(星野源)そのAメロとBメロ……大きく分けるとAメロとBメロか。「おろしたての戦車で」という部分と「君 ちょっと行ってくれないか」をたとえばBメロだとします。で、そのAとBが、なんか最初は僕、同じ人だと思ったんですよ。あと、多くの人が同じ人だと思うんですよね。「おろしたての戦車でブッ飛ばしてみたい」って思う人。「何か理由がなければ 正義の味方にゃなれない」から。「誰かの敵討ち」をしたいから「君 ちょっと行ってくれないか」という。なんか負けたり、ひどい目にあってそれの報復をしたいからっていう。だけど、このAメロの段で言ってること。
「ブッ飛ばしてみたい」「ブッ放してみたい」
(星野源)「ブッ飛ばしてみたい」「ブッ放してみたい」ってこれ、「みたい」だからやったことがない可能性があるんですよ。その、戦車に乗ったこともないし。っていうか、その戦争したことがない人の可能性もある。これから新しく軍隊に入った人の可能性もある。戦いたくてとか、そういういろんな思いを持って。正義の味方になりたいから。誰かの敵打ちでかっこよくやりたいなっていう、そのひねくれているような感じを持った人が「よし、俺は戦うぞ!」みたいな風に思ってる人が「君 ちょっと行ってくれないか」って言うんじゃなくて。
そういう風に思ってる人が「君 ちょっと行ってくれないか」ってなってかっこよくじゃなくて捨て駒になって死ぬっていう、その勇ましくそう言ってる人が実は上の人にそういう風に捨て駒のように使われて死んでいくんだっていう読み方もできるという。だから、ものすごく上の立場で戦いを生み出そうとしている人が最初から最後まで言っているようにも思えるし、そういう風に勇んで言っている人が実は使われて、泣いてしまって後悔するような立場になるような人にだってすぐになり得るっていう。なんかそういう読み方もできるなっていうのがすごく面白いなと思うし。
今、なんだろう? 戦争だったりっていうことを描いているとももちろん思うんだけど。正義っていうものとは? とか、悪っていうものとは?っていうこととかもすごく受け取れる歌詞にもなっていて。で、この歌詞で行われていることとか言われていることっていうのは今、毎日、インターネットの中とか、あと週刊誌の中とか、ニュースの中とか、僕らの日々の中で毎日、起こっていることであるという。
で、誰かが被害者になって、誰かが正義を振りかざして。で、それがまた繰り返されて、その正義を振りかざした人がまた被害者になったりとか、叩かれる立場になってっていうのが毎日毎日毎日毎日、行われているという。その中で聞くこの曲はまた違った響きになってくるなと。もうすっごい前の曲なんですけどね。1993年の曲なんだけど。それでは、ちょっと聞いてみましょう。ザ・ブルーハーツで『すてごま』。
ザ・ブルーハーツ『すてごま』
(星野源)お送りしたのはザ・ブルーハーツで『すてごま』でした。新コーナー「お歌詞屋さん」、また収録の回にお送りしたいと思います。
星野さんが好きな曲の歌詞を語る新コーナー「お歌詞屋さん」、めちゃ面白いですね。以前、やっていた「イントロクソやべえ」も大好きでしたが、こういう風に歌詞について実際に作詞家である星野さんがあれこれ話してくれるのはとても興味深いです。今回の『すてごま』読み解き、素敵でしたね。次回の収録回も楽しみです!