西寺郷太が語る Justin Timberlakeの軌跡と『20/20 Experience 2/2』

菊地成孔曲紹介 Justin Timberlake『Cabaret ft.Drake』 西寺郷太TAMAGO RADIO

NONA REEVESの西寺郷太さんがTBSラジオ『たまぼレディオ』で『いま時代はジャスティン・ティンバーレイク』特集と題し、彼のキャリアと最新アルバム『20/20 Experience 2/2』を語っていました。

(西寺郷太)今週のテーマはこちらなんですよ。『いま時代はジャスティン・ティンバーレイク』!はい。お前が言わんでもジャスティン・ティンバーレイクやろ!という声がね、聞こえてきますよ。実際、いま後ろでかかっています。『Take Back The Night』も大ヒット中ですし。このジャスティン・ティンバーレイクという方は子供の頃から子役としても人気があり、『*NSYNC』という男性ボーカルグループですね。バックストリートボーイズなんかとライバルとして、90年代末には大スターになっておりましたけども。

その後、ソロになって2002年にソロ・アルバム『Justified』を出すと。後、大スターとして君臨してそのまま連続してCDとかを出し続けるのかな?と思ったら、2006年の『Futuresex/Lovesounds』、これも大ヒットしたんですけど、その後なんと7年間休んでまして。音楽活動を。まあ、映画はさんざん出てましたし、いろいろ事業なんかも始めたんですけど。これね、25才。いま32才ですか。1981年1月31日生まれなので。やっぱり普通の7年っていうのと違いますよね。25才から32才の7年間。いわゆるポップシンガーの絶頂にいる人が休むっていうのはすごく特殊なことで。

『20/20 Experience』

7年たったらファンもだいぶ変わりますし。シーンも変わりますから。元々やっぱりティーンエイジャーに人気があった人なんで。大丈夫かな?っていう気もしたんですが。なんとこの『20/20 Experience』というアルバム、3月に出ましたけども。それがいちばん、いまアメリカで現状売れたアルバムとなるぐらいの大ヒットアルバムになってまして。それだけじゃないんですよ。7年間待たされたと思ってファンは楽しみにしてて。アルバム出た!って喜んでたんですけども、9月に、6ヶ月後にですよ、もう1枚あるんや言うて『20/20 Experience 2/2』というね。ややこいアルバムの名前ですね。

で、これ『20/20』っていうのがどういう意味か?っていうと、20日間で20曲のアルバムを作ったよというExperience(経験・体験)をみなさまにお届けしますと。で、1枚目に10曲入っていて、2枚目に10曲。細かく言うとボーナストラックとかもあるんで20何曲になるんですが。これ、僕面白いなと思ったのは、待たせて待たせて待たせて。枯渇していたファンに、もうええわ!ってぐらい曲を届けるっていうのが。それが1曲1曲が長いんですよ。7-8分ぐらいあったりして。なんじゃこれ?って。昔の12インチシングルか!っていうぐらい長いんですけど。まあ、このことについては後でも話しますが、今日はそのジャスティン・ティンバーレイクというスーパースターの軌跡といいますか、歩いてきた道を20分30分に凝縮してお届けしていきたいと思います。

まずこれ、僕も大好きな曲でした。POP先生のこの、POP先生ショーにぴったりの曲ですね。ジャスティン・ティンバーレイクが最年少メンバーとして在籍しておりました*NSYNC、ヒット曲聞いてください。この曲。『POP』。

(西寺郷太)はい。*NSYNCで『POP』でした。2001年の5月に発売されて大ヒットになってますが。この曲のあたりを最後にですね、*NSYNCは解散といいますかね。活動をしなくなります。というのも、このジャスティンがソロアルバムを出したいということで、ソロ活動に専念することを宣言したからです。このジャスティン・ティンバーレイクが2002年に、*NSYNCの活動を終えてリリースした『Justified』というアルバムは、僕自体は2000年代に出たアルバムの中でも指折りの名盤だと思っています。

(西寺郷太)いろんなアーティスト、ティンバランドとかネプチューンズとか参加したんですが。不思議なのはですね、ネプチューンズのファレル・ウィリアムズという方。いまでもロビン・シックだったりダフト・パンクとかでも活躍して大ヒットを飛ばしてますけど。すごいプロデューサーですけどね。実はジャスティンの『Justified』にファレルが作った曲っていうのは、ほとんどが本当はマイケル・ジャクソンにたのまれて作った曲だったんですね。マイケルがアルバム『Invincible』っていうアルバムを2001年に出すんですけども、その前に若手のプロデューサーやシンガーソングライターに、いい曲をくださいということで。作ってくれよということでマイケルにたのまれて。みんなやる気を出して作っていたわけですよ。

(西寺郷太)そしたら、結局なんかマネージャーの都合かなにかでマイケルの元に届かなかったのか、マイケルからボツって返ってきたので、ファレルはジャスティンはマイケルも好きですし、こんな曲、じゃあジャスティンが歌うか?って言って、ジャスティンが歌詞とか書いたりしながら。全くそのものではないんでしょうけど、マイケル用に作った曲がこの『Justified』にどんどん使われていったと。

そしたら、その大ヒットした『Justified』を聞いたマイケルが、ファレルに会った時に『ボクにもああいう曲、作ってくれたらよかったのに』って言ったらしいんですよ。で、ファレルは『僕、あげましたよ。あの曲。だけどアンタんところのマネージャーから返ってきたんですけど・・・』っていうことで。それはどっちにとって不幸だったか幸だったのかわかりませんが。マイケルが歌っているところなんかもね、想像しながら聞いてみると面白いかもしれません。ジャスティン・ティンバーレイクでファーストアルバム『Justified』から。『Like I Love You』。

(西寺郷太)はい。ジャスティン・ティンバーレイクで『Like I Love You』でした。これね、本当にかっこいいなと思ったのは、このビデオを見た時に、コンビニエンスストアの前でジャスティンが踊るんですよ。友達とかと一緒にいるんですけど。セブンイレブンだと思うんですけど、ボコーン!って出てて。その瞬間に、僕まあマイケル・ジャクソンのファンなんですけど、大ファンだったんですけど、マイケルがそのセブンイレブンの前で踊っているビデオって、たぶんありえなかったんですね。当時の感覚で言うと。

その瞬間に、でもジャスティンはそれがナチュラルに、セブンイレブンの前で踊って、むちゃくちゃかっこいいっていう。それがなんかね、2000年代のスターのあり方っていうか。80年代だったらそんなことありえないでしょっていうぐらい、ストリート感のあるスターというのを見せつけられたと言いますかね。改めて感じた、新しい世代のヒーローだなと思ったりもしました。

そんなジャスティンですけども、ある時、2004年ですね、みなさん覚えてる・・・スーパーボウルでジャネット・ジャクソンのおっぱいポロリ事件っていうのがあったんですけど。ジャネットが踊っている時に、なんかジャスティンが出てきて。あれ、本当にやらせだったのか最初から決まっていたのか知りませんけど、おっぱいがポロッて出て。なんか知らないけど、ええー!?みたいになって、あんまりウケずに終わったみたいな、謎の事件がありまして。

(西寺郷太)あれからジャネット、ちょっと調子悪いんですけどね。すごいお兄ちゃんの気持ちがわかったとか言ってましたけど、えらい叩かれてですね。おっぱい見せられた上に叩かれるっていうかわいそうって思ったんですが。まあ、ジャスティンもわざわざね、やらないと思うんで。たぶんそんなようなことしようっていうことだったんでしょうが。そんなことにもね、やっぱり言ってもスーパーボウルですから。なかなかの時代の覇者というか。その次代を彩った感じがあります。いま、時代はジャスティン・ティンバーレイクが10年ぐらい続いてますね。

ということで、2006年に出たこの曲もめちゃくちゃかっこいいですね。セカンドアルバム。さすがのファースト、あれだけ良かったんでどんな曲くるのかな?って思って。一見地味なんですけども、めちゃくちゃかっこいい。これ、BPM117と申しまして。『Billie Jean』とかと同じ。このテンポがちょうどいい。気持ちいいテンポで。Beat Per Minuteって言うんですけど、1分間に117回打つという。この曲、聞いてください。ジャスティン・ティンバーレイクで『SexyBack』。

(西寺郷太)はい。『SexyBack』、聞いていただきました。さっきからね、いろいろ話しながらプロデューサーのノガミさんに『これ、2006年か。意外に前だな』みたいな話して。7年前ですよね。たしかに。最初聞いた時はすごい変な曲だなって思ったんですけど、だんだん好きになってきて。クラブでも僕、ずっとDJしてたんですけど、よくかけてましたね。これで、『♪♪♪』(『Billie Jean』のイントロを口ずさむ)ってマイケルとよくつないだりしてね。おんなじテンポだから、なんにもテクニックなくてもつなげられるっていうので気持ちよかったんですけども。

はい。そんな感じで映画とか出てって、なかなかこの『SexyBack』の出たアルバム以降、音楽・・・いわゆるマドンナとの『4 Minutes』という曲とか、そういう客演みたいなのはいろいろあったんですけど、オリジナルアルバムをなかなか出していなかったジャスティンが、今年の1月ですかね?2013年、すごいことになるよ!ってね。めっちゃすごいことになるで!って言うてね。関西弁ちゃいますけども。すごいことになるよ!って言ってまして。すごいことになるのかな?って思っていたら、ホンマにすごいことになったというのをさっき話しましたけど。

『20/20 Experience』ということで、20日間で20曲作って、10曲ずつに分けてリリースするという。それもね、昔で言うたら70分ぎりぎり入ってるんですよ。78分ですかね。昔で言ったらそれだけでも2枚組なんですよね。LP(レコード)の世界で言ったら。だからその、アルバムを4枚出してるみたいな。昔の感覚で言うと。なかなかすごいことになっとるんですが。その中でもファーストシングルに選ばれた『20/20』の。今年の初頭、大ヒットしましたね。

この曲はですね、今のいわゆる打ち込み路線と言いますか。それまでよく言われていたEDMっていうんですか?Electronic Dance Music。パソコンの中で作ったようなシンセサイザー中心の、ドラムマシーン中心のみんなが盛り上がれるみたいな曲と一線を画しまして。もうオーケストラがいたり、ゴージャスなホーン隊がいたり。ちょっとジャズの香りのするといいますか、オールドスクールの、新しい何というか、エレガントなヒット曲としてジャスティンがスーツを着て、もう1回、再び音楽の世界に帰ってきたという素晴らしい曲ですね。これ、みんな好きになったんですけども。聞いてもらいましょう。ジャスティン・ティンバーレイクで、今年のヒット曲です。『Suite & Tie』。

(西寺郷太)はい。ジャスティン・ティンバーレイクで今年初頭に発売されたアルバム『20/20 Experience』のファーストシングルですね。『Suite & Tie』。『20/20 Experience』、最初、どういう意味なのかな?と思っていたんですけども。最終的に第二弾がアメリカでは9月の終わり。日本では10月の初頭にリリースされてまして。いま、大ヒット中ですが。あ、なるほどなと。20曲を20日間で作ったんだということで。

僕、面白いなと思ったんです。というのも、だいたいまあ人間ってっていうと変ですけど、僕もそうだったんですけど、よくポップスって『3分半のポップス』みたいな言い方しますよね。『3分間ポップス』とか。なんかその、無駄をなくして、キュッとタイトにした方がいいんちゃうか?っていう風に僕も思ってたんです。ソングライターとして。いまもまあ、思ってる部分があるんですけど。このジャスティンの今回のアルバム2枚っていうのは、僕が言うのも偉そうなんですけど、割と冗長なんですよ。長いし。1曲1曲。ここで切ったらええやん!っていう時に続くんです。

で、それも1枚目はそれなりにクオリティーを保ってたんですけど、正直2枚目はええ曲入ってへんのちゃうか?って思ってるんです。何回か聞いて思うんですけど。でも、なんかいいんですよ。なんて言うのかな?昔の、僕何年か前にネットで見たんですけど、人が生まれる前に聞いている音。お母さんの胎内で聞いている音って、マイク立てて音を録ると『ドゥックン・・・ドゥックン・・・ゴゴー・・・』みたいな。そういう音を人間っていうのは、体の中でもちろん耳も出来てますけど、お母さんの体の中のハートビートみたいな、心臓音と血液が流れるみたいな音を、ずーっと聞いていって人間になっていって、オギャー!と産まれるんですけど。

なんか今回のジャスティンのファーストもそうですけど、『20/20 Experience』の2枚目を聞いてて、なんか似ているなと思ったら、前ネットで聞いたお母さんのお腹の中で聞いている音やと。だからいいメロディーがどうとか、いいサウンドがどうとかっていうより、一定のビートで、それもある程度冗長なものが流れている時に感じる安らぎみたいなのがありまして。これ、なんかけなしてるのか褒めてるのかわかりませんけど。このね、ジャスティンという人の狙い。CDというパッケージメディアを使った、ひとつの作戦っていうのがね、すごい当たってるんじゃないか?と。意外と、なんの曲がいいとは言えないんですけど、このアルバムを聞いているとなんとなく落ち着くっていうような。

その、『20/20 Experience 2/2』、とくに傾向が強いのが『2/2』という最近出たアルバムなんですが。その中でね、これはちょっとね、キャッチーです。ディスコ感のある曲なんで、シングルとしてもカットされております。いちばん最新のジャスティン・ティンバーレイクの曲です。先ほどもちょっとBGMで使わせてもらいましたが、この曲を聞いてください。『Take Back The Night』。

(西寺郷太)はい。もう自分でね、こうやって特集しておいて僕が言うことでもないなと改めて思いましたが、いま、時代はジャスティン・ティンバーレイク!ということで、以上、POP先生ショーでした!

<書き起こしおわり>

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