菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』の中で復帰することを発表した宇多田ヒカルさんと大西順子さんについて話していました。
(菊地成孔)ええと、そうですね。最後に一通だけ。(投稿メールを読む)『菊地成孔さん、こんにちは。AMで聞いています。私は17、8年前、友人の車に乗っている時にFMラジオで宇多田ヒカルさんの「Automatic」を聞いて、新しいな!と思ったんですが、何をもって新しいと感じたのか、自分自身でもわかりません。音楽の専門家である菊地さんは宇多田ヒカルの特別なところはどこだとお考えでしょうか?どうかお聞かせください』。ヘビー級(のリスナーの)方です。ありがとうございます。
これは、何でしょうね?ガチで答えた方がいいんでしょうね。あの、ヘビー級の方だったらご存知だと思いますけど、私、宇多田さんが人間活動に専心されるために一度引退されたと。その引退される直前に最後にコマーシャルソング。名前出しちゃっていいだろうな?いや、出さないことにしよう。日本人のほとんどが口にしたことがある炭酸飲料で、色が黒いやつ(笑)。それのダイエット版。カロリーがないやつ。の、CMの主題歌を宇多田さんが歌って、私がプロデュースしたんですよ。
宇多田ヒカルとの曲作り
その時にがっつり宇多田さんと仕事をさせていただいて。宇多田さんの仕事っていうのはプロデューサーさんとかディレクターさんがね、スタジオにいないの。それで、でっかーいスタジオにフェンダーローズっていうキーボードが置いてあって。そこに宇多田さんと私が並んで座るんですよ。連弾をするみたいに。で、後ろにお父様が立つんですね。あの有名な宇多田パパが立って。で、それで2人でキーボードを弾いて、『こんな風なのはどうですか?こんな風なのはどうですか?』っつって仕事するんですけどね。はい。
まあ、宇多田ヒカルさんが新しかったですね。すごくね。まあ、声ですよね。そして、日本の国文学が好きだっていうことをR&Bのミュージシャンでありながら比較的早くに発言して、『国文学とR&B』っていう一見結びつきそうにない2つのファクターを結びつけたことでしょうね。新しさはね。あとはまあ、英語タイトルに奥深さがあるところじゃないですかね?『Automatic』、『Traveling』、『First Love』などという単語は、まあ誰でも知っている単語ですよね?ただ、やっぱり使い方とかですね、歌詞全体の中に置かれた時の意味合いがやっぱりバイリンガルの人は違うなっていう感じがしますね。
まあ、これだけだって宇多田ヒカルさんの特性というか属性というかね、アーティストとしての新しさっていうのは、まあ氷山の一角しか言い表してないですけどね。はい。また復帰されるわけです。非常に復帰、おめでたいわけですけども。まだメールアドレスが同じだった場合ですね・・・違う、まあ変わっていると思いますけどね。『おめでとうございます』っていうメールも私、打てる状態に私、いまなっているんですけども(笑)。
まあ、それよりも先週申し上げた通り、宇多田さんの復活劇が大西順子さんの復活劇の潰しになるんじゃないか?ということを懸念しているような年頃になってしまいました。私も。そうした懸念を、おそらく全くしていないのがタレントの方だと思うんですよね。私はこの場合、プロデューサーということになるんですけども。来週の『粋な夜電波』は大西順子さんがいらっしゃって、この番組できっぱりとですね、『男の中の男』と言われるほどきっぱりと引退宣言をなさった大西順子さんがこの番組にまた戻ってまいりまして復活宣言をされると。
まあ、なんて言うんですかね?江戸の仇を江戸で・・・っていう感じでしょうね(笑)。長崎でとらないっていう(笑)。だいたいそういうことになるんですけど。江戸の仇を長崎でとるっていうことになるわけなんですよね。それはまあ、世界史が物語ってますけども。さすが、そこは大西さんですよね。J-WAVEかなんかの番組で復活宣言されたら困っちゃうんで(笑)。プロデューサーとして。なのでまあ、この番組で復活宣言されるらしいですよ。
これはあの、大西さんの復帰後第一作のプロデュースを私がしているから、それが私のレーベルであるTABOOから出るので、プロモのために私の方が仕込んだとかではなく、大西さんの方からご自分で『久しぶりにラジオにでも出たい』と思い立ったのか何なのか、大西さんの方からの売り込みだということを強調させてください。そのぐらいの良心はあるんだっていうことですね(笑)。私の中にも。何を言ってるんだかよくわからないですけど。
かなりのなあなあなまま、来週大西さんが特に何らかのタイミングがあるわけでもなく、まあ『アルバムをお楽しみに』っていう話プラス、どうして復帰することになったんですか?っていうね。せっかくですから、村上春樹さんを連れて来てくれるとね、すごいありがたいんですけどね。小澤征爾さんも一緒に連れて来ていただけると、もう最高ですよね。それで数字が上がったなら、私も納得しますよ。内容と数字がリンクしてるっていうことにね。
で、まあいちばん楽しみなのは、小澤征爾さんと村上春樹さんが来て、数字が下がるっていうことなんですけど(笑)。まあ、こんな痛快なことはないっていうね。ビッグデータとビッグネームに関する相関関係に関してね、この実験、やってみたいんですけど、おそらく大西順子さんが1人で手ぶらで来ると思いますんで。申し訳ないですね。いまからすげーたのんでみようかな?まあ、お楽しみにと(笑)。そんなこと言っちゃいけねえか。絶対に来ないですからね。大西さんしか来ないと思いますんでね。
まあ、そんなわけで大西順子さんが、文字通りこれは本当にですけど、来週ふらっと現れますので。音楽はまあ、フラットとシャープとナチュラルでできているわけですけどもね(笑)。その中で、シャープとナチュラルの話をね、来週は。ふらっと来て頂いて、シャープとナチュラルの話をするっていうような感じでですね、まあ、いらぬ三題噺にオチがついた感じなんですけどね(笑)。来週は大西順子さんをお迎えしてお送りしたいと思います。
<書き起こしおわり>