松尾潔・吉岡正晴・西寺郷太 ニュー・エディションを語る

松尾潔・吉岡正晴 現代に最も影響を与えた90年代アーティストを語る WOWOWぷらすと

松尾潔さんと吉岡正晴さんがWOWOWぷらすと『90年代洋楽R&B考』に出演。西寺語さんとニュー・エディションとジョニー・ギルについて語り合っていました。

(松尾潔)ジャネットおっぱいポロリっていう時のジャネットって、何才だったと思います?

(吉岡正晴)えっ?2004年だったら38か?

(松尾潔)そうですね。

(西寺郷太)(笑)

(松尾潔)まあ、誕生日前で37だったかも。

(吉岡正晴)ああ、誕生日前だ。じゃあ37だ。66年生まれだから。

(松尾潔)そうだ。今日、吉岡さんとご一緒してるから、そのタイミングで言いますけど。これ、僕、26日に出たって言いましたけど、その前にまあ吉岡さんにお渡ししてたんですけど。

(西寺郷太)はい。

(松尾潔)もうね、出る前の日ぐらいに『松尾くん、あれ、ボビー・ブラウン(Bobby Brown)の生まれた年、間違っているから』って言われて。『えっ?まだ出てないのに・・・』と思って。『これね、69年生まれって書いてるんですけど、あれ、67年だから。いわゆる2才サバ読み説ね』って。『ごめん、いわゆる知らない!』っていう(笑)。

(一同)(笑)

(松尾潔)『なんですか?それは』っつったら、『僕、本人に聞いたから』って。

(西寺郷太)あれ?あの、ジョニー・ギル(Johnny Gill)の『Johnny Gill』っていう二度目に出た『Johnny Gill』って、3枚目のアルバムですか?

(松尾潔)あの、コテリオン(Cotillion)っていうところから2枚出して。アトランティック傘下。そして『Johnny Gill』っていうのはモータウンから1枚目だから、合計で3枚目ですね。

(西寺郷太)まあ、3枚目。

(松尾潔)ただし、その前にステイシー・ラティソー(Stacy Lattisaw)とかと一緒にデュエットアルバムを出しているから、それを含めると4枚目ですけどね。

(吉岡正晴)ああ、そうだね。うん。

(西寺郷太)ああ、そうっすか。なるほど。

(松尾潔)なんでも聞いて。

(西寺郷太)いや、なんか僕もジョニー・ギル大好きだから(笑)。

(吉岡正晴)ああ、そうなんだ。

(松尾潔)もう、ジョニー・ギル夫のことはいつでも聞いて。

(西寺郷太)ギル夫。

(松尾潔)ギル夫。ボビ夫。

ジョニー・ギルとニュー・エディション

(西寺郷太)まあ、1個だけその表現で言うと、ジョニー・ギルっていうアーティスト。僕も大好きで。ニュー・エディション(New Edition)っていうグループがあって。で、まあニュー・エディションは、これも話すと・・・まあ、SMAPとかにたとえるとわかりやすいんすかね?わかんないけど。もう、大きく言うと6人なんですよ。だけど、1人辞めたり、1人入ったりっていうのがあって。まあ5人の時もある。で、その中の、まあ全員結果的に有名になったんだけど、これがまたニュー・エディションって人生が詰まっていると思いません?

(吉岡正晴)ああ、そうだね。

(西寺郷太)なんて言うのかな?いちばん、もともとスターだったラルフ(・トレスバント Ralph Tresvant)っていう・・・まあ、ハンサムで声もめちゃくちゃかわいい、子どもの頃には、それがいわゆるセールスポイントだった。

(松尾潔)まあ、ネクストマイケルだったわけですよね。

(西寺郷太)が、大人になると一番人気。もうはっきり言って、80%ぐらいは彼の人気だったと思うんだけど。成長すると、それが逆転しちゃうというか。

(吉岡正晴)で、ボビー・ブラウンにトップの座をとられちゃう。

(松尾潔)ああいうグループの中で、1人バッドボーイのポジションがあって。

(西寺郷太)不良っぽいの。

(松尾潔)たとえばテイク・ザット(Take That)っていうグループにも1人、ロビー・ウィリアムズ(Robbie Williams)っていう人がいましたけど。あとは、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック(New Kids On The Block)におけるドニー・ウォールバーグ(Donnie Wahlberg)とか。

(西寺郷太)もうドニーって本当の不良っぽいのがいるんですよ。

(松尾潔)ちょっと1人ワルのポジションっていうのがいて。そこのポジションにいたボビー・ブラウンっていう人が、いち早くグループを抜けちゃうんだけど。これがまさかの、古巣全体よりもこっちが売れちゃうっていうね。

(東美樹)へー!

(西寺郷太)歌が上手な人じゃなかったんですよ。ボビー・ブラウンっていうのは。

(松尾潔)ただセックスアピールがある。

(西寺郷太)ただ、すっげーヤンチャな感じで。そうそうそう。でも、ジャニーズでもそういう人、1人入れてますもんね。

(吉岡正晴)あと、踊りがまあ、上手。

(西寺郷太)踊りかっこいいし、あと、痩せてましたしね。ものすごい筋肉が。いや、それでその後に入ったのがジョニー・ギルっていう、これまたぜんぜん違うタイプの。

(松尾潔)超実力派。

(西寺郷太)むちゃくちゃ歌が上手い人が入ったんです。

(松尾潔)悪いやつが抜けた後に、今度上手い人が入ってきた。

(東美樹)正統派が入った。

(西寺郷太)超正統派で。ただ・・・

(松尾潔)この人事は間違っているんじゃないか?

(西寺郷太)(笑)。だから、ものすげーかわいい声の、もともといたラルフっていうかわいい感じのスーパースター。僕も大好きなんですよ。彼も。と、死ぬほど男臭いっていうか、老けてるんじゃねーか?っていうぐらいの2人が同居するって。その、残り3人っていうのがベル・ビブ・デヴォー(Bell Biv DeVoe)って言って。まあどっちかって言うとすごい、ワーッていう。余り物みたいになっていた。

(東美樹)余り物(笑)。

(西寺郷太)最初はね。だけど、この・・・ソロのアーティスト、まあラルフはソロでやっていけるし、もともと一番人気だったから。で、ジョニーももともとソロだったし。で、ボビーは辞めてソロになって大ヒットしてて。で、この2トップがそれぞれソロ・アルバムを作るっていうから焦っちゃって、他の3人がなんかやんなきゃしょうがない!ってやったのも大ヒットしちゃったの。

(東美樹)へー!

(松尾潔)これをね、日本史的には『毛利家の三本の矢』っていう。

(一同)(笑)

(西寺郷太)『ベル・ビブ・デモウ』(笑)。

(吉岡正晴)上手いね。それ、出てきたっけ?毛利家の三本の矢。それ、書いてないよね?

(松尾潔)あの、もうちょっと文学的な表現に・・・

(一同)(笑)

(西寺郷太)いや、それでジョニー・ギルの章から始まるんですけど・・・

(松尾潔)言っておきますけど、お笑いの本じゃないんで。

(西寺郷太)(笑)

(松尾潔)ニヤケ禁止です。これ。

(吉岡正晴)いやいやいや、挿しで入れておいてほしいな。小さい字でもいいから(笑)。

(西寺郷太)『毛利家の三本の矢と言う・・・』って、言わないです!ここで言ってるだけで(笑)。

(松尾潔)すっげーウケてるな、この話。

(吉岡正晴)面白いよ、いまの。

(西寺郷太)この、でもジョニー・ギルっていう人が、もうどう考えたっていちばん歌が上手いわけ。もうソウルフルで、バコーン!って歌うの。

(吉岡正晴)もともと子役天才だったの。12、3で出てきている。

(松尾潔)そうそうそう。

(東美樹)へー。子役から来ている人。

(松尾潔)もともとソロでやっていた人なの。

(西寺郷太)で、あの、3人でめっちゃ説明してる(笑)。

(松尾潔)これが三本の矢みたいな。

(一同)(笑)

(西寺郷太)ニュー・エディション三本の矢!それで、よくほら、美空ひばりさんとかが、歌うますぎて子どもの頃、怖いみたいな。マイケルもそういう風に言われてるんだけど。『気持ち悪い、なんでそんな不倫の歌とか歌えるの?』みたいな。気持ち入りすぎている。子どもなのに。

(松尾潔)言うなればね、ちびっこ天才演歌少年みたいな感じだったの。モロにゴスペルの影響を感じさせる。

(西寺郷太)それがジョニー・ギル。それをね、この松尾さんの1話目に登場するんですけども。僕なんか、そもそも大ファンなんで。その、なんでもジョニー・ギルとかそのへんのことが書いてあるだけで、うれしいわけですよ。本当に。でも、そこの時に・・・

(音声途切れ)

(西寺郷太)90年代にジョニー・ギルがなかなか、上手いのに、なかなか上手く。まあ、いろんなキラーフレーズが出てくるんですけど、上手くいかなくなっちゃう時に、なんか『超巨大な車が、あたかも西荻窪の狭い路地に入りづらいように』っていう表現が。まあ、もうちょっとちゃんとした表現なんですけど。その、でっかい車でいい車なんだけど。まあ、ハマーみたいな車を想像して。それが、西荻窪の路地に入ろうとしても入れないみたいな。当時はそれぐらい、融通のきくコンパクトな車が流行っていたのに。歌が上手いって本当はいいことなのに・・・

(松尾潔)その体を持て余すっていう。

(西寺郷太)でっかい車だから動きづらくなっていたっていう。

(松尾潔)うん。付け加えるならば、僕は日通自動車学校っていうところ出身だったので。

(西寺郷太)僕もなんですよ。

(松尾潔)マジで!?

(西寺郷太)西荻の、日通です(笑)。

(松尾潔)でもあのあたり、本当難しかったじゃん。

(西寺郷太)難しいっす!いや、びっくりした、いま。あそこですよ、あそこ。

(松尾潔)立教女学院のスクールバスと何回ぶつかりそうになったか。俺。路上の時ね。

(吉岡正晴)僕、目黒の日の丸。

(西寺郷太)目黒の日の丸(笑)。それも、テスト出ますからね。テスト、出ますよー。うん。いやでも、そういうね、意味でね、そういう表現も出てきて。まあともかく、面白い本なんですよね。

(吉岡正晴)まあ2人とも、どっちもたとえが上手いよね。郷太くんも松尾さんも。これは僕も見習わなきゃいけないと。

(松尾潔)いやいや、そんな文豪の郷太さんと比べられるなんて・・・

(西寺郷太)いやいや、嫌らしい言い方(笑)。

(吉岡正晴)さっき『文豪 西寺郷太』って(笑)。

(松尾潔)サインを(笑)。

90年代R&Bのキーワード

(西寺郷太)はい。あ、それではお二人に質問してもいいですか?まず、松尾さんに。90年代のR&Bを考える時に欠かせないキーワードはありますでしょうか?

(松尾潔)90年代のR&Bねえ。

(西寺郷太)80年代との違いってことですかね。

(松尾潔)80年代との違いってことで言うと、まあさっき言いましたけど、ヒップホップとの共存ってことだろうね。

(西寺郷太)若い世代が、やっぱりサウンドトラックを作る実権を握ったっていうところもあるんですかね?

(松尾潔)そうだね。あと、90年代、ボーカルグループが花盛りだったということも、ちょっとここで言っておきたいですね。

(吉岡正晴)ジョデシィ(Jodeci)。

(松尾潔)まあ、ジョデシィもそうだし、ボーイズ・II・メン(Boyz II Men)。

(西寺郷太)まあ、女の子もそうですもんね。アン・ヴォーグ(En Vogue)とかね。

(松尾潔)ジョデシィ、アン・ヴォーグ、SWV、TLC。けどもう本当に21世紀以降は本当にデスティニーズ・チャイルド(Destiny’s Child)以外のパッとしない感じ。まあ、男の子に関しては、もう本当にいま、アメリカのメジャーシーンでボーカルグループ、本当デビューしづらくなってますよね。

(西寺郷太)でもそういう意味では、もしかしたら、まあもちろんテンプテーションズ(Temptations)とかフォー・トップス(Four Tops)とかジャクソン5(The Jackson 5)はありましたけど、やっぱりニュー・エディションが果たした役割って、80年代の第二のJ5って言われていたけど・・・

(松尾潔)だっていボーイズ・II・メンはニュー・エディションのさっきのベル・ビブ・デヴォーっていう、イケてないと言われたその3人の、ビブっていう人が発掘したのがボーイズ・II・メンなんだよね。

(西寺郷太)そもそもニュー・エディションの曲名だしね。少年が男になるっていうね。

(松尾潔)ニュー・エディション、デカいね。

(西寺郷太)ニュー・エディション、デカいっすよね。それこそ、ガイ(Guy)。ここにも書いてありましたけど、ガイもそもそもね・・・

(松尾潔)そうなんだよね。ポスト・ニュー・エディション的な意味合いもあったんだよね。これ、やっぱりあの、マライアとかジャネットとかホイットニーなんていう有名な人が出てくるんだけど、やっぱり最初。第一部の第一章は、さっきから話に出ているジョニー・ギルっていう人で始めなきゃいけない理由っていうのが僕にはあって。

(吉岡正晴)あっ、それ聞きたいね。

(松尾潔)ジョニー・ギルから始めるっていうことで、要は70年代、80年代からのオーセンティックなソウルと、ニュー・エディションというところを架け橋にして90’sにもつれこんでいくっていうのは、ジョニー・ギルが実はがっつりと、まあ大活躍したからこそじゃないかと。だからどうもそこがね、いま、20年ぐらいたって、ジョニー・ギルの功績を語る人はほとんどいない。で、これも書いたんだけど、90年代にブワッと出て、それからもうね、長い沈黙をおいて、でもカムバックした人にマクスウェル(Maxwell)とかディアンジェロ(D’angelo)とかね。

(西寺郷太)ディアンジェロね。

(松尾潔)で、ジョニー・ギルも実はこの数年前に11年ぶりぐらいだったかな?アルバムを出したんですけど。その時も、『うおー!ジョニー・ギル、出る!』って僕なんか燃えたんですけど。あんまりこう、ディアンジェロが騒がれるみたいにならない。

(西寺郷太)うーん・・・

(東美樹)それはなんでですかね?

(松尾潔)それはね、革新的な要素は何もないんですよ。ジョニー・ギルは。

(西寺郷太)歌が上手いっていう・・・

(松尾潔)つまりその、ウェルメイドっていうところの最上級にあるんだけど。やっぱりその、サムシング・ニューよりもサムシング・オールドで注目された人だから。『若いに似合わず大器の香りがする』なんて言われてたんだけど。その天才少年の悲劇というか。天才少年っていうのの少年っていう部分が取れる時に、天才っていうところも一緒に取れるみたいな、世の中の非情さっていうのがあるんだよね。おっさんが歌上手いのは当たり前じゃん!みたいな。妙に冷めた・・・

(西寺郷太)まあ、でもそういう意味では、いわゆる2枚目の『Johnny Gill』といいますか。3枚目のリレビューアルバムはやっぱり、『My, My, My』も含め、『Wrap My Body Tight』とか『Fairweather Friend』。あのへんのやっぱり、ちょうどいいバランス。若さと老練さというかが、ちょうどいいバランスだったのかな?とも思いますけどね。

(松尾潔)うーん、そうね。見た目の若さがまだあったからね。

(吉岡正晴)まあ、あれはジャムルイ(Jam & Lewis)とベイビーフェイス(Babyface)っていう・・・

(西寺郷太)あと、ボビー・ブラウンの影響も当時、それなりに受けてたでしょうしね。本人も。やっぱ、言えば後釜として入っただけに、やっぱり彼の成功もなんとか・・・っていうところはあったでしょうしね。スタッフも近いところ、あるし。なるほどなー。

<書き起こしおわり>
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