音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんがTBSラジオ『ザ・トップ5』の中でフィラデルフィア・ソウル(フィリーソウル)を特集。日本のディスコ歌謡楽曲なども含めて聴き比べていました。
(高橋芳朗)もうさっそく、洋楽コーナー行っていいですか?
(熊崎風斗)お願いします。
(高橋芳朗)今年最初の洋楽コーナーはですね、この後、映画動員数ランキングで紹介するボクシング映画の名作ですね。『ロッキー』の新章『クリード チャンプを継ぐ男』にちなんだ選曲をしてみました。すごい音楽的にもね、語り甲斐のある映画だったんで。
(熊崎風斗)はい。
(高橋芳朗)で、『ロッキー』シリーズというと、アメリカ ペンシルバニア州フィラデルフィアが舞台でお馴染みですよね。で、フィラデルフィア美術館の正面階段。通称ロッキーステップを駆け上がるシーンがあまりにも有名ですけどもね。で、今回の『クリード チャンプを継ぐ男』でもフィーチャーされていましたけど、フィラデルフィアはね、ブラックミュージック。ソウルミュージックが非常に盛んな地域なんですよ。
(熊崎風斗)そうなんですね。
(高橋芳朗)で、特によく知られているのが、1970年代に一世を風靡しましたフィラデルフィア・ソウル。通称フィリーソウルなんて呼ばれたりするソウルミュージックのサブジャンルがあるんですけども。音楽的には、結構美しいゴージャスなストリングス。弦楽器と、高揚感のあるダンサブルなリズムが特徴的なんですけども。このフィリーソウル、日本の歌謡曲にも非常に大きな影響を与えてるんですね。
(熊崎風斗)はい。
(高橋芳朗)特に1970年代に筒美京平さんなんかが手がけました、いわゆるディスコ歌謡なんかはフィリーソウルを、フィラデルフィア・ソウルをモチーフにしているものが多くて。そこでですね、今日はオリジナルのフィリーソウルとフィリーソウルの影響下にある日本のポップスを何曲か聞き比べてみたいと思います。
(熊崎風斗)はい。
(高橋芳朗)まずは、フィリーソウルの魅力や醍醐味がわかりやすく打ち出されているものとして、こちらの曲を聞いていただきたいと思います。トランプス(The Trammps)の1972年の作品で、『Penguin At The Big Apple』。聞いてください。
The Trammps『Penguin At The Big Apple』
(高橋芳朗)これ、歌入りのバージョンもあるんですけど、ちょっと音楽的な特徴がわかりやすいように、インストゥルメンタルのバージョンで聞いていただいているんですけど。トランプスって、『なるほど・ザ・ワールド』のテーマ曲でお馴染みですけどね。あの感じです。フィリーソウル。
(熊崎風斗)ふーん。
(高橋芳朗)こう、流麗なストリングスがバーッ!っとなる感じですかね。続いて、この音の感じをよく覚えておいてほしいんですけど。フィリーソウルの影響を受けた日本の歌謡曲の代表例を1曲、聞いていただきたいと思います。筒美京平さんが手がけたディスコ歌謡の中でも、特にフィリーソウル色が強い曲として、岩崎宏美さんの1975年の作品で『センチメンタル』です。
岩崎宏美『センチメンタル』
(高橋芳朗)結構共通項は見出しやすいんじゃないかな?って思うんですけど。いかがですかね?
(熊崎風斗)続けて聞かせてもらうとやっぱり、似てるというか。雰囲気が近いというか。
(高橋芳朗)結構でも、70年代はこういうフィリーソウルのサウンドを取り入れた歌謡曲がもう大量にあってですね。これだけで結構長い特集が組めるぐらいなんですけども。で、ちょっとここ最近のJポップでもこうしたディスコ歌謡。フィリーソウルのサウンドを継承した歌謡曲のオマージュと言えるような曲が作られて大ヒットしたんですけど。なんていう曲だと思いますか?
(熊崎風斗)なんでしょう?
(高橋芳朗)誰の、なんていう曲でしょう?
(熊崎風斗)なんでしょう?台本に書いてありますけど・・・(笑)。
(高橋芳朗)去年の紅白歌合戦でも披露されました。AKB48『恋するフォーチュンクッキー』でございます。
AKB48『恋するフォーチュンクッキー』
(熊崎風斗)これがそうか・・・
(高橋芳朗)モロに、こうやって並べて聞くとさ、ディスコ歌謡を踏襲した作りっていうのがわかりません?
(熊崎風斗)でも、『恋するフォーチュンクッキー』は普通によく聞いてますけど。こういう流れをくんでできた曲ッて言うことなんですよね。知らなかった。
(高橋芳朗)これね、カラオケバージョン。インストゥルメンタルバージョンで聞くと、ストリングスがもっと全面に出て、『ああ、フィリーソウルっぽいわ!』っていうのがよりはっきりとわかると思うんですけども。いいですねえ。
(熊崎風斗)いいですね。
(高橋芳朗)あっちゃんとね、優子も飛び入りしますよ。そりゃあ。その他ですね、フィリーソウルをモチーフしたJポップで個人的に好きな曲があってですね。TBSラジオ、毎週土曜日放送の『相談は踊る』パーソナリティーのジェーン・スーさんが作詞を手がけておりますTomato n’Pineの『キャプテンは君だ!』。
Tomato n’Pine『キャプテンは君だ!』
(熊崎風斗)ああー。
(高橋芳朗)もうある種のフィリーソウルの特徴みたいなのがなんとなくわかっていただけるんじゃないかな?と思います。このまま聞き続けたいですね。あと、フィリーソウル。音楽だけじゃなくて、歌詞的にも特徴があって。結構希望とか理想を力強く歌い上げるポジティブなものだったり、社会的なメッセージを含んだものが多くて。
(熊崎風斗)へー!
(高橋芳朗)フィラデルフィアってほら、アメリカの独立宣言が執り行われた土地であることとか、そういうのも関係あると思うんですけどね。うん。だからそういった意味では、理想を歌い上げているAKBの『恋するフォーチュンクッキー』とかTomato n’Pineの『キャプテンは君だ!』とかは、歌詞の面でもある種フィリーソウル的と言えるんじゃないかな?と思いますけどね。で、『クリード』の劇中でもね、ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツ(Harold Melvin & The Blue Notes)の『Wake Up Everybody』っていう曲が使われているんですけど。
(高橋芳朗)これも『未来に向けて、さあ、立ち上がろう』みたいな。人々に行動を促す曲なんですけどね。というわけで、美しいストリングスと、高揚感のあるリズムと、ポジティブな歌詞のフィリーソウルは新年の幕開けにぴったりなんじゃないか?っていうことで、最後にもう1曲。個人的にお気に入りのフィリーソウルの名曲を聞いていただきたいと思います。ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツ、1975年の作品で『Bad Luck』です。
Harold Melvin and the Blue Notes『Bad Luck』
(高橋芳朗)みんな、大好きー!って言いたくなりますね。
(熊崎風斗)いやー、そうですね。
(高橋芳朗)ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツで『Bad Luck』、聞いていただきました。
(熊崎風斗)聞き入っちゃいましたね。
(高橋芳朗)というわけで、今日は映画『クリード チャンプを継ぐ男』の舞台であるフィラデルフィアにちなんで、フィリーソウルを紹介しました。
(熊崎風斗)ありがとうございます。
<書き起こしおわり>
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