吉田豪 宇多丸・50歳記念インタビュー

吉田豪 宇多丸・50歳記念インタビュー アフター6ジャンクション

吉田豪さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』にゲスト出演。50歳を迎えた宇多丸さんに50歳記念のインタビューをしていました。

(宇多丸)はい、失礼しました。吉田さん。さっき言おうとしたのは僕が大腸憩室炎でお休みをしている時、代打で本当にお世話になりました。で、みうらじゅんさんとK DUB SHINEの回でね。

(吉田豪)サポート役でね。

(日比麻音子)助けていただきました。

(宇多丸)まあ、吉田さんがいなかったらどうなっていたか。もう惨事以外の何物でもないっていう。

(吉田豪)でも、あれの日比さんがものすごい評判がよくて。5月3日に玉さん(玉袋筋太郎)とイベントをやっていたんですけども、大絶賛でしたよ。

(日比麻音子)ええーっ? ありがとうございます。

(宇多丸)やっぱりね、アトロクではいまだかつてないほどにシモに話が振れたんですけども、そこに対する日比さんの対処が極めて……。

(吉田豪)そうなんですよね。

(日比麻音子)毅然と振る舞うっていう(笑)。

(宇多丸)毅然と(笑)。

(吉田豪)素晴らしい!

(宇多丸)いや、よかったですよ。ばっちりでした。まあ、吉田さんがいてようやく成り立ったっていうところもありますけども。さあ、ということで本日はどんなことをお話くださるんですか?

(吉田豪)はい。50歳になった宇多丸さんをアーカイブするためにインタビューします!

(宇多丸)アーカイブ? いまから?(笑)。

(吉田豪)フフフ(笑)。

(CM明け)

(宇多丸)ということで吉田さん、本日は……でも、吉田さん、もうさ、知り合ってから20年ぐらい?

(吉田豪)20年近いですね。

(宇多丸)もういまさら吉田さん、ないでしょう? 僕は。

(吉田豪)いやいや、いまだに僕、だって調べているじゃないですか。お父さんの本を揃えたりとか。

(宇多丸)そうなんですか? 石川信義の本を?

(吉田豪)お父さんの本を全部そろえて、お父さんの顔写真をTwitterにアップしたりとか(笑)。

(宇多丸)フフフ、なにをやっているんですか?(笑)。

父・石川信義の写真をTwitterにUP

(吉田豪)宇多丸さんが嫌がりそうな活動は地道に続けています!(笑)。

(宇多丸)なに? それがわかっていてなんでやるの? フハハハハハハハハッ!

(吉田豪)フハハハハハハハハッ!

(宇多丸)僕ね、あんまりプライバシーいじりを喜ぶタイプではないのでね。

(吉田豪)よくわかっています。ただ、ネット上で顔写真があんまりないのは寂しいと思ってアーカイブして(笑)。

(宇多丸)でも、僕の父自身は大変な出たがりというか。割とスポットライトを浴びるのも嫌いじゃないタイプなんで。別にそこはいいんだと思いますけどね。ということで、改めましてじゃあよろしくお願いします。

(吉田豪)そうなんですよね。今回、だから半世紀の節目をきっちりと残すことを目的にいろいろと聞くという風に台本には書いてあるんですけども、もっとざっくりとしていますね。基本的には。

(宇多丸)なんでしょう?(笑)。

(吉田豪)基本的にはあれなんですよ。「大病して考えたことはなんなのか?」っていうのが、オープニングトークとかでちょうど『人間交差点』の報告とかいろいろとあったので、そのへんがちゃんと掘れていない気がしていて。

(宇多丸)たしかにゆっくりね、入院してた時にどうしてたとか、あんまり話していないかもしれないですね。まあ、でもね、僕はお腹が痛かったのは最初の2日ぐらいで。あとは全然絶好調になっちゃって。で、放送でも言いましたけど、Wi-Fiを持ってきて。で、Amazon Fire TV Stickをぶっ刺して。で、もう『ゲーム・オブ・スローンズ』やら『Cobrakai』だのを見まくって。全然、基本的には「いい休暇をいただいた」っていうようなムードで。基本的にはあんまり深く考え込むような場面はなかったんですよ。

(吉田豪)なかったんですか?

(宇多丸)あんまなかったんだけど。そうなんですよね。だからそんな深い話はないんだよな。

(吉田豪)へー! この年齢でだって、ちょうど考える時期じゃないですか。

(宇多丸)体調不良とかってことをですよね。

(吉田豪)杉作さんとかもだから、本当にちょっと前はヤバかったりとか。いま、だいぶ持ち直しましたけども。

(宇多丸)だからほら、『サブカル・スーパースター鬱伝』というね。

(吉田豪)まあ「40歳で病みやすい」っていうのは僕の本でやりましたけども。

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(宇多丸)まあ40を超えていま50に来ちゃって。僕はでも、常に一定量ちょっとずつ病んでいるっちゃ病んでいるんで。ずーっとちょっと落ち込みがちではあるっていうところもあるから。小出しなんですよね。全部がね。だから今回の大腸憩室炎でそこまでガーンって来たっていうムードでもなくて。むしろ「イエーイ! 医療保険に入ってたぜ、イエーイ!」みたいな。

(吉田豪)フフフ(笑)。

(宇多丸)「イエーイ! 準備最高! この順番、完璧! ヒエーイ! ヒエ、イエーイ!」みたいな(笑)。

(日比麻音子)すごいな(笑)。「いててててて……」みたいなのはなかったんですか?

(宇多丸)それはだからライブの時に痛かったっていうのはありますけども。それでやっぱり「即入院です」って言われた時の「えっ? この俺が、即入院だと……?」っていう。その感じはありましたけどね。ただ、意外とすぐに調子を……これがよくないですね。

(吉田豪)やっぱりでも、痛い時はいろいろと考えるだろうけど、そこでしょうね。2日ぐらいで治っちゃったのが、普通にただ休んでいるみたいな感じになっちゃったんでしょうね。

(宇多丸)そう。だからこれで復帰の目処も立っていないとか……でも、あえて言えばやっぱりずっと病室で、それこそ吉田さんの出ている回とか聞いているじゃないですか。そうするとやっぱり、まだ復帰の目処が立ちながら聞いているけど、やっぱり「どうしよう? このまま治んなかったらどうしよう? 本当に体が資本だったんだな」とか。あとはちょっと前に声が枯れちゃっていた時あったじゃないですか。僕、たまにありますけども。うまくしゃべれないだけで俺、もう商売にならないんだって思って。

(吉田豪)いや、すごいわかりますよ。僕もだから最近、ちょっと体調不良の時、5月3日を僕は「豪さんの日」って言ってトークイベントを昼、夕方、夜の3本やる日があるんですけど。その日が体調不良で。明らかにもういつもの言葉が出てこないんですよ。1対1とかインタビューのイベントで言葉が出てこないって、結構致命的で。自分の中では「どうしよう?」っていう。しかも、途中から寒気がしてきていったん家に帰って冷えピタを貼ってきたりとか……。

(宇多丸)吉田さんこそ激務をずっと長年続けられて。

(吉田豪)宇多丸さんがいま、いちばんの激務ですよ!

(宇多丸)いやいや、でもね、ただ吉田さんは原稿をずーっとさ、もう途切れなくやられていて。僕はでも、言うても全然遊んでますから。だからやっぱり吉田さんが僕の周りではいちばん詰まっていると思う。日々の時間が。だからね、心配ですよ。吉田さんはずっと心配ですよ。

(吉田豪)宇多丸さんは単純に「休めてよかった」ぐらいの感じなんですかね?

(宇多丸)うん。いや、本当にそう。で、ちょうどゴールデンウィークだったじゃないですか。「ゴールデンウィーク、ヒエ、イエーッ!」って感じで(笑)。

(吉田豪)フフフ(笑)。

(宇多丸)僕ね、たしかにワーカホリック気質なんだけど「休んでいいですよ」って言われたら「えっ、マジ? やったー!」っていう時もあって。よく映画評がお休みの時、普通に「やったー!」とか言っているじゃないですか。ただ、復帰の目処がつかないと、ちょっとこれはズンと来るだろうし。そこでたとえばみなさんがそこそこ上手く回していたりすると……。

(吉田豪)それ、嫌ですよね? 自分のいない日が盛り上がっているとか(笑)。

(宇多丸)いない時に上手く行ってないのも嫌だけど、上手く行っているのも嫌なんですよ(笑)。

(吉田豪)すごくわかります(笑)。

自分がいなくて盛り上がっているのは嫌

(宇多丸)フハハハハハハハハッ! それこそさ、Twitterとかのタイムラインの評判とかで、嫌な感じになっていても嫌だし、「えっ、なんかすごく今日、楽しいんだけど?」とかさ、「神回」とか書いてあると「はあ?」って……(笑)。

(吉田豪)フフフ、でも「こういう時に宇多丸がいてくれたら……」的なコメントがあるとすごい嬉しくないですか?

(宇多丸)それはね、だから僕はみなさんに「俺が見ているであろう」というところで。「その心遣いはないのか?」っていう(笑)。

(吉田豪)フハハハハハハハハッ! 「エゴサしてんだから!」っていうね(笑)。

(宇多丸)そう。「エゴサしてるの、知ってるんだからさ!」みたいな。そこで「えっ、宇多丸がいなくてもできるんじゃね?」みたいな、そういう心ないのは、仮にそう思ったとしてもいまは止めて!っていうね。

(吉田豪)弱ってるんだからっていうね。

(宇多丸)そこは、そう。思い出してきました。そういう時に普段だったら笑い飛ばしたり、「なんだ、この野郎!」って怒りのエネルギーに転じられていたのが、たしかに最初の3日ぐらい、アトロクを聞いていてそういう風に感じた時、いつもより「ああ、なんかこんなことで食らうんだ」みたいな。そういうの、たしかにありました。だからこれが慢性的になると、吉田さんがおっしゃるようなダークゾーンに入ってくるやも……。

(吉田豪)じゃあ、次いいですか? 宇多丸さんの口論の強さでいまがある説を検証したいんですけども。

(宇多丸)うるさいな……(笑)。

(吉田豪)これ、最近僕のSHOWROOMにギュウゾウさんが出た時、「ギュウゾウさん、吉田豪を殴りたいと思ったことはありますか?」っていう質問に「豪ちゃんはないけど、宇多丸くんはある」って言っていて。

(宇多丸)「豪ちゃんは基本的にはない」っていう言い方をしてましたよ(笑)。

(吉田豪)フハハハハハハハハッ!

(日比麻音子)「基本的に」ね(笑)。

(吉田豪)それはたぶん、僕が目撃したギュウゾウさんと宇多丸さんのバトル。

(宇多丸)歌舞伎町の叙々苑ですよね? ただね、吉田さん。僕のそういう大暴れした話を好んでされますけども……10年以内はないと思いますよ。

(吉田豪)その後はない? ただ、それ以前にもあの時、ギュウゾウさん相手に一歩も引かずに。「俺が若かったら宇多丸くんを殴っていると思う」って言われて「殴ればいいじゃないっすか。なんで殴らないんすか?」っていう挑発をしまくるっていうのをやっていて「怖っ!」って思った事件があったんですけども。宇多丸さん、ヒップホップの世界でもそれをやっていたっていう説を聞いたことがあって。それは本当なんですか?

(宇多丸)ヒップホップの世界で口論?

(吉田豪)口論みたいになった時に「殴ればいいじゃないっすか?」的なことをやっていた説というのを小耳に挟んだことがあって。それは、デマ?

(宇多丸)ヒップホップの人は殴るからね。

(吉田豪)フハハハハハハハハッ! そういう風に言ったら?

(宇多丸)うん。そんなことを言ってもただ殴られるだけだよ。

(吉田豪)フハハハハハハハハッ! 挑発がきかない(笑)。

ヒップホップの人に挑発はきかない

(宇多丸)ヒップホップの人って僕、しかもあんまり口論相手じゃないですね。別に口論するような相手じゃないっていうか。まあ、バトルとかはまた別ですけども。そういう議論っぽいところでヒートアップする対象じゃないですね。ヒップホップ業界の人は。

(吉田豪)宇多丸さん、口喧嘩で実績を作った説っていうのを小耳に挟んだことがあって。

(宇多丸)だから、いつでもそうなんですけども、「あいつ、うるさそうだ。腕っぷしは弱そうだけどうるさそうだから触らないでおこう」みたいな。そういうのは昔から、巣鴨学園時代からその立ち位置はあると思いますけどね。

(吉田豪)はいはい。厄介イメージで……?

(宇多丸)うん。「面倒くせえ」っていう(笑)。そういうところはあるだろうけど。ただ、実際にそれでなんかやっているかっていうと……でも、そうか。ヤナタケをなんとかで泣かしちゃったとかあるのか? ただ、それはケンカとはまた違うんだよな。なんかもうちょっと言葉の棘が……宇垣さんじゃないけど、尖ったまま調整していない時期っていうんですかね? それですよね。で、自分でやっちゃった後にすごい反省をしたりして。「ダメだ、こんなことをやっていたら……」って。

(吉田豪)そこから調整を繰り返して?

(宇多丸)そう。調整を少しずつ、10年、20年かけて繰り返して。この10年はたぶんひどいやつはやっていないと思いますよ。

(吉田豪)僕がギリで目撃したぐらいなんですね。

(宇多丸)たぶんそのギュウゾウさんが最後ぐらい……ああ、これで締め?(笑)。

(吉田豪)フハハハハハハハハッ!

(宇多丸)「では、締めに……」って、こんな話? なんだ、この話!(笑)。

(吉田豪)フハハハハハハハハッ!

(宇多丸)やっぱり吉田さんから見て、俺は対して掘り下げ甲斐がないっていう(笑)。

(吉田豪)そんなことないですよ(笑)。アーカイブですよね。

(宇多丸)まあまあ、今後ともね、お手柔らかにお願いします。でも、吉田さんとのこの油断ならない仲いい感じがいいんですよ。みんな吉田さんの周りはそうでしょうけど。みんなね、「豪ちゃん、勘弁してよ」って思いながらね。

(吉田豪)適度な緊張感を保ちながらね。

(宇多丸)お付き合いしておりますよ。よろしくお願いします。

<書き起こしおわり>

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