町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で2017年のアカデミー賞の直前予想を披露。14部門にノミネートされている『ラ・ラ・ランド』を中心に紹介していました。
(町山智浩)いやー、もう今回ね、アカデミー賞なんで来ました。で、今回はね、もう『ラ・ラ・ランド』ですよ。
(赤江珠緒)ああ、やっぱり『ラ・ラ・ランド』。
(町山智浩)日本だと2月27日にアカデミー賞の授賞式の中継がありまして。僕がまた例年のごとく、解説者として斎藤工くんの横に立って……なんて言うか、頭身の差がよくわかるっていうね(笑)。「遠近法が違うんじゃないか?」って言われるんですよ。斎藤くんの横に立つと(笑)。
(赤江珠緒)斎藤さんはね、スラーッと高いですからね。
(山里亮太)「もともとすげー遠くにいるのかな?」みたいな(笑)。
(町山智浩)そう(笑)。なんかね、遠近感がおかしい感じなんですけども。隣に立ちたくないんですが。
(赤江珠緒)はい。午前9時からWOWOWプレミアムでということですね。
『ラ・ラ・ランド』が14部門にノミネート
(町山智浩)今年はね、アカデミー賞は『ラ・ラ・ランド』という映画が14部門にノミネート。
(山里亮太)我々も試写会で見させていただきまして。
(赤江珠緒)はい。見てきましたよ。
(町山智浩)どうでした?
(山里亮太)キュンキュン。ちゃんと僕もキュンキュンできました。「そういう感じの出会い方して、そうなりたい!」っていうやつと、あとミュージカル系の映画ってちょっと正直、あんまり合わないかな?って思ったんですけど、全然すんなり入れて。
(町山智浩)いいでしょう?
(山里亮太)はい。「あ、ここを歌で表現してくれたことによって、全然違和感ない」って思って。
(赤江珠緒)急に歌っても、全然。で、映像がきれいですね。
(町山智浩)すごいきれいなんですよ。で、全然CGとか使っていないんですよ。
(山里亮太)それがすごい。ダンスのシーンとかだって……。
(町山智浩)一発撮りですよ、一発撮り。
(赤江珠緒)だからあの俳優さんたちがちゃんとダンスもできて、で、楽器も弾けているっていうことですかね?
(町山智浩)楽器は一応音はプロがやっている音ですけど、手は合わせているんですよね。ちゃんとね。
(山里亮太)ピアノも、だって初のピアノのやつで練習もずっとやってできるようになったっていうのが。
(町山智浩)練習しているところの映像とかもありますけどね。はい。だから結局、あの映画のすごいところは、最近の映画って全部CGとかデジタルで全部作っちゃうじゃないですか。そうじゃなくて、本当に生の人間ががんばるところを見せようとしているんで。いちばん最初、『ラ・ラ・ランド』が始まったところでロサンゼルスの高速道路の上で渋滞になって。で、途中で渋滞の中に閉じ込められている人たちが車の中から飛び出して、踊りまくるじゃないですか。あそこ、よく見るとずーっとワンカットで、切れてないんですよ。
(赤江珠緒)はー、あれ、そうか。カットなし?
(町山智浩)カットなし。まあ、微妙につないでいて。2ヶ所ぐらいつないでいるかな?っていうところがあるんですけど、基本的にはつないでいなくて。全部現場でやっているんですよ。
(赤江珠緒)へー! ハイウェイを止めて?
(町山智浩)止めてやっているんですよ。あそこ、すごい交通量の多いところなんですけどね。だからあの、全然切らないでやるっていうのはいままで、たとえばマーベルコミックスのアクション映画とか、もう本当にコンピューターで最初に作ってちゃって、人間はそれに合わせて動くだけだったりするんですよ。
(赤江珠緒)うんうんうん。
(町山智浩)そういうのと逆で、人間がその場でがんばってやるっていうのを『ラ・ラ・ランド』は復活させようとしているんですよね。
(赤江珠緒)あのプラネタリウムの美しいデートシーンみたいなところ、あるでしょう? そこで2人がフワーッて上っていく、あのへんは?
(町山智浩)あれは数少ない特殊撮影をしているところなんですけど。
(山里亮太)そりゃそうでしょう(笑)。
(町山智浩)(笑)。あれは宇宙に本当に行ってないんですよ。窒息しちゃうんで、宇宙に行くと。真空なので(笑)。
(赤江珠緒)(笑)。星空をバックに2人でちょっと浮いたのかしら?って思って(笑)。
(山里亮太)すごい能力じゃない、それ!
デジタルではなく、フィルム撮影
(町山智浩)あとね、デジタル使わないでフィルムを使っているんですよ。今回。映画の頭で「シネマスコープ」って出てくるんですけど。あれは昔、1950年代のミュージカル映画がシネマスコープっていう非常に横に広いスクリーンで上映していたのを復活させようとして、本当にでっかいカメラで撮っているんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)でかいカメラで撮ると、ものすごく大変なんですよ。いま、映画ってこのぐらいのカメラで。
(山里亮太)そう。普通の写真撮影の時に使うようなね、あれぐらいのカメラですよね。ちっちゃいやつで撮っている人、いますね。
(町山智浩)そうそうそう。普通のEOS(イオス)っていうカメラ、あるじゃないですか。あれで映画撮れちゃうんですよ、いま。
(赤江珠緒)そうかそうか。むしろ映像もきれいになったりしてね。
(町山智浩)そうなんです。いくらでもいじれるから。だからそれに対して35ミリのでっかいカメラで撮影していて。ただ、やっぱりフィルムの方がデジタルより色っていうのはきれいなんですよ。デジタルってね、どんなに細かくしてもやっぱりいくつかの色のカテゴリーごとに細かく分かれていくんですね。でも、フィルムとか油絵とかもそうですけど、すごく微妙な段階色。階調が細かくなるんですよ。それをどうしてもやりたくてフィルムで撮影しているんで。だから今回ね、アカデミー賞で技術賞はね、『ラ・ラ・ランド』がいっぱい撮ると思うんですよ。撮影賞とかね。
(赤江珠緒)ええ、ええ。
(町山智浩)で、あとあのライアン・ゴズリングが売れないミュージシャンでエマ・ストーンちゃんが売れないオーデションをずっと受けて落ち続けている女優さんで。で、2人がなかなか出会わないですれ違うんだけど、はじめて2人で夜道を歩きながら踊りだすシーンがあるじゃないですか。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)あそこ、すっごいきれいでしょう? 夜景が。あの丘の上から見えるロサンゼルスの夜景が。あれ、合成だと思うじゃないですか。
(赤江珠緒)ちょっと足してるのかな?って思いましたけど。
(町山智浩)あれ、本当なんですよ。
(赤江珠緒)あんな感じ?
(町山智浩)あれ、本当なんですよ。
(山里亮太)色とかすっごい……。
(町山智浩)すっごいきれいなの。空が。で、あれは本当に夕方、日が落ちてから完全に暗くなるまでの数十分間を使って撮っているんですよ。
(山里亮太)ええっ! あれだけ長尺の踊りがずーっとあるシーンだから、1回ミスったらもうその日、収録は……?
(町山智浩)そうなんです。その通り。だからあれ、1回もカットを切ってないんで、話し合っているところから踊り始めて、踊りが終わるところまで全くひとつのカットなんですよ。
(山里亮太)ええっ?
(赤江珠緒)しかも、難しいですよ。タップダンスみたいなね。
(町山智浩)そう。タップダンスがあってね。あれはね、10回撮ったみたいですよ。それでいちばんいいのを使っているんです。
(山里亮太)へー! すごい印象的なシーンですもんね。
(町山智浩)だから奇跡的な感じで。どんどん暗くなっちゃうらしいんですよ。日が落ちてから撮り始めるんで、本当に奇跡的に2カットか3カットだけ使えるのがあったっていう。そういうね、いい感じなんですよ。
(山里亮太)プレッシャーだろうな(笑)。
(町山智浩)そう。その緊張感みたいなものって、最近映画になくなっちゃって。なんでも後からいくらでもいじれるからって。いまね、前も話したんですけど4Kとかあるじゃないですか。もう、それこそ5Kに行くっていう感じになってくるとカメラってすごく細かく撮れちゃうんで、昔みたいに「ここはクローズアップで撮って、ここはロング(引き)で撮って……」っていうことをしなくても、全部引きで撮っておいて、後からクローズアップに切ったりとかできるんですよ。
(赤江珠緒)ああーっ!
(町山智浩)そう。フレーミングを撮影の後で変えられるんですよ。そういう時代に、それにあえて反してフィルムで1回勝負をかけるっていう撮り方をしているんですね。あと、『ラ・ラ・ランド』はやっぱりすごいのは色彩がすごくて。服の色が、ねえ。
(赤江珠緒)鮮やかです!
鮮やかな色彩
(町山智浩)鮮やかでしょう? 最初、黄色いドレスで。で、道をエマ・ストーンちゃんがライアン・ゴズリングとちょっと恋仲になったところで歩きながらクルッと回るところがあるじゃないですか。あそこでよく見ると、壁が青く塗ってあるんですよ。緑青みたいな色に塗ってあって。あれは実は『ロシュフォールの恋人たち』っていうフランス映画があって。それがロシュフォールっていうフランスの実際の島で、ペンキでもって街を実際に塗って色彩設計をして。服から街の色から全部、カラーコーディネイションした映画があって。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)それに対するオマージュでやっているんですよ。
『ロシュフォールの恋人たち』
(赤江珠緒)ああ、そうなんですか! それは町山さんに聞かないとわかんないけど。そうか。色合いにそんなにこだわっているんですね。
(町山智浩)そう。だから最初はすごくみんな色が鮮やかで、赤や青や黄色や原色を着ていて。ただ、見ているとだんだんその色が、だんだんだんだん普通の色に変わっていくんですよ。少しずつ。
(赤江珠緒)たしかに。
(町山智浩)あの派手なのって、最初だけじゃないですか。
(山里亮太)あのパーティーとか行っている時ね。
(赤江珠緒)友達とみんなで行こうとしている時とか。
(町山智浩)そうそう。でも、だんだん落ち着いてきて、最後の方はリアルな普通の色になってくるんですよ。
(赤江珠緒)そうだ! そうだわ。
(山里亮太)そう言われれば、そうだ!
(町山智浩)そうなんですよ。あれは、最初はみんな、「ロサンゼルスで私は有名になるわ、スターになるわ!」って、ラ・ラ・ランド状態。ラ・ラ・ランドで浮かれている状態。まあ、夢見ているような感じなのに、だんだん仕事が上手くいかなくなったりとか。あの子とかオーデションに落ちてね、で、だんだん現実とぶつかっていくうちにリアリティーを取り戻していく感じなんですよ。
(赤江珠緒)そういう意味合いを込めて?
(町山智浩)込めて、そう。色彩がだんだん落ち着いてリアルになっていくんです。
(赤江珠緒)そっかー!
(山里亮太)そういうリアリティーの見せ方みたいなのがあったんだ。
(町山智浩)そうなんですよ。
(赤江珠緒)あ、そう言われてみると、本当にそうだ! 最初はもう本当に華やかで。もうおもちゃ箱みたいにみんないろんな色を着ていたのが、スーッと。そうですね。
(町山智浩)そうそうそう。そうなんですよ。あれはだから、美術っていうセットを作る人と、カメラマンと、衣装デザインの人全員の共同作業で、そのカラーコーディネイションで感情を表現していくと。だからこれ、アカデミー賞で衣装デザインもとるだろうし、撮影賞もとるだろうし、美術賞、セットデザイン賞もとるでしょうし。だからもう、たぶん技術賞をガッととると思うんですよ。
(赤江珠緒)はー!
(町山智浩)これはすごい。やっぱりあと、エマ・ストーンの演技がすごいですよね。で、これ言っちゃああれなんだけど、まあオーデションで歌をうたうシーンがあって。すごいですよね。あそこね。あれ、実際にこの映画の作曲家がカメラに映らないところでピアノを実際に弾いて、生で一発撮りなんですよ。
(赤江珠緒)ええっ!
(町山智浩)だからちょっと声の震えとか音程の不安定さみたいなのも、そのまま本人たちの声のままやっているんですよ。昔のハリウッドのミュージカル映画とかでは、最初に先に完璧な状態でスタジオで音声を録ってから、それに合わせてやる感じだったんですけど、これは現場撮りなんですよ。この『ラ・ラ・ランド』は。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)ちょっと微妙に歌が上手くなかったりするところもあって。
(赤江珠緒)そうそうそう。なんかね、エマ・ストーンちゃん自体はもともとそんなに歌をやっている人ではない?
(町山智浩)もともとミュージカルやっていますよ。ブロードウェイとかをやっている人なんですけども、ただやっぱり完璧な録音状態で録ってないから不安定なところもあって。それが逆にリアルなんですよね。
(山里亮太)オーデション会場での緊張感とかも。
(赤江珠緒)そうかー。
(町山智浩)あ、いま展開を言いそうになりましたけど(笑)。危ないですが。
(赤江珠緒)そうですね。
(町山智浩)でもあれ、最後がいちばん泣けるんですよね。すっごい泣けて。言えないけど。言えないけど……だってみんなほら、誰でも最初に出会ったいちばん愛している人と人生を最後まで行けるとは限らないじゃないですか。だからあのリアリズムがね、ほろ苦くていいんですけど。あれはね、実は元の映画があるんですよ。マーティン・スコセッシっていう、いま『沈黙 -サイレンス-』の監督が昔撮った映画で『ニューヨーク・ニューヨーク』っていう映画があるんですね。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)あの、『ニューヨーク・ニューヨーク』って歌は聞いたこと、ありますよね? 「ニューヨーク、ニューヨーク♪」って。あれは実はその映画のために作られた主題歌なんですよ。で、それはジャズミュージシャンのロバート・デ・ニーロと歌手でスターを目指すライザ・ミネリが出会って恋をして……っていう話と同じなんですよ。
『ニューヨーク・ニューヨーク』
(赤江珠緒)うんうんうん。
(町山智浩)ところが、上手くいかなくて……これ以上言うとネタバレになるんで言いませんが(笑)。その、『ニューヨーク・ニューヨーク』っていう映画を下敷きにしているんで。そっちがね、ものすごく泣ける映画なんですよ。『ニューヨーク・ニューヨーク』って。ものすごく泣けるんですよ。あ、また言いそうになったけど(笑)。この『ラ・ラ・ランド』を見て、「ああ、よかったな」と思う人はぜひね、ニューヨーク・ニューヨーク』を見ていただきたいんですよね。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)その映画はね、やっぱりミュージカルの再生を目指してマーティン・スコセッシがものすごいお金をかけて作ったんですけど、上手くいかなくて大コケしちゃったんですよ。で、ただその意思を継いで今回は大成功しているっていう感じなんですね。『ラ・ラ・ランド』は。
(赤江珠緒)いままでね、町山さんもハリウッドでミュージカルはなかなか成功しなかったっていう。この違いはなんだと思われますか?
(町山智浩)やっぱりね、古臭かったんですよ。「なんでいまごろそんなもん、終わったものをやるんだ?」みたいなことを言われていたんですけども。で、ところが大失敗した『ニューヨーク・ニューヨーク』とほとんど同じストーリーで今回、成功しているんでね。やっぱりね、編集の力がすごく強かったと思うんですよ。
(赤江珠緒)はー。
(町山智浩)テンポがいい。だから編集賞もとるだろうと思うんですけど(笑)。編集はね、やり直したらしいんですけど。すごくよくなっているらしいんですよね。まあ、素晴らしい映画なんで。ただね、ジャズにうるさい人たち、ジャズ警察の人たちは「あれはジャズとしては全然ヌルい!」とか言ってね、叩いている人もいますが(笑)。
(赤江珠緒)ああーっ! そうか。ジャズのシーンも出てきますからね。
(山里亮太)『セッション』の時もそうやって起こっている人、いましたね。
(町山智浩)そうそうそう。ジャズ警察は結構うるさいんでね。面倒くさいんですが。はい。ただまあ、ほとんどアカデミー賞は独占するだろうと思うんですよ。
(山里亮太)『ラ・ラ・ランド』一色になるのかな?
主演男優賞争い
(町山智浩)一色になるかなと思うんですよね。授賞式とかもね。ただね、主演男優賞だけはね、たぶん『ラ・ラ・ランド』じゃなくて『たまむすび』で前に紹介した『マンチェスター・バイ・ザ・シー』っていう映画で、昔は陽気でチャラチャラしていた男が人間嫌いになっちゃうという役を演じたケイシー・アフレックがトップランナーだったんですね。主演男優賞は。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)ただね、追い上げているのはこの間話した『Fences』っていう映画のデンゼル・ワシントン。ものすごい意地悪な親父の役。で、そっちのデンゼル・ワシントンの方はね、他の映画賞をかなりとっているんで。ケイシー・アフレックを追い落とすんじゃないか? と言われているんですが。
(赤江珠緒)おおーっ!
(町山智浩)ただ、デンゼル・ワシントンはいままで何度もアカデミー賞をとっているんで。ベテランだから、もういいじゃない?って思うんですよね。
(山里亮太)そういうのも結構影響するんですか? 「もういいよな?」っていうことって。
(町山智浩)だってメリル・ストリープも何回も何回もアカデミー賞を……ねえ。「私はもういいですよ」って言ってくれりゃいいのにね。
(赤江・山里)(笑)
(町山智浩)なんでそういうところがないんだろう?っていうね。何度でもほしいのかな?っていうね。それで若いやつがなかなか出れないですよね。プロレスみたいなもんですよね。いつまでも強いやつがずーっとえばっているもんだから、若手が出てこれないっていうね。「早く引退してくれ、負けてくれ!」っていうところがあるんですけども。アカデミー賞も同じだなと思いますけどね。
(山里亮太)その目線で見ると、デンゼル・ワシントンが……(笑)。
(町山智浩)そう。だって、アカデミー賞ってやっぱり俳優たちが投票しますからね。俳優さんとか監督とかカメラマンとか内輪の人たちが。そうするとやっぱり、人間関係の力学がかなり中で動くから……。
(赤江珠緒)そうだ。おっしゃってましたね。
(町山智浩)そうなんですよ。「先輩を立てるか、若いのに入れるか?」みたいな。その、実際にその人たちを知っている人たちが投票するという、非常に微妙な。ねえ。
(山里亮太)もし、だってケイシー・アフレックと同い年ぐらいだったら、俺、入れないもん。
(赤江・町山)(笑)
(町山智浩)嫉妬深い(笑)。
(赤江珠緒)そうね。そういう心理も働いたりするんでしょうね。
(山里亮太)俺、絶対にデンゼル・ワシントンに入れるもん。もし俺が持っていたら(笑)。
(町山智浩)そういうのもあるでしょうね(笑)。ライバルみたいなね。
(赤江珠緒)同業者だけにね、そうはそうかもしれない。
(町山智浩)同世代の人はね。
(山里亮太)そうですよ。嫌だよ、絶対。入れない、入れない。
(町山智浩)入れないね(笑)。だからそういうね、力関係があって。だからほら、ディカプリオがずっととれなかったりとか。いろんなことがあるんでね、アカデミー賞は普通に上手かったからとれるとは限らないんですよ。
(山里亮太)どうなるんだろう?
(町山智浩)そう。わからないんですよ。でね、あと他の賞だと外国語映画賞がこの間紹介した『ありがとう、トニ・エルドマン』っていう、ひょうきんなお父さんが仕事ばっかりの娘のためにね、なんとか娘に人間性を取り戻そうとするというドイツ映画が一応トップだと言われているんですけど。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)もう1本、イラン映画で『セールスマン』っていう映画があるんですよ。これもすごくいい映画なんですけども、これね、イラン映画なんで監督が「アカデミー賞には出席しない」って言っているんですよ。
(赤江珠緒)ああーっ、いま、このトランプさんの?
(町山智浩)そう。トランプさんのイスラム入国禁止令に対する抗議として「行かない」という風に言っているんですよね。はい。だからこれも微妙で。アカデミー賞の人たちは抗議への共感を示すためにイラン映画に投票する可能性もあるんですよ。
(赤江珠緒)そっかー。
(町山智浩)そういう力関係がいろいろあるので。で、あと『ズートピア』はアニメーションはとるでしょうね。本当に『ズートピア』って反トランプ的な……。
(赤江珠緒)ねえ。もういまのアメリカに対してのメッセージ性が強いですもんね。
(山里亮太)移民とかいろんな人がいてこそじゃない?っていうね。
(町山智浩)もういろんな人がいて、誰でも入ってこれて、自分たちの好きなように生きられるのがアメリカだったんじゃないの?っていうメッセージなんで。今回はね、アカデミー賞はかなり政治的な挨拶とかメッセージが出てくることになると思いますね。
(山里亮太)たしかに。賞をとった人たちがみんな壇上で。
(町山智浩)壇上で言う人もいるでしょうね。
(山里亮太)匂わすような発言する人とか、いますもんね。
(町山智浩)それはあるでしょうね。それで、今回司会の人がジミー・キンメルという人なんですけども。この人はずーっとトランプいじりをやっている人なんで(笑)。あの、コメディアンなんですけど。だからまあ、やるでしょうね。だからね、アメリカはやっぱりコメディアンはね、結構もうトランプでネタがあるから得してますよ。もう、困らないですよ、もう(笑)。
(赤江珠緒)そうですね。話題に事欠かないですもんね。あの人はね。
(町山智浩)1週間に1回、変な失言をするから。
(山里亮太)日本だってそれでRGさんがR-1の決勝に行ってるんだから。トランプのモノマネやって(笑)。
(町山智浩)あっ、そうなんだ!
(山里亮太)トランプのモノマネのピンネタで決勝に行きました(笑)。
(町山智浩)ああ、そうなんだ。もう世界中のコメディアンに仕事を与えているという。どんな大統領やねん?っていうね、思いますけどね(笑)。あと、ドキュメンタリー賞はこの間紹介した『海は燃えている』もあるんですけど、『憲法13条』というドキュメンタリーがあって。で、憲法13条っていうのは奴隷制度を禁止する法律なんですけども。アメリカはいまね、刑務所の人口がものすごく、世界一なんですよ。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)で、黒人の若者が圧倒的に刑務所に入っていて。それは、黒人の若者たちの更生を阻むためのシステムみたいになっているんですよね。
(赤江珠緒)かえって?
(町山智浩)だから要するに、道を歩いていて、「お前、なんだ?」って警官が声をかけていれば、大抵逮捕できるようなことをやっているんですよ。
(赤江珠緒)はー。
(町山智浩)でも、声をかけなければそれで通りすぎるんだけど、片っ端から声をかけて捕まえるっていうことをやっているんで、刑務所が若い黒人の若者だらけになっていて。で、具体的にはマリファナを持っているっていう場合が多いですよね。だから、1回マリファナで捕まっちゃうと、なかなか手続き上選挙権を得るのが難しくなるんですよ。投票できなくなるんで、投票権抑圧に利用されているとか。いろんなことが『憲法13条』という映画で……。
(赤江珠緒)ちょっとアメリカはいま、いろんな問題が吹き出ていますね。
(町山智浩)いろんな問題が出ていてね。いま、いちばん大変なことになっていますよ。あと4年、トランプ政権が持つのかどうかもわからないですけども。その間に北朝鮮とかロシアとか散々やりたい放題やるんじゃないかと思ってね。困ったもんだと思いますよね。「アメリカ第一!」って言って内側を向いているから。もう、他がやり放題でね。まあ、そういうのも含めて今回のアカデミー賞の授賞式はいろいろ見逃せないものがあると思いますと宣伝しました。はい(笑)。
(赤江珠緒)はい。ということで今日はアカデミー賞直前予想を町山さんにしていただきました。町山さん、ありがとうございました。
(町山智浩)どもでした。
<書き起こしおわり>