松尾潔さんがTBSラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』に2012年4月22日に出演した際のトーク書き起こし。松尾さんがクインシー・ジョーンズにインタビューした際に一喝された話をしていました。
（松尾潔）けど、クインシーの話、出ましたけどね。あの、これは僕、何度かマイクの前でも話したことがあるんですけど。クインシー・ジョーンズ（Quincy Jones）っていうのはまさに僕がプロデュースをするにあたって啓示を与えてくれた人で。
（菊地成孔）はい。
（松尾潔）最初にクインシーに会ったのは、まだプロデュースなんかに手を染めてない、もう本当ライター時代の話なんです。90年代半ばぐらいですか。で、クインシーっていうのはすごく音楽とビジネスを両立してきた人っていうイメージがあって。で、あの、ねえ。有色人種で初めてメジャーの重役になった人でもあるし。マーキュリーでしたっけ？
（菊地成孔）そうですね。マーキュリーですね。
（松尾潔）で、そういう、当時僕がお会いした時は、雑誌の方の『Vibe』を作って間もない頃とかで。いや、もう本当かっこいいなっていうのと、あんた、商売しすぎだろ？っていう、ちょっと揶揄したい気持ちもあって。
（菊地成孔）はいはいはい。
（松尾潔）で、ちょっとこう、まあチャチャ入れるような感じでね、『音楽とビジネスを両立する秘訣ってなんすか？』みたいなことを、軽い感じで言ったら、むっちゃ怒られたんです。『Hey,Young Man!』とかって怒られて。
（菊地成孔）それって有名な話ですよね。でも（笑）。
（松尾潔）これ、何回か話しましたよね。僕ね。『音楽とビジネスを両立してるんじゃなくて、俺は音楽ビジネスっていう一体化したものをしてるわけで。そのどっちかだけをやっても続かない』と。菊地さんに何回か話してますよね。この話ね。
（菊地成孔）もちろん。ええ。っていうか、一般的に有名な話ですよね。松尾さんがクインシーに怒鳴られた話は（笑）。
（松尾潔）そんなことはないと思うけど。あの、クインシーがもともとね、まあトランペット奏者だったわけです。最初ね。そん時の仲間でクインシーがビジネスの方に行くのを『なんだよ、お前。金儲けの。白人の方にへつらって』みたいなことを言う人もいたし。逆に、他のビジネスから投資先として音楽に来た人もいると。だけど、どっちも続かないと。で、『お前、ビジネスなんかやりやがって』っつったジャズミュージシャンの仲間は、もうジャズさえ続けられていないと。
（菊地成孔）はいはいはい。
（松尾潔）っていうような話があって。『だから俺は、音楽ビジネスっていう一体化したものをやってきたから、どっちも続けられたんだ。わかったか、若造！？』っていう風に怒られて。それから僕、一生懸命、プロデュースってかっこいいな！と思って。
（菊地成孔）（笑）
（松尾潔）まあ、久保田利伸さんとかいろいろ、お話はいただいてたから、ちょいちょいそういうのをやるようになって。僕なりに、結果も出したつもりで、2008年ですか。あの、僕のお世話になっている方の1人。鷺巣詩郎さんっていう方に誘われて、クインシーがモントルーでね、75才のバースデーのライブをやるから、一緒に行きませんか？って言われて、一緒に行って。
（菊地成孔）はい。
クインシーとの再会
（松尾潔）で、だからクインシーに10何年ぶりに会ったわけですよ。そん時にクインシーに、『10何年前に1回、お会いさせていただいて。その時は本当、失礼申し上げましたけれども。その後、クインシーさんのお言葉を受けて、僕なりに制作をやりました。それなりに結果も出ました。で、いま、改めてもう一度、同じ質問をさせてください。「音楽とビジネスを両立する秘訣はなんですか？」』って言ったら・・・この話はご存知ですか？
（菊地成孔）いや、オチは知りません。
（松尾潔）そしたらクインシー、『うーん・・・健康だな』って言ったんですね（笑）。
（菊地成孔）（笑）
（松尾潔）たしかに、質問に対する答えとしては間違っていないんだけど。『最近の俺はちょっと血圧が高すぎる』とか、結構真面目な話になっちゃって。だけど、それもたしかに真理だなと。
（菊地成孔）でも、エグゼクティブの言うことですよね。それね。
（松尾潔）うーん。そうですね。そうですね。という話を今日したら、後はもう流してもいいかなと思ってるんですね。
（菊地成孔）（笑）。いやいやいや。まあ、やっぱりあれですね。あの、焼酎1.5杯入っても、他所行き、ウチ行きの体質は変わらないってことが（笑）。
（松尾潔）（笑）
（菊地成孔）もう1回言いますけど、こんなことだから近田さんがカフを上げっぱなしにしてしまうんだというね。はい。お話いただきましたけども。
＜書き起こしおわり＞
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