ジェーン・スーさんがTBSラジオ ライムスター宇多丸 ウィークエンド・シャッフルの特集コーナーに再登場。今回のテーマは『髪型』。なぜ意に沿わぬ髪型になってしまうのか?について宇多丸さんとキラーフレーズを連発しつつ、熱く語っていました。
(宇多丸)夜9時半からお送りしている『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』、ここからは1時間の特集コーナー『サタデーナイト・ラボ』のお時間です。今夜の特集はこちら。パッとしない日々、曇りがちな顔、その理由は・・・意に沿わぬ髪型特集 by ジェーン・スー!『by』ってこともないんですけどね(笑)。はい、申し訳ございません。
あの・・・世の中のみなさんってのは、アレでしょ?髪が伸びた、どっかに切りに行く、パーマかけようかしら?パーマかけに行く、そのたびに、やれ成功した、やれ失敗した、こうじゃなかった、自分で手直ししたらもっとひどくなった、とかそんな一喜一憂を毎月のように、毎週のように繰り返している。そんな愚行を繰り返しているらしいですよね。私なんかは、もうすっかりその点、解脱しておりますので、今回はすっかり完全に上から目線で髪型に関する右往左往を嘲笑おうという、そういう企画でございます。
要は『意に沿わぬ髪型特集』、これが言いたいっていうね。で、この手の話題だったらこの人を呼べばバッチリだろうということでお呼びしました。アイドルグループTomato’n’Pineの作詞家にしてプロデューサー、TBSラジオの大型帯番組『ザ・トップ5』でも大人気になりましたジェーン・スーさんです。
(ジェーン・スー)こんばんは。お久しぶりでございます。
(宇多丸)どもー。ご無沙汰しております。いやいや、すいませんね。これ、『by ジェーン・スー』ってなってますけど、要するに『意に沿わぬ髪型特集』でどうですか?っていう。コメンテーターとして。
(ジェーン・スー)そうそうそう。って言われたんですけど、先週番宣聞いてたら『by ジェーン・スー』って言われて、『お、お、おい!』みたいな。
(宇多丸)まあ、『by』はあんまり気にしないでください。『そばにいる』ぐらいの『by』で。
(ジェーン・スー)わかりました。
(宇多丸)ということで、ジェーン・スーさん。昨年9月のコスメ特集、ありましたねー。化粧特集。以来2度めの出演ということで、あれも本当に叱られているような・・・『あっ、オレ分かってなかった・・・オレ、女の子たちの気持ち、何にも分かってなかった!』みたいな。
(ジェーン・スー)本当ですよ。
(宇多丸)『モモへの手紙』的なね、特集でしたけど。2度めということで、よろしくお願いします。で、その間、あのコスメ特集でて、あれがきっかけっていうわけじゃないだろうけど、ザ・トップ5木曜パーソナリティー。しかも、昨日もその打ち上げで、(高野)政所くん、コンバットRECもいてね、トップ5、3日あるなかでね、一番木曜日が数字がね、聴取率が一番良かったなんてね。
(ジェーン・スー)ありがとうございます。まあ、ナタリー(小林悠)効果ですよ。女子アナ効果っていうことですよ。
(宇多丸)そうですかね。あの2人がブーブーブーブー言ってましたよ。コンバットRECが「(聴取率)同率だったから良かったけど、3位が決まったら傷つくじゃないか!」って。『お前も(AKB48の)総選挙の話するなよ!』みたいな。
(ジェーン・スー)本当ですよね、それね。
(宇多丸)そういうことですよ。大の大人がそれで傷つく。トップ5でも大人気。そして現在はコミュニティFM sora×niwa(ソラトニワ)FMの看板番組、金曜夜8時から『ORDINARY FRIDAY~つまりシケた金曜日~』、通称シケ金をやってると。もうすごいじゃないですか。ジェーン・スーさん。こっち(ウデ)の方が。こっちの方が。(腕を叩く音)
(ジェーン・スー)いえいえいえいえ、腕はないですよ。本当に全然。
(宇多丸)腕をペンペン叩いてますけど。ジェーン・スーさんが来ると、僕緊張してるんですよね。
(ジェーン・スー)それ、こっちのセリフでございますよ。もう。
(宇多丸)しかも、『意に沿わぬ髪型特集』なんて無茶ぶりですから。
(ジェーン・スー)いやいやいや、語りましょう。
(宇多丸)今日は一つ、よろしくお願いします。でもなぜ、この企画を思いついたかと言うとですね、要は髪型に対してですね、みんな危なっかしすぎるだろうというか。みなさん、一つ言っておきますと、僕も髪はあったんですよ。
(ジェーン・スー)過去にね(笑)。
(宇多丸)昔は、髪型というのを経てきてるわけです。人並みに。で、その頃を思い出すだに、たとえば雑誌見て『こんな風にしようかな?』『こんな風にしてください』。でも、『こんな風にしてください』でなるんだったら、それはもうこんな特集ね・・・必要ないわけですよね。で、絶対にならないわけじゃないですか。
(ジェーン・スー)なりませんね!まあ、なったとしても、ほしい結果は手にできないっていう。
(宇多丸)要は『意に沿わぬ』状態。意に沿わぬ状態のまま家に帰って、なんとか整髪料その他で『意に沿う』状態に近づけるようにやったりするんだけど、なんか焼け石に水・・・要は、その下の部分が問題だろみたいな。いろいろ他の問題もあったりするんですけど。大変だったなって。
(ジェーン・スー)でも、いろいろそういうご苦労はされたんですか?
(宇多丸)ご苦労はされてましたね。なので、ちょっとそのことを思い出したりしてる時に、髪型特集・・・自意識の問題も関わってきますし、あと一つ、今回ここあぶり出されるか分かりませんけど、『流行』っていうものの奇妙さっていうか・・・
(ジェーン・スー)あー。
(宇多丸)流行って不思議じゃないですか?
(ジェーン・スー)そうですよね。本当にね。
(宇多丸)昔はこれでイケてると思っていたものが、全然・・・いま写真を見ると『えー、何これ?ダサーイ!アハハ!』って言うじゃないですか。
(ジェーン・スー)もう、ひどいもんですよ。
(宇多丸)同じ人が言ってるんですよ。同じ価値観を持っているはずの同じ人間が、ちょっと前の自分を見て、『ダサイ!アハハ!』なんつって。って言ってる。で、前はあんまりいいと思ってなかった何かが、今度は良く見えてきたりして。流行っていうものの奇妙さ。
(ジェーン・スー)繰り返されたりしますからね。
(宇多丸)みたいなものも浮かび上がるんじゃないかと思って、髪型特集いってみたんですけど。まずジェーン・スーさん、いまボブっていうんですか?それは。
(ジェーン・スー)そうですね。これも、『解脱としてのボブ』ですね。私は。
(宇多丸)解脱っていうのはつまりジェーン・スーさん的に、『私にはコレだ』と。
(ジェーン・スー)これしかないと。ゴール。
(宇多丸)ゴールを見たと。
(ジェーン・スー)これから、私はブレることもあるであろう。
(宇多丸)あるんですか?それはやっぱり。
(ジェーン・スー)私にも煩悩はありますから。
(宇多丸)煩悩っていうのは何ですか?髪型を変えれば、もうちょっと何か・・・
(ジェーン・スー)そうです。もうちょっと何か・・・ニューライフが始まるんじゃないかっていう煩悩はありますから。
(宇多丸)幸せの教室が始まるんじゃないかみたいな。
(ジェーン・スー)そうですよ。トム・ハン子になれるかもしれない。
(宇多丸)トム・ハン子(笑)。あるかもしれないけど・・・
(ジェーン・スー)今のところ、現状マキシマムはコレだなと。髪質、顔、年齢、全てを鑑みた時に、着地点としてはここかなっていう。
(宇多丸)いや、似合ってますよ!
(ジェーン・スー)ありがとうございます。
(宇多丸)やっぱり顔の形ともフィットしてるし。
(ジェーン・スー)あのね、私もともと髪の毛真っ黒なんですよ。あと、くせ毛なんですね。
(宇多丸)そうなんですか。でもスッと・・・
(ジェーン・スー)これ、ストレートパーマなんです。
(宇多丸)ああ、大変だ、これね。
(ジェーン・スー)大変ですよ。めちゃめちゃ金もかかるんですが、ただ、ボサボサでいるよりは、ストレートパーマをかけて、ボブで黒くしておく。これが一番、人様に迷惑をかけないっていう結論が。
(宇多丸)あの、(自分を)世間に釈放する段階で。
(ジェーン・スー)そうでございます。あの、地味に釈放できるっていうか。出る時に、バーッと組員が並んでる状態で、「お帰んなさい!」っていうところにはならないっていう。
(宇多丸)そんなことはないけども、後ろ指もさされない。『アイツ、ムショ出だな。ムショ帰りだな。』みたいな後ろ指はさされない。ああ、そうですか。でも要は似合ってるというところに到達したってことですか。
(ジェーン・スー)まあ、美容師さんと最終的に・・・この髪型に落ち着いたのが一年ぐらいまで。
(宇多丸)あっ、結構最近なんだね。
(ジェーン・スー)そうです。何度もこういう髪型にはしてるんですけども。ずっと18から同じ美容師さんなんですよ。やってもらってるのが。
(宇多丸)おおー。これは結構まず、意に沿わぬ髪型に対する対策として、ラスト回答の一つとして。自分に合うというか、ウデがちゃんとあって、自分のことを理解しているいい美容師さんを見つけるっていう。
(ジェーン・スー)これ、大事です。
(宇多丸)はっきり言って、これさえ出来ればこの話、終わりでもいいんだけどぐらいの。
(ジェーン・スー)そうですね。でも、見つけるっていうよりも、『育てていく』っていうことなんですよね。関係性を。
(宇多丸)ほお。18の頃から。えっ、どういうことですか?それは。
(ジェーン・スー)あの、実は一回美容師さんに「この髪型にしてください」って言って、「イヤだ」って言われたことがあったんです。
(宇多丸)(笑)それはちなみに、どんな髪型だったんですか?「イヤだ」・・・普通さ、美容師さんって「イヤだ」ってありますか?「似合わないよ」とかさ。
(ジェーン・スー)はっきり「イヤだ」って言われました。まあここは関係性あってのことだったんですけど。ちょっとお話長くなってもよろしいですか?
(宇多丸)いいですよ。もちろんですよ。
(ジェーン・スー)あのですね、23-4ぐらいの時かな?一世一代の『紀香ブーム』が来たんです。世の中に。
(宇多丸)藤原紀香ブームが来た。
(ジェーン・スー)そうでございます。藤原紀香ブームに、まあ乗っかるよね。
(宇多丸)(笑)まあ、ちょっと待って・・・我々男目線から見る紀香ブームの意味と、たぶん違うと思うんで。
(ジェーン・スー)違うんです。なぜかというと、その時『藤原紀香になるためにはどうするか』っていう特集が全ての雑誌で組まれたんです。
(宇多丸)つまり、女性からすると本当に理想のロールモデルとしてあったわけですね。
(ジェーン・スー)そうです。もうスタイルもいい、笑顔もかわいい、そして髪型が斬新だったんですよ。ウルフカット。
(宇多丸)ウルフカット・・・いわゆるオオカミヘアー。
(ジェーン・スー)そうです。今、これを聴いてらっしゃる30以上の女性の方は分かると思うんですけど、藤原紀香、あの時代は特に『このタレントにこの美容師』っていうのがすごくあったんですよ。
(宇多丸)はいはい。それはすごく扱われてたりしたんですね。
(ジェーン・スー)で、この美容室のこの人が開発したこのヘアー、これになるためにはココに行けみたいな。今から考えると、完全に癒着ですよね。
(宇多丸)まあね。まあね。完全にそうだね。
(ジェーン・スー)何か大人の意思が動いてる・・・
(宇多丸)メディアのなんとかですよ!
(ジェーン・スー)そうそう。まあ、騙されまして。で、この髪型・・・とにかくなぜかすごいシンパシーを紀香に感じたんですよ。今から考えたら埋めてしまいたい自意識なんですけど。
(宇多丸)あの、あまりジェーン・スーさん的な感じはしませんよね。
(ジェーン・スー)しないです。まあ、誰でも迷走はするんです。
(宇多丸)でも、『紀香、わたし通じてるかも』・・・
(ジェーン・スー)『右か左かでいったら右じゃね?』みたいな。
(宇多丸)人類をニつに分けるなら、紀香側だと。はいはいはい。
(ジェーン・スー)ぐらいの意気込みで。で、美容師さんに「あのウルフカットやってくれ」と。
(宇多丸)ウルフカットってちなみにどんな感じ?
(ジェーン・スー)えーとですね、ショートと言えばショートなんですけど、襟足が長い。そしてトップス、後頭部が少し盛り上がっている。で、横はシャシャシャッとシャギーで前に髪の毛がこう、下りてるんですよね。
(宇多丸)ああ、前に下りてるんだ。
(ジェーン・スー)なので、前から見るとショートカットなんですけど、後ろから見るとちょっと・・・
(宇多丸)ああー、分かってきた気がする!
(ジェーン・スー)S字カーブを後頭部が描いていると申しますか。そうですね。
(宇多丸)あったかも。あったかも。
(ジェーン・スー)で、缶チューハイのCMとかをやっていたころの紀香さんはその髪型で、非常に美しかったんですよ。で、やるならコレだろということで、美容師さんのところに行って。その当時で5年くらいの付き合いですよね。『コレにしたい』と。答えは「イヤだ」。
(宇多丸)「イヤだ」(笑)。ちなみに、そこまでは良好な関係を築いていたんですか?
(ジェーン・スー)そうです。
(宇多丸)だいたいどんな感じの髪型をしてたんですか?
(ジェーン・スー)まあ、『ちょっとパーマをかけて』とか、『ちょっと短くして』くらいの感じだったんですけど、あんまり何も言わなくても・・・
(宇多丸)無難な感じというか。似合うように。
(ジェーン・スー)そうですね。何も言わなくてもいい感じの。あと、突拍子もない髪もやってくれたんですよ。『とりあえず無茶苦茶にパーマをかけてくれ』みたいな発注でも、ゲラゲラ笑いながらかけてくれる人だったんですよ。
(宇多丸)で、かけて、ある程度ちょんと意に沿う感じだったんですか?
(ジェーン・スー)私はその時に、『ちょっと変わった人だよ』っていうのを出したかったんでしょうね。自意識として。で、それもすごく伝わるような髪型になったんですよ。
(宇多丸)なんだけど、『ウルフカット・紀香カット』だけは、拒否する。
(ジェーン・スー)NO!
(宇多丸)ノー!
(ジェーン・スー)で、私は泣きながらウワーッ!まあ、嘘ですけど。その時は多少の手入れをするぐらいで美容院を出て、もうもちろん他のところ行きますよね。諦めきれない。
(宇多丸)ああ、まあね。『あいつ、使えねーな!』と。
(ジェーン・スー)もう、『人様のいうことを聞かない、どういうことだ!?こっちは金だしてるんだぞ!』っていう感じで別の美容室に行きました。
(宇多丸)それは、なんかちょっと評判を調べてですか?
(ジェーン・スー)そうです。で、『ここならやってくれるだろう』ってことで行って、『まあ別に、紀香になりたいわけじゃないけど・・・』みたいな感じで。
(宇多丸)別に紀香じゃないけど・・・
(ジェーン・スー)『紀香じゃないけど、髪型としてコレ、評価してるのよね。』みたいな感じで。
(宇多丸)(爆笑)分かる気がします。
(ジェーン・スー)藤原紀香の写真を持って行って出しました。そして藤原紀香さんの髪型ってですね、意外と技術が追いついて、髪型としては・・・なったんですよ。
(宇多丸)確かに注文どおりに。
(ジェーン・スー)なりました。
(宇多丸)ほう。どうですか、なりましたよ!
(ジェーン・スー)なりましたよ。『おお、やるね!』みたいな。ただ、紀香ヘアーっていうのは、一日その頭ではいられないんです。あれ、パーマじゃなくてカーラーとかで、一回ホットカーラーで巻いて、2-3時間は持つけど、そこから時間が経ってくると、髪の毛ストレートの人とか、分かりやすくいうと、最近の辻仁成さんみたいになっちゃうんですよ。サーッと。
(宇多丸)分かりづらいですよ!
(ジェーン・スー)まあ、Google検索で。
(宇多丸)辻仁成は劇的にルックス変わってるから、知らない人はね、分かんないと思いますけど。
(ジェーン・スー)最近のです。最近の辻仁成。
(宇多丸)是非、ネットで見てください。
(ジェーン・スー)Googleしていただいて、みなさん。いわゆる、ジャキジャキのボサボサみたいな。なので、その当時私はとにかく藤原紀香になりたくて気がおかしくなっていたので、藤原紀香が買っている服屋で服を買い、そして髪の毛を維持するために会社に携帯用のホットカーラーを持って行き、お昼休みになるとトイレに行って、トイレの個室に入るじゃないですか。そうすると大体ウォシュレットがあるんですよ。ウォシュレットはつまり、電源が入ってるわけですよ。あれを引っこ抜いて、携帯用のホットカーラーを突っ込んで、個室で黙々と頭を巻き・・・
(宇多丸)マジで!?ちょっと今のジェーン・スーさんからすると、考えられない行動ですね!
(ジェーン・スー)いやまあ、それぐらい俗世にまみれていた時代もありましたし。で、しかもそれを巻いたままじゃダメなんですよ。そこから崩す。そうすると紀香ヘアーが出来るんですよ。
(宇多丸)はー。ちょっと無造作感というか。
(ジェーン・スー)で、ワックスつけてみたいなことをやっていたんですが、死ぬほど面倒くさいんです。だから素人が手を出す髪型じゃなかったんです。
(宇多丸)あー。そんなもの流行らすなんて、迷惑な話だね。
(ジェーン・スー)そうなんですよ。たぶんね、ものすごい屍があったと思いますよ。
(宇多丸)その技術的にたのんだ人は出来ていたけど、出来てもいないみたいな人も。
(ジェーン・スー)出来てもいない人もいるし、その後ケアが出来なかった人もたくさんいると思うんですけど。で、結局何が起こったかっていうと、それで完全にガワは紀香スタイルになったんですけど、服もそう(紀香風に)なりました。でも、鏡に映った自分を見たら、なんていうかXのファンの人、いるじゃないですか。
(宇多丸)(笑)
(ジェーン・スー)あの、YOSHIKIを体現していることは伝わるが、YOSHIKIには見えないみたいな。
(宇多丸)分かります分かります。
(ジェーン・スー)この人はTOSHIになりたいんだな。TOSHIを崇拝していることはすごく伝わるビジュアルだけども、TOSHIには見えないみたいな。
(宇多丸)うん。
(ジェーン・スー)みたいなことになっちゃったんですよ。
(宇多丸)それが外側から見えるって、すごいよね!心の中が見えてるみたいな状態だもんね。
(ジェーン・スー)で、Xのファンの人はそれでいいじゃないですか。だって、自分はコスプレとしてやってるわけだから。
(宇多丸)それを表明するためにやってるんだから、それでいいんだ。
(ジェーン・スー)私は違ったわけですよ。
(宇多丸)私は藤原紀香ではなく、髪型として!みたいな。
(ジェーン・スー)藤原紀香があの髪型をすることによって、受ける恩恵のおこぼれをあずかりたかった。
(宇多丸)(爆笑)なんてことを!
(ジェーン・スー)髪型ってそうじゃないですか。
(宇多丸)まあまあ、そうですよね。
(ジェーン・スー)『モテたい』とか。大失敗ですよ!
(宇多丸)つまり、その結論に対しては全く有効性の無い状態になった。
(ジェーン・スー)もうね・・・髪型は意に沿ったんです。が、結果が全く意に沿わなかった。
(宇多丸)やっぱり髪型というのは、髪型単体で成り立つものではないという正論にたどり着いたと。
(ジェーン・スー)そうです。あと、会社の人が私が紀香の格好で歩いて会社に入って行くと、後ろからバーッと追いかけてきて、なんか『いい女、入ってきた』風の。で、バッと前に来て、『チッ!』と舌打ちされていくとか。
(宇多丸)でもそんぐらいガワとしての紀香感ってところまでは来た・・・
(ジェーン・スー)後ろから見たらYOSHIKIだったんです。私。
(宇多丸)あー、YOSHIKI(笑)。
(ジェーン・スー)Xで言う所のYOSHIKIだったんです。
(宇多丸)はいはいはい。そうですか。じゃあ、『それ、紀香だね!』みたいな、そういう指摘とかもあったんですか?
(ジェーン・スー)まあ、『それ、紀香だね!』っていうよりは、『それ、紀香だね(笑)』っていう。
(宇多丸)『それ、紀香じゃね?(笑)』って。
(ジェーン・スー)そう。そういう指摘はありましたね。
(宇多丸)あるんだ。で、どうしたの?気づいて、自分で?ハッと。
(ジェーン・スー)ハッと気づいて、『何をやってるんだ!?』と。
(宇多丸)(笑)
(ジェーン・スー)『私は何をやってるんだ!?』と。一番、『何をやってるんだ!?』と思ったのは、飲み屋に行ったんですよね。で、飲み屋に行ったらバーのマスターの人がいて、完璧な紀香ヘアーで完璧な紀香メイクで。
(宇多丸)完成度が高い。
(ジェーン・スー)完成度が高い。手先が器用なんで、やってったんです。そしたら、飲み屋の人が、バーテンの人が客に飲まされてて、めちゃめちゃ酔っ払ってて、すごい口説かれて。「キレイですよね!ナントカですよね!」みたいな。のがあって・・・
(宇多丸)恩恵あるじゃん!
(ジェーン・スー)そうそう。あったんですよ。で、『やったね!』みたいなこと思っていたら、一ヶ月後ぐらいに『何をやってるんだ!?』と思って、ある日、気を抜いて行ったんですよ。で、気を抜いてその飲み屋に行って座ったら、「あ、会社◯◯の方ですよね。」「そうですそうです。」「◯◯さんっていう人、知ってます?すっごいキレイな方だったんですけど、二度とお会いできてないんですよ!」
(宇多丸)・・・そんなことってあるの!?
(ジェーン・スー)目の前に・・・
(宇多丸)そんなさ、『テンペスト』のさ、男と女が入れ替わって目の前にいるのに気づかないみたいなことって、あるの!?
(ジェーン・スー)あったんですよ!私のCG技術はその時、すごかったんです!Photoshopが。歩くPhotoshopとしての能力がすごかった。
(宇多丸)ああ、そう。ちょっと見たいね。逆に。
(ジェーン・スー)いや、その時の周りの社員は知ってるわけじゃないですか。『こいつ、一ヶ月前まで藤原紀香気取りだった』って。もうドッカンドッカン笑って、「あいつねー、いないっすよねー、最近!」みたいな。
(宇多丸)(爆笑)
(ジェーン・スー)目の前にいるっちゅーの!
(宇多丸)あー、すげーな、それ!え、でも、っていうことは成功してたんじゃん。
(ジェーン・スー)成功ではないですよ。だってその後の虚しさ・・・
(宇多丸)虚しいかなぁ?相手酔っ払ってるしね。
(ジェーン・スー)相手も酔っ払っているし、私ではない私を好かれてどうしたらいいの?みたいな。
(宇多丸)ああ、これはちょっと本質的な問題だよ。
(ジェーン・スー)自意識で言うと。
(宇多丸)まあ、全然いいこともなかったし、自意識の安定にもつながらなかったし、いよいよそこで決定的に。
(ジェーン・スー)そうですね。あと、留学してた時とかに、HIP HOP及び黒人文化にあまりに憧れたことにより、エクステンションですごい太い三つ編みをつけて。そして黒人の学生に、「アハハ!ミリ・ヴァニリ!」って言われるという。そういうこともやって来ました。
(宇多丸)(爆笑)やだよなー!やっぱさ、男を言うのは止めてほしいよな。何にしてもね!
(ジェーン・スー)ミリ・ヴァニリは無いだろ!っていう。しかも口パクじゃん!っていう。
(宇多丸)だから、アーティスト的にも言われてイヤなところを突いてくるっていうね。ああ、そうですか。
(ジェーン・スー)だからいろいろやっぱり、やって来ましたね。
(宇多丸)で、そのさ、『私、間違ってた!』って最初の18歳からのお付き合いの美容師さんのところに戻ったの?
(ジェーン・スー)戻りました。
(宇多丸)それさ、その時に一応紀香ヘアーの残骸の状態で行くわけじゃん?
(ジェーン・スー)いや、でもそこは、『いやいや、ちょっとシャギったんだけど!?』みたいな感じで戻りましたね。
(宇多丸)ああ、他所でちょっとしたんだ・・・
(ジェーン・スー)『ちょっと・・・そんなときもあるよ、私は。』みたいな。
(宇多丸)まあ、美容師さんそういうの、慣れてるでしょうけどね。
(ジェーン・スー)そうですね。『浮気しても、どうせ帰ってくるんでしょ?』って古女房ですよ。
(宇多丸)なるほどなるほど。でも、プロだから『あっ、紀香やったな・・・』って。
(ジェーン・スー)分かったと思いますよ。『アイツ、他でやって来たな』っていう。
(宇多丸)絶対分かる。でも、以来その人に戻って、比較的安定した、意に沿う範囲の・・・
(ジェーン・スー)そうです。たまにワガママ言いますけども、まあ着地としては穏やかなところに常にその人が置いてくれるっていう。ありがたい。
(宇多丸)これは、ある意味最終回答になってますよね。とにかく・・・『育てる』っておっしゃいましたけど。
(ジェーン・スー)関係性を育てる。
(宇多丸)ああ、その人はかなり早い段階から、ジェーン・スーさんの個性を理解してっていうことですかね。
(ジェーン・スー)そうですね。あと、やっぱり性格が分かるじゃないですか。話していると。『あっ、こいつは髪乾かして寝ないな』とか。
(宇多丸)ああ、ズボラだなと。
(ジェーン・スー)そうそうそう。『この人は1ヶ月に1回切りに来る人じゃないな』とか。そういうのが分かってもらえると、『まあ、3ヶ月くらい持つ髪型っていったら、コレだよ』とか。
(宇多丸)ああ、そうか!
(ジェーン・スー)やっぱり紀香ヘアーの最大の失敗は、会社で便所の電源まで抜かないと維持できないっていう。すごいマッチポンプなんですよ。
(宇多丸)はっきり言ってさ、『仕事すれ!』っていう話だよね!
(ジェーン・スー)そうそう。
(宇多丸)仕事している人には本当に向かない髪型だね。なるほどね。そうかそうか。というね、遍歴を。分かりました。
(ジェーン・スー)で、ございました。でも、宇多丸さんは今の髪型(スキンヘッド)に落ち着くのに・・・
(宇多丸)髪型っていうのか分かりませんけど。
(ジェーン・スー)まあ、一応髪型ですよね。
(宇多丸)ちなみにジェーン・スーさんと僕が(大学サークルの)先輩後輩として会った時には、もうこの髪型だったってね、さっき『あ、そうでしたっけね』っていう感じで言ってましたけどね。
(ジェーン・スー)いや、完全にコレ(スキンヘッド)でした。
(宇多丸)その前の状態の写真とか、見たことありますか?
(ジェーン・スー)いや、無いです。
(宇多丸)あっ、そう?要は、その一個前の状態は、前髪があって、それが立っているベリーショートだったんですね。
(ジェーン・スー)あっ、タンタン的な。
(宇多丸)タンタン・・・そうですね、タンタンよりは前髪ない感じの。
(ジェーン・スー)ちょっと立っている・・・勝俣(州和)さん的な?
(宇多丸)僕ね、要するにね、全体として髪型が、特に高校の終わりから大学入って以降は、風のものすごい風圧で髪が後ろにビーン!となってるような状態っていうのが好きだったんですよ。分かります?
(ジェーン・スー)ええと、風が前から常に当てられているような状態ですね。
(宇多丸)あのさ、AKIRAっていうマンガあるじゃないですか。あれで、鉄雄っていうのが出てくるじゃないですか。アイツが、バイクに乗っている時に、髪がものすごいこうなってるわけですよ。この状態が好きだったんです!
(ジェーン・スー)それ、不自然ですよね?
(宇多丸)で、それの前髪だけある状態とか、そういうことをやったりしてたんですね。
(ジェーン・スー)常に、向かい風・・・
(宇多丸)新幹線ヘアーとも言われてましたけど、とにかく、それよりもっとなびいている状態。こんな髪長くなくてブアチョーッ!ってなってて。で、さらにその前はショートドレッドだったですよ。
(ジェーン・スー)あっ、一応そういう・・・
(宇多丸)ただ、そのショートドレッドも今みたいに、ショートドレッドヘアーみたいなのが技術として・・・その辺の人もみなさん、やっているけど、そん時は高校の時からずっと一緒にやっていた人に、『こういうことをやってみたいんだけど・・・』
(ジェーン・スー)あっ、実験台として?
(宇多丸)いや、僕が。それこそDE LA SOULとかそういうジャケとか見せて、「こういうことをやってみたいんだけど、どうやってやればこうなると思う?」みたいな。
(ジェーン・スー)まだ、その辺の技術がなかったんですね。
(宇多丸)で、ねじってすごい濃いパーマをかけて、ねじって。本当のラスタのドレッドとかってさ、もう頭洗わないからさ。で、固めるとか言うじゃん?それに近い状態にしてたわけ。ショートドレッドで。
(ジェーン・スー)おおう!
(宇多丸)で、それでね、2ヶ月ちょっとぐらい。でも、そのショートドレッドの時の印象がすごい強烈で、早稲田の中でものすごい目立ってたみたいで。そんな格好でウロチョロして。その格好でフランスとか行って、みんな「すごいね、その髪型・・・」って。行く先行く先でみんなに言われるみたいな。で、ただその時にデップでですね、これ歌詞にも出てくるんですけど、デップとかハードムースみたいなので、風でなびく状態を作るわけ。ガッチガチに固めてたわけ。で、それを見ていた母親。当時まだ実家ですから、まあ、「毛穴が死ぬわよ」と。「ハゲるわよ」と。
(ジェーン・スー)予告が・・・
(宇多丸)予告されてたわけです。「うっせえ、ババア!」っつってたんですよ。「今だからいいんだよ!」みたいにやってたんですけど、これは完全にお母さんの言うとおり。
(ジェーン・スー)そう。親の言うことって正しいんですよ。残念ながら。
(宇多丸)ね。ちなみに、そういう髪型に対する『たしなめ』みたいなのもあったんですか?
(ジェーン・スー)あの、私ですね、同じ風に黒人文化に憧れることによる弊害の一つとして、髪をチリチリにしたくなるっていうことで。
(宇多丸)女の子、あるよね。髪・・・あんまモテなさそうだけどね。あの感じね。
(ジェーン・スー)そうです。確実にモテないんですけど、どうしてもチリチリの爆発ヘアーにしたくて。
(宇多丸)あっ、アフロに近い状態、あったね。そういえば。
(ジェーン・スー)ありました。あの時に親に、「おっ、曙!」って言われたんです。
(宇多丸)(爆笑)ちょっと待って下さい!ジェーン・スーさんの周りにいる声をかける、親御さんも含めた方は、なんでそのデリカシーが無いたとえをするんですかね?
(ジェーン・スー)的確なだけだと思うんですよね。
(宇多丸)容赦がない(笑)。
(ジェーン・スー)『曙』っていうのも、髪の毛がチリチリのを、敢えてひっつめてるっていう格好良さが欲しかったんですよ。チリチリでボンバーじゃなくて、チリチリを敢えてなでつけて、それこそデップとかでガチガチにして。
(宇多丸)で、後ろがちょっとつってる状態みたいな。
(ジェーン・スー)そうそう。まさにそれをしていたら、「おっ、曙!」って言われて。前髪のあたりですよね、たぶん。
(宇多丸)曙って言われたら、ちょっとその髪型続けられないよね、それね。
(ジェーン・スー)ねえ。さっきから男の人ばっかりですけどね。言われるのが。
(宇多丸)ちょっとは考えろよ、それ!たとえにしたってさ。
(ジェーン・スー)しかも、『アナタから生まれてきた遺伝子ですよ』っていう。
(宇多丸)でも、やっぱり親の言うことは・・・これ、髪もそうだけどさ、本当これ聴いているみなさん、こんなこと聴いてもみんな信用しないと思うけど、服とか全部親の言う通りだった!
(ジェーン・スー)そう、そうなんです。服は特にそうですね。
(宇多丸)「あんた、そんな十代でね、スーツとかそんな似合うわけないじゃない!」みたいなこと言われて、「うっせえ、ババア!」っていうね。「流行ってんだ、オイ!」なんだけど・・・
(ジェーン・スー)その通り。
(宇多丸)「若いんだから、スウェット、パーカーみたいなのが一番。大人になってからだとそういうのは貧乏臭くなっちゃうのよ。」って。本当だった!お母さん!
(ジェーン・スー)やっぱり、意に沿わぬ髪型を何回もして、自分を探すっていう。『自分を探しても、自分は見つからない』っていうのが私の言葉なんですけど。
(宇多丸)ああ、探してもいないものなんだけど・・・
(ジェーン・スー)そう。探してもいないものなんだけど、探す努力とか、探す熱意っていうのを無理やり自分の中に押し込める必要もないと思うので。やっぱり意に沿わぬ髪型、もちろんガンガンしていくべきだと思います。
(宇多丸)そうだね。意に沿わぬ髪型の一つもしたことがない、要するに最初からある種見切ったと言うべきか、髪型が無い状態・・・髪型が無い人いるじゃん、男とか。
(ジェーン・スー)ああ、完全なギブアップ坊主とか、どうにかしてほしいですよね。本当に。
(宇多丸)いや、そういうことですよね。
(ジェーン・スー)あの、探すことを止めた男たち。
(宇多丸)もう最初から投げている。女でもいるでしょうね。女性性みたいなのを投げちゃっている。
(ジェーン・スー)そうそう。そこはやろうよ!っていう。
(宇多丸)これ、服とかでも言えることだけど、あんまりそこ投げちゃっていると、ちょっと何か知性的なものの欠如にも見えてしまうという時、あるじゃないですか。その見せ方の問題だから。そんなのさ。
(ジェーン・スー)そうなんです。やっぱりその、『髪型って何なんだ?』っていう話になると、髪の毛、毛っていうのは元々、防御すべきところに生えてくるわけじゃないですか。だから、本来だったら当たりが弱いところに生えるわけですよ。当たりが弱いところに生えるものを、生えて、自分の自意識も含めた弱さをカバーするわけじゃないですか。
(宇多丸)メタファー的にも、そこは。
(ジェーン・スー)まあだから、『兜』だと思うんですよね。
(宇多丸)あ、出ちゃいましたね。キラーワードね。兜。髪型は兜。防御してると。
(ジェーン・スー)そうそう。髪型は兜なわけで、社会的に『私はこういう属性です』というのを示す道具じゃないですか。髪型って。つまり、『私は◯◯軍に属しています』と。『ゆるふわ軍の戦士です』とか、『私はパンク軍の戦士です』とかっていうことを社会に出していくためのものじゃないですか。で、そこでやっぱり足軽が大将の兜をかぶると・・・そこでおかしなことが・・・
(宇多丸)いきなり紀香兜かぶると・・・
(ジェーン・スー)そうなんです!
(宇多丸)本当はさ、身軽に鉄砲持って、ピュンピュンピュンピュン飛び回らなきゃいけないような人なのに、そんなすごい兜がグラグラ・・・
(ジェーン・スー)グラグラグラグラ。
(宇多丸)それ、馬乗る用じゃねーから!陣地の中にいる人用だから!みたいな。
(ジェーン・スー)もう、(兜が)前にパコーン!って落ちてきちゃって、前が見えないみたいな。
(宇多丸)(笑)戦闘できないみたいな。それはあるかもしれない。
(ジェーン・スー)ただ、やっぱりやってみないと分かんないっていうのもありますからね。
(宇多丸)たしかに。だからスキンヘッドも、そういう意味では無防備かというとそうじゃなくて、スキンヘッドという強烈なね、型の中に僕は自意識を。これ、鎧ですよ。ある意味。しかもサングラスなんかしちゃうと、完全にこれ、一種の・・・『本当のオレは誰にも見せない!』みたいな。
(ジェーン・スー)ありますよね。
(宇多丸)『見せない!』っていうけど、見てみたら何もなかったみたいなね。よくありますけど。
(ジェーン・スー)だから髪型も、ボウズ・・・宇多丸さんみたいなボウズですよ。1ミリたりとも生やす気はないっていうボウズの人は、戦(いくさ)で言うなら『僧侶』じゃないですか。
(宇多丸)えっ!?戦で言うなら?見た目、見たまんまじゃねーか!たとえてねーだろ!
(ジェーン・スー)つまり、僧侶っていうのは、『NO MORE WAR』っていうことじゃないですか。
(宇多丸)ああ、はいはい。
(ジェーン・スー)実際、NO WARな、手を下さないよっていう。戦意は無いよみたいな。ただ、やっぱり戦でも丸腰の人がニヤニヤ笑っているのが一番怖いと思うんですよ。ものすごい兜かぶっている人よりも。
(宇多丸)あー。だから、『コイツ、ただ者じゃない』っていう感じがあるっていう。
(ジェーン・スー)ないって感じは絶対出ますよ。
(宇多丸)間違いなくそうだね。完全ゼロミリはやっぱりそうなの。あと、僕のゼロミリは何ていうの?『素体でいたい』っていう、そういう僕のアレもあるわけですよ。ほら、ピアスとかしてないじゃないですか。
(ジェーン・スー)そうですね。
(宇多丸)その類の格好、要するに完全に僕はフラットだ!という・・・
(ジェーン・スー)まあ、フラットって実際あるんですかねえ?
(宇多丸)フラット・・・分かんないけどね(笑)。
(ジェーン・スー)ねえ。内側からにじみ出てきたものじゃないと・・・『解脱気取り』みたいな感じには見えますよね。
(宇多丸)解脱気取り!解脱気取りなんですよ、僕は。
(ジェーン・スー)そうですよね。これが生えないわけじゃないじゃないですか。だから、これから何かが起こるかもしれないですよ。
(宇多丸)あとね、要は意に沿わぬ髪型が続いて、『一回ちょっと剃ってみよう、ゼロにしてみよう』と思ってやったら、意外や意外。『あら、頭の形が素敵ですね。』とか。『あれっ!?』っと。今までになくチヤホヤされるじゃねぇかと。髪あったときより、これ、イケるんじゃね?みたいな。
(ジェーン・スー)これ、選ばれし者ってことですよね。頭の形が良くないと出来ないですから。
(宇多丸)そうなんです。だから、そこも上から目線。『お前らのような凸凹の頭した連中は・・・』みたいな。
(ジェーン・スー)そう。でもそこまでの覚悟がある人はいいですけど、さっきも言ったギブアップ坊主みたいな・・・あれはどうかと思うんですよ。
(宇多丸)はいはい。投げちゃってるんですよね。それは分かります。服とか全般に言えることですね。はい。ということで、たっぷりちょっと30分近く・・・
(ジェーン・スー)すいません。大分時間が・・・申し訳ない。
(宇多丸)いえいえ、バッチリです。こういう話がしたかったんです。はい、ということで一旦、曲に行きたいと思います。
(中略)
(宇多丸)はい、ということでそろそろまとめ方向に持って行こうかなという感じなんですけど。ジェーン・スーさん、髪型、いろいろちょっと話つきないんですけどね。
(ジェーン・スー)そうですね。やっぱり『意に沿わぬ髪型』っていう風に言ってますけど、私が言いたいのは、主客が逆転してるというか、『髪型に沿わぬ貴様』っていうことだと思うんですよ。
(宇多丸)あの、先ほど言ったガワとして藤原紀香がいくら完成されていても、それはその兜をかぶっているお前には合わぬのだから・・・
(ジェーン・スー)そうなんです。『あなたは足軽なの?それとも大将なの?』っていうところで、いわゆるファッションと同じなんですけど、外側から自己を固定しようとすると失敗することが多いんですよね。
(宇多丸)なるほど。これはだから若い時にたとえば誰々風、分かんないですけどそういう風にやると、ガワからやっても『あれー?』と。それはなぜなら、それはお前、中が合ってない。
(ジェーン・スー)中身が違うからってことなんですよ。
(宇多丸)中から計算してこうするという風にやっていくべきなのに・・・若い時はなかなかね・・・
(ジェーン・スー)そうなんです。出来ないですね。だけど、顔とか体と違って、加工しやすいじゃないですか。髪の毛って。だからみんな安易にそこに行くんですが、さっきのお電話にあった方みたいに、(周囲から)「どうしたの?」としか言われないっていう。っていうのはやっぱり、あなたの中身とは・・・
(宇多丸)フィットしていないから。みんな、この人をどういう風に位置づけ、どういう風に見られたいと思っていてこういう髪型にしたのかを聞いてからじゃないと、笑うことも出来ないみたいなことなのかもしれない。
(ジェーン・スー)やっぱり髪って一番難しくて・・・髪質がある、顔がある、人格がある、年齢がある、この4つをクリアしないといけないわけですよ。
(宇多丸)そうだよね。生理に完全に則したものというか。服はまだね、とりあえず着りゃあ着れるけど。
(ジェーン・スー)そうなんですよ。で、髪型って年齢もすごく出るので、合う合わないっていうのもありますから。やっぱり、今後どうして行きたいというのがある、私はどうしたら、僕はどうしたらいいんだっていう人には、まずたとえば『藤原紀香』としましょう。『藤原紀香』と思ったら、藤原紀香の画像をGoogleでググる。で、『なるほど』と思う。そして、『藤原紀香 半角空け 髪型』でググる。そうすると、真似した人たち(の画像)が出てくる。
(宇多丸)ああーーー!!
(ジェーン・スー)で、そこで客観性を養うわけですよ。なるほど。足軽が・・・
(宇多丸)これだー!!っていう。
(ジェーン・スー)『オレはコウナロウトシテンノカナ?』っていうところをちゃんと。私やったことがあるのは、「この髪型にしたいです。でも、この髪型の真似をしたこの人にはしないでください」っていうのを持っていったことがあって。美容院に。
(宇多丸)ああ、ちゃんと予防としてね。
(ジェーン・スー)「うるさいよ!」って言われましたけどね(笑)。
(宇多丸)(笑)「こうなりがちだけれども!」って。
(ジェーン・スー)こうはしないでほしいっていう。
(宇多丸)あー、じゃあそうすると、地雷は避けてくれるものなの?
(ジェーン・スー)避けられます。避けられます。やっぱり、一枚の写真ではなく、その人を真似した髪型とか、いま結構髪型サイトいっぱいありますから、それをやろうとしてどうなったかまでちゃんとリサーチしてから行ったほうがいいと思います。
(宇多丸)これは面白いですね!しかも実践的っていうかね。
(ジェーン・スー)あと、人に聞く。友だちとかに、「どう思う?」って。で、「髪型どうしたらいい?」って聞いてズバッと答えられる人はいないんで、まあ3つくらい選択肢を持って、「どう思う?」と。
(宇多丸)「もうちょっと短くしてみたら?」とかね、なんの気なしでね、あるかもしれないですね。意外と人の意見客観・・・人から見た自分のほうが、より実態に近かったりする。
(ジェーン・スー)そうなんですよ。いいんですよ。ステップアップ。大将になりたいのは誰も責めませんし、大将バンザイですよ。ただ、今じゃないんじゃない?っていう。
(宇多丸)なるほど。ということで、今日も髪型の話、いくらしてもしたりないし、リスナーのみなさんの髪型話もね、まだまだしたい話はあったんで・・・髪型ある限りはこの件また・・・
(ジェーン・スー)そこに毛がある限りは。
(宇多丸)毛がある限り、引き続きこの研究、続けて行きたいと思っておる次第でございます。ということで、Tomato’n’Pineの新譜も楽しみにしつつ、ジェーン・スーさん、無茶振り、ありがとうございました。
(ジェーン・スー)ありがとうございました。
(宇多丸)以上、『意に沿わぬ髪型』特集でした!
<書き起こしおわり>
藤原紀香、ミリ・ヴァニリ、曙といった髪型遍歴を持つジェーン・スーさんの至言の数々!心に染みましたYO!
↓このお話の続きです。
ジェーン・スー しまおまほ 宇多丸 髪型談義 モテる髪型とモテない髪型