映画評論家町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』で鈴木則文監督の追悼映画祭を紹介し、おすすめの鈴木則文作品を語っていました。
(赤江珠緒)そして町山さんね、今日は本題に入る前にお話があると?
(町山智浩)はいはい。鈴木則文監督という監督がいまして。日本の映画ねの。その監督が今年の5月にお亡くなりになったんですけども。その監督の追悼映画祭が7月17日木曜日。だから今週の木曜日から月末の30日まで池袋の新文芸坐で開かれるんで。ちょっとその話をさせていただきたいんですけど。
(赤江・山里)はい。
(町山智浩)鈴木則文監督っていうのは映画マニアの間では『すずきそくぶん』って言われてるんですけど。ご覧になったこと、あります?なんか。
(赤江珠緒)『トラック野郎』の。
(山里亮太)これ、ラインナップ見て。『パンツの穴』とか。
(町山智浩)パンツの穴ですよ!見ました?
(山里亮太)見ましたよ。パンツの穴、さすがに私ども。あと、びっくりしたのがですね、見てはいないんですけど。『徳川セックス禁止令』って・・・
(町山智浩)あ、びっくりしたでしょ?タイトルで。
(山里亮太)これね、うちの中学校で視聴覚室にこれがあったっていって、問題になったんですよ。
(町山智浩)(笑)
(山里亮太)で、みんなで探したっていう。はじめて、中学生以来。『あ、あった!これだ!』っつって。いま。この監督だったんだ!って。
(赤江珠緒)これはまたすごいですね。
(町山智浩)僕がちょうど小学校の高学年だったか、そのぐらいのいちばん性に目覚める頃にこの映画が公開されましてですね。徳川セックス禁止令ですけど。これがね、立て看板が学校の周りにいっぱい貼ってあったんですよ。
(赤江・山里)ええっ!?
(町山智浩)だからみんな、パニックでしたよ。本当に。もうすごい。だからなんていうか、中学生だからなにもわかってないですから。『やってもねえのに、禁止かよ!』って(笑)。
(赤江・山里)(爆笑)
(町山智浩)『どうしよう?禁止になっちまったよ!』って。映画のポスターだから。お触書じゃないんだからという(笑)。大変でしたけどね。『やべーよ!』って言ってるんですよ(笑)。そういう時がありましたね。本当にね。
(山里亮太)その監督だったんだ。
(町山智浩)で、まあパンツの穴っていう傑作がありますけど。ご覧になりました?
(山里亮太)はい。
(町山智浩)どうでした?
(山里亮太)これ、パンツの穴ってシリーズ化されてません?
(町山智浩)シリーズ化されてますよ。1作目だけですけど。鈴木監督は。
(山里亮太)その新しい方ので見てると思います。
(町山智浩)あ、そっか。菊池桃子ちゃんのデビュー作は見てないですか?
(山里亮太)見てないです。それは。
(町山智浩)そっかー。これ、菊池桃子・・・さんですけどね。いまはね。菊池桃子ちゃんがデビューした時、鳴り物入りでデビューして。どのくらいすごいかっていうと、彼女のための雑誌の『Momoco』っていう雑誌が創刊されたぐらいだったんです。で、もうすごい売り出し方をして。で、そのデビュー作がパンツの穴だったんですね。すごいでしょ?雑誌を作るほどの大アイドルとして出たのにですね。
(赤江珠緒)パンツの穴で?
(町山智浩)そのパンツの穴っていう映画がですね、男の子のですね、恥ずかしい失敗談がずっと連続して。オムニバス形式みたいな感じで出てくる映画なんですね。で、中学生の男の子がどんなような形で自分に快楽を与えるか?とかですね(笑)。おなかが痛くなった時、どうするか?とか、そんなのが延々と続くんでね。菊池桃子目当てにした人たち、みんなひっくり返っちゃってましたよね。
(赤江珠緒)(笑)
(町山智浩)菊池桃子ちゃんも、まさかデビュー作でこれをやられるとは思わなかったと思いますけども。で、クライマックスがすごいですよ。クライマックスは、ウンコを投げあっていると、UFOが飛んできて、宇宙人が武田鉄矢です。
(赤江・山里)(笑)
(赤江珠緒)意味が・・・意味がわからないんですけど。いま町山さん・・・
(町山智浩)僕、どうかしてると思ってるでしょ?
(赤江珠緒)文章にしても意味がわからない。
(町山智浩)なんか、酒飲んでるんじゃねーか?とか思ってないですか?本当にいま言った通りですから!
(赤江・山里)へー!
(町山智浩)この3つがどうして絡み合うのか?
(赤江珠緒)そこに、菊池桃子ちゃんが。
(町山智浩)そこに、菊池桃子も入ってるんです。それがパンツの穴っていう映画ですよ。そういう映画を撮っていた人が、鈴木則文監督で。あんまり詳しい内容は、お昼のラジオではとても言えないような。さっき言った徳川セックス禁止令とか、タイトルだけでかなりヤバいんですけど。『伊賀野カバ丸』っていう映画はご存知ですかね?
(赤江珠緒)あの、アニメではね。
(町山智浩)あ、そうそう。少女マンガが原作なんですよ。忍者学校があってですね、主人公が少年忍者でっていう話で。学園同士の戦いの話なんですけど。『コータローまかりとおる!』は知ってますよね?
(山里亮太)知ってる!マガジンでやってました。
(町山智浩)やってましたよね?あれ、劇場用映画になってるんですけど。ご存じですか?
(山里亮太)へー!実写版で。
(町山智浩)実写版で。そういうね、マンガをそのまんま映画にするっていうのを得意にしていた監督なんですよ。鈴木則文監督って。
(山里亮太)ちょっとエロスもありながらのマンガでしたからね。コータローまかりとおる!。
(町山智浩)そう。コータローまかりとおる!に出てくる、頭がハゲているように見える人がいて。敵のライバルで。覚えてます?日本刀振り回してるんですけど。それで、『ハゲ』っていうと、『そうじゃない!ハゲじゃない!これは剃ってるんだ!』っていう風に言うギャグがそのまま映画化されてるんですね。それは、クェンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル』っていうハリウッド映画でまったくその通りのギャグが出てくるんですよ!
(赤江・山里)えっ!?
(町山智浩)世界的に公開したハリウッド映画で、コータローまかりとおる!のギャグをやってるんですよ!誰もわからねーっつーの。それ(笑)。
(赤江珠緒)そうでしょう。
(山里亮太)これ、もう監督への敬意っていうか?
(町山智浩)敬意ですよ。そういうね、トラック野郎シリーズは知ってますよね?鈴木則文監督の。まあ、いちばんのヒットシリーズですよね。そのへんは知ってるか。でも、たぶんご存じない人も多いと思うんで。この映画祭でぜひご覧になっていただきたいというね。あの、映画っていうのはもうなにをやってもいいんだ!って思いますよ。見ると。
(赤江珠緒)そっかー。
(町山智浩)で、おすすめはですね・・・『そっかー』って言われて真剣に聞かれても困るんですけ。話半分に聞いてください。僕の話は。たのみます!おすすめはですね、7月19日土曜日に上映される『徳川セックス禁止令』ですね。まず。
(赤江珠緒)これね。『色情大名』。
(山里亮太)赤江さんが丸をつけた(笑)。
(町山智浩)色情大名。よく言ってくれましたね。これ、童貞だったお殿様がですね、初めてセックスを経験して。『こんな素晴らしいものがこの世にあったのか!』と驚くと、『いや、こんなもん昔からみんなやってますけど』って言われるんですよ。で、『なに!?そんなものを下々の者までいたしておるのか!?』って驚いてですね。視察をするとみんなしていることがわかってですね。『こんな気持ちのいいことを庶民がするのは許さん!』って禁止しちゃうっていうですね。
(赤江・山里)(笑)
(町山智浩)非常に政治的な映画です!
(山里亮太)政治的!?
(町山智浩)非常に政治的な映画です!で、あと7月20日日曜日に上映されるですね、『聖獣学園』と、『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』っていう2本立てもおすすめですね。
(赤江珠緒)聖なる獣と書いて聖獣学園。
(町山智浩)これは多岐川裕美さんのデビュー作です。これは鈴木監督が多岐川裕美さんをアルバイトしてるのをつかまえてきてですね。無理やり出しちゃったんですけど。これもラジオでは放送出来ない内容なんですが。すごい多岐川裕美さんがキレイなんで、ぜひご覧になっていただきたいと。
(赤江・山里)へー!
(町山智浩)あとおすすめがですね、7月23日の『女番長(スケバン)ブルース 牝蜂の逆襲』っていう。
(山里亮太)いいですねー!
(赤江珠緒)もうタイトルがすごいですね!
(町山智浩)これはもう、タイトルもすごいですけど、中で渡瀬恒彦さんが出てきたりですね。映画の内容、めちゃくちゃですから。これも言えないんですよ。ラジオでは。
(山里亮太)そうですよ。これ、絶対読めないですけど説明文がすごい単語のオンパレードですね、これ!
(町山智浩)そう。放送出来ない言葉がいっぱい出てくるんですけど。非常に危険で。あと、おすすめがですね、もちろん『コータローまかりとおる!』はおすすめですが。7月27日日曜日の『温泉みみず芸者』と『温泉スッポン芸者』の2本立て。これも、なにがミミズなのか?なにがスッポンなのか?については放送できませんが。関根勤さんが、僕、20年前に関根勤さんとNHKのテレビで一緒に出演することになって会った時にですね、2人で盛り上がったのがこの『温泉みみず芸者』についてなんですよ。
(赤江・山里)へー。
(町山智浩)で、関根勤さんがこれはもう大好きだ!っていう話で。ずっとこの映画について2人で話してたんですけど。放送されたらまるごとカットされてました。
(山里亮太)はー!あの、でしょうね。
(赤江珠緒)(笑)。まるごと。ぜんぜん使われなかったですか。
(町山智浩)使われませんでした。
(山里亮太)これ、だってすごいもん。説明文が。
(町山智浩)そう。ミミズがね、ワンサウザンドいたりするような状況があるという。
(山里亮太)なるほどね。
(町山智浩)言いにくいですが。という、いろんな。武田鉄矢も出ますし。これには出ませんが(笑)。そういうとんでもない。映画はなにしてもいいっていうね。終わりなんかどうなってもいいっていう。ストーリーとかあらすじとか、聞いているとどんどん頭が痛くなるっていうね。そういう素晴らしい映画の世界で。この鈴木則文監督の映画祭のタイトルはですね、『下品こそ、この世の花』っていうんですよ。
(山里亮太)すばらしい!
(町山智浩)すばらしい!
(赤江珠緒)たしかに、この作品すべてにリボンをかけるとしたら、そういうタイトルになりますよね。
(町山智浩)そういう感じで。本当にね、芸術の極みでね。日本が生んだ、最高の芸術がここにあります!って言ってることがバラバラですけど(笑)。
(赤江・山里)(笑)
(町山智浩)ぜひご覧になっていただきたいっていうね。ことで、鈴木則文監督だったんですけども。
<書き起こしおわり>