町山智浩 映画『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』を語る

町山智浩 映画『アイ・イン・ザ・スカイ』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で無人機ドローンによる遠隔攻撃を描いた映画『アイ・イン・ザ・スカイ』を紹介していました。

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場(字幕版)

(町山智浩)で、独立記念日なんですけど。あんまりそうめでたい感じじゃないですね。

(山里亮太)なるほど。いろいろありますもんね。事件。

(町山智浩)もう、この直前にオバマ大統領は任期の最後の年なんですけども、ドローンと言われる無人攻撃機でずっとテロリストに対して攻撃をし続けていたんですけど。アフガニスタンとイラクという戦争をしているところ以外の国で、すでに64人から116人の民間人をそのドローン攻撃に巻き込んだと発表しましたね。

(赤江珠緒)ああー……

(町山智浩)もう、独立記念日の直前にね。

(赤江珠緒)そうですか。イラクとかアフガニスタン以外の場所で?

(町山智浩)以外です。具体的には、パキスタンですね。パキスタンはタリバンが逃げ込んでいるところなんで。あと、イエメンですね。イエメンは内戦状態にあるんですよ。イスラム過激派と。それと、ケニアとかですね。で、オバマ大統領としてみれば、今後それを秘密にしちゃう前例を作るとマズいんで、かならずそれは報告するという形にしたかったと言われていますけども。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)ただですね、この人数は少なすぎるだろうと言われてるんですね。

(赤江珠緒)これでも?

(町山智浩)はい。これは非戦闘員で、巻き込まれた人だけが100人ちょっとって言ってるんですけども。身元が判明しない人とか……要するに、爆発しているわけですから。ミサイルをブチ込んでいるんで。曖昧なところは計算に入っていないだろう。実際には2千人を超えているんじゃないか? とか。戦闘員、テロリストも含めて、言われていますし。そのテロリストの家族とかはどの程度、計算に入っているかがわからないと言われていますけどもね。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、今回紹介する映画はまさにそのドローン攻撃についての映画で『アイ・イン・ザ・スカイ (Eye in the Sky) 』というタイトルなんですけど。イギリス映画です。で、この映画は2時間ぐらいの映画なんですが、2時間の出来事を描いています。だからリアルタイムものなんですね。それで、テロリストを発見したというところから、テロリストに対してそのドローンでミサイル攻撃をするというのが実際の2時間とほとんど同じ時間の進み方で描かれる映画です。

(赤江珠緒)ふーん。

ドローン攻撃はどのようにして行われているのか?

(町山智浩)だからドローン攻撃っていうのは実際にどうやってやっているのか?っていうのがこの映画でわかるという形なんですね。で、『アイ・イン・ザ・スカイ』というタイトルの意味はこれ、人工衛星から下を見ていることですね。だから、「空にある目」っていう意味ですね。軍事衛星、スパイ衛星のことを言っています。で、これは主役、主人公はヘレン・ミレンさんっていう女優さんで。前も話したイギリスの女優さんですけど。もともとはロシア系ですけども、エリザベス女王の役を演じてアカデミー賞をとったりしている名優ですけど。この人は昔は、おっぱい系の人だったんですよ。

(赤江珠緒)へー。

(山里亮太)おっぱい系?

(町山智浩)巨乳系のセクシー女優として出てきて。小池栄子さんみたいな感じだったんですけども。もうみるみる演技派で、いまはもうイギリスを代表する最高の名優の1人になっていますけどもね。で、彼女がですね、イギリス軍の大佐なんですね。で、イギリス人のテロリストをケニアで発見します。衛星高度からずっとスパイを続けていたんで。で、実際にこれはケニアにいる過激派組織っていうのはアル・シャバーブって言われている組織なんですね。これはISとは違うんですけど、やはりイスラム過激派なんですが。ソマリアが拠点になっていて、このアル・シャバーブっていうのはものすごいテロを次々とやる人たちでですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)2013年にケニアの首都ナイロビのショッピングモールで機関銃を撃ちまくって67人殺して負傷者175人というすごいテロをやっていますね。あと、去年。2015年の4月にはケニアの大学で学生たちを撃ちまくって148人殺して79人ケガさせるっていうのをやっていますね。

(赤江珠緒)はー……

(町山智浩)だからものすごい凶悪な組織なんですけども。その組織に入っているイギリス人がいるということでずっと追っかけていてですね。で、ケニアで発見するんですね。はい。で、ケニアっていうのは昔、イギリスの領土だったところなので、ケニアは友好国なんですよ。イギリスの。で、このテロリストをとにかく逮捕しなきゃならないと。スーザンっていうイギリス人の女性のテロリストなんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、アメリカ軍と協力して国連の下でアメリカ・イギリス共同作戦として、そのテロリスト逮捕作戦を始めるんですよ。この映画では。で、アメリカ側はラスベガスに空軍基地があって、そこにリモコンの操縦センターがあるんですね。で、ドローンっていうのはプレデターと言われる無人のプロペラ機がありまして。それがミサイルで攻撃するんですね。で、標的からかなり離れたところをグルグル旋回しながら……要するに、標的から全然見えないんですよ。音も聞こえないし。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、標的を見つけると、1分間で標的に達するようなミサイルを発射するんですね。ヘル・ファイアっていうミサイルを。だから、「地獄の炎」っていうすごい名前のミサイルを発射するんですよ。で、やられる方はミサイルが飛んでくるのもわからないわけですね。音もなにもしないでいきなりドーン! と来るから。

(赤江珠緒)音もしない?

(町山智浩)要するに、ミサイルが1分間で飛ぶ距離を離れちゃっているんですよ。プレデターっていうそのドローンは。だからかなり遠くを旋回しているんで、気がつかないんですよ。撃たれる方は。で、それをなんとラスベガスから操縦してるんですね。リモコンで。

(山里亮太)ゲームみたいだ。

(赤江珠緒)そんな離れて操縦できちゃう?

(町山智浩)離れてやっているんですよ。で、ケニアでドローンのプレデターを飛ばしているんですけども。で、スパイ衛星のカメラをいじるオペレーターもラスベガスのアメリカ軍の基地の中にいるんですよ。で、さらに上から見ているんですけど、下で映っているものはいったい何なのか? これはテロリストなのか誰なのか?っていう映像解析というのをやる人たちがいて。その人たちはハワイにいるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)ハワイにあるんですね。アメリカ軍の映像解析センターっていうのは。で、あとロンドンの方では首相の内閣司令室というのがありまして。これ、「コブラ」って言われてるんですけど。そこにイギリス軍の将軍と外務大臣と首相と司法大臣(法務大臣)と国防大臣がいて。その衛星の映像とかを見ながら作戦に対する許可を出すと。要するにロンドンの首相官邸の下で。だから、地球規模でもってテロリストを確認しているというのがわかるんですよ。この映画では。

(赤江珠緒)えっ、でもそんなにクリアに映っているんですか?

(町山智浩)そうでもないんですね。これ、キーホール(鍵穴)って言われてるカメラシステムがあって。映っているのはね、よく言われているのはホットドッグっていうパンがありますよね? 地上にあるものがホットドッグかどうかがわかるぐらいなんですって。

(赤江珠緒)ああー。

(山里亮太)でも、結構な解析度かも。

(町山智浩)そう。でも、曖昧にしかわからないわけですよ。だから20センチぐらいのものしか見えないんですね。だから、それよりももっと見ようとしたら、今度は地上部隊がありまして。地上部隊は普通の車の中に乗っていて、彼らはある小型カメラでもって直接テロリストを撮影するんですよ。その小型カメラはハミングバードと言われている5センチぐらいの小鳥の形をしたカメラなんですね。

ハミングバード

(赤江珠緒)ああ、本当だ。鳥の形だ。

(町山智浩)そう。これね、実用化されているんですよ。すでに。

(赤江珠緒)ええっ!

(町山智浩)そうなんですよ。それを飛ばして近くまで行って、顔とかを見るんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、いま映像解析の技術がすごく進んでいて、耳とか鼻とか、目と鼻のあたりさえ撮れれば、それが本当に犯人なのかどうかっていうのを特定できるそうです。

(赤江珠緒)そこまで来ているんですね。ええーっ?

(町山智浩)いま、これはすごく進んでいるんですよ。この技術は。でね、耳がいちばん人間は特徴があって。結構顔とかいじったりできても、耳はあんまりいじれないらしいんですよね。

(赤江珠緒)そうですよね。逃亡犯とかも、耳は変わらないって言いますもんね。

(町山智浩)変わらないらしいんですよ。で、耳と鼻とか、それで犯人を特定するっていうのをハミングバードカメラでやるんですね。で、あともうひとつこの映画の中では、さらにもっと……建物の中に入っちゃうと今度は衛星の写真も見れないし、鳥も入れないじゃないですか。建物の中には。建物に鳥が入ってきたら、変じゃないですか。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、さらにバグカメラっていうのがあるんですね。虫の、ちっちゃいコガネムシ型のカメラなんですよ。で、それを今度は室内に追いかけていくんですね。カメラが。

(赤江珠緒)本当にこれまた虫のような形に作っているんですね。

(町山智浩)そうなんですよ。で、これがね、いますごく進んでいて。蚊ぐらいの大きさにまでちっちゃくできるらしいんですよ。

(赤江珠緒)えっ? 蚊?

(町山智浩)蚊ぐらいにできるらしいんですよ。

蚊サイズのスパイドローン

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)ただね、問題はカメラを載せることができても電池を載せられないんですね。

(赤江珠緒)ふんふんふん。

(町山智浩)だから、長時間飛べないっていうのが最大の問題なんですよ。長時間、カメラの映像を送れないんですって。この虫型カメラって。でも、そうするしかないんでとにかくそれを使うわけですよ。で、その中に入ったら、スーザンっていうイギリス人の女性テロリストを発見しました。アル・シャバーブのアジトの中にね。で、さらにケニア政府の地上部隊。特殊部隊もいて、そこに踏み込もうとするんですね。

(赤江珠緒)ふんふん。

(町山智浩)ところがですね、その小型の虫型カメラが映したのは、大量の爆薬だったんですよ。

(赤江珠緒)おおっ!

(町山智浩)そのアジトの中に大量の爆薬があって。それを自爆ベスト(チョッキ)に仕込んでいるところが映し出されちゃうわけですよ。で、いま逮捕しようと思ったんだけど、そんなことをしている暇はないと。そこにアメリカ人のすごい若い高校生か大学生ぐらいの男の子が来るんですよ。アメリカから。で、彼はいわゆるネットでハマッちゃった子ですね。

(赤江珠緒)なんと、もう。でも、いまの現実と……

(町山智浩)そう。「もうみんな許せない!」とか言って、そういう組織に入っちゃった男の子なわけですよ。もう見るからにのび太チックな。ケンカとかしたことのない。ゲームしかしたことのない。そういう、いわゆるそういう人ですよね。まあ、今回のバングラデシュの事件の犯人もそういう人たちでしたね。はい。なんか、勉強のできるお坊ちゃんで。それで、お父さんがすごくかわいがっていてね。それこそ、殴り合いのケンカとかしたことのないようなね。

(赤江珠緒)ねえ。

(町山智浩)あのね、これね、いまインターネットで「のび太が銃を持ったらどうなるか?」っていうTwitterがあるんですよ。ハッシュタグ(#全米ライフル協会会員と化したのび太)が。のび太が銃を持ったらいちばん怖いってみんな思っているんですね。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)だから、ジャイアンは銃なんかいらないわけですよ。素手で人をいじめて、暴力を振るっているから。でも、のび太が銃を持ったら、これは何人殺すかわかんねえっていう話になっているんですけど。Twitterではね。

#全米ライフル協会会員と化したのび太

(山里亮太)ああ、なるほど。

(町山智浩)でも、まさにそういうのが来ちゃうんですよ。そこのアジトに。で、自爆ベストを来て、AK47っていうマシンガンを持たされて。そしたらもう、ヘレン・ミレン扮する大佐と、あと将軍の役はこの間亡くなったアラン・リックマンさんなんですね。1月に亡くなったイギリスの名優ですけど。

(赤江珠緒)ねえ。『ハリー・ポッター』のスネイプ役だった人。

(町山智浩)そう。『ハリー・ポッター』のスネイプですよ。彼も見てびっくりするわけです。「うわっ! いま、もう彼がそのまま繁華街とかに出て、ショッピングモールとかに行って、機関銃を撃ちまくって自爆する気だ! もしそれをやったら、どれぐらい死者が出る?」とかって計算をするんです。そうすると今度は、その被害を分析する、被害を見積もる専門家っていうのがいるんですね。

(山里亮太)ふーん!

(町山智浩)それで、爆薬の量とかを見て、「これは繁華街に出たら80人は死にます」とか言うんですよ。「じゃあ、いますぐ止めなきゃならないから、ここにミサイルをブチ込め!」っていう話になるんですよ。ところが、今度はさらにそのミサイルをブチ込んだ時に、それは普通の住宅地なんですよ。アジトって。

(山里亮太)巻き添えになる人が出るのか。

(町山智浩)そう。巻き添え。だから、コラテラル・ダメージっていうんですけど。巻き添え被害の見積もりをやる分析官がいてですね、見積もりをとると「65%の確率で周辺に関係ない人(民間人)の被害者が出ます」と。で、どうするか?っていう話になってくるんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ、これ……

(町山智浩)ちっちゃい子とか家族もいるんですよ。周りに。関係のない人たちが。で、そのイギリスの外務大臣とかに「どうする?」っていう話になって。「法的にこれは許されるのか?」みたいな話になってくるわけですよ。まず、標的がイギリス人だけれども、そこにアメリカ人もいる。しかもケニアは友好国であって、そこにアメリカ軍のミサイルをブチ込むってことがイギリスの司令で許されるのか?って話になってくるんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)もう、わけがわかんないですよね。なにがなんだか。で、オバマ大統領もイエメンとかにミサイルをブチ込んでいるわけですよ。パキスタンとかに。あれだって、法的にどうなの?っていう話ですよね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)おかしいじゃないかと。やっていること自体がね。でも、やらなければ80人以上の民間人の被害者が出るわけですよ。で、どう選択するか?っていう厳しい……

(赤江珠緒)どうしたらいいんだ? 本当。

(町山智浩)そう。いま現在、毎日のように行われている……っていうか、要するにオバマ大統領は何百っていう数の司令を出しているわけですね。現在。だからほとんど毎日のようにこういう決定がなされているんですね。現在、イギリスとアメリカの間で。

(赤江珠緒)そうかー。いや、これが映画の中の世界の話じゃないところが、もう。ねえ。

(町山智浩)そうなんですよ。だってもう、最近すごいじゃないですか。パリで11月に130人死んでるでしょ? で、3月にはブリュッセルで35人でしょ? で、この間の6月28日にはトルコのイスタンブールで45人じゃないですか。で、バングラデシュで20何人。で、7月3日。昨日か一昨日か。バグダッドで160人以上ですよ。自爆テロで。

(赤江珠緒)そうですよね。うん。

(町山智浩)これが現状なんですよ。だからオバマ大統領が何百回もそのドローンをブチ込んでいるということが、単にモラル的に、法的におかしいじゃないかと。でも、この死者の数を見てみろよっていう話にもなるんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)だからこれは本当、いまもう戦争っていうのは昔は軍隊があって、軍隊同士がぶつかって、勝った負けたって国のいちばん偉い人が降伏したら終わりだったじゃないですか。ねえ。もう、そういう時代じゃ全然ないんですよね。

(赤江珠緒)ですよね。

変容した戦争の形

(町山智浩)イラク、アフガン戦争の時代から、そうじゃなくなっていて。前線って言われている軍隊同士がぶつかるラインっていうものが存在しないですよね。いまね。で、何を勝ちとするかが全くわからない。誰が降伏するかもわからない。で、守るべき国土、攻撃すべき国土もわからないんですよ。拠点もないし。

(赤江珠緒)そうですよね。で、司令を出しているのはすっごい遠いところの。

(町山智浩)そう。しかもテロリストそれぞれが、直接そのISだったりアル・シャバーブと繋がっていない場合も多いんですよ。「ネットで興奮してやりました」っていう人たちがかなりいるわけですね。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)だからバイキンみたいなもんですよね。この状況はすごいですよ。だから、果たしてその1人か何人かの民間人を犠牲にしてミサイルをブチ込むことで80人を救えるんだったらあなたはどうしますか?っていうことを突きつけてくるのがこの『アイ・イン・ザ・スカイ』っていう映画なんですよね。

(赤江珠緒)うわっ、いや、これは重いテーマだな。これ。

(町山智浩)これ、リアルタイムで見せられるから本当に観客もその会議室にいるような気持ちになってくるんですよ。で、またラスベガスでその引き金を握っている操縦士っていうか、まあリモコンを操る人ですね。「この引き金を引いたら65%の確率でかならず民間人が死ぬ、子供が死ぬんだと。でも、あなたは80人を救えるかもしれない。あなた、引き金を引きますか?」っていう話になってくるんですよ。

(赤江珠緒)うーん……

(町山智浩)で、「なんとかその確率を下げてくれないか?」って言われて、「じゃあミサイルをもうちょっと、この角度で撃ちこんだら45%まで下がります」って言われるんですよ。でも、65%が45%に下がっただけで、撃つかね?っていう話ですよね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)でも、撃たなければ80人以上が死ぬ。

(山里亮太)うわっ、厳しいな……

(町山智浩)これね、「トロッコ問題」っていう命題がありまして。トロッコが線路に走ってくるんだけど、そこに線路に5人の人が縛られている。で、片方の切り替え線の方にトロッコを引き込めば、そっちでは1人しか線路に縛られていない。5人を生かすために、あなたは線路を切り替えて1人を殺す方を選べますか?っていう問題があるんですよ。モラルについての。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)まあ、それの非常に規模の大きいものですよね。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)で、これが全然SFとかじゃなくて、現実なんですよね。で、イギリスとかアメリカもそうなんですけど、いまドローンをすごく増やしています。いま、ドローン戦車っていうのもあるんですよ。

(山里亮太)ドローン戦車?

(町山智浩)そう。無人戦車とか無人潜水艦とかいっぱいあって。で、今度10月にそれの大演習をやるんですね。で、ここでいま問題になっているのは、この映画では主人公たちは最終的に決定するのは人間じゃないですか。だからやっぱりその罪を背負うし、その罪悪感もあるし。それで最後のギリギリの決定をしない方法もあるわけですよね。人間が入っているから。でも、これを全てAIにやらせるっていうことが進んでいるんですよ。現在。

(赤江珠緒)ちょっと、ちょっと……本当ですか?

(町山智浩)人間が介在しないで、勝手に攻撃する可能性があるんですよ。そうすると。

(赤江珠緒)ええ~っ?

(山里亮太)そうか。数字とかで、どっちの方が被害が少ないとかってデータで、ポポンと。

(町山智浩)そう。データだけで。数字だけで判断するんですよ。

(赤江珠緒)うわー……

(町山智浩)数字だけで単純に、3人殺せば80人救えるんだったら、コンピューターはかならずその3人を殺す方を選びますよね。

(赤江珠緒)そうですよね。

(町山智浩)AIは。だからいま、世界中の科学者たちが「AIを軍事に使わないでくれ」っていう風に言って、その署名運動を続けている状態なんですけどね。

(赤江珠緒)そりゃそうですよ。

(山里亮太)署名運動が起きているっていうことは、相当話が進んでいるってことなんですね。もう。AIの。

(町山智浩)もう、だから演習しているぐらいですから。あと、組み込むだけですから。AIを。ただ、それだけはしないで、人間の手に握らせたままにしておこうみたいなところで、いまギリギリのところで戦われているんですけどね。

(赤江珠緒)ねえ。だってAIもあと30年たったら人間が制御できなくなるなんていう説もありますもんね。

(町山智浩)だから人間が介在しないで、AIだけが勝手に戦争をし続けるっていう状況になるんでしょうね。

(山里亮太)ただでさえ、遠距離で攻撃していると攻撃の実感が少ないから、それも問題だっていう風になっていたりするじゃないですか。

(町山智浩)そうなんですよ。で、すごい数ですからね。何百回って攻撃しているわけですよ。その操縦士たちは。

(赤江珠緒)いや、なんかもう鬱々としてくる。けれども、それが現実という、なんということだ……

(町山智浩)だから結構壮絶な映画で。見終わった後、もうぐったりするんですけど。あの、これを決定するその軍人も、アラン・リックマンはいい人ですからね。スネイプみたいな人なんで。決して悪い、冷酷な人じゃないのでね。非常に強烈な映画でしたね。

(赤江珠緒)わかりました。

(町山智浩)『アイ・イン・ザ・スカイ』は今年の年末にファントムフィルム配給で公開です。

(赤江珠緒)はい。わかりました。ありがとうございます。町山さんに『アイ・イン・ザ・スカイ』をご紹介いただきました。ありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場(字幕版)
Posted with Amakuri
コリン・ファース, デヴィッド・ランカスター, ジェド・ドハティ

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