漫画家の浦沢直樹さんがNHK FM『今日は一日ジェームズ・ブラウン&ファンク三昧』の中で急逝したプリンスについてお話をされていました。プリンスの魅力やシンパシーを感じるところなどを話しつつ、お気に入りのプリンス曲を1曲、紹介していました。
(浦沢直樹)『今日は一日ジェームズ・ブラウン&ファンク三昧』をお聞きのみなさん、こんばんは。漫画家の浦沢直樹です。プリンス(Prince)っていう人は、僕にとっては既成概念をまず取っ払うっていうのが……そうですね80年ぐらいですね。ことごとく、僕の憧れるようなアーティストの人が、「いまプリンスがいちばんすごい」っていう話をしていたわけですよ。で、僕が自分で「それならば」と思ってレコードを買って聞いてみたんですけども。それがね、やっぱり一向にわからない。
とにかく、聞きこむことによって、既成概念的に拒絶する何かが緩んでいったんですよ。で、それのタガみたいなものが全部外れた時に、全ての楽曲の意味がわかった、みたいなことがありましたね。なんでしょう。ちょっと裸になってみたりとか、際どいステージングをしてみたりとか。ちょっとヌメッとした感じ。そういうようなものっていうのが、ことごとくスクエアなものから見ると、ちょっと拒絶反応を示すような物があったんですよね。
でも、彼のやっていることはそんなことではないし。それらの表現方法を使って、何を伝えようとしていたか?っていうことが後々わかるわけですけどね。シンパシーとしては、もう彼のワーカホリックなところが、僕の80年代、90年代の支えになっていたというか。とにかく、作品を出し続ける。バイタリティーというよりも、やりたくてしょうがない。仕事じゃないですよね。もしかするとね。とにかく、自分から作品を発生させたいということ。それをとにかくやり続けてやり続けて、スタジオに籠もって籠もって。今回もどうやらそれが原因じゃないかって言われてるぐらいですけど。
ここんところ、ちょっと来日公演がなかったんで。ひさしぶりに生のプリンスを見たいなってちょうど思っていたところなんですよね。で、新作が出てきたところなので、ひさしぶりに来日があるかな?って楽しみにしていたところなんですけども。ちょっと信じられなくて。本当に、ちょっと受け止めきれない感じでしたね。はい。
でも、おそらくここからものすごい勢いで未発表曲が世に出てくるはずなんですよ。これから発見されていくアーティストなのかもしれないですよね。彼の魅力がね。まだ、本当にしゃぶり尽くされていない。彼の本当の業績を、みんなこれから確認していく時代に入っていくのかもしれないですよね。非常に寂しい状況ではありますけども。それでは、僕のファンク一曲入魂の曲なんですけども。これはもうやっぱり、大好きなアルバムでプリンスの『Sign ‘O’ the Times』の中で、このとんでもないリズム。かっこいいリズムです。聞いていただきます。『Housequake』。浦沢直樹でした。
Prince『Housequake』
<書き起こしおわり>