう。つまり、最高裁の判事の指名権をどっちが取るか?っていうことが結構今回、すごく大きかったんですよ。
最高裁判事の指名権の争い
(町山智浩)いま最高裁は4対4なんですよ。リベラル4と保守4で。本当は9にならなきゃいけないんだけど、スカリアさんが抜けた分(の判事の指名)を共和党が拒否しているんで、8人なんですよ。で、はっきり言うと、言っちゃいけないと思うんですけどユダヤ系のギンズバーグさんという人はかなりご高齢で……
(前嶋和弘)辞めないですよね。あの人もね。
(神保哲生)これもリベラルなんですよ。
(町山智浩)も、お亡くなりになると、4対3になるんで。そのうちの欠員2をトランプが埋めたら、これは当分、何十年も保守の圧倒的な勝利が続くんですよ。
(荻上チキ)6対3か。
(町山智浩)6対3の状態。1回任命すると、その後は死ぬまで更迭されないので。だから、その後に民主党が政権を取ったとしても、最高裁判決はずーっと保守側に10年以上、たぶん行くんですよ。だからこれ、ものすごい勝負時だったんですよ。
(神保哲生)政権が変わったって、判事は変わらないとかね。そこで、これはトランプさんがかならずこれもしっかり入れてきている。つまり、自分を大統領にした人たちに対するメッセージですよ。いわゆる聖書の教えに沿ってトランプに入れたと。「トランプは嫌いだけど、それはもうしょうがないな」っていう人がかなりの人数いた可能性があるわけ。
(荻上チキ)ヒラリーよりは神を尊重してくれると。
(神保哲生)で、ヒラリーも、しかもディベートの3回目でしたっけ? そこの問題に対してはっきりと「女性の選択だ」っていう風に中絶の権利というものをを言い切っちゃったということもあって。それが、逆にその人たちをトランプに……トランプに走らせたというよりも、「ヒラリーは嫌だ」っていう風に思わせちゃったというのがあって。そこも、要するにこれは選挙演説なんですね。ありがとう演説なんですよ。言ってしまえば、そこはね。
(荻上チキ)なるほど。
(神保哲生)で、「みなさん、神に守られているよ」みたいなことをしっかり入れてくるということも、誰が書いたのか……まあ、誰が書いたのかはいま、結構わかっているんだけど、まあ嫌らしいですよね。そこはね。
(荻上チキ)スピーチライターとしてということですね。
(町山智浩)ラストベルトはね、労働組合があるじゃないですか。労働組合って普通、左翼じゃないですか。で、労働組合の集まりって僕、何回も行ったことがあるんですけど、かならず労働組合の集まりの最初にカトリックの神父さんが来てね。ちゃんとお祈りを捧げるんですよ。ラストベルトは……バイブルベルトはプロテスタントの人が多いんですけど、ラストベルトはカトリックとロシア正教の人が圧倒的に多いんですよ。東ヨーロッパとかギリシャとかポーランドとか、あっちから来ているから。だって、日本で考えられます? 労働組合が……「インターナショナル」とか一応うたうんだけども、もう神父さまが来ないとなにも集まりが始まらないんですよ。そういう人たちなんですよ。
(荻上チキ)すごい光景だなという気がしますよね。
(前嶋和弘)だから、それを捉えたトランプさん。戦略家なんですね。言ってみればね。要するに、白人ブルーカラー層の雇用のさっきの話。「Buy American, Hire American」で宗教保守も抑えて。あと、小さな政府で規制緩和もしてやっていくわけですが、この層を固めたトランプ連合が今回、勝利なので。今回のスピーチ全体的に言えるのはお礼ですよね。投票してくれた人へのね。
(荻上チキ)なるほど。
(神保哲生)宗教保守色っていうのはね、もうひとつはやっぱりアメリカの対イスラエル政策に対しても、アメリカがイスラエルを大事にするということを明確に出している一環なんですよ。これ。すでにイスラエルの方はもうそれを見越して、いままた1回やめていた入植を始めていたりするんだけど。アメリカがそれを認めてくれるっていうことが前提になっているのね。だから、中東情勢も、特にパレスチナ情勢もこれでまた完全にトランプ政権になって、要するにネタニアフさんの方にプッシュする。イスラエル側をプッシュするということも明確なメッセージですよね。
(町山智浩)トランプは娘婿がシオニストですから。
(前嶋和弘)クシュナーさんですね。
(神保哲生)ユダヤ人ですからね。
(町山智浩)厳格派の方の。ユダヤ人っていうのはユダヤのリベラルとシオニストと2種類に分かれているんですね。イスラエル擁護と反イスラエル側と。で、だから娘婿の方はイスラエル支援側なんですよ。
(神保哲生)しかもだから娘(イヴァンカ)が結婚する時に改宗しているんですよね。
(町山智浩)そう。厳格ユダヤ教だから、ユダヤ教徒じゃない人とは結婚できないんですよ。だから、娘は改宗しているんですよ。
(荻上チキ)うん。でも、こうした中で神の名前を出すといった時にどの神のことなのか?っていう話も、当然ながら出てくるわけですよね。だから宗教論争についても、実は火種を残すような部分もありつつ。たとえばオバマさんの時はいろんな肌の色とか、いろんな神とか、いろんなものに触れていくということで多様性ということを強調していたんですけども、トランプさんは「グレート・アメリカのビジョンはシンプルにこれ1個なんだ」みたいな形で、「この1個のもとに集まれば強くなれる」っていうようなものを指し示していたりするのが特徴ですね。
(前嶋和弘)もうひとつ、ムスリムの話が出てきたけども、これはイスラムの過激派テロリストですもんね。しかも、その人たちを根絶やしにするんですよね。「Eradicateするんだ!」っていう。
(町山智浩)「地上から消してやる!」っていう。
(神保哲生)「Eradicate」ってトランプが珍しく難しい言葉を使ったんですよ。
(荻上チキ)そうですね。たしかに他の単語は結構わかりやすいのに。
(神保哲生)他は基本的に中学校で全部習う単語なんだけど、1個だけ今回入っていたのがそれ。中学では習わない単語が入っていた。「Eradicate」って使った。
(町山智浩)いままで民主党側は明確に敵をイスラム教徒って宗教的に限定することを避けていたんですよ。ずーっと避けていたんですよ。宗教戦争になっちゃうから。でも、これはっきりと言ったんで、宗教戦争の宣言ですよ、これは。
(荻上チキ)うーん。さらに今回、「軍の偉大な人たちによって守られている」みたいな形で、実際のその閣僚人事もそうですけど、かなりやっぱり軍隊へのリスペクトを。今回、実際に大統領に決まった時の最初の演説の中でも、「退役軍人の社会保障を充実させる」ということを言っていたりしましたし、軍へのリスペクトはかなり強いですよね?
(町山智浩)これは共和党内部で予備選で勝つためのものなんですね。共和党はすごく退役軍人に対する医療補助とかを削減していたんですよ。だから、「退役軍人を手厚く保険とかで保護する」ということをトランプが出したから、彼は予備選で勝ったんですよ。共和党が退役軍人たちにとってすごく人気がなかったんですよ。もうカットばかりされていたから。
(荻上チキ)「自分たちが戦争をさせたくせに、なんでそんなことをするんだ?」っていう。
(町山智浩)そう。だからあれで票を取りましたよ。
(荻上チキ)だからそういったことを含めて、やっぱりお礼を行脚していったというような演説になっているわけですね。では、最後に僕が注目したポイントも紹介したいと思います。こちらです。
(ナレーション・トランプ演説日本語訳)我々は権力を首都ワシントンからあなた方、国民に返還する。あまりに長きに渡り、政府から恩恵を享受するのは首都にいる一握りの人々にとどまり、国民にはしわ寄せが及んできた。ワシントンは繁栄しても、国民が富を共有することはなかった。政治家が潤う一方で、職は失われ、工場は閉鎖された。支配層は保身に走り、市民を擁護しようとはしなかった。支配層の勝利や成功は、みなさんの勝利や成功とはならなかった。支配層が首都で祝杯をあげていても、懸命に生きる全米の人々に浮かれる理由はなかった。それらが全て変わるんだ。
(荻上チキ)はい。というわけでここを選んだのは2つ、理由がありまして。ひとつは、いちばん最初に何を語るのか? といった時に、「今日は素晴らしき日だ」と言った後にこのスピーチが始まるんですね。要は、ある政党からある政党、ある政権から別の政権に権力が移るだけではなくて、今回は特別なんだ。ワシントンからみなさんに権力が渡されるんだという風に発言をしていたわけで。その後で、なぜならばということで、既得権益層批判が始まるわけですね。これはいわゆるポピュリズムというものの典型ケースということになるわけですよ。要は、既存エリート、既得権益層を攻撃することで、大衆に寄り添うという身振りを示す。そのことによって人気を獲得する。それをまさに頭から実践するような発言だったわけですね。そうしたトランプさんのスタイルというのがとてもにじみ出るような部分だったのに加えて、最後のフレーズ。「That all changes – starting right here, and right now」っていうような発言をしていましたけども。「ここから全てが変わる」ということなんですが。「Change」っていうキーワード、8年前に聞きましたよね?
(神保哲生)うん。ずいぶん聞いたね。
オバマとは違う「Change」
(荻上チキ)そこで使われていたチェンジという言葉と、ここで使われている言葉のチェンジ。同じキーワードでも、ずいぶんとニュアンスが違うということで、ちょっとその言葉。同じ単語なんだけど、その変化というものはすごく感じ取れるんじゃないか? ということで、ここの部分を挙げてみました。前嶋さん、いかがでしょう?
(前嶋和弘)そうですよね。つい、チェンジの話は「Yes We Can」の話を考えると、それでオバマさんのこの間の退任する時の演説でもありましたよね。だからこの変化。うーん……そして、いちばん最初のところの「The People」ですよね。「国民に」ってこれ、どこまでの国民を指すか? なんですよね。その人……要するに国民に(権力を)返すわけだけど、その返す国民はどういう国民なのか? その変化ってなんなんだろう?っていうことですよね。
(荻上チキ)そうですね。町山さん、いかがですか?
(町山智浩)これ、共和党も民主党も両方とも叩いているんですよ。つまり、既成の政治家を全て叩いていて。で、僕、アリゾナとかアイオワに行った時はトランプはわざとこうやって、クォーテーションマークをつけて「”The Politician”」ってやるですよ。「Politician(政治家)が敵なんだ!」ってやるんで、政治家全てが敵と。だから閣僚、ほとんど政治家いないじゃないですか。政治家から金持ちたちが権力を奪ったんですよ、これ。実は。ピープルじゃないですから。閣僚は全員大金持ちですから。
(荻上チキ)そうですよね。富裕層ですよね。
(町山智浩)これ、FOXニュースがその日にこの演説のこの部分を論評していて。「これは保守でもリベラルでも民主党でも共和党でもない! これはポピュリズムの革命宣言だ!」って言って。共和党を擁護するためのFOXニュースがパニックに陥ってましたからね。
(荻上チキ)やはりそうですよね。
(町山智浩)「これはクーデターじゃないのか?」とか言ってましたからね。
(荻上チキ)うーん。そうしたような状況の中で、やっぱり人々に権力を取り戻すんだ!っていうのは受けるんだけども、それが具体的にはどういったものなのか?っていうのが結構、掴みどころがないようなところもあったりするわけですよね。で、この発言のファクトチェックも後ほどちょっと紹介したいと思いますが。町山さん、あえて今回、演説で触れられなかったところに注目をしていただけているということなんですけども。どういった点でしょう?
(町山智浩)だから国際世界へのメッセージがないんですね。いつも、ずっと先ほどから言っているように、ウッドロウ・ウィルソン大統領が国際連盟を提唱した大統領なんですけども、彼が「世界全体を民主主義で自由な世界にしなければ最終的な勝利はないんだ」っていう考えから、アメリカの世界の警察化が始まっていくわけですね。で、どんどんそれまでのモンロー主義という外国には干渉しないという立場から変わっていったわけですけども。それと同時に、アメリカってその頃経済的な繁栄があって。つまり、世界的に平和や民主主義や資本主義を広げていくことで、市場が増えるんですよ。それは。で、メッセージ……たとえばハリウッド映画っていうのはそういうメッセージを世界に広めるから、世界の人が見てくれるし。そういう国のイメージがあるから、アメリカの車を買うわけですね。アメリカの車とか、アメリカの商品っていうのは、自由と出世とか成功とか資本主義とか、いろんなもののドリームの象徴だったから世界的に憧れたわけですね。アメリカの音楽とか。
(荻上チキ)はい。
(町山智浩)それを一切捨てるっていうことですよ。これから。ちょうど100年ぐらい前だったんですよ。ウッドロウ・ウィルソン、ちょうど100年前ですよ。100年後にアメリカはそういう世界の憧れの国である座を捨てるっていうことですよ。
(前嶋和弘)ソフトパワーを捨てちゃうんですよね。
ソフトパワーを捨てるアメリカ
(町山智浩)捨てちゃうんですよ。ソフトパワーなんですよ。だから前にオバマ大統領が退任の時に言ったのは、「中国やロシアがいくら強くなっても、アメリカのような影響力を世界に対して持たない。なぜなら、ロシアや中国に憧れる人はいないからだ。ロシア人になりたい、中国人になりたい、あの国に行きたいって憧れる人はいるか? いないじゃないか」。それは前嶋先生がおっしゃっているようにソフトパワーなんですよ。アメリカっていうものは憧れだったんですよ。夢だったんですけど、それが100年間、ずっと続いてきたわけですね。いろんなものによって。ウィルソン大統領から始まっているんですけども、それを捨てるんですね。
(荻上チキ)うーん、そうですよね。この「人々に力を返還する」って言った時にね、町山さんのご専門である映画の話を思い出した方も多いでしょうね。
(町山智浩)ああ、そうですね。これはバットマンの『ダークナイト ライジング』っていう映画でベインという悪党がゴッサムシティという街を乗っ取った時に言っている言葉と全く同じセリフなんですよ。「人民に返した」って言っているんですよね。
(荻上チキ)でもやっていることはというと、結構アナーキーな秩序を生み出しているような状況になっているということですよね。
(町山智浩)そうなんですよね。実際にトランプがやっていることというのは、世界的な秩序の混乱を呼ぶことになるわけですからね。まあ本当に、ベインが政権を取ったという形ですよね。
(荻上チキ)そうした中で今回、アメリカメディアが各メディア、いろいろファクトチェックを演説の段階からすでに始めているわけですよ。たとえばニューヨーク・タイムズは「殺戮が横行しているような状況だ」とトランプさんが煽ったりしているんですけど、「犯罪は長期低下の傾向にあって、アメリカは非常に安全な時代に突入しているんだ」と指摘していたわけですね。これ、日本語でもよくある、「犯罪が後を絶たない」というようなフレーズと同じで、後を絶たないのは事実だが、増えてはいない。でも、「増えた」とはトランプさん、さすがにトランプさんは言っていないんだけど、でもそうしたニュアンスを醸し出すことによって「私によって安全にできるんだ」というようなことを言っているんですね。
(町山智浩)これ、目的があって。アメリカ、いま警察による黒人の殺害が非常に続いているんですけども、それを擁護するためと、あと、トランプがずっと選挙中からやっているのは「不法移民が殺人を犯しているんだ」っていうデマなんですよ。そのために、この「アメリカでは殺戮が起こっている」って言っているんですよ。セリフの中で「ギャング」って言っているじゃないですか。あれは、日本でもよく、「外国人が犯罪を犯しているんだ」っていうデマが広がっているでしょう? 現在も。実は、外国人、特に不法移民っていうのは捕まったら強制送還されるから犯罪率が非常に低いんです。
(荻上チキ)うん。
(町山智浩)で、不法移民の数はものすごく急激にアメリカで増えているんですが、犯罪率が減っているんです。だから実は、不法移民の数と犯罪率はむしろ反比例しているんですよ。
(荻上チキ)殺人件数も減っていますよね?
(町山智浩)アメリカでは殺人件数も減っているんです。ただ、それを嘘をつくことによって、警察官による黒人の殺害と不法移民の排除を正当化するためのこれは演説なんですよ。
(前嶋和弘)本当にレアなケースがあって不法移民が犯罪したのを大きくって、FOXニュースでやっていますよね。
(町山智浩)そうです。トランプは3件の不法移民による殺人事件を何度も何度もいろんな演説でこねくり回しているんですけど、その3件以外出てこないんですよ。
(荻上チキ)なるほど。その一方でニューヨーク・タイムズで「格差が存在する」ということの指摘の部分では正しいという風に指摘しているわけですね。一方、AP通信に関しては、しかし格差とはまた別に、「私たちの国の富や強さ、自信が失われていった」というようなトランプの発言に関しては、「失業率はオバマ政権のもとでどんどんどんどん低下していっているので、アメリカの経済はむしろ上がっているじゃないか。ただ具体的な格差というものは実際に存在するということは認めつつも、そのファクトが含まれていない」というようなことも指摘したりしているわけですね。
(南部広美)うん。
(荻上チキ)それから、ワシントンポストも「自国の軍隊について疲弊している」というようなことをトランプさんが言ったんですけども。「アメリカの軍隊が最強であるということはいまだ、依然として変わらない事実である」ということを指摘するのと同時に、「他の国の軍を援助してきた」というようなことを言っていたりするんですけど、「米軍の維持費というのは国防予算の中では割合的にはそんなに大きくないじゃないか」というようなことも紹介していて、「なぜそこを誇張して全体の防衛費の多さということから目を逸らすんだ?」というようなことを……
(町山智浩)トランプはね、「軍艦の数が少なくなっている。なんでこんなに軍艦の数が少ないんだ!」って言っているんですよ。「それは軍艦が戦争にとって重要だったのは第二次大戦のはじめまでだったからですよ」って、誰も説明しないのかな?っていう(笑)。
(荻上チキ)だから戦略的にもう軍のあり方が変わっているという。
(町山智浩)そう。だから、戦艦大和を作れ!って言っているのと同じことなんです。
(荻上チキ)大艦巨砲主義みたいな(笑)。
(町山智浩)そうなんですよ(笑)。
(荻上チキ)だから時代認識が少しおかしいと。貿易摩擦の頃だったり、昔の戦争だったり。
(町山智浩)だから「トヨタがアメリカを苦しめている」って、「トヨタの6割はアメリカで作っている」ということをトヨタの人がわざわざ説明しに行ってますからね。
(荻上チキ)そうですね。
(前嶋和弘)たぶんわかっていても言っているような気がしますね。
(町山智浩)ああ、知っていて嘘をついている。騙すためにね。
(荻上チキ)ウケるからっていうことですね。
(神保哲生)だからファクトは、さっきの「オルタナティブ・ファクト(もうひとつの事実)」……要するにファクトは関係ないんですよ。ウォールストリート・ジャーナルによると、今回の就任演説を書いたのはジェフ・セッションズの秘書だったスティーブン・ミラーっていうのと、あとスティーブ・バノンの2人で書いたと言われているのね。だけど、その直後にほら、ホワイトハウスが記者会見をやって。なんと、「史上最大の就任式の参加者だった」って……
(町山智浩)いきなり嘘をついている(笑)。
(神保哲生)でもそれを、もう1人のケリーアン・コンウェイっていうのが「オルタナティブ・ファクトだ。もうひとつの事実が事実だ」みたいなことを言って釈明する。それを言うとね、トランプ支持者の特に大半の支持者っていうのは、「メディアが嘘をついている」という風に一生懸命いろいろ挙げるわけ。「CNNが撮った映像はまだ人が集まる前の映像だ」とか、いろんなことを言って。
(町山智浩)「マスゴミのでっち上げだ!」っていうやつですよ。
(荻上チキ)日本で官邸前デモが行われると少なく数えるようなのと同じような。逆パターンの。
(町山智浩)だって「反トランプのデモ隊はお金をもらって来たんだ」っていうデマを流されていましたけど、それは全く日本の沖縄と同じ状況ですよ。
(荻上チキ)「(参加者に)日当が払われている」っていう。
(町山智浩)「日当が払われている」っていうのと全く同じ嘘が作られているんで。
(神保哲生)逆にニューヨーク・タイムズとかワシントンポストが「こういうところがファクトチェックしたら嘘だった」と言えば言うほどね、「メディアの陰謀だ」という話がより広がっていくというような。で、彼のいちばんコアなサポーターはそういう人たちだということがわかっているから。まあ、ニューヨーク・タイムズは逆にその人たちはどうせ自分の新聞なんか読まないだろうって思ってたぶんファクトチェックをやっているんだろうけど。そこが完全にもう分断されちゃったっていうことなんですよね。
(町山智浩)だから僕、とにかくこの取材をしてる時に何回も何回も言われたのは、「日本は防衛費を払っていない。日本は防衛費を払っていない、儲かっているくせに!」って。「そんなに儲かっていないし、それに払っている!」って何回言っても、全然伝わらないんですよ。もう、何十回言われたかわかんないです。
(荻上チキ)どんなに不況が続いても払っていましたからね。
(前嶋和弘)下手すると中国と日本の差がわからない人もいますよね。結構。
(荻上チキ)そうした中で、リスナーの方からはどういった意見が来ているんでしょう?
(南部広美)(メールを読む)「目の前の課題に対するトランプ大統領の政策はわかりましたが、これから先、どんなアメリカにしていくのか? それがよくわからない演説でした。大国のリーダーには未来への夢を託す演説をしていただきたかったです」。そして、(別のメールを読む)「演説を聞いた第一印象は『無内容』でした。選挙戦中に訴えていたことと矛盾する点があり、また閣僚候補の名前を見聞きすると中東への関与を深めようとするように思えますが、対中国に対する姿勢がわかりません」。それから、(次のメールを読む)「トランプ大統領はわかりやすい英語で話していたのが印象的でした」と。
(荻上チキ)うーん。まあ具体的に富が一部であって、それが再分配されないという風に批判している一方で、オバマケアも批判していたりするわけですよね。となると、どういうビジョンなのか?っていうのがちょっとチグハグだったりする部分があるんですけど。そのあたりがどうなのか? といった時に、実はリスナーさんが指摘した「わかりやすい英語」っていうのは結構ポイントかもしれないですね。
(町山智浩)ポイントでしょうね。
(荻上チキ)届けやすいシンプルな言葉で、オバマみたいに高尚でかっこいいことを言うのではなくて、なにかより地べたに近いような等身大の言葉をしゃべるというところがウケているんだなって。
(神保哲生)小学生、中学生ぐらいまでの。
(前嶋和弘)中学2年って言われてますよね。あと、演説の最後で自分の手をワーッて上げるんです。ガッツポーズのようにね。そんなの、見たことないですよ。大統領で演説の最後にワーッと手を上げるって。右手を上げる大統領……プロレスですよね。
(荻上チキ)アジっているっていう感じになるわけですよね。
(神保哲生)ガッツポーズですよ。就任演説でガッツポーズですよ。
(荻上チキ)そうですね。その後から、メディアがファクトチェックをはじめた。オバマさんが辞める時に「これからあなたたちの仕事がより本格化する」みたいな言葉を発して、応援演説をして退任していきましたけども。そうしたアメリカのメディアが、しかしながらオルタナメディア、ネット系の人たちから反発をかって分断が進んでいるということを含めると、これから分断を埋めるというのは並大抵の道ではないような気がしますね。
(神保哲生)だから今回も結局普通ね、分断を避けるために民主党から閣僚を入れたりするんだけど、今回はそれが全くなかったでしょう? だからむしろ分断歓迎なんだと思うんですよ。この政権は。分断があった方が面白い、自分の支持が集まるという計算何でしょうね。
(前嶋和弘)そっちの方が上手く政策が動くと思っているんでしょうね。
(荻上チキ)その中で何が具体的に動いていくのか、見ていきたいと思います。
(南部広美)今夜は映画評論家の町山智浩さん、ジャーナリストの神保哲生さん、上智大学教授の前嶋和弘さんをお迎えしてお送りしました。みなさん、ありがとうございました。
<書き起こしおわり>
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