ライムスター宇多丸さんと映像コレクターのコンバットRECさんがTBSラジオ『タマフル』でAKB48 峯岸みなみさんの丸刈り謝罪事件およびAKB48と恋愛というテーマの緊急討論を行いました。かなり長くなりましたが、書き起こしてみました!
(宇多丸)今夜は急遽この方をお招きし、AKB、まあアイドル全般といっても良いんですかね、恋愛の問題について緊急討論したいと思います。ということで、毎週水曜夕方6時からのザ・トップ5リターンズ パーソナリティーでもある、コンバットRECさんです!
(コンバットREC)はい、どうもこんばんは。ねー、エライことになりました。
(宇多丸)ねえ。まあちょっと、いきさつとか経緯を。まあ皆さん、AKBに興味ない方もいるかもしれませんから、一応確認しておきますとですね、AKB48メンバーの峯岸みなみさん 二十歳が一部週刊誌で、某人気グループの若手チームの方と、『お泊り愛』なんて言うんですかね、をスクープされたと。で、その報道を受けて、峯岸みなみさんがYouTube上のAKBの公式チャンネルで、謝罪をしたと。ただ、その謝罪の仕方が問題で、峯岸さんも当然二十歳の女性、アイドルですよ。
うら若き女性が何と、自ら、自分の意思でなんですけど、頭を丸刈りにして反省の意を表して、YouTube上で謝罪をしたと。まあ、強制されてとかじゃなくて、本当に自分の意思でということなんですけども、非常に衝撃的な映像込みで、そういうのがあったと。ちょうど「DOCUMENTARY OF AKB48」が昨日から公開になって、その中で板野友美さんがグループから卒業する、それなんかが入っていたんですけど、ちょっとそれもウヤーってなるくらいの衝撃的な事件があったと。で、それを受けてコンバットRECさん、是非この番組で言いたいことがあると。今すぐやるべきことがあると。
(コンバットREC)はい。まず宇多丸さんは、動画見てどうでした?最初。
(宇多丸)あのね、まだちょっとその何ていうの?明快な結論、こうこうこうだっていう所は出していないんですけど。
(コンバットREC)第一印象の話。
(宇多丸)第一印象はね、一言で言えば、なんか萎えました。なんか・・・萎えたっていうのは、要はアイドルというものに関わった・・・関わるっていうか、ファンとして曲買ったり、こういう場で発言したり、(雑誌)BUBKAでキャッキャキャッキャ言ってたりとか、そういうの全部込みで、要は事態の切迫度とかは全然違いますけど勿論、岡田有希子さんの亡くなられた時あるじゃないですか。で、(岡田さんが)亡くなって、それでちょっとアイドル・・・要はこの感じですよ。ちょっとこう何か、離れようっていうか、何かヤだなと思っちゃったんです。
(コンバットREC)悪いけど、俺も今、近いテンションというか。やっぱり僕らの世代はあの事件を思い出しますよね。
(宇多丸)っていうね、勿論そこまでのことには、なっていないんだけどさ。ちょっとね、ちょっと。映像のショッキングさとか、あと何だろう、責任っていうとアレだけど、やっぱり残酷ショーの、勿論その功罪の両方の面を話してきたつもりだけど、去年の「DOCUMENTARY OF AKB48」でも大興奮してさ、ぶっちゃけ面白かったわけですわ。その残酷ショーとしての功罪、半ばするけど面白がっちゃってワーっていうこと。勿論その良くない面も分かっていたつもりだけど・・・
(コンバットREC)「良くない、良くない。」って言いながらも、でも喜んでいたわけじゃん、俺らがさ。
(宇多丸)そうそうそう。で、あの(峯岸みなみさんの)映像を突きつけられた時に、「お前、これも面白がるのかよ?」っていうのを自分にちょっと問い・・・なんか来ちゃった感じです。で、いや、それは嫌だと。なぜだ?その線引きは何なのか、俺はまだちょっと出来てないんだけど、それは嫌だなっていう。
(コンバットREC)だから、世間一般の方たちが見て、嫌悪感を抱くのとまたちょっと俺たち違うじゃない。これをいままで、支持してきているわけだから。その残酷ショー的なもんも見て楽しんできているわけじゃない。総選挙みたいなさ。だからちょっと、また違うんだろうね。
(宇多丸)自責・・・?
(コンバットREC)自責の念は、まあ有り。というか、事務所と俺らは共犯でしょ、あれが出ちゃったことは。俺らの責任は間違いなくあるでしょ。
(宇多丸)AKB現象というかね、そのいろんな、まあ「プロレスだ、プロレスだ。」って言い方で言ってるけど、全部込みで面白がればいいじゃんってところに、まあ加担はしていますよね。明らかにね。
(コンバットREC)まあ、でもあれを楽しめる人は、まずいないでしょうって思うんだけど。
(宇多丸)でもね、一瞬考えてもみたのね。これも、楽しむっていう選択肢もナシでは無いのか・・・?とかね。だって、そういう立場の人もいるわけじゃない?「いや、これだってAKBでしょ。」っていう人だっているじゃん。で、それだって理屈としてはさ、俺たちの言っていたことの延長線上なんだし。
(コンバットREC)まあ、どっかでは繋がっているものなんだよね。たださ、まずあの動画を見た時の嫌悪感ってさ、晒し者じゃん。要は。
(宇多丸)まあ、『自ら』とはいえね。
(コンバットREC)と、言われてはいますが、(動画を)公開したのは、晒し者にしているわけじゃないですか。
(宇多丸)まあ、公式チャンネルなんだから。あと、『自ら』なんだからしょうがないってさ、それこそ岡田有希子だって『自ら』だけどっていうさ。だからそんなの、話になんない。要は、そういう所まで追い込む、異常な事態なわけじゃないですか。はっきり確認したいんだけど、異常なことをさせる、してしまうような所に、何でいるのと。
(コンバットREC)そっち行きますか?
(宇多丸)いや、わかんないわかんない。どうだろう?
(コンバットREC)俺はでもやっぱり、ちょっとごめんね。まず先にこっちだと思うんだけど、事務所サイドがあれを出しちゃったことが何でかって言うと、やっぱりその残酷ショー的なものを提供してきて、どこがセーフでどこがアウトかってわかんないわけじゃん?元々僕らが好きだったASAYANから始まっているというか、この流れ。
(宇多丸)要は、負荷をかけるね。
(コンバットREC)負荷をかけることによって、彼女たちがそれを乗り越えていくエンターテイメントみたいな形。でも、古くはさ、ホリプロのスカウトキャラバンとかから源流は多分あるんだよ。オーディション自体が負荷をかける空気を楽しむもので。
(宇多丸)ああ、オーディションの過程を見せてる時点でね。
(コンバットREC)で、それがASAYANになり、テレビを失って、ナシでやっていくっていう時に、イベント化していったり企画化していくっていうのでAKBは、負荷をエンターテイメントにしている部分が大きかったわけじゃない。結局さ、負荷がどこまでがオッケーなのかってのが、送り手が分からなくなっているっていうかさ。これ、ただ残酷なだけで何も産まないっていうものまで、出してきちゃったっていう。
(宇多丸)乗り越えるもクソもないし、そもそも・・・
(コンバットREC)ただ陰惨なだけだろっていうね。
(宇多丸)陰惨。そうそう。で、そもそもね、「何を謝っているんだ?」っていうね、その問いが出てこざるを得ないわけ。「えっ、ここまで悪いことなんだっけ?」っていうさ。勿論、恋愛禁止論に対してさ、俺らは比較的極端な論者ではあると思うけど。ただ、とはいえさ、じゃあ「恋愛禁止だ!」って言ってる人だって、これは多分望んでない。
(コンバットREC)望んでないと思いたいですけどね。「当然!」って言っている意見がたまに目に入ると、俺もうビックリしちゃうんだよ。
(宇多丸)だからその、恋愛ってそれ自体は犯罪行為でもなんでもないことがね、その・・・まずそこがさ、「アイドルなんだから恋愛禁止でしょ。」っていう暗黙のさ、まあみんな、でもそういうもんでしょって。えっ、『そういうもん』って流しちゃって良かったのかな?とかさ。
(コンバットREC)そうね。だからさ、岡田有希子さんの件があったにも関わらず、いまだにデフォとしてそれをさ、掲げるのがちょっと難しいんじゃないか。しかもあの頃よりもさらにさ、FRIDAY・FLASHの時代を過ぎてさ、もうネットとかに晒されちゃう時代じゃない。ヲタが見たとかさ、撮ったとか言える時代にさ、隠し通すのはかなり難しいわけじゃないですか。
(宇多丸)そうですね、特にあともっと若い時代とかね。その自覚が薄い時代とかね、あるかもしれません。
(コンバットREC)しかも、文春さんみたいにスッパ抜く側のスキルも上がってるだろうし、やっぱりさ、ちょっと難しいんだよ。ファンタジーでやっていくのはね。
(宇多丸)要は前提としてはさ、若い女の子とさ、若い男の子がいてさ、で切磋琢磨してさ、そりゃ恋もするよねっていうね。そこはどうなの?ここも認められないってなるとっていうのもあるけど。で、特にやっぱさ、二十歳じゃないですか。峯岸さんとか。その、成人こえたらそれは、もうちょっと緩くしても良かろうとか・・・
(コンバットREC)まあ、どこに線を引くかって話は必ず出てきますけどね。
(宇多丸)秋元(康)さんはさ、「禁止って言った覚えはない。」とかよくメディアとかで・・・
(コンバットREC)じゃあ、何がダメなんだよ?玉虫色すぎるんだよ、アレ。
(宇多丸)ただ、「そんな暇は無いはずだ。」っていう言い方をおっしゃってて。
(コンバットREC)暇なメンバーもいるよ!
芸事に集中するんだから恋愛は禁止?
(宇多丸)いや、だし、よく『芸事に集中するんだから恋愛は禁止』っていう、その理屈も分かるんだけど、でも例えば『芸事』って言うんだったら、じゃあ色恋沙汰って普通プラスになるとかさ、芸の肥やしになるとか。特に彼女たちなんて、人生経験があんまり無いうちに芸能界に入っちゃっているわけだから、これ、『恋愛は芸のプラスになる』っていう言い方で、要するにどっちの言い方だって出来ちゃうじゃないかと。だからあんまり、こうだから禁止っていうのも、そんなに説得力が一方的にあるわけじゃないだろとかさ。何を根拠に、これが当たり前の『法律』であるかの如く・・・
(コンバットREC)まあ、簡単に言ってしまうと、「私たちは恋愛はしていません」っていう、『擬似恋愛』を売るっていうことですよね。簡単に言えば。ただ、問題は『擬似恋愛』だって受け手が思ってないってことなんですよ。『ガチ恋愛』だと思っている人が、結構多数なんですよ。
(宇多丸)『ガチ』っていうか、『擬似』なんだけど、うまく嘘をついてくれとは思っていると思いますよ。
(コンバットREC)いや、俺ね、そこまで大人な人は少数派な気がしますよ。あの、無関心層はそうだと思いますよ。「いやー、そんな恋愛しませんなんて、裏でやってるよ。バコバコだよ!」みたいなオッサン、あんまり興味のないオッサンとかはそうだけど、結構、やっぱり若い・・・その応援する側も未成熟な若者とかは、そんなリテラシーも無いわけだから。
(宇多丸)勿論勿論。そこに夢を見る。それは俺はいいと思うんだけどさ、別に夢見るのは。その・・・コトが発覚した時にさ、今回の件はちょっと置いといてもさ、やっぱさ、発覚したらそれはそれで、生身の女の子なんだから、攻撃したりじゃなくて、だったら応援しようとか、そういう道は無いの?
(コンバットREC)(愛と誠の)岩清水イズムになれよってことでしょ?
(宇多丸)岩清水・・・岩清水はそんなに物分かり良くないでしょ!
(コンバットREC)いや、違うよ!好きな子の恋を応援しないと。泣きながら応援するのが男だっていう。
(宇多丸)でもさ、そういうけど、「太賀誠、君はふさわしくない!」ってさ、大暴れしてたじゃない!アイツ、一番迷惑なパターンだよ!
(コンバットREC)でも、でも彼はまあ、最終的には・・・
(宇多丸)見返り。自分に対する見返りじゃないってことでしょ?
(コンバットREC)俺に見返りをくれとは一言も言わないわけ。「金払ってるんだから、見返りよこせ。」なんて言わないわけじゃん。
(宇多丸)んー。ただ、ファンの人も大半はこれを良しとは・・・そういう極端な人もいるかもしんないけど、周りの人はさすがに・・・
(コンバットREC)それは声の大きい一部の人だと思うけどね。さすがにあの動画がいいと思う人はいないでしょ。
(宇多丸)で、ファンもそうだけど、今回の映像を見て、萎えた人は多いと思うのよ。それこそちょっと外側から見ていて。
(コンバットREC)外側の人は萎える人いると思う。単純に『萎え』とか『ヤバくない?』って感じだから。一言で言うとね。
(宇多丸)『怖い』って思っちゃう。
(コンバットREC)いや、俺も怖いって思ったもん。
(宇多丸)だからその、アイドル界が丁度せっかくですよ、長年の冬の時代を経て、今百花繚乱でさ、作品も充実ようやくしてきたし、っていう時に。せっかく盛り上がっている時なんだからさ、ここらでみんなでルールの見直しじゃないけど、っていう話じゃない?
(コンバットREC)いや、だから恋愛禁止の問題って難しくて、ガチなのか、本当にしちゃいけないのか、『上手くやってよ』なのか。それとも、一回解禁にしますと。特にAKBって一個実験しやすい場で、選挙があるんで。解禁してみたところ、順位がどうなるかによって実験ができるんじゃないかと。
(宇多丸)すごいね。マリファナ解禁みたいな話だね。