星野源さんが2025年5月6日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中でザ・ブルーハーツ『すてごま』の歌詞の魅力を語っていました。
(星野源)さあ、本日は収録放送ということで、今までにやったことない感じのことをやろうかなということで。収録放送しかないコーナーみたいなのを作ってみようと。で、ちょっと今回、こんな企画を……今回っていうか今後、こんな企画をやってみようと思うんです。で、それが僕は音楽家として作詞をして、作曲をして、編曲をして、全体プロデュース。楽曲もプロデュース、サウンドもプロデュースしているというやり方で音楽をやっていますが。
この番組では「イントロクソやべえ」というコーナーが以前、ありまして。イントロが僕、好きなんで。で、いろんなイントロをですね、みんなから募集して。「これ、いいですよ」って。で、その中で一番いい、響いたものをフルでかけるみたいなコーナーがありましたけども。また、なんか音楽のコーナーやりたいなということで今度はですね、歌詞に注目して。「この歌詞、いいよね」っていうのを僕が思うものをただ、話していくというやつです(笑)。
で、これ、コーナーのタイトルを考えましたので、発表します。「お歌詞屋さん」。見切り発車です。これは……お歌詞屋さんですよ? いいですか、皆さん? 歌詞のコーナーでお歌詞屋さん。街のお菓子屋さんみたいな感じですね。いいですね。菓子を紹介するお歌詞屋さん(笑)。
えっ、そう。なんか、いわゆる駄菓子屋のおじいちゃん、おばあちゃんみたいなキャラでやった方がいいの? みたいな話をしたけれども。「ニセさんも含めてそれだともうキャラが多すぎるんでやめましょう」「ああ、そうだね」っつって。はい。なので。僕がなんか昔から好きなとか、最近好きなとか。歌詞を読んで「ここ、いいよね」「好きです」とか。「こういう風に読めるね」なんていう話をしたりとかして、曲を聞いてもらうという、そんなコーナーにしようかなと思ってます。
で、昔、「渾身のリリシスト」っていうコーナーをですね、J-WAVEで僕がレギュラーやらしてもらってた『RADIPEDIA』っていう番組でやってたんですけど。まあ、そんな感じのコーナーではあるんですけど、あの時はですね、結構気合を入れてというか。「この歌詞って実はこういう意味なんです」みたいな、そういうのを読み解くみたいなコーナーだったんですけど。もっと、なんかラフな感じでやれたらいいなと。「いいねー」っていう(笑)。「いいね」とか「好きです」って。なんか「実はこういう意味なんです。考察が……」とかっていうのも時折、あるかもしれないけど。なんかそういうの、流行ってるしみんな、好きじゃん? 好きだけど、やるかもしれないけど、基本的にはなんか「いいな。好きだね」っていうのを語ろうと思っています。
で、自分が今回、その『Gen』というアルバムを作って。で、その中でその都度、シングル曲はたとえばタイアップがあったりとか。でもその中で自分の音楽を、自分の歌詞をっていうのを考えながら作っていく中で、アルバム曲に関してはもう特にタイアップがなかったりするんで。もうとにかく自分から出てくる言葉だけを書いたんですけど。なんというか、今までの歌詞の書き方っていうものを1回、全部壊して。新しくビルドし直したいなみたいな気持ちを持って作詞をしてた部分もありまして。改めていろんな人の詞とか、あんまりね、影響を受けているのはないんですよ。今回。
「こういうのを見て、こういう歌詞を書きました」というか。こういう歌詞を書いて、自分が満足いくっていうか。「ああ、これだな」っていう言葉を書けたっていう思いがあって。そこからですね、他の人のいろんなミュージシャンとか、いろんなアーティスト、いろんなバンドの日本語歌詞みたいなのを見てた時に、なんかまた違う受け取り方ができて楽しいなというフェーズみたいのに入ってきた感じがしたので、またちょっと歌詞のコーナーをやってみたいなと思っております。
ただ、タイトルがお歌詞屋さんなんで、ふわふわしてるかもだけど(笑)。それではですね、今日はね、何を紹介しようかなと。いろいろあるんですよね。いろいろな……なんか最近のね、歌詞とか。最近の自分がビビッと来たもの。もしくは昔のとか、いろいろ考えたんですけど……これは、僕が何年だ? もうすごい、学生の頃。まあ十代の頃ですね。十代の頃の曲で。一番最初に聞いたのは、何だったっけな? たぶんね、川口市の駅前のマルイの上の階にある、その時あったCD屋さんの視聴で最初、聞いたんだと思うんです。
ものすごい衝撃を受けまして。その時。で、そのアルバムに入っている曲……その曲は違う曲なんですけど。その曲はテレビでよく流れていたんで聞いていたんですけど。その曲はたしか2曲目に入っていて。アルバムを視聴した時、1曲目にそれが入っていたんですよ。で、その1曲目を聞いた時にすごい衝撃を受けた曲をですね、ちょっと紹介しようかなと思っております。
で、この曲はですね、ザ・ブルーハーツの『すてごま』という曲なんですけど。もちろんね、ブルーハーツが大好きな人、たくさんいますから。この曲もすごく有名な曲なんで、知ってるよっていう方、多いと思うんですけど。当時『STICK OUT』というアルバムが出まして。で、もう1個、『DUG OUT』っていうアルバムが出まして。その二つがですね、ちょっと時間を置いてセットみたいな感じで。
デザインも似てまして。で、その「凹」のデザインと「凸」のデザインでですね、『STICK OUT』の方はノリがいいとか、激しいとか、テンポが速い曲が多くて。『DUG OUT』の方はゆったりした曲とか、バラードとか、そういうのも入っているという。なんかそういう、ちょっと趣旨が違うアルバムがですね、すごい近いタイミングで出て。
『STICK OUT』と『DUG OUT』
(星野源)で、僕はちょっと当時、まあひねくれっていたのもあってですね、『DUG OUT』の方をなんか、買ってたんです(笑)。で、両方ほしかったんですけど、まあ学生だったし。っていうか、十代でお金、全然なかったし。「どっちかしか買えない」ってなった時に「なんとなく『DUG OUT』の方が本物っぽいんじゃないか?」みたいな、なんかそういう本当にひねくれダメ人間だったんですけど(笑)。今ももちろん、当時からどっちも好きでですね、聞いてたようなアルバムの中の1曲なんですけど。
この曲はですね、ちょっと読むと「ああ、戦争の曲だな」っていうのはすぐわかる。「おろしたての戦車でブッ飛ばしてみたい」という歌詞から始まるし。曲が始まった途端に戦車のキャタピラの音。そこから始まるので一聴して「ああ、戦争の曲だ」っていうのはすぐわかる。で、サビのところにですね、パーンって音が入っていて、それはクラップなのか、何かの効果音なのか、高いスネアなのか、シンバルやハイハットを重ねた音なのか、そこら辺がちょっと僕には曖昧ですけども。なんかそれがちょっと銃声のようにも聞こえるという、そういうのもあってですね、世界観が一発で伝わるような楽曲なんですけど。
今、読むとまたいろんな気持ちになるという。で、ちょっと歌詞を読んでみます。「おろしたての戦車でブッ飛ばしてみたい おろしたての戦車でブッ放してみたい 何か理由がなければ 正義の味方にゃなれない 誰かの敵討ちをして カッコ良くやりたいから 君 ちょっと行ってくれないか すてごまになってくれないか いざこざにまきこまれて 泣いてくれないか」っていう歌詞があるんですけども。
これはもうなんていうか、まっすぐに受け取ると戦争を仕掛ける側の、なんというか偉い人というか。指令する側の立場の人の、とにかく戦いたいし、正義の味方でいるには理由をつけてそもそものいざこざを生み出して。そこで手下というか、下の人間に「君、ちょっと行ってくれないか? 行って、巻き込まれて、泣いてくれないか?」とか。その後の歌詞で「死んでくれないか」っていう歌詞がありますけども。なんか、その歌詞はもちろん当時、衝撃的で。「わあ、すごい歌だな」って。でも、すごくメロディーとかサウンドが妙に気持ちよくてですね。なんか、その感じがですね、非常に癖になってずっと聞いていた曲なんですけど。
サビの「君」という歌詞が好き
(星野源)で、僕がすごく好きなのはですね、サビの「君」っていう歌詞なんですけど。デデッ、デッテレッ、テッテレッレッ♪」っていうメロディーなんですけど。その「デデッ」に「君」って行くんですけども。この「君」がですね、すごくて。「すごくて」っていうかこれ、本当に抽象的な言い方になっちゃうんですが、すごいっていう。なんかもうこの「君」で全部を言ってる感じがするんですよね。その前の歌詞があって、それがまあ、かなりやばい感情を歌っているというか。かなり暴論を言ってるんですけど。そこで「君」でもう立場が見える。なんかその、人を自分より下だと思っている人がその下の者に向かって言っている「君」っていうのが「デデッ」っていう音に合わさって歌われるっていうことで。もうなんか全部がもうバン!ってそこで伝わるっていう。
なんか、歌詞っていろんなものがあって。たとえば「◯◯は△△のようだ」ってすごく説明する場合とか。あとはもっと抽象度高く、前回かけた『胸の振り子』みたいに「柳につばめは あなたにわたし」ってなんかその、それって本当ただ言葉を並べてるだけなんですけど、ものすごく伝わるものがあるじゃないですか。なんか、そういういろんな種類があるんですけど。サウンドとその言葉の響きが合わさっただけで、そこでブワッとイメージがガーンと広がるみたいな。それってやっぱりその歌詞でないとできないことだったりするんで。サウンドとメロディとが合わさることでものすごく爆発力があるもの。
なんかその「君」っていうのが……「君」ってすごくいろんな意味があるじゃない? 意味があるっていうか、それを全部同時に説明してくれて。この「きみ」の二文字に詩が詰まっている。ポエムが詰まっていると僕は思うんですよね。で、あとすごく面白いなと思ったのは、これはなんかその僕が勝手に「こう思う」っていうだけなんで。あと「こう感じた。こういう風にも感じられるな」と思っただけなんで。正解とかはないのでね、皆さん、お気を付けくださいっていうか。皆さんも正解があると思うんで。これ、僕が感じたことを言うだけなんですけど。