菊地成孔 ジャズとの出会いを語る

菊地成孔 ジャズとの出会いを語る 爆笑問題の日曜サンデー

菊地成孔さんが2011年にTBSラジオ『爆笑問題の日曜サンデー』に出演した際のトーク書き起こし。菊地さんがジャズとの出会いやハマッたきっかけについて爆笑問題のお二人と話していました。

(太田光)そういう環境でいながら、ジャズに目覚めるっていうのはどういうきっかけなんですか?

(菊地成孔)あの、もともとどっからジャズ入るか?っていうのはあるんですけど、私の場合はムード歌謡からですよね。

(太田光)えっ?ムード歌謡?

(田中裕二)たとえば?

(菊地成孔)マヒナスターズとか。

(太田光)ええっ!?でも、世代ぜんぜん違うでしょ?

ムード歌謡でジャズに目覚める

(菊地成孔)そんなことない。63年生まれだから。生まれて、家の有線でかかっていたりとか。

(太田光)ああー、水商売だから。

(菊地成孔)水商売だから。あと、ポツンと水商売じゃないから。もう歓楽街の真ん中だったんで。近所がスナックで、両脇が映画館で、斜向かいがストリップ劇場だったんで。

(田中裕二)ああ、そうなんだ!

(菊地成孔)はい。だから街歩いているとずーっとムード歌謡が流れている。

(太田光)ムード歌謡からジャズ、行きますか?

(菊地成孔)ムード歌謡ってジャズバンドがやってるじゃないですか。

(太田光)ああ、ビッグバンドみたいなのがやっていて。ああ、そういうことなのか。

(田中裕二)なに?たとえば『ラブユー東京』みたいな?

(菊地成孔)あんなのもそうですし。もっとジャズっぽいのもありましたね。『逢いたくて逢いたくて』とか。園まりさんの。演歌みたいなのは違うんだけど。

(田中裕二)うん。

(菊地成孔)もっとモダンっていうの?当時の。サックスやトランペットの前奏があって、ジャズバンドがビャーッ!ってやって。あとはクレイジーキャッツさんがスターでしたから。そっから入りですよ。

(田中裕二)そうか。じゃあ、本当にクレイジーキャッツとかなんだね。

(太田光)それで、高校とかに行ってジャズ研みたいなのに入るんですか?

ナスティーな実家の商売

(菊地成孔)うんとね、中高の時は、よくある話ですけど。家がナスティー。飲み屋で。野蛮っていうかナスティーなのが1回、嫌になるんですよね。

(太田光)ああ、ちょっともうこんなのは嫌だと。

(菊地成孔)あの、客が地回りの・・・漁師町ですから、海産資源のやり取りをする地回りのヤクザと、あと遠洋から上がってきて、なんでもいいから大暴れしたい人たち。

(田中裕二)(爆笑)

(太田光)荒くれ者の。篠塚もいるし。

菊地成孔 銚子時代の元巨人軍・篠塚を語る
菊地成孔さんが2011年にTBSラジオ『爆笑問題の日曜サンデー』に出演した際のトーク書き起こし。銚子出身の菊地成孔さんが、元巨人軍の篠塚和典さんの銚子時代の話をしていました。(田中裕二)でもこれ、1963年、銚子でお生まれになったということ...

(菊地成孔)そこに篠塚がいて。『跳ねてみろ』とか言われて。

(太田光)『跳ねてみろ』(笑)。

(菊地成孔)チャリンチャリンって。取られちゃうんで。で、毎日すごい喧嘩があるんですよ。で、おふくろと一緒に血、拭いたりして。

(江藤愛)えっ?血を?

(菊地成孔)うん。歯とかね。

(田中裕二)そんなとこ!?

(太田光)歯が落ちてて。

(菊地成孔)畳と畳の目の間に歯とか、鼻の切れっ端とか落ちてるんですよね。

(田中裕二)ええーっ!?

(太田光)相当な状況ですね。

(田中裕二)っていうか銚子の人、怒らない?本当、そんな状況なの?

(菊地成孔)うちの店、そうでしたよ。はい。おやじがあんまりタチの悪い客、下駄でぶん殴ったりしてました。板前の。

(太田光)下駄で?(笑)。へー、それで嫌になって?飛び出すわけですか。

(菊地成孔)嫌になって。飛び出さないけど、まあ、ね。世代的にクリスタルじゃないですか。

(田中裕二)『なんとなく、クリスタル』。

(太田光)田中康夫の(笑)。

(菊地成孔)だから、そしたら家が飲み屋で、毎日おふくろとゲロとか血とか拭く・・・

(田中裕二)そんなの嫌だ!と。

(菊地成孔)最悪(笑)。

(太田光)どこがクリスタルなんだ!?と。

(菊地成孔)ぜんぜんクリスタルじゃない。

(田中裕二)ちょうどそれこそね、思春期というか。

(太田光)たまにクリスタルっていうと、金歯がちょっと・・・

(一同)(笑)

(太田光)『ちょっと、クリスタル』かな?って。

(田中裕二)『ちょっと』じゃない。『なんとなく、クリスタル』。

(菊地成孔)割れたコップの破片とかね。クリスタル。

(田中裕二)それが嫌だった。

クラシック音楽を始める

(菊地成孔)嫌だったの。なんで、きれいにきれいに行こうとして。で、反対に行って。全部囲いもので隠して。で、クリスタルにやっていたんですよ。で、クラシック、やったの。

(太田光)えっ?クラシックに行ったの?

(菊地成孔)クラシック。1回。反動で(笑)。

(田中裕二)えっ、それは、芸大ですか?

(菊地成孔)ううん。芸大に入学するために、中高でクラシックをやっていたんですよね。で、オーケストラに入って、いちばんエレガントにやるんだと思って。

(太田光)楽器はなんですか?

(菊地成孔)ファゴットっつって。

(太田光)ファゴット?

(菊地成孔)ファゴット。バスーンっていうの。こんなデカい楽器で、こんなデカい管楽器でね。

(田中裕二)管楽器ね。

(菊地成孔)こんなデカいのに、音が小さいんですよ。クラシック用の楽器ですね。

(田中裕二)なんでそれを選んだんですか?

(太田光)地味な。また。

(菊地成孔)なんか、市響っていう。銚子市交響楽団。市響みたいなの、あるじゃないですか。あと、ブラスバンドみたいなのいったら、そこしか空きがなくて。やってたんですよ。で、それを吹いていて。で、『よし、このまま芸大に行って、クラシック入るんだ。燕尾服着て、かっこよくやるんだ』と思っていたんですけど、無理がたたって。やっぱり(笑)。背伸びだったんで。

(太田光)(笑)

(田中裕二)ちょっとガラじゃなかったみたいな。

(菊地成孔)ガラじゃなかったんです。で、バーン!って一気に戻っちゃって、ジャズに。

(田中裕二)戻って。

(菊地成孔)ジャズだジャズだって。

(田中裕二)で、また血を拭く生活になっちゃったんですか?

(菊地成孔)血はね、もう最近は拭いてないですけど(笑)。ゲロは最近も拭きますけどね。

(太田光)(笑)

(田中裕二)えっ、それで結局芸大は行かなかった?

(菊地成孔)行かなかった。芸大入試はやめちゃって。で、一般大学に入って、そんな話ばっかりですけど、当時コピーライターブームだったじゃないですか。

(田中裕二)はいはい。コピーライター。

(太田光)また乗りますね!

(菊地成孔)乗ります(笑)。

(田中裕二)ちょうどね、糸井重里さん。

(太田光)流されやすいわー。

(菊地成孔)流されやすいんですよ。あの、流れ流れてですよ。

(田中裕二)まあ、クリスタルの次は絶対にコピーライターですよ。広告業界。

(太田光)そりゃそうだね。広告代理店だ。

(菊地成孔)1行何千万って言われて。それでなんかこう、適当なことを言って何千万だ!って思ったんで、大学の文学部に入って広告代理店に入ろうとしたんです。

(田中裕二)はあ・・・

(太田光)(笑)。節操ねえなー!それで?

(菊地成孔)で、やめたんですよ(笑)。

(太田光)やっぱりそれもダメだったと。

(菊地成孔)ダメだった。あの、博報堂さんが当時、ええとね、名前言っていいのかな?ブームになったんで、コピーライター養成講座っていうの、作ったの。願書をもらって。第一期生。もし、願書を出していたら、ナンシー関さんと隣の席だったの。

(田中裕二)へー!

(太田光)あ、ナンシー関はそこにいたんだ。

コピーライターを断念し、ジャズに戻る

(菊地成孔)そうなの。でも僕、行かなかったんですよ。で、結局やめて。なんかやっぱり、どうもおかしいなと思ってジャズに戻ったら、スッキリしました(笑)。

(田中裕二)(笑)。ジャズに戻った、そん時からもうサックスですか?

(菊地成孔)そうです。はい。サックスです。

(田中裕二)サックス、その前はまったくやっていない?

(菊地成孔)やってないです。ずっとファゴットだったんで。

(太田光)同じような感じなんですか?

(菊地成孔)まあ、管楽器だしね。サックスの方が簡単です。あれはバカでもできますよ。

(田中裕二)太田さんもサックス、ね。

(太田光)僕はバカだからサックスやって。

(菊地成孔)(笑)。いや、クラシックの楽器は、昔の楽器だから機能性が悪いんですよね。だけど、サックスは最近のだからデジタルっちゅーか、簡単になって。指も簡単だしね。音程もよく取れるし。だからまあ、簡単ですよ。だからクラシックの楽器から行ったら、楽にできるんで。

(田中裕二)だから逆に難しいのを先にやっちゃってるからね。

(太田光)楽器は本当にね、そういうサックス、トランペット、ベースとかっていうのって、本当になんか性格が出ますよね。

(菊地成孔)出ますよね。はい。

(太田光)なんか、俺もだからたまに。年に1回ぐらい、クリスマス爆チューライブでサックス吹いたりするんだけど。そのバンドの人たちと話してると、やっぱりね、トランペットやる人は本当に目立ちたがり屋。っていうのが多いって俺は聞くのね。で、サックスやる人は、ちょっとひねくれているんですっつってたね。

(田中裕二)ふーん。そうなんだ。

(太田光)目立ちたいくせに、ちょっとこう、後ろに一歩引いて目立つみたいな。

(田中裕二)へー。なんか花型っていうイメージがあるけどね。

(太田光)花型だけど、トランペットほど真正面に行かないっていうか。なんかそういう性格があるって言いますよね。

(菊地成孔)そうそう。トランペットって、こうやってバーン!ってまっすぐ音がバーッ!って前に出るんですけど。サックスって下からミョーンってこう・・・

(太田光)そうそうそう。やっぱりちょっとこう、猫背な・・・

(田中裕二)日野皓正さんはトランペットだよね?

(菊地成孔)日野さんは大スターですよ。日野さんは一枚目ですよ。ものすごい、目立つ。渡辺貞夫さんはサックスです。

(田中裕二)ナベサダさんはサックス。MALTAさんは?

(菊地成孔)MALTAさんはサックス。

(田中裕二)なんかでも、俺の中では結構サックスがかっこいいイメージがすごい・・・
(太田光)だからそれは、そう思っているんだけど。本当はいちばんサックスがかっこいいんですよ。だけど、なんとなく、なんて言うのかな?ちょっとひねくれたかっこよさっていう感じなんだよね。

(菊地成孔)トランペットはほら、クラシックにもあるから。ピアノもあるじゃないですか。だからドラムとサックスだけはジャズ用ですよね。

(田中裕二)ふーん。そっか。

<書き起こしおわり>

菊地成孔 銚子時代の元巨人軍・篠塚を語る
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菊地成孔と爆笑問題が語る ジャズと落語の共通点
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