町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、ご自身が脚本で参加された実写版映画『進撃の巨人 後篇 エンド オブ ザ ワールド』について話していました。
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映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(前篇大ヒット上映中!) pic.twitter.com/D3gGecKFjm
— 実写版『進撃の巨人』公式 (@shingeki_movie) 2015, 8月 7
(赤江珠緒)そして今日はね、3つ話題があるということで。
(町山智浩)ちょっとね、たくさん設定したりとかね。商売がらみなんですけど。まずですね、『進撃の巨人』の後篇の『進撃の巨人 エンド オブ ザ ワールド』が今週末公開なんですね。9月19日公開ですね。はい。その宣伝をしなきゃなんないんですけど。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)あの、僕が脚本に関わっていますんで。ちょっとまず、この音楽を聞いてもらえますか?
(町山智浩)これ、聞いたことあるでしょ?
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)これね、結構日本でも原田知世さんとかですね、麻丘めぐみさんとか、いろんな方がカヴァーしている歌で、スキーター・デイヴィスっていうアメリカの女性歌手の1962年のヒット曲の『The End Of The World』という。
(山里亮太)あ、はいはい。
(町山智浩)『世界の果てまで』っていう日本語タイトルがついているんですけど。今回ね、『進撃の巨人』の後篇が『エンド オブ ザ ワールド』っていう副題がついていてですね。で、『それって、主題歌をSEKAI NO OWARIが歌っているから、タイアップじゃねえの?』って言ってる人が多いんですが(笑)。
(赤江珠緒)たしかに。SEKAI NO OWARIに引っかけて。
(町山智浩)そっちじゃないんですよ。
(赤江珠緒)『世界の果てまで』の方?
(町山智浩)『世界の果てまで』なんですよ。実は。
(赤江珠緒)なるほど。
後篇の話はほとんど町山智浩さんが作る
(町山智浩)で、こっちの歌がまずあって。それで、僕がまあ、後篇はほとんど僕が作った話になってるんですよ(笑)。
(赤江珠緒)えっ?
(山里亮太)作ったんですか?
(町山智浩)はい。
(赤江珠緒)ほう!
(町山智浩)つまり、その『進撃の巨人』っていうのは連載がずっと・・・
(赤江珠緒)だってまだ終わってないですもんね。
(町山智浩)そう。漫画なんで。ただ、映画にする際には、『途中までですよ。話は何も解決してませんよ』っていう風に終わらせることができないんですね。
(赤江珠緒)そりゃそうだ。
(町山智浩)で、これが巨人っていわれる人間を食う怪物たちに支配された世界で。その巨人から身を守るために巨大な壁を築いたところに、ある社会があると。そういう物語なんですよね。で、なんでそんな巨人が出てきたのか?とか、どうやって壁を築いたのか?とか。あと、人間のうち、何人かが巨人になる能力を持っているんですけど。どうしてそういうことができるのか?とか。そういったことは原作ではまだ全く明らかにされていないんですよ。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)でもそれを映画でそのまま、『謎です』っていう感じで。切り抜く感じでポッと出すわけにはいかないんで。映画は映画で、それに対して、なぜ巨人が出てきたか?とか、巨人は何なのか?っていうのを説明しなきゃマズいよっていう話になったんで。
(赤江珠緒)ああー。
(町山智浩)でも、原作はないですよと。じゃあ、テメーで考えろっていう話になったんですよ(笑)。
(赤江珠緒)おおー!
(山里亮太)これは難しいお題ですよ!
(町山智浩)難しいんですよ。で、要するに映画前半、後半があるんで。後篇は謎解きの部分なんですよ。今回。
(赤江珠緒)はー!
(町山智浩)で、まあ1人で考えられないんで、原作者の諫山先生と一緒にいろいろ話しながら、『まあ、こんな感じでまとめていこう』みたいな感じで。今回は、謎解き編です。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)で、そういうのをやっている時に、この壁に囲まれた世界っていうね。世界が全体、壁に囲まれているって、なんかこれ、同じような話を僕、知ってるぞ?みたいに思って。で、『あ、あれだ!』っていうのがあったんですよ。
(赤江珠緒)なんだ?
(町山智浩)『そういう小説、俺、読んだぞ、若い頃に』って。もう若くないから。
(赤江珠緒)(笑)
(町山智浩)で、それ、すごく有名な小説なんですよ。言いません。
(赤江珠緒)へっ?世界に囲まれた・・・
(町山智浩)わかっても、言わないで。
(赤江珠緒)はいはい。
(町山智浩)で、その本の、小説のいちばん最初に出てくるのが、いま流れた『世界の果てまで』っていう歌なんですよ。
(赤江珠緒)へー!
(山里亮太)あ、そこからこの副題というか。
(町山智浩)そう。そこからその、『エンド オブ ザ ワールド』っていうのが来たんですね。したら、後から、SEKAI NO OWARIが主題歌を歌うことになったんで。タイアップじゃないんですよ(笑)。
(赤江珠緒)(笑)
(山里亮太)なるほど。たまたまと。
(町山智浩)たまたまっていうか、まあそれもあったんでしょうけど。先にこの歌があって。ありきなんですよね。で、この歌がすごく歌詞がいい歌詞なんですよ。『なぜ波はいつもと同じように打ち寄せるの?なぜ鳥は何事もなかったように鳴き続けるの?歌うの?もう世界の終わりが来ているというのに』っていう歌なんですね。歌詞は。
(赤江珠緒)ほー。
(町山智浩)で、『The End Of The World』の『End』っていうのは『終わり』っていう意味もありますけど。もうひとつは、たとえばこういうものの端っこのことを『End』っていうんですよ。
(赤江珠緒)ふんふんふん。
(町山智浩)だから、『世界の端っこ』っていう意味もある。で、その、名前は出しませんよ。いま、名前を出しそうになったその有名な小説。壁の中の話っていうのの小説では、その世界の壁の、要するにギリギリのところを『世界の果て』なんで。世界が壁で終わっちゃうんでね。だから、それに引っかけてるんですね。
(山里亮太)ふーん!
(町山智浩)で、だからその世界の終わりと世界の果てを引っかけてやっているんで。その小説は。で、僕もちょっとそれをやろうかな?という感じで、やってます。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)すごく説明しにくいですが。めちゃくちゃ有名な小説なので(笑)。
(赤江珠緒)ああ、そうですか。
(町山智浩)そういうことをね、やっていたりするんですけど。で、今回の『進撃の巨人』は、まあ謎解きの部分もあるんですけど。まあとにかく、長谷川博己さんの怪演が。『怪演』としか言いようのない、怪演がすごいですけどね
(赤江珠緒)シキシマ役。
(町山智浩)すごいですよ。いま『MOZU』。TBSさんでね、今度映画になるじゃないですか。あれもすごいですけどね。長谷川さんはね。はい。
(山里亮太)変な人をやらせたら、天下一品みたいな。
(町山智浩)そう。ノリノリでやってますけどね。はい。で、あとね、石原さとみさんもすごい怪演されてますね。はい。
(赤江珠緒)ああー。
現場で監督と俳優が作り上げたキャラクター
(町山智浩)はい。あれはね、監督の樋口真嗣監督と石原さとみさんが現場で作り上げたものらしいんで。僕も・・・僕、ぜんぜん撮影現場、行ってないんですよ。
(山里亮太)ああ、そうなんですか?
(町山智浩)そう。だから、どうなっているかわからなくて。試写行って、試写見たら結構びっくりしましたよ。
(山里亮太)へー!
(町山智浩)いろいろとびっくりしましたよ(笑)。なんでこうなってるんだ?みたいな(笑)。うわっ、これは何!?みたいな。長谷川さんの部分もそうでしたよ。うわっ、ここ、こうしちゃうんだ?みたいな。
(赤江珠緒)ああ、そうなんですか。
(山里亮太)なるほど。自分の書いたものを、こういう風に捉えて作っているんだ、みたいな。いろんなギャップがあって。
(町山智浩)やっぱりね、映画は現場で監督と俳優さんが作るもんですから。で、『これはこうやった方がいいと思うんだよね』とか。なったらやっぱりそれの結果が映画であっていいと思うんですよ。
(赤江珠緒)うーん。
(町山智浩)それは、もうぜんぜん。前、三池崇史監督と話した時があって。『映画なんてものは出来上がってみるまで、ぜんぜんわからないっていうのがいちばん面白いんだ』と言っていて。『DOA DEAD OR ALIVE』っていう有名な映画があるんですよ。
(山里亮太)はいはい。見ました。
(町山智浩)見ました?
(山里亮太)見ましたよ。めちゃくちゃでしたよ!
(町山智浩)めちゃくちゃだったでしょ?竹内力さんと哀川翔さんが対決するんですけど。もうこれ、オチ言っちゃっていいのかな?
(山里亮太)もう、ねえ。DVDにもなっているから・・・
(町山智浩)とんでもないオチなんですよ。あの、最後に竹内力さんと哀川翔さんが大激突して、大変なことが起こるんですけど。監督に、『あれ、大変なことになったんですけど?』って言ったら、『あんなもん、シナリオにねえよ!』って言っていて。
(山里亮太)ええっ!?
(町山智浩)『どうしようかな?と思って、適当に思いつきでやった』って言ってましたから(笑)。
(赤江珠緒)そんな感じなんですか?
(町山智浩)映画、結構そうですよ。
(赤江珠緒)そうですか!?
(山里亮太)いままでずーっと僕らが見てきたものは、なんだったんだろう?っていうオチですよ(笑)。
(町山智浩)いっぱいあるんですよ。映画って。だからもう、現場までわからないですよ。
(赤江珠緒)それで言うと、素朴に思うのが、原作が終わってない時点でもう映画を作ろう!っていう熱意みたいなのは、終わるまで待とうか?とか、そういうことはないんですか?
(町山智浩)終わるの、いつになるかわかんないじゃないですか。そんなの(笑)。
(山里亮太)たしかに、まだぜんぜんだって・・・
(赤江珠緒)結構そういう作品っていっぱいありますもんね。
(町山智浩)いっぱいあります。だから、結局話が終わってないんで、途中で切って作るっていうやり方もあるんですけども。『そうしないでほしい。終わりまで、結末をきっちりつけてほしい』って言われたんで。もう、原作は壮大な謎がまだ解決されてないのに、勝手に解決するっていうとんでもない話になっていますけども(笑)。
(赤江珠緒)(笑)
(山里亮太)別の話っていう感じですよね。完全にね。
(町山智浩)そう。っていうかもうだって、舞台日本ですからね。
(赤江珠緒)ああ、そうか。
(町山智浩)もうそれだけで、ぜんぜん違うんですけどね。はい。まあ、そういう感じになってますけども。現実のこの、いま僕たちが住んでいるこの現実の日本とどういう風につながるか?っていうところをちょっと見てもらえたらなと。
(山里亮太)へー!
(赤江珠緒)ええっ!?現実の日本と?
(町山智浩)いま、我々がこうやって暮らしている日本と、どうやってこの話がつながるのかな?と。
(山里亮太)1回、この巨人の謎とかを1回こう、新しい話で解決できるっていう嬉しさがちょっと、後篇ではあるかもしれないですね。原作の方は、まだまだ先だから。
(赤江珠緒)そうね。はー。
(町山智浩)そうそうそう。で、もちろん原作の方もこれから続けていくから、全くそっちと違う方に落とすと思いますけどね。
(山里亮太)そうですよね。それはだから、いろんなこう、結末があって楽しいじゃない。
(町山智浩)どうなるかはわからない。
(山里亮太)パラレルワールドじゃないけど。
(町山智浩)そうそうそう。そういう感じなんで。はい。ぜひ、ご覧になっていただければと思います。
(赤江珠緒)9月19日。間もなく公開。
(町山智浩)そうそう。お礼も言っておかないとならないですけど。とりあえず、前篇の方の興行収入は30億円を超えましたんで。
(赤江珠緒)はー!すごいですね。
(町山智浩)あの、30億円を超える映画っていうのは年間に日本では10本あるかないかなんですよ。だから、30億を超えれば一応、大ヒットに入るんですよね。はい。というのは、まあ逆に考えると、日本では30億円以上のヒット作はほとんどあり得ない。っていうか、それ以上行ったら大大大ヒット作になっちゃうから、そこから予算設定をするんで。
(山里亮太)なるほど!
(町山智浩)そうすると、いつも言っているように、制作費は興行収入の1/3を目安とするんですね。だいたい。っていうことは、まあだいたい、10億円以上の日本映画っていうのは基本的にない。
(赤江珠緒)ああー、そうか。
(山里亮太)海外は何百億だって言ってる中で。
(赤江珠緒)でも、ちゃんと予算から計算しているのは偉いですよ。
(町山智浩)偉くないですよ!
(赤江珠緒)ちゃんとこのへんのね、国立競技場とかを考えたら(笑)。
(町山智浩)あ、まあね。だから10億円以上の予算をぶち込んじゃったら、それは日本国内では回収できない可能性が出てきちゃうんで。でも、『かぐや姫の物語』なんてのは最初から、もうダメ元でやってるんですよ。
(赤江・山里)はー!
(町山智浩)で、よく、これですごく重要なのは、日本映画で『制作費20億円』とか言ったりしているのは、大抵嘘です。
(赤江珠緒)えっ?
(町山智浩)だって、あり得ないもん。30億が上限なんだもん。
(山里亮太)60億持ってこないとダメな・・・
(町山智浩)そう。計算上あり得ない。ただ、アニメはあり得るんですよ。世界中で公開するから。
(赤江珠緒)ああー。
(町山智浩)あと、二次商品が出ますからね。いっぱい。それで儲けるからそれでいいんですけど。劇映画でもって、日本映画で制作費10億円以上って言ってるのは、たいていフカシですから(笑)。計算上、あり得ねえだろ、お前!っていう問題があるので。
(赤江・山里)(笑)
(町山智浩)みなさん、そのへんは眉唾で聞いてもらった方がいいですね。
(山里亮太)邦画のCM、これからちょっと怖いね。もう。『総製作費50億円』とか言ったら、『あっ、盛ったなー!』みたいな(笑)。
(町山智浩)もう盛ってますよ。だって、毎年興行収入のベスト10って発表されますけど。その、10位ぐらいまでね。で、30億を超えているやつって、8本とか9本とか。まあ、10本あるかないかですから。大抵は。だからまあ、計算上おかしいんですよ。10億円の制作費があるっていうのは。
(赤江珠緒)うん。
(山里亮太)いや、そりゃ海外のやつはすごいわ。それは。
(町山智浩)そういう話がありますが。今回、ちょっといろいろやることがあって。すいません(笑)。
(山里亮太)ネタバレもしてないのも、あれですからね。
(赤江珠緒)そうそうそう。
(町山智浩)ぜひ、ということで。
<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/28631