久保田利伸さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』にゲスト出演。久保田さんの最新アルバム『L.O.K』について、松尾潔さんと語り合っていました。
(松尾潔)お届けしたのは久保田利伸さんで『Winds』でした。これは2011年にリリースされたアルバム『Gold Skool』に収録されていました。久保田さんと僕のコラボレーション。いままでいくつかあるんですけど、これはメロウな夜的には、いちばん人気みたいですね。いろいろリクエストもいただいております。ありがとうございます。はい。もったいぶらずにご紹介しましょう。今日のゲストは久保田利伸さんです。
(久保田利伸)お邪魔します。よろしくお願いします。こんばんは。
(松尾潔)こんばんは。あのね、久保田さん。この番組、たびたびお越しくださってますが。
(久保田利伸)たびたび、ありがとうございます。
(松尾潔)いや、こちらこそって言わなきゃいけないんですけど。今日で179回目なんですよ。
(久保田利伸)すごいねー。1週間に1回で179っていうのは・・・
(松尾潔)まあまあ、だいたいそれぐらいの計算ですね。最終週はお休みさせていただいたりしてますけど。年度で言うと6年目に入るんですね。
(久保田利伸)もう、僕はあの、松尾潔氏を長い間知っていて。いろんなところで。
(松尾潔)隠せないぐらい、ご存知ですよね。
(久保田利伸)6年、ひとつの番組にお世話になれるというということは、ありがたいじゃないですか。ねえ。どういう立場で言ってるのか、わかんないけど。ありがたいじゃないですか。
(松尾潔)いやいや、本当にね(笑)。はい。うわー、ちょっと、すんごい嫌な汗が出てくるわ。これ。
(久保田利伸)いやいや、素敵ですよ。
(松尾潔)このね、メロウな夜はね、6年間、開業中ですよ。
(久保田利伸)僕はね、これはね、やっぱりこの番組でしか出ない潔ちゃんのこの、トーン。
(松尾潔)メロウトーン。
(久保田利伸)松尾家っていうのは、おしゃべりで有名じゃないですか。
(松尾潔)いやいやいや・・・(笑)。みんな、知らないから。
(久保田利伸)お正月、ほら、帰ってもね、松尾潔がいちばん寡黙だと。家族で。
(松尾潔)そうそうそう(笑)。
(久保田利伸)ご親戚と親御さんたちが、もっとカーティスだと。
(松尾潔)おしゃべりカーティスね。その心はね(笑)。
(久保田利伸)その息子さんが、潔さんがこういったメロウな夜のトーンを作っているわけですよ。だからこの先も長く続くと思いますよ。本当に。
(松尾潔)公開処刑みたいな、それ、やめてくださいよ。
(久保田利伸)いやいや、心からのね。本当に。僕も本当に、この番組があってうれしいなと。憩いの一時ですよ。
(松尾潔)僕もこうやって、もちろん番組以外のところで久保田さんとお会いするの、楽しいですけど。マイクに向かった時に、意外と、『あ、その話、初めて聞くな』っていうのが出てくるもんなんですね。不思議だよ。これ、ラジオマジックと僕、思っているんですけど。
(久保田利伸)この番組の中でお話する時っていうのは、R&Bのお話、音楽のお話だけでできるじゃない。だからまた、いつもできないようなところまで行くの。他の場で行くと、音楽の話をしているのに、ぜんぜん関係ないところにボンボン行くじゃない?
(松尾潔)脱線脱線で、なにが本線かわからなくなるから。
(久保田利伸)わからないでしょ?それがないのが、俺はうれしい。
(松尾潔)ちょっと待ってくださいよ(笑)。普段、嫌みたいな言い方、やめてください。
(久保田利伸)いや、そんなことはない。考えすぎだし。
(松尾潔)本当に?でも、久保田さんね、いつ以来かな?と思ったら、前回が2013年の、一昨年の12月だったんですって。だから去年はね、丸々1年間、この番組の中ではお会いしてなかったんですね。
(久保田利伸)お会いしてなかったですね。
(松尾潔)つまり、作品づくりがお忙しかったってことですよね?
(久保田利伸)かな?そうです。その、『KUBOSSA』を作ったりとか、ちょっとそれで、ツアーをちょっとやったりとかね。それ以降に、数ヶ月ちょっとのんびりして。その後に、ゆったりとアルバムの準備を始めだしちゃったんで。で、今回はアルバム、出来上がったんですが、でも、そこに至るまでに結構時間を使っちゃったので。その間・・・
(松尾潔)このアルバムづくり、毎回久保田さんのそばにいると思うんですけど、特に今回、『これ、本当に終わるのかな?』っていう感じが横で見ていてありましたけど(笑)。
(久保田利伸)いやー、時間かかっちゃったんだよ。だからさっきかけてもらった『Winds』とか、あるじゃない?それは、潔ちゃんに書いてもらって。だいたいアルバムを作る時っていのは、もう限られた時間の中で集中して作って。『あ、もうちょっと自分の言葉、言いたいことがあるんだけど、言葉としてまとめきれない!こういう時は、あの男だ!』って潔ちゃんにたのむことがあるわけだよ。『Winds』なんかもそうじゃない?
(松尾潔)本当にね。まあけど本当、番組でも一度お話したかもしれないけど、『Winds』の時も、まあ普通のシンガーソングライターの人が自分で詞をお書きになるぐらいの分量は、もう最初に久保田さんからネタとして僕、いただいているんですよね。
(久保田利伸)ああ、こういうことを言いたい、言ってほしいとかね。
(松尾潔)うんうん。だから、脚色に専念したいっていう、そういう時にまあ、僕にお声がけいただいたりするんですけど。
(久保田利伸)そう。だからいつもは、そういう形でいくんだけど。今回はね、ものすごくこう、だから時間を使ったんだよ。だから、人に言葉をたのむっていうことよりも、自分でやれる時間があったというか。いろんな形で時間を使っているもんだから、もうそのまま使っちゃえということなの。だから今回のアルバムは潔ちゃんいらずで、やっちゃいました。
(松尾潔)(笑)。なんかちょっとそれ、語弊、あるかな?
(久保田利伸)ないです。はい。
(松尾潔)(笑)。そうなんです。『今回のアルバム』とおっしゃいましたけど、先ごろ、久々のアルバムですね。『L.O.K』がリリースされたばかりで。これは、『Lots Of Kisses』ですね。これ、全曲久保田さんの作詞なんですよね。
(久保田利伸)今回は作詞に関しては全部自分。曲に関しても全部自分、もしくは、ええと、作曲に関しては森大輔くんが意外と2、3曲、一緒に作ったりとかしている。でも、またいつものように、どの曲に関しても、こうしたい、ああしたいと。『ここのところは、アイズレーのムーブを入れたい、ここのビートは黙っていてくれ、俺が作りこむから。ちょっと待っていてくれ』みたいなことで、いつものように音に関してはね、作っているけど。まあ、音も作曲も森くん、あと、いつものように柿崎さんがゆるーく多く参加してくれている。
(松尾潔)まあじゃあ、その1曲、まず聞いてみたいんですが。まずはこれ、CMで最近、よく僕、聞くんですけど。こういう久保田さんはなんかすごい久しぶりな感じ。っていうかね、グッと80年代以来ぐらいの感じさえするんですが。
(久保田利伸)鋭い!
(松尾潔)まず、1曲聞いてもらいましょう。久保田利伸さんで、『Loving Power』。
(松尾潔)久保田利伸さんでアルバム『L.O.K』から、まずは『Loving Power』、お聞きいただきました。これはね、本当僕、さっき80年代の久保田さんを思い出す、彷彿とさせるって言い方をしましたけど。具体的に言うと、そうですね。『流星のサドル』とか『Goddess』とか。なんか本当、2000年代、90年代をもう、なかったかのようにとは言わないんだけど。そこをすっ飛ばして、80年代に戻ったような。
(久保田利伸)なるほどね。そういう結果になるんだ。そうか。
(松尾潔)これはね、そしてまた言うなれば、まあいまのマーク・ロンソン流行りのこのタイミングで言うわけじゃないけど、久保田さんがデビューしてはじめの数年ぐらいでやってきたような状況が、またいま来ているような感じもある。そのいい寝かせ時の引き出しを、こう、久々に開けて。で、やっぱりミックスとか音響はいまの音にしてっていうような感じがするんですよね。
(久保田利伸)うーん。そうだね。とてもありがたく、そういう風に解釈してもらえれば。俺はだって作りながら、とりあえず景気のいい曲にしようと。力のある曲にしようと。それで、ただ、サウンド面で、ちょっとああだこうだ、個人的には迷って。
(松尾潔)はい。ああ、そうですか。
(久保田利伸)いま、そういう気持ちでいるならば、ちょっと・・・もうエレクトロを出して、ピュンピュンパワーする、力を出すっていうのもあるんだけど。やっぱり、それは自分でやりかけて、チャラいなと。
(松尾潔)やっぱりね、久保田さん、そういう時。2つ道があるとね、ちょっと茨の道の方を選ぶタイプなんです。あなたは。昔から見てますけど。
(久保田利伸)俺ね、それをね、時々言われるんだよね。で、本人は全く嫌いなんだよ。茨の道を選びたくないし、楽な方、楽しい方、休める方、笑える方を選びたいんだけど。
(松尾潔)あー、まあ、楽な方とは言わないけど、楽しい方を選んだら、結果として茨になっているってことなんですかね?
(久保田利伸)どうなんですかね?まあでも、それで、いや、もうちょっと俺がやっぱりいまやるとしたらば、どういう形でエナジーを出そうということで、結局こう、わかんなくなっちゃって。もう、頭で考えずに、作ったのね。で、結果は、そうね。いま、潔ちゃんが言ったように、自分が本来持っているもの。デビューした・・・
(松尾潔)なかったものじゃないですからね。これね。
(久保田利伸)デビューしたての頃の、もう下手すれば『流星のサドル』の、あの力というもの。
(松尾潔)ですよね。これね、僕、音楽仲間の、久保田さんともいま、大変親しい川口大輔という人がいますけども。
(久保田利伸)いいねー、川口くんもよかったねー。
(松尾潔)この曲、2人で驚いて。こういう曲を久保田さんほどのキャリアアーティストと呼ばれる人が、こういう、まあ、向こう見ずっていうんですか?ヤンチャなものをやるっていうのは、実は世界的に見ても珍しいんじゃないの?っていう話になったんですけど(笑)。
(久保田利伸)でもね、たしかに珍しいかもしれない。このキャリアとか。でもこれが、日本の中で、R&Bをこよなく愛し、長い間愛し、でも、日本の中でやれている、やっていくっていう中で、だからこそ、やっていいことな気がするよね。あの曲をやりながら、この曲もやっていて、それを聞いてくれる人がいてっていう。でも、今日も何曲か選べると思うんだけど。自分でも、ものすごくメロウな曲があって。
(松尾潔)そうですね。もちろんね。
(久保田利伸)すごく、もうTodaysそのものがあったり、オールドスクールそのものにとまっているような曲があったり。それがこう、飄々とやれるっていうのは日本の・・・
(松尾潔)いい環境。
(久保田利伸)そう。環境がうれしいかもね。
(松尾潔)環境になってきたっていうのもあるかもしれませんね。うん。まあもちろん、その環境づくりのね、いつもその風景の中にずっと久保田さんがいつづけたということの証かもしれないんですけど。
(久保田利伸)その傍らには、いつも潔ちゃんがいましたね。
(松尾潔)傍ら商売ですからね。
(久保田利伸)傍らには。傍らに座っている、佇んでいるんじゃなくて、ずーっとしゃべっている。傍らで。
(松尾潔)(笑)
(久保田利伸)ああしろ、こうしろ。
(松尾潔)家に帰っていると無口なんで、外でしゃべるしかないんですよ(笑)。
(久保田利伸)そうね。お宅はね、そうですね。
(松尾潔)『あの無口な潔ちゃんがよくラジオでしゃべっている』って親戚に言われているですから。
(久保田利伸)いや、それ親戚がしゃべりすぎだから。家にいる時もこんなもんだと思うんだけど。そんなことを言っていると、あれですよ。メロウな番組にしましょう。
(松尾潔)ぜんぜんたどり着けない(笑)。もう、こんな話の後になんですけど、マービン・ゲイの話をしたいんですけど。
(久保田利伸)しよう、しよう。
(松尾潔)久保田さんのまあ、曲。曲というのかな?いままでのヒストリーを見ていると、まあ常にこのマービンという人の気配が消えたことがないんですが。まあ、その歴史の中でも、影の濃淡というか、強く意識した時、まあちょっと距離を取ったと。いろいろな接し方があると思うんだけど。今回、また何度目かのマービンオマージュって色合いが強いアルバムでもありますよね。
(久保田利伸)本当だよね。作りながら、アルバム、真ん中ぐらいに行った時に、『あれ?またマービン・ゲイだ』って。
(松尾潔)だから好きに作っちゃうとマービン・ゲイ出てくるっていう感じなのかな?
(久保田利伸)プラス、マービン・ゲイは歳を重ねていくと、より彼の音楽の味がわかってくるということもあるし。
(松尾潔)我々ね、気が付くとマービンの年齢を追い越しちゃったりしてますからね。
(久保田利伸)あ、そうか。
(松尾潔)我々が聞いているどんなマービン・ゲイの歌声より、いま、僕らの方が年上ですからね。
(久保田利伸)あらららら。そういう風には聞いてないよ。そうか。
(松尾潔)いや、びっくりしません?そういうこと。まあ、それで言うとね、サム・クックとか、オーティス・レディングよりぜんぜん僕ら、年上なんだけど。
(久保田利伸)そう。それは全然だけど、マービン・ゲイは、もう亡くなっちゃった年齢がある分、だからいま生きている人くらいの数え方で。
(松尾潔)まだ生きていると思っているんですよね。
(久保田利伸)そういう数え方だったね。いや、でもね、本当にこれ、マービン・ゲイ・・・『あれ?この曲でも俺、マービン・ゲイやってる』と。実際にマービン・ゲイと歌詞の中で言っているのは今回は・・・あるね。あるね。今回もあるし。
(松尾潔)スタジオで話しましたね。それね。
(久保田利伸)曲もそのつもりで作ってないのに、途中でどうしても『♪♪♪♪』っていうセクションがくっついちゃうの。どうしても。半分以上、あるね。アルバムの中の。くっついちゃうの。
(松尾潔)まああの、中でもね、『Free Style』という曲は、これは世に出たのも早かったっていうのもあって、我々の耳に馴染んでいるんですけど。今回のアルバムの書き下ろし曲の中で、これはたまんないマービン曲だなというのがあったので。この曲、聞かせて下さい。よろしいでしょうか?じゃあ、ふたたび最新アルバム『L.O.K』の中から、『Tiny Space』。
(松尾潔)えー、マービン・ゲイオマージュを感じられると僕は思いましたね。久保田さんの『Tiny Space』でした。
<書き起こしおわり>