吉田豪さんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。ラッパーZEEBRAさんの素顔について話していました。
『実話BUNKA超タブー』、吉田豪インタビュー連載の今回のゲストはZeebraさんです! 安藤昇さんから内田裕也さんまで、いろいろ話してくれてますよ! pic.twitter.com/YcIctmy1hk
— 吉田光雄 (@WORLDJAPAN) 2016年4月30日
(安東弘樹)毎月第一金曜日はプロインタビュアー吉田豪さんをお迎えして、豪さんがこれまでインタビューしてきた一筋縄ではいかない有名人の様々なその筋の話を聞いていくコーナーになります。よろしくお願いします。改めまして。
(玉袋筋太郎)よろしくどうぞ! いや、先週はね、その席に石井ふく子先生がいたんですよ。
(吉田豪)聞きましたよ。ドキドキしましたよ(笑)。
(玉袋筋太郎)ドキドキしちゃって。
(安東弘樹)そして(今日の)1時台は榮倉奈々さん。それからの、吉田豪さんです。
(玉袋筋太郎)ようやく戻ってきた、俺。
(吉田豪)タマが。
(玉袋筋太郎)タマ6つで。よかったよ!
(安東弘樹)豪さん、今日は?
(吉田豪)今日はキングギドラ(KGDR)のZEEBRAさんですね。
(玉袋筋太郎)おおー、ZEEBRAさんね。
(安東弘樹)ではまずそのZEEBRAさんのあらすじ、その筋をご紹介します。1971年、東京都のお生まれ。現在45才。1995年にいまや伝説と化したキングギドラのフロントマンとしてデビュー。日本語におけるラップを新たな次元へと引き上げ、1997年のソロデビューから常にトップの座に君臨し、男女を問わずファンの間でカリスマ的存在となっています。現在、テレビ朝日の人気番組『フリースタイルダンジョン』のMCも務めるなど、自身の音楽活動の他、アーティストのプロデュース、ドラマ、テレビ出演と多彩に活躍中です。
(玉袋筋太郎)うん。
(安東弘樹)そして、吉田豪さんの取材によりますとZEEBRAさんのその筋は……その1、東京生まれ漫画育ち、祖父について知ったのも漫画だった筋。その2、音楽活動をスタート。「それって金になるのか?」の筋。その3、ヒップホップ界のオーガナイザー。「悪そうなヤツはだいたい友達」の筋。その4、内田裕也さんといきなりラブの筋。その5、奥様激怒。家族を取るか、お酒を取るかの筋。以上、5本の筋です。
(玉袋筋太郎)たまらないね、もう。
(吉田豪)たまんないですよね。
(玉袋筋太郎)筋だけで、たまんないね。いやいやいや、東京生まれ漫画育ち、祖父について知ったのも漫画だった筋って、これも爆笑だね、豪ちゃん。
(吉田豪)はいはいはい。じゃあ順番に行っちゃいます? それとも、さっきの豪ちゃんの日の(話の)流れで、お酒から行きますかね?
お酒での失敗
(玉袋筋太郎)ああ、お酒。お酒。なんか俺に近いところがあるんだよな。奥様激怒。「家族を取るか、お酒を取るか」って俺もどっかで聞いたことあるんだよな。
(吉田豪)何度か言われたような?(笑)。
(玉袋筋太郎)何度か言われてる。うん。
(安東弘樹)いやー、これ、究極。
(吉田豪)はいはい。実はインタビューをする前に、ZEEBRAさんとは1回だけ会っているんですよ。キングギドラのK DUB SHINEさんとはすごい仲良くて。しょっちゅうイベントやったりとかする仲なんですけど。
(玉袋筋太郎)すごい人なんでしょ? K DUB SHINEさんっつーのはね。(『たまむすび』金曜日にも)来たことがあるし。だけど、もはや芸人としてのジャンルに入ってますよね。あの人。
(吉田豪)あの、ワタナベエンタに入ってから、普通にもう芸能人というか(笑)。タレント枠に入って。そうなんですよね(笑)。
(玉袋筋太郎)(島田)洋七師匠へのね、ヨイショがすごいって話だもんね。
(吉田豪)びっくりしましたよ。『バラいろダンディ』を見て(笑)。
(玉袋筋太郎)『ダンディ』で、「師匠、おもしろいっすね!」って。すごいらしいんだよ(笑)。
(吉田豪)先輩の立て方がすごいんですよ(笑)。
(玉袋筋太郎)楽屋に挨拶に行くって、そういう人じゃないでしょ? あの人。
(吉田豪)キングギドラ、渋谷のドンが……っていうね。
(玉袋筋太郎)渋谷のドン!(笑)。
(吉田豪)渋谷のドンのドンがどんどんできちゃうんですよ、最近(笑)。
(玉袋筋太郎)ドンドンドンって(笑)。
(吉田豪)だからケーダブさんとは仲がいいんですけど、ZEEBRAさんとは僕、1回しか接点がなくて。1回、『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』に僕が出た時に、泥酔したZEEBRAさんが乱入して嵐のように去っていったことがあったんですよ。
(玉袋筋太郎)おおー。
(吉田豪)それだけの設定んだから、「覚えてますか?」っつったら、案の定覚えてなくて。
(玉袋筋太郎)ああー、わかるなー。近い近い近い。
(吉田豪)まあ、よく記憶を無くしちゃうらしいんですよ。
(玉袋筋太郎)わかるわー!
(吉田豪)で、記憶がなくなると、大抵よくないことをしていて。次の日、奥さんがすごく怒っていると。で、玄関で叫んでいたりとか、見えない敵と戦っていたりするらしいんですよ。
(玉袋筋太郎)(笑)。いるんだよ。たまに出てくるんだよな、見えない敵がな。
(吉田豪)基本的にはハッピーなパーティー飲みっていう感じらしいんですけどね。1回寝ちゃうとヤバくて。で、自分の誕生日でも、そういうパーティーで盛り上がっていたんだけど、完全に潰されて寝ていたら、ZEEBRAさんを起こそうとしたマネージャーさんを「うるせえ!」っつってパカーンと殴っちゃったと。
(玉袋筋太郎)(笑)
(吉田豪)で、起きたらまず嫁に「電話して謝りなさい」って言われて。その瞬間、とりあえずTwitterに140文字いっぱいに「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」ってまずつぶやいてっていう。
(玉袋筋太郎)おおー。
(吉田豪)「俺、マジで暴力とかふるわないなんですよ。本当に最高のマネージャーなのに。俺は何をしているんだ……」っていう。で、そんなことばっかりあったので、奥さん的にも堪忍袋の緒が切れて。「これ以上飲むんだったら離婚する」と、離婚届を持って来られたから、家族を取るか酒を取るかってことになって、禁酒したという。
(玉袋筋太郎)『芝浜』だな、こりゃ。『芝浜』だよ、もう。酒をやめて一生懸命働いてっていうのでしょ? ちゃんと成功して、大晦日。「一杯飲んじゃえよ」っつって、「やっぱやめておこう。夢になるといけねえ」ってことじゃないですか。
(吉田豪)はいはいはい。
(玉袋筋太郎)じゃあ、すごい愛妻家ですよね。
(吉田豪)そうですね。ちゃんとしてますよ。で、実はあれなんですよね。おじいさんが横井英樹さん。
(玉袋筋太郎)これだよ。おじいちゃんが横井英樹だっつーのがすごいよね!
(吉田豪)横井さんのお父さんが酒乱だったらしいんですよ。
(玉袋筋太郎)ああ、そうなの? あ、隔世遺伝だ!
(吉田豪)そうなんですよ。そのせいで、横井英樹さんはお酒を飲まなかったっていうね。
(玉袋筋太郎)ああー! 似てる、似てる、似てる。どっかとも似てるわ、これは。スケールは小さいけど。
(吉田豪)(笑)
(安東弘樹)俺も親父、結構いい飲み方ではなかったっていうのがある……
(吉田豪)そして(安東さんは)全く飲まなくなるという。あるみたいですね。
(玉袋筋太郎)だけどさ、やっぱりおじいちゃんについて知ったのも漫画だったって、その横井英樹さんを知ったのが漫画だったっつーのも驚くよ。
祖父 横井英樹を漫画で知る
(吉田豪)このへんのエピソードも大好きなんですけど。TBSラジオ的にというか、僕ら周辺だとZEEBRAさんって伊集院光さんとの「中二病騒動」っていうのがあって。「『中二病』っていう言葉を生み出したのが伊集院光らしい。許せねえ!」ってことをZEEBRAさんがTwitterでつぶやいて。でも、誤解ベースなんですよ。伊集院さんはいまの中二病っていう言葉とは違うものを生み出したじゃないですか。それが誤解されて広まって……っていう話なんですけど。
(玉袋筋太郎)キナ臭せえなー。
(吉田豪)そうなんですよ。それでちょっとこの2人が決裂したりとかもあったんで、あんまりZEEBRAさんのイメージってラジオ的にはよくないかもしれないんですけど。全然信用できる人だっていうのがこういう部分から出てくるんですよね。その1の筋。
(玉袋筋太郎)その1だよね。漫画が好きなんだよな。
(吉田豪)いま、このZEEBRAさんがMCをやっている『フリースタイルダンジョン』って番組が、なぜかアイドルとかアニオタにもすごい人気なんですよ。同人誌文化的な方向でも人気になっていて。これは日本全国のフリースタイルのラップの猛者が5人の凄腕ラッパーに挑みかかって即興ラップの上手さを競う番組なんですけどね。
(玉袋筋太郎)うんうん。
(吉田豪)で、「なんでこれがヲタ的な人にも受けるのか?って考えたら、少年ジャンプの世界に近いからだと思うんですよ」ってご本人に言ったら、本当に少年ジャンプを毎週読んでいて、漫画家になりたかったぐらいの人で。番組に関してはモンスターが5人いて、全部倒すとラスボスが出てくるっていうのはこれ、『リングにかけろ』みたいな感覚っていう。車田正美の。
(玉袋筋太郎)『リンかけ』世代なんだよね。おおー!
(吉田豪)だから、僕もほぼ歳が一緒なんで、同じような文化をバリバリ通っているんですよ。コロコロコミック、少年ジャンプっていう流れで。それを全部直撃する人なんですよ。この人は。テニスを始めたきっかけが小谷憲一の『テニスボーイ』で。で、『キャプテン翼』にハマッてサッカースクールに入って。で、『リンかけ』にハマッていろいろやったりとか。
(玉袋筋太郎)おお!
(吉田豪)で、それと同じように『ゲームセンターあらし』が大好きになったら、即座にマイコン購入みたいな(笑)。
(玉袋筋太郎)マイコン世代だもん!
(吉田豪)そうそうそう(笑)。もともと藤子不二雄が大好きで、藤子不二雄と名のつくものはほぼ全部読んで。「この前もiTunesのレンタルで『トキワ荘の青春』を見て、最後に泣く」みたいな感じで。「全て俺は漫画でできている」みたいな感じの人なんで。
(玉袋筋太郎)漫画でできてるんだな。
(吉田豪)で、その自分のおじいさん。母方の祖父なんですけど、横井英樹さんのことを知ったのも漫画だったと。これ、僕も知らなかったんですけど、ヤングジャンプで連載されていた『栄光なき天才たち』。
(玉袋筋太郎)ああ、うちの相棒が持っていたな。
(吉田豪)これに、中1の時に、その筋の人である伝説の喧嘩師・花形敬さんの話があったって言って。調べたら、単行本未収録なんですよ。この回だけ。
(玉袋筋太郎)へー! なんかあったのかな?
(吉田豪)まあだってね、基本的にもっとちゃんとした英雄が出る本で、1人だけ黒社会の人が入っていたら、さすがにおかしいでしょうっていう(笑)。
(玉袋筋太郎)『疵』が入っちゃった、これ。花形敬さんね。
(吉田豪)そう。そこにおじいちゃんが突然出てきたと。まあ、花形敬さんっていうのは安藤組の人で。
(玉袋筋太郎)安藤組だよ。渋谷の。
(吉田豪)で、「おじいちゃんが安藤昇さんに対して『俺は借りた金は返さん主義だ』とか言っていて。なんだ、これ?」と思ったと。
(玉袋筋太郎)おおー!
(吉田豪)安藤さんっていうのは、いわゆるその筋の人。安藤組の組長で、俳優に転身。作家やプロデューサーとしても活躍した人なんですけど。で、ZEEBRAさんの祖父、横井英樹さんのことは少年時代、何者かわかっていなかったらしいんですよね。
(玉袋筋太郎)横井英樹さんを?
(吉田豪)ずっとダイエーの社長だと思っていたっていう。
(玉袋筋太郎)ダイエーの社長(笑)。
(吉田豪)日曜日に近所の碑文谷のダイエー。これ、ちょうど5月5日に閉店したばかりなんですけど。そこにおじいちゃんと行くと、「なにがほしいんだ?」って言われて、「この飴がほしい」って言うと、ボックスで買うんですよ。ガムでも何でもボックスで買ってくれて。「気前のいい爺さんだな」と慕っていたんですけど。どうやら、箱で買うと割引できるみたいな感じで(笑)。
(玉袋筋太郎)買い叩いてたんだ(笑)。
(吉田豪)そうそう。で、ダイエーに行くと「社長」とか「オーナー」とか言われているから、「ああ、俺はここの孫なんだ。俺、すげー。ダイエーの孫!」みたいな感じで思ったら、もっとすごかったっていう話だったんですね。
(玉袋筋太郎)すっげー! スケールが違う。
(吉田豪)で、その筋の人たちと揉めて銃撃されていたことを漫画で知ったっていう(笑)。
(玉袋筋太郎)ああー、俺のじいちゃん……
(吉田豪)俺のじいちゃん、銃撃されてる!っていう。なかなか昭和のその時代に銃撃されるおじいちゃん、いないですからね。
(玉袋筋太郎)いないね。うん。当時、安藤組が狙ったのは力道山も狙っていたけどね。
(吉田豪)(笑)。撃たずにはすんでね。ケンカでね。
(玉袋筋太郎)そうだよ。はー!
(吉田豪)で、子供の頃におじいちゃんとお風呂に入ると、「おじいちゃんのお腹にはピストルの弾丸が入ってるんだ」って自慢されていて。てっきり戦争で撃たれたんだと思っていたら、これか!っていうね(笑)。
(玉袋筋太郎)(笑)。スケールが違うんだよ。
(安東弘樹)違う戦争だったと。
(吉田豪)おじいちゃんも『たまむすび』みたいなことをよく言っていたらしいんですよ。「お前ら、タマ2つだけど、俺はタマ3つなんだよ」ってよく言っていたって(笑)。
(玉袋・安東)上手い! そうかー!
(玉袋筋太郎)いいなー。でも、そういうことを言うのは、本当にたしかに戦争ジョークっていうかね。戦争を経験した人が言う話だけど。まあ、実際戦争は戦争だけどね。安藤組に襲われてるんだから。
(吉田豪)はいはい。だから祖父の横井英樹さんについてはZEEBRAさんの自伝でも詳しく書かれているんですけど。ちょっと簡単に説明すると、その筋・安藤組と敵対していた人物で、ホテルニュージャパンの社長にもなって、火災事故があって、当時小5だったZEEBRAさんは大変な目にあうという。
(玉袋筋太郎)小5か、あん時。
(吉田豪)ZEEBRAさんの本名が「横井英之」で。ほぼおじいちゃんと一緒なんですよ。
(玉袋筋太郎)(笑)
(吉田豪)これはもう、吊るし上げられますよ。
(玉袋筋太郎)そうだよな。
(吉田豪)で、慶応の小学校の方なんで。周りはもう、いいところの子供たちばっかりなんで。成り上がり者のこういうのが来たら、「お前のおじいちゃん、なんだよ?」ってなるっていうね。
(玉袋筋太郎)もう映画化決定だね。これだけで。すっごいよなー!
(吉田豪)で、だんだんヤンチャになっていって。14とか15才の頃、家に帰ってこない頃に、そうなんですよ。なにが奇遇って、渋谷の組織と敵対して、おじいちゃん揉めてたじゃないですか。で、ラッパーになって渋谷を拠点として活動っていう(笑)。
(玉袋筋太郎)これがすごいよ!
(吉田豪)「よくできてますよね」って言ったら、14、5で家に帰ってこない時に「渋谷にいるらしい」って聞いたら、おじいちゃんがものすごい心配したらしいんですよ。「なんとしてでも探しだせ!」って言って、会社の社員がZEEBRAさんを探しに渋谷を回らされていて。もうその頃、安藤組はいないですよ!っていう(笑)。
(玉袋筋太郎)いないいない(笑)。解散してるよ、もう!
(吉田豪)解散してますよ!っていう(笑)。
(玉袋筋太郎)いやー、これ面白いよね! でさ、このZEEBRAさんがさ、「おじいちゃんのことを『乗っ取り屋』とかいろいろ言われていたけど。いまで考えりゃあ『M&A』だからね」っていう。あれ、最高だよね!
(吉田豪)いいですよね(笑)。
(玉袋筋太郎)「M&Aじゃねえか」っていう。
(吉田豪)「おじいちゃん、たしかにケチでね。そういうところに問題があったんだけど、先見の明もあったんですね。ニュージャパンに関してはひどかった」っていう。
(玉袋筋太郎)(このTBSの)すぐ近所だけどね。
(吉田豪)「防火設備をケチって。あれはじいちゃんが悪い!」っていう(笑)。「ただね、それ以外にはいいところもあった」っていうね。
(玉袋筋太郎)蝶ネクタイだよな、横井英樹さんっつったらね。トラメガで記者会見やっちゃってさ。
(吉田豪)ああいう場で蝶ネクタイっていうね(笑)。
(玉袋筋太郎)すごかったよなー。叩かれたもん。そりゃあ慶応の中じゃ、浮いちゃうよ。うん。マズいマズい。
(吉田豪)そして、その2に行きますかね。音楽活動スタート。「それって金になるのか?」の筋。音楽活動を始めて、まずキングギドラのファーストアルバム『空からの力』が出た時に、おじいさんにまず、「アルバムが出来ました」って報告して持っていったら、第一声が「金になるのか?」っていうね。
(玉袋筋太郎)いや、いいねえ! 横井さんだね!
音楽活動を祖父・横井英樹に報告
(吉田豪)ダイエーでは、まとめ買いして値切るとか。商人の人物だったから。「音楽家は素晴らしい商売だと思う。だけど、これを売っていくら入るんだ?」と。「俺に入るのは印税だけなんだけど」って言ったら、もう思いっきり笑われたらしくて(笑)。「なんだ、それ?」っていう。まあ、その時はバイアウトっていうシステム。要は、アルバム1枚30万円。つまり(メンバー3人で)1人10万円ずつもらうっていう、それだけだったって聞いたから……
(玉袋筋太郎)買い取りみたいなもんだ。
(吉田豪)そうそう。「爆笑されたから悔しくて。それ以上、何も言われなかったけど、『ちゃんとそこを見ておけ』ってことだと思って」っていうね。で、そこからいろいろ契約とか、かなり勉強したらしいんですね。で、結局ファーストアルバム、最初は「どうせ2千枚ぐらいしか売れないだろう」っていうことで1人10万円でやったら、2万枚、3万枚と売れ続けて。途中から、K DUB SHINEがレコード会社に殴りこんだという(笑)。
(玉袋筋太郎)殴りこんだ。
(吉田豪)毎日、担当者に苦情を入れ続けた結果、担当者が3ヶ月で髪の毛が真っ白になって。それで8%もらえることになったっていう(笑)。
(玉袋筋太郎)ホセ・メンドーサだよ(笑)。一瞬で真っ白になっちゃうんだから。
(吉田豪)ですよね(笑)。原盤を半分持っているのと同じぐらいのお金が入ったっていうね。
(玉袋筋太郎)やってること、これケーダブ、ヤバいよね?
(吉田豪)そうですよ(笑)。ZEEBRAさん曰く、レコード会社とケーダブさんの家がすごく近かったっていうのが全ての敗因っていうね(笑)。
(玉袋筋太郎)そうかそうか(笑)。
(安東弘樹)子門真人さんがうらやむ話ですね。
(吉田豪)ゴネればなんとかなったっていう(笑)。で、ちなみにちょっといい話が、ケーダブさん、いまワタナベエンタでバラエティーで活躍中じゃないですか。で、ZEEBRAさん、結構こういうような血筋なのもあって。ワタナベプロとつながりが深くて。
(玉袋筋太郎)らしいね。
(吉田豪)なので、そういう血筋から、お母さんがやっぱりそのへんの社長とかと仲がいいから。「ナベプロ、紹介してあげようか?」っていうような話があって。「ナベプロでデビューみたいな話もあったけど、それはさすがにヒップホップじゃない」っていうことで断ったっていう(笑)。
(玉袋筋太郎)(笑)。たしかにな。コネでな。
(吉田豪)もっと自分で成り上がっていかなくちゃいけないから……っていう。
(玉袋筋太郎)縁故じゃねえだろっていう。
(吉田豪)そうです。そうです(笑)。ただ、そこにK DUB SHINEが入るっていう(笑)。
(玉袋筋太郎)なんなんだろう?(笑)。
(安東弘樹)巡ってますねー!
(吉田豪)よくできた話で。
(玉袋筋太郎)よくできてるよね。それじゃ、その3。ヒップホップ界のオーガナイザー。悪そうなヤツはだいたい友達の筋。ここらへんもまた、面白いんだよな。
「悪そうなヤツはだいたい友達」の真相
(吉田豪)はいはい。Dragon Ashの曲『Grateful Days』にゲストボーカルで出た時にこのフレーズが有名になったわけじゃないですか。「東京生まれ ヒップホップ育ち 悪そうなヤツはだいたい友達」っていう。
(玉袋筋太郎)これね。言っちゃったんだね、これ。
(吉田豪)で、これ、実はあれなんですよね。僕が関東連合の本『いびつな絆』っていうのを読んで衝撃を受けたんですよ。そこに出てくる人が、「『悪そうなヤツはだいたい友達』って誰のことだ? 俺はお前なんかと友達じゃないぞ」って言って。「それを歌っているヤツを呼び出した」みたいな文章が出てきて。なにこれ? 怖っ!って思って(笑)。
(玉袋筋太郎)ヤバいよなー。怖い怖い怖い!
(吉田豪)ってつぶやいたら、ZEEBRAさん本人がTwitterで否定したことがあったんですよ。「ちょっと違いますよ」って。まあ、どういうことかっていうと、「本当に当時はだいたい友達だったんですよ」っていう話なんですよ。だから実は、『フリースタイルダンジョン』でオーガナイザーっていう立ち位置でやっているんですけど、実は昔からオーガナイザー体質で。
(玉袋筋太郎)おお。
(吉田豪)不良化した時期が早かったのもあって、先輩とかとずっと一緒に遊んでいて。で、先輩がどこに遊びに行くかを自分でいろいろ仕切る人だったらしいんですよ。「今日はあそこがいいっすよ、あそこがいいっすよ」とかを全部確認して、みたいな。で、先輩にかわいがってもらうようになって。で、最初のうちは1個上の先輩には敬語を使っていたけど、だんだん「もう敬語はいいよ」「ああ、本当?」って感じで、敬語を使わないでどんどんいいような方針にしていって。
(玉袋筋太郎)おおー。
(吉田豪)そのうちに、当時中2、3で「高校生にパー券を売ってこい」とかって、ネットワークが広がっていくうちにどんどん上と仲良くなっていって。で、その世界の中心人物みんなと仲良くなっていった。要するに、腕力じゃなくて人間関係で制覇していったらしいんですよ。
(玉袋筋太郎)なるほどね。そこ、すごいよな。
(吉田豪)そう。その結果、文句を言ってくるヤツは1人もいなくて。面倒くさく絡んでくる先輩がいた時も、その上のもっと怖い先輩がそいつをボコボコにしたりして(笑)。何も言ってないのに(笑)。
(玉袋筋太郎)(笑)
(吉田豪)知らないうちに、なんとなくポジションができていって。だいたい友達になったっていう。だから、なんだろうな? かなりアウトローな世界にいた人のはずなのに、会うと本当にジェントルでピースフルな人で。なんでかと思ったら、そういうことなんですよね。みんなと仲良くして、輪をつなげて場を楽しくするポジションっていう。「だから、ほら、だいたい友達だったんです」っていう(笑)。
(玉袋筋太郎)(笑)
(吉田豪)ヒップホップシーンに入っても、だいたい不良っぽい人は誰々の後輩とかで、みんなつながっていたっていうね。
(玉袋筋太郎)そうなんだよな! いやいや、時代がちょっと違うからね。俺と年代、ちょっとズレてるから。そういう人がいるんだよな。漫画っちゅうか、本当劇画だよね。これ。で、これだよ。その4だよ。内田裕也さんといきなりラブっていう。これがまたいいなあ!
内田裕也との親交
(吉田豪)ジャンルは全然違うはずなのに、なぜか最近ね、『ニューイヤーロックフェス』の常連になっているんですよね。ZEEBRAさんが。
yeah????????????
銀座博品館劇場に向かってゴーゴゴー?????????
内田裕也さんのカウンドダウン後年明けすぐにカイキゲッショクのhappy new year showイェア??????????????
ZeebraさんとチャヂとHIROさ?ん?? pic.twitter.com/exs5K8upkd— CHARGEEEEEE… (@CHARGEEEEEE) 2015年12月31日
(吉田豪)で、どうしてこういう風になったかっていうと、もともとZEEBRAさんが日本人ではじめて「この人かっこいい!」って思ったのが松田優作さん。その優作さんの葬儀で(安岡)力也とか裕也さんとか、裕也ファミリーがズラーッと棺桶を担いでいて。「こんなに日本人でかっこいい人たちがいるんだ!」って衝撃を受けて。
(玉袋筋太郎)あれ、豪ちゃん。ここにポール牧は入ってないね。
(吉田豪)(笑)。担いでましたよね。『ア・ホーマンス』のつながりでね。
(玉袋筋太郎)しっかり担いでいたんだから!
(吉田豪)まあ、あのへんもアウトロー感が感じてかっこいい人たちじゃないですか(笑)。
(玉袋筋太郎)ガチガチのアウトロー。かっこいい、かっこいい。
(吉田豪)やっぱりギャングスタ感ですよね。
(玉袋筋太郎)それがやっぱりかっこいいと思ったんだ。
(吉田豪)で、憧れを持ち始めて。で、2人の出会いがナベプロの50周年パーティー。やっぱりお母さんのつながりで実は誘われて。で、当時はちょっと名前も出てきていたから、花でも添えられたらいいな、ぐらいな感じの気持ちで行ったら、布施明さんから谷村新司さんから、いろんな大物たちがどんどん歌って。花を添えるどころか、オールスター中のオールスターで居場所がなくて。途中で廊下に出ていたら、会が終わる10分ぐらい前に裕也さんや力也さんの一派が到着して。裕也さんがサンタクロースの格好でトリで出てきて、「ナベプロのお前ら、全員ステージに上がれ!」って言って、ステージに全員上げていつものあれをカマしてダーン!って終わらせているのを見て、「この人、やっぱりドンだわ!」って思って超好きになっちゃって。
(玉袋筋太郎)(笑)
(吉田豪)で、挨拶に言ったら、「最近、ラップをやりたがるやつがいっぱいいるだろ? そういうヤツにはお前のセカンドを聞け!って言ってるんだ」っていきなり言われて。「マジですか? ありがとうございます!」ってなったのが初対面。
(玉袋筋太郎)ドラマチックだねー!
(吉田豪)で、ラブを受けちゃったんで、もうお腹出して犬みたいになっちゃったと。たしかにね、僕が(裕也さんを)取材した時も、15年ぐらい前なんですけど。「最近、後輩とかでいいなと思う人、いますか? ロッカーとかで」って言ったら、「最近は、ゼブラがいいな!」って言っていて(笑)。
(玉袋筋太郎)ゼブラ! ゼブラなんだね。
(吉田豪)そう。「ゼブラ」って呼ぶんですよね。「ジブラ」っていまだに呼ばないぐらいの人だったのが。で、「裕也さんだけは許す」っていうルールで、裕也さんだけはゼブラって呼びつづけたんですけど。ただ、ZEEBRAさんが「裕也さんだけは許す」って言っていたのが伝わったみたいで、最近ようやく「ジブラ」に直ったっていう(笑)。
(玉袋筋太郎)かわいいなー(笑)。
(吉田豪)ところが、『ニューイヤーロックフェス』の常連の氏神一番さん。氏神さんもつい最近まで「ゼブラ」って呼んでましたよ(笑)。
(玉袋筋太郎)(笑)
(吉田豪)違うから……っていうね。
(玉袋筋太郎)いいね、氏神も。
(吉田豪)最近もヒップホップの先輩の高木完さんのバースデーパーティーを仕切ることになったら、なぜかそこに「裕也さんの誕生日も近いから。一緒にやってくれ」って言われて、裕也さんの誕生パーティーを仕切ることになって。
(玉袋筋太郎)(笑)。すごいなー! なかなか仕切れないよ、そんなものは!
(吉田豪)終了の朝5時半ぐらいにほとんどみんな帰った後に、裕也さんが「じゃあ、お茶でも行くか」って言って、帝国ホテルに行って。朝7時半ぐらいになったら「もう一軒行くぞ!」「ええーっ?」みたいな感じで、ヒップホップやパンクみたいな人間が10人ぐらい裕也さん一派として帝国ホテルに行くだけでもとんでもないのに。「これからオークラに行くぞ!」ってなって、朝8時半ぐらいまで続いて。緊張しっぱなしだから途中で眠すぎて。「もうダメだ」ってトイレに行って3分間タイマーをつけて寝たっていうね。
(玉袋筋太郎)おおー!
(安東弘樹)すごい。帝国からのオークラ。
(玉袋筋太郎)ねえ。帝国の逆襲ですよ、これ、本当に。
(吉田豪)(笑)
(玉袋筋太郎)ダースベイダーですよ、これ。やっていることは。
(吉田豪)「裕也さんの意思を受け継ぎたい」って言っているぐらいのね。
(玉袋筋太郎)おおー!
(吉田豪)「それがロックの人たちに少ないのは残念だ」っていう。
(玉袋筋太郎)ああ、なるほどね。そうかもしれない。
(吉田豪)そのへん、ちょっと断絶されちゃっているんですよね。たしかに。
(玉袋筋太郎)合鍵作って開けるとかね、そっちじゃねえんだよな(笑)。
(吉田豪)(笑)。そっちは受け継がないでいいですよ。
(玉袋筋太郎)面白いなー! いや、東京生まれの金持ちっつーのはやっぱすごいやつがいるんだよね。俺の周りでもいたんだけど、でもここまで。やっぱり横井英樹さんをおじいちゃんに持っている人はいないやな。
(吉田豪)いないですよ(笑)。
(玉袋筋太郎)いないよ、これ。すげーや。スケールが違う。
(吉田豪)だから慶応義塾時代の話だけでも面白いですからね。1個上に小林楠雄さんっていう住吉一家小林会の初代会長、日本青年社の初代会長。その筋の方の息子さんがいて。ZEEBRAさんがヤンチャになっていくうちに、一緒につるんでいた先輩で。お互いに幼稚舎から慶応で。で、お父さんのお葬式に行った時にZEEBRAさん、すでにヒップホップにハマッていて。髪の毛を刈り上げて、ナスカの地上絵みたいに入れていて。その頭でスーツを着ていって。向こうからパッと見ると五分刈りで、なんならその筋の若いのかな? って時に、ズラーッと若い衆が並んでいる中歩いて行ったら、向こうも振り返ると「えっ?」みたいになっていくっていう(笑)。
(玉袋筋太郎)おうおうおう(笑)。
(安東弘樹)いやー、でもやっぱり慶応って深いっすね。いろいろ幅がありますね。
(吉田豪)幅、ありますね。ものすごいちゃんとしたお金持ちと、アウトロー側の人が。いろんな人たちが混ざっているっていう。
(安東弘樹)アウトロー側、いるんすね。
(玉袋筋太郎)じゃあ正しいのかね。そういうことで言うと、バランス的に。どっちがいいとは言わねえけどさ。
(吉田豪)だから本当ね、親の関係。ちょうどこの頃、ホテルニュージャパンの関係で小林会とちょっと揉めていたらしいんですよ。おじいさんが。たしかに、だって僕も百瀬(博教)さんの取材をした時、よく小林会の名前が出ましたからね。
(玉袋筋太郎)出るな―!
(吉田豪)ニューラテンクォーターの絡みで……みたいな話ですよ。
(玉袋筋太郎)そうだよな! 百瀬博道さんはね、ラテンクォーターの用心棒やってたっていう人ですから。
(吉田豪)「だから下手したら僕がさらわれてもおかしくないぐらいの感じだったんですけど、関係ないじゃないですか。子供同士は」みたいな感じの(笑)。すごい話が出てくるんですよ(笑)。
(玉袋筋太郎)(笑)
(吉田豪)昭和の裏面みたいなものが見えるんですよ。
(玉袋筋太郎)かぁー! これはコクがある!
(吉田豪)ZEEBRAさん、いい話をいっぱい持っていますよ。まだまだっていう感じでしたね。
(玉袋筋太郎)でしょうね。すごいよなー! まあね、宇多ちゃんもそういうところと一緒にやっているわけですもんね。ライムスター宇多丸だってね。
(吉田豪)まあ、2人の共通点は酒乱っていうところですよ(笑)。
(玉袋・安東)(笑)
(玉袋筋太郎)怒っちゃうよ、宇多ちゃん(笑)。
(玉袋筋太郎)酒乱の俺に「酒乱」って言われたら、ミ酒乱だよ(笑)。
(安東弘樹)なんで上手いこと言ってるんですか(笑)。さあ、そしてお知らせです。吉田豪さんのインタビューが載った『実話BUBKA超タブー Vol.13』ですね。
(吉田豪)そのZEEBRAさんのインタビューが載っています。
(安東弘樹)いやいや、これ、今日いま聞いたZEEBRAさんの話、もっと詳しく載っていますよね。そして、現在発売中の週刊アサヒ芸能『輝く有名人スキャンダル大賞2016年春場所』。吉田豪さん、浅草キッド、宇多丸さんが有名人についていろいろ話しております。
(吉田豪)大賞受賞しました!
(玉袋筋太郎)豪ちゃんが受賞したの(笑)。
(安東弘樹)おめでとうございます!
(玉袋筋太郎)アサヒ芸能人。やった!
(安東弘樹)そして、こちらも現在発売中。『お笑いラジオの時間』で爆笑問題へのインタビューも掲載。
(吉田豪)玉さんと仲良しのね。
(玉袋筋太郎)ああ、俺の大好きな。
(吉田豪)(笑)
(安東弘樹)そして、月刊誌『BRODY』で篠田麻里子さんへのインタビューも掲載。
(玉袋筋太郎)おおー!
(吉田豪)そちらも面白いです。
(安東弘樹)そして、東京MX『吉田豪とハミダシ女』、絶賛放送中。
(吉田豪)冠番組!
(玉袋筋太郎)これがすごいんだよ、豪ちゃん。冠だもんね! しかもMXだからね。
(吉田豪)玉さんの相方も絶賛してます!
(玉袋筋太郎)ああ、そうだ。うちの相方も。元……いやいや、違う!
(吉田豪)違いますよ!
(玉袋筋太郎)相方ですよ!
(安東弘樹)現相方ですよ!
(玉袋筋太郎)かならず豪ちゃん、そうやって振るからな(笑)。
(吉田豪)(笑)
(玉袋筋太郎)そう言わねえとお客さん満足しねーと思っちゃって。かならず言うんだ、俺。
(吉田豪)オチみたいなね。
(玉袋筋太郎)いいぞいいぞー!
(安東弘樹)いいな、MXの冠。うらやましいなー。
(吉田豪)(笑)。安東さん大好きMX!
(安東弘樹)いや、もうMX、大好きですね。将来の夢はMXのMCをやることです。
(玉袋筋太郎)そうそうそう。長谷川をね、下ろしてね。
(吉田豪)下りないですよ(笑)。
(安東弘樹)そこは言ってないですよ(笑)。っていうことでね、吉田豪さん、次回の登場は6月3日。よろしくお願いします! 今日はありがとうございました。
(玉袋筋太郎)ありがとうございました。
(吉田豪)どうもです!
<書き起こしおわり>